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はじめてのモフモフ
第22話 ペレイとジッポー
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僕たちは、儀式場への出口を目指して、走る。どうやら、『カクレミノ』を使用していても、同じく使用している者の姿は見えるようだ。
広間に出て、出口につく。だが、その出口は鉄の門で閉じられ、大きな錠前がつけられていた。近くには、負傷じたジッポーと、黒装束の仲間が見張りについている。
「面倒だな……そういえば、バルコニーの下は、少し傾斜があったはずだ。あそこを滑って脱出って手もあるな」
「それが一番だニャ」
一度、この場を引き返し、僕たちはバルコニーへと続くらせん階段を上る。そして、少し広めのバルコニーへ出た。するとそこには、水着を着た美しい肌のペレイの姿があった。ペレイはこちらを向き、しかりつけるように声を上げる。
「なんですか、あなたたちは!」
「あれ、僕たちの姿は見えないはず……」
「ペレイの頭の上ニャ!」フィオラが、何かを見つけたようだ。フィオラは、それを指さして答える。「『カクレミノ』があるのニャ」
「なっ……それで見えてたのか」
──でも……なぜこんなところへ『カクレミノ』を使って……。
ペレイはゆっくりと僕に近づく。
「あなたはなぜ、怠惰な毛に触れても、なんともないのですか」
不思議そうな顔をしてペレイは効いてきた。僕は答える。
「毛は……怠惰でもなんてもない! モフモフのフッサフサだ!」
「毛のないわたしと同じような肌のあなたなら、わかってくれると思ったのですが、どうやら、違うようですね……」
すると、ペレイは何か丸い玉のようなものをかんしゃく玉のように叩きつけた。その瞬間、その場にいた全員の『カクレミノ』が吹き飛んだ。
「ハッ……しまったのニャ」
「これでは、見えてしまいます」
「また捕まってしまうのね……」
3人は慌てふためいていた。だが、それに追い打ちをかけるようにペレイが叫ぶ。
「ジッポー!」ペレイはジッポーを呼んだ。
「お呼びですか、ペレイ様!」
まるで、瞬間移動でもしたのだろうかと言いたいぐらいの速度でジッポーが姿を現した。そして、僕をにらみつけ、「貴様! ペレイ様に何かしたのか!」と怒鳴った。
──いくらなんでも、反応が早すぎるだろっ!
「こやつらを取り押さえろ、ジッポー!」
「ハハッ! おおせのままにっ!」
ペレイはジッポーに命令を下す。だが、僕たちも、そうやすやすと捕まるわけにはいかない。この時のために取っておいた無敵の能力が、今の僕にはある!
「やれるものなら、やってみろジッポー!」
「ふん、ほえ面かかせてやる」
僕は、スキルを使用する。
「【無敵】! 発動!」
体が点滅を始めた。残りMFPは700/1100だ。これなら約7秒ほど動ける。これでやつに体当たりをすれば、即ノックアウトだ。僕は気合で体当たり攻撃を放った。
「遅いぞ、おまえ」
ジッポーは、僕の攻撃をひらりとかわした。
「当たらなければいいだけの話だ!」
──あれ……こいつ、こんなに動き早かったのか!?
「ま……まだだ!」
地面を蹴り、もう一度、突っ込む。だが、それもひらりとかわされる。
「無駄な予備動作が多いんだよ、小僧!」
──見切られている……!? これでは、無敵になった意味がない。残り2秒、触れるだけでいいんだ。触れさえすれば……。
僕は、とっさにある方法を思いつく。それは、ペレイへの攻撃だ。ジッポーは、ペレイを異常に慕っている。もし、ペレイに攻撃の刃を向ければ、ジッポーが何もしないわけがない。
「ペレイ! 覚悟しろ!」そう言って、僕はペレイに向かって走り込む。
「き、貴様!」
ジッポーは、僕の動きに反応し、ペレイの前に立ちふさがった。少し、卑怯な攻撃だが、これでジッポーは倒したも同然だ。
ジッポーは、僕の体に触れ、激しく吹き飛び、バルコニーの柱に激突した。「や……やらせない……ペレイ様だけはァァァ!」ジッポーは、そう叫んで立ち上がった。
──まだ、立ち上がるのか!?
その瞬間、僕のMFPは0になった。そして、どうやら、ジッポーは怒りが頂点に達したようだ。やつは、顔を赤くして、大きく息を吸い込む。そして、強力な炎を放った。
よけられない。逃げる時間もない。このままでは焼かれてしまう。だが、まだチャンスはあった。それは、S.gaugeだ。どういうわけかしらないが、これが100%になっていた。さらに、耳もある。こうなったらもう、これに賭けるしかない!
