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3章 ウェイシア王国に来ました
4話 アレクスとウリュ
しおりを挟む眠る二人を見ていると頬が緩み手がワキワキ…ダメダメ、疲れてるんだから今は眠らせてあげよう。
改めて周りを見るが生活用品っぽいものは何もない。ボロい壁は今にも崩れそうなので《ストーンウォール》で補強し隙間風を防ぐ。床板は剥がしたのかむき出しの土でかなりボコボコしている。のでこれも《クレイコントロール》で一画を綺麗にならす。そこにインベントリから角熊の毛皮を取り出して床に広げた。ボロ布より柔らかく暖かいだろう。起こさないよう《重力制御》でそおっとそおっと運ぼうとしたら軽すぎて浮きそうになった。ろくに食べれてないんだろう。
ウェイシア王国はオルフェリアよりは暖かいけど冬はどうしてたんだろうか。身を寄せ合い暖をとる二人の幻が過ぎった。クッ。
今は春の第二月(4月)、夜はそれなりに冷える。《ウィンドバリア》で結界をはりつつ温度をあげとこう。
インベントリから魔道コンロと鍋を出す。肉系で栄養をと、思うがあまり食べてない胃にガッツリ系は負担がかかる。角猪の骨で出汁をとりつつ角兎肉をミンチにし、ハーブを刻んで肉団子を作る。鍋には米と乾燥野菜を刻んで一緒に煮込む。起きたら仕上げをしよう。
結界の所為で外の音は聞こえない。鍋がたてるコトコトという音と、二人の寝息だけだ。
「…う、……た……」
起きたのかなと振り返るが、二人とも眠っていた。
「…ん、やだ、そんな…したくな…やめ……」
アレクス君がうなされている様なのでそっと額を撫で前髪をかきあげる。う、ケモ耳がすぐ近くに……あ。
ぱちっと眼を開けたアレクス君。
「触るなっ……え、あ」
突然起き上がり手を払いのけられた。だがアレクス君は寝ぼけて今の状況が理解できていないