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その頃のラインハルト
しおりを挟む「こ、こ、この、愚かもぉのぉがぁぁっ!」
オルフェリア王城の王族の居住区にある居間に怒号が響き渡る。
「馬鹿か、お前は馬鹿なのか、いや言うな間違いなくお前は馬鹿だ」
隣では王妃が立ちくらみを起こしたか、ふらりと身体を揺らし、隣に控えていた第2王子、ハインリヒに抱きとめられる。
「母上、お気を確かに、誰か、手をかせっ」
侍従が手を貸し王妃をカウチに横たえる。メイドが気付け薬を嗅がせて目を覚ます。
「申し訳ありませぬ、王よ、甘やかした妾の責。この罰はいかようとも受けましょう」
「よい、妃よ、此奴の教育を間違えたのは我も同罪だ」
クリスハルト国王はカウチに腰掛け王妃ミラディアナの手をとる。
「なぜです。リリアの身分が低いからですか、それならばダイクン男爵家を陞爵させるか、どこぞの伯爵家に養女として迎え入れさせればよいではないですか」
国王は愚かな長男をキッとにらむ。
「どこまでも馬鹿なのだな。なんの功績もない男爵を陞爵できるはずなかろう。どこぞの養女にしたところで市井で育ったあの娘に国政のなんたるかが理解できると?」
「それくらい学べば「だから馬鹿だと言うのだ!」」
「エレーニア嬢はお前との婚約が決まった5歳から王妃教育を施してきた。教師役は皆彼女の優秀さに驚いていたが、2歳上のお前よりもどれほど優れていたか。お前は政の勉強は嫌がって暇さえあればメイドの尻を追いかけていたから気づかんかったのだろう」
「エレーニア嬢が王妃となれば王が多少馬鹿でも政務はなんとかできる、そう判断されて皆は貴方が勉強をサボっても多めに見てくれていたのですよ、それを…」
ヨヨヨと王妃は王に身を寄せ嘆く。
「エレーニア嬢という妃がいて初めてお前の国王、いや王太子としての立場が保証されていたのだ。あの様な公の場所で彼女を侮辱した今、破棄はなかったことになどと頼める筈もない」
王は王妃の肩を撫でながらその眼を見つめる。王妃は決意を込め頷くのだったが、ラインハルトは両親のそのやりとりに頭をかしげる、ハインリヒはそんな兄を侮蔑の目で眺め、両親の後ろに控えた。
「ラインハルト、お前を廃嫡する、ちょうどロイター伯爵家が断絶し、領地もいま王国預かりとなっていた。そこをお前にやろう。今日からお前はロイター伯爵だ。それならば妻が男爵令嬢でも問題ない。王太子はハインリヒに。16歳の誕生日に正式に立太子式を行うが公式には今日からハインリヒが王太子だ」
「そんなっ、父上…」
「まともに政務も法律も勉強しなかったお前が、領地運営ができるかどうかわからんので、補佐はつけてやる。今週中にはロイター伯爵領へ移るがよい。連れて行け」
国王は入り口に控えていた護衛騎士に命じラインハルトを退室させる。
「父上、そんなお待ちを、父上ーっ」
叫び争うも、武術の稽古もサボりっぱなしのラインハルトが騎士に抗える筈もなく引きずられていくのだった。
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2017.03.04修正
鼻薬→気付け薬に修正しました
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