僕は、両腕を前に出し、手のひらをジッポーに向けてスキルを叫んだ。
「【フォックスファイヤー】!」
体から、火炎放射のように、炎が噴射された。その炎は、ジッポーの炎を飲み込み、やがて直撃する。
「ば……ばかなあああぁぁぁぁぁ!」ジッポーは黒焦げになり、叫びながら勢いよく吹き飛んでいった。
「や……やったのか……」
「柔人……それはフラグなのニャ。やったのではなくて、やったんだニャ」
「そうか……」
力を出し切った僕は倒れそうになる。その体をフィオラが支えてくれた。ひとまず、ジッポーは倒せた。残るは、ペレイだが、牢屋にいた時のジッポーの言葉が気になる。なにか、助けが必要なのだろうか。もし、なんとかなるのなら、こんなことはやめさせたい。いや、やめるべきだ。
僕は、ペレイにたずねた。
「ペレイ……どうして毛を嫌う。どうして毛を刈ろうとするんだ」
「この手を見るがよい。その汚らわしい怠惰な毛に触れた結果がこれだ」
ペレイは、赤く腫れあがった右手を目の前にかざした。痛々しくて見ていられない。
「これは、能力をもらうために、アンナ姫の毛を触らなければならなかった。だが、わたしは、毛に触れると、触れたところが腫れあがり、炎症をおこしてしまうのだ。そんな体では誰とも触れ合うことなどできない。それをわかってくれたのは、ジッポーだけだ。彼は、それを知った途端に己の毛を自ら焼き払ってみせた」
「腫れる!?」
「そんな毛は、なくなればいいと、わたしとジッポーの2人はこのケゾールソサエティーを作り、悪魔の毛を根絶やしにしようと考えたのだ。わたしは、いつまでこの毛に苦しまされればいいのだ! こたえよ、わたしと同じ肌を持つものよ!」
──それって……アレルギー体質じゃないのか……。
うまく説明できるかはわからない。だが僕は、とにかくわかっていることだけを話し、一度、説得をしてみようと考えた。
「まて……ペレイ。それは、毛のせいじゃないんだ。たしかに、毛のせいでもあるんだけど……」
「じゃあ、何だ!」
──うまいい言葉が見つからない……。
「それは、体質なんだよ……この世界にアレルギー体質って言葉があるかどうかはわからないが、とにかく、そういう体質なんだよ」
「体質! わたしはずっとその体質でいなければならないのか!」
「そんなわけはない。だからといって、他人の毛を刈ってまで自分の住みやすい環境を作るのはどうかと思うぞ」
「なら、別な方法があるのか?」
「そ……それは……僕は医者じゃないから、そういったことは残念ながらわからない。でも……」
「結局わたしが苦しまなければならないことには変わりないではないか。答えもないのに、変な期待をさせるな」
──だめだ……これじゃあ、なんの解決にもならない……。
何か、いい方法はないのだろうか。ただ、沈黙の時間だけが流れていった。
広間に出て、出口につく。だが、その出口は鉄の門で閉じられ、大きな錠前がつけられていた。近くには、負傷じたジッポーと、黒装束の仲間が見張りについている。
「面倒だな……そういえば、バルコニーの下は、少し傾斜があったはずだ。あそこを滑って脱出って手もあるな」
「それが一番だニャ」
一度、この場を引き返し、僕たちはバルコニーへと続くらせん階段を上る。そして、少し広めのバルコニーへ出た。するとそこには、水着を着た美しい肌のペレイの姿があった。ペレイはこちらを向き、しかりつけるように声を上げる。
「なんですか、あなたたちは!」
「あれ、僕たちの姿は見えないはず……」
「ペレイの頭の上ニャ!」フィオラが、何かを見つけたようだ。フィオラは、それを指さして答える。「『カクレミノ』があるのニャ」
「なっ……それで見えてたのか」
──でも……なぜこんなところへ『カクレミノ』を使って……。
ペレイはゆっくりと僕に近づく。
「あなたはなぜ、怠惰な毛に触れても、なんともないのですか」
不思議そうな顔をしてペレイは効いてきた。僕は答える。
「毛は……怠惰でもなんてもない! モフモフのフッサフサだ!」
「毛のないわたしと同じような肌のあなたなら、わかってくれると思ったのですが、どうやら、違うようですね……」
すると、ペレイは何か丸い玉のようなものをかんしゃく玉のように叩きつけた。その瞬間、その場にいた全員の『カクレミノ』が吹き飛んだ。
「ハッ……しまったのニャ」
「これでは、見えてしまいます」
「また捕まってしまうのね……」
3人は慌てふためいていた。だが、それに追い打ちをかけるようにペレイが叫ぶ。
「ジッポー!」ペレイはジッポーを呼んだ。
「お呼びですか、ペレイ様!」
まるで、瞬間移動でもしたのだろうかと言いたいぐらいの速度でジッポーが姿を現した。そして、僕をにらみつけ、「貴様! ペレイ様に何かしたのか!」と怒鳴った。
──いくらなんでも、反応が早すぎるだろっ!
「こやつらを取り押さえろ、ジッポー!」
「ハハッ! おおせのままにっ!」
ペレイはジッポーに命令を下す。だが、僕たちも、そうやすやすと捕まるわけにはいかない。この時のために取っておいた無敵の能力が、今の僕にはある!
