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3章 ウェイシア王国に来ました
3話 ケモ耳バンザイ
しおりを挟む私から立ち上がる黒いオーラが辺りを包み込むと、周りにいた野次馬とハゲ散らかしたおっさんはビックっと飛び上がる。
「今、なんと仰いました?もしかして獣人風情とか仰いませんでしたか?このウェイシア王国も隣国のオルフェリアも人種による差別は認めておりません。ですが貴方の仰りようはまるで……」
開いた方の手を静かに腰の剣にかける。ケモ耳最高!ケモ耳は正義!モフモフの、モフモフによる、モフモフの為の世界に、何をほざくか……
「イィ、言ってない、何も言ってない~」
ハゲ散らかしたおっさんは慌てて逃げて行く、周りにちらりと視線をやると野次馬もそそくさと散って言った。ケモ耳少年に目を向けると耳がへにゃっと折れ尻尾がクルンと足の間に……あっヤバ。
殺気を引っ込め、少年の前に片膝をついて視線を合わせる。
「ごめんね、びっくりさせちゃったね。もう大丈夫だから。それロキ草と解熱草だね。薬草がいるって事は怪我をした人がいるんだ?」
ズッキュ~~ン!!
顔を上げたケモ耳少年は必死で耐えていたのか大きな目に溜まった涙をこらえ、うるうるの状態で見つめ返してきた。か、かわいい。ああ、もうおねーさんすりすりしたくて、抱きしめたくて手がワキワキするよ~~
悲しい事だがこの世界には人間至上主義という考えを持つものがいる。馬鹿な事だが。
エルフ(これもまだお目にかかってない)に代表される妖精族は人族より寿命が長く魔力保有量が多い。獣人族は類い稀な身体能力、感覚を持つ、どう比べても人の方が劣種なのに。
オルフェリア王国、ウェイシア王国、リュミエール神皇国の三国同盟は人種差別を禁止しているが、ガガート帝国は人間至上主義な上奴隷制度ありな困ったちゃん帝国だ。北方連合国家には獣人族の国もあるのだが攫って奴隷にしようという輩が後をたたない、もう、滅べばいいのに帝国。
そんなことより、このケモ耳少年だ。着ているものはボロく薄汚れていて、靴も履いていない。見た所10歳、いやもう少し下か、ボサボサの茶色の毛と金色の瞳、物凄く綺麗な金色、ところどころ色んな色が混じってプリズムのよう。痩せてガリガリだが顔の造作が良く絶対美少年だ。
このまま放って置くことができようか、いやできない!(反語)
「何か役に立てるかもしれない、それにその薬草の煎じ方知っているから手伝えるよ」
信用できないとでも言いたげに睨みつけてくるが(これもまたかわゆい)自分の持つ薬草を見て暫くなやむと、真っ直ぐに目を見返してきた。
「嘘ついたり、変なことしたらぶっ飛ばすからなっ」
精一杯虚勢をはる姿がまた……ショタじゃないから、ケモ耳萌えだからねっ!いやいやそんなこと考えてる場合じゃなかった。
「うん、わかったよ」
120%ケモ耳愛を込めた笑顔で返事をする。
ケモ耳少年の後をついて行くと街並みが徐々にうらぶれた感じに代わっていき、ついには廃墟に近いスラムにやってきた。この辺りは昔起こった魔物大発生で破壊され、再開発から外され廃墟となったようだ。壊れた戸や柱の陰に随分と人がいるみたいだが姿は出さずこちらを覗いている。。隙間だらけだから《エリアサーチ》が遮られることなくバンバンひっかかる。
「コッチ」
ケモ耳少年、名をアレクスという。狐獣人族だ。道中自己紹介をしあった。二階部分は崩れてほとんど無く、その崩れた二階が屋根代わりとなっているようなボロ小屋に案内される。板を立てかけただけの扉をずらしアレクス君が入って行ったので後に続く。途端に腐ったような臭いが鼻に付いた。防寒の為隙間を粘土の様なもので塞いでいるので空気がこもり淀んでいる。
また扉代わりの板をずらしてすり抜けると、ボロ布に包まった子供が横になっていた。アレクス君は駆け寄り声をかけた。
「ウリュ、薬草採ってきたぞ、起きれるか」
アレクス君の後ろから覗き込むと、痩せて薄汚れた子供の頭にはかわいいまるいケモ耳があった。
「……レクチュ、…だれ?」
薄く眼を開けた子供はアレクス君の後ろの私に気付き弱々しく尋ねた。
「いったい、どうしてこんな怪我を?」
少し見ただけでも、ウリュと呼ばれた子供の状態が良くないことがわかった。血の気のない青い顔、滲む冷や汗。そしてボロから見えるアザだらけの手足。
「昨日溝掃除をして食いモン貰ったんだ、そしたらどっかのオッさんがウリュのを取り上げ蹴っ飛ばした。腹を蹴られた後から動けなくなったんだ」
くっ、幼気な子供の労働の対価を横取りした上暴力を振るうとは、見つけたら抹殺してやる。
「ちょっとお姉さんに見せてね」
ざっと見た感じ肋骨が折れてそうだし、内臓もやられてるかも。
「アレクス君、ウリュ君の怪我は薬草じゃ治らない、だから魔「そんなっ」」
悲壮な顔で私を見上げるアレクス君。アレクス君の両肩に手を置き安心させる様に微笑む。
「大丈夫、今から回復魔法を使うから、ウリュ君はちゃんと治るよ」
「ホント?ほんとに治る?」
「ええ、だからちょっと待っててね」
アレクス君を脇に移動させ、ウリュ君の前に跪く。
「ウリュ君、直ぐに治して楽にしてあげるから」
こっちを見て小さく頷くウリュ君。あまりの痛々しさに涙が出そうだ。さあ、完璧に治療してあげよう。
「《特級回復》」
《上級回復》でも治ったかもしれないがここは憂いを残さぬ為特級を使用しておく、ただしヒール系は怪我の治癒なので敗血症とか病気には効かない、なのでさらに。
「《病気治療》」
淡い光がウリュ君を包み込みキラキラと散りながら消えてゆく。痛みが治まったのか苦しそうな表情がとれた。ただこの2つの魔法じゃ流した血と体力は戻らない。
「あ、ありが、と…おね、ちゃ……」
か細く力のないウリュ君の礼の言葉を聴き、頷きながらそっと頭を撫でる。(ケモ耳に触りたいからじゃないからねっ)汗で張り付いた灰色の髪は血と泥で汚れていた。
「よかった、ウリュ、よかった……」
隣にいたアレクス君の身体がぐらりと揺れる。サッと手を差し出し支えたがそのまま崩れ落ちるように気を失った。彼も必死だったのだろう。身体中に擦り傷をつくり泥で汚れて、薬草を探してはいずり回ったに違いない。ウリュ君の横にアレクス君を寝かせ、彼にも《上級回復》と《病気治療》を念のためかけておく。インベントリから毛布を出して二人にかける。
さて、この後どうするか。
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エルはショタではありません。ケモ耳LOVEなだけです。
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