「やれるものなら、やってみろジッポー!」
「ふん、ほえ面かかせてやる」
僕は、スキルを使用する。
「【無敵】! 発動!」
体が点滅を始めた。残りMFPは700/1100だ。これなら約7秒ほど動ける。これでやつに体当たりをすれば、即ノックアウトだ。僕は気合で体当たり攻撃を放った。
「遅いぞ、おまえ」
ジッポーは、僕の攻撃をひらりとかわした。
「当たらなければいいだけの話だ!」
──あれ……こいつ、こんなに動き早かったのか!?
「ま……まだだ!」
地面を蹴り、もう一度、突っ込む。だが、それもひらりとかわされる。
「無駄な予備動作が多いんだよ、小僧!」
──見切られている……!? これでは、無敵になった意味がない。残り2秒、触れるだけでいいんだ。触れさえすれば……。
僕は、とっさにある方法を思いつく。それは、ペレイへの攻撃だ。ジッポーは、ペレイを異常に慕っている。もし、ペレイに攻撃の刃を向ければ、ジッポーが何もしないわけがない。
「ペレイ! 覚悟しろ!」そう言って、僕はペレイに向かって走り込む。
「き、貴様!」
ジッポーは、僕の動きに反応し、ペレイの前に立ちふさがった。少し、卑怯な攻撃だが、これでジッポーは倒したも同然だ。
ジッポーは、僕の体に触れ、激しく吹き飛び、バルコニーの柱に激突した。「や……やらせない……ペレイ様だけはァァァ!」ジッポーは、そう叫んで立ち上がった。
──まだ、立ち上がるのか!?
その瞬間、僕のMFPは0になった。そして、どうやら、ジッポーは怒りが頂点に達したようだ。やつは、顔を赤くして、大きく息を吸い込む。そして、強力な炎を放った。
よけられない。逃げる時間もない。このままでは焼かれてしまう。だが、まだチャンスはあった。それは、S.gaugeだ。どういうわけかしらないが、これが100%になっていた。さらに、耳もある。こうなったらもう、これに賭けるしかない!
僕は、両腕を前に出し、手のひらをジッポーに向けてスキルを叫んだ。
「【フォックスファイヤー】!」
体から、火炎放射のように、炎が噴射された。その炎は、ジッポーの炎を飲み込み、やがて直撃する。
「ば……ばかなあああぁぁぁぁぁ!」ジッポーは黒焦げになり、叫びながら勢いよく吹き飛んでいった。
「や……やったのか……」
「柔人……それはフラグなのニャ。やったのではなくて、やったんだニャ」
「そうか……」
力を出し切った僕は倒れそうになる。その体をフィオラが支えてくれた。ひとまず、ジッポーは倒せた。残るは、ペレイだが、牢屋にいた時のジッポーの言葉が気になる。なにか、助けが必要なのだろうか。もし、なんとかなるのなら、こんなことはやめさせたい。いや、やめるべきだ。
僕は、ペレイにたずねた。
「ペレイ……どうして毛を嫌う。どうして毛を刈ろうとするんだ」
「この手を見るがよい。その汚らわしい怠惰な毛に触れた結果がこれだ」
ペレイは、赤く腫れあがった右手を目の前にかざした。痛々しくて見ていられない。
「これは、能力をもらうために、アンナ姫の毛を触らなければならなかった。だが、わたしは、毛に触れると、触れたところが腫れあがり、炎症をおこしてしまうのだ。そんな体では誰とも触れ合うことなどできない。それをわかってくれたのは、ジッポーだけだ。彼は、それを知った途端に己の毛を自ら焼き払ってみせた」
「腫れる!?」
「そんな毛は、なくなればいいと、わたしとジッポーの2人はこのケゾールソサエティーを作り、悪魔の毛を根絶やしにしようと考えたのだ。わたしは、いつまでこの毛に苦しまされればいいのだ! こたえよ、わたしと同じ肌を持つものよ!」
──それって……アレルギー体質じゃないのか……。
うまく説明できるかはわからない。だが僕は、とにかくわかっていることだけを話し、一度、説得をしてみようと考えた。
「まて……ペレイ。それは、毛のせいじゃないんだ。たしかに、毛のせいでもあるんだけど……」
「じゃあ、何だ!」
──うまいい言葉が見つからない……。
「それは、体質なんだよ……この世界にアレルギー体質って言葉があるかどうかはわからないが、とにかく、そういう体質なんだよ」
「体質! わたしはずっとその体質でいなければならないのか!」
「そんなわけはない。だからといって、他人の毛を刈ってまで自分の住みやすい環境を作るのはどうかと思うぞ」
「なら、別な方法があるのか?」
「そ……それは……僕は医者じゃないから、そういったことは残念ながらわからない。でも……」
「結局わたしが苦しまなければならないことには変わりないではないか。答えもないのに、変な期待をさせるな」
──だめだ……これじゃあ、なんの解決にもならない……。
何か、いい方法はないのだろうか。ただ、沈黙の時間だけが流れていった。
応援ありがとうございます!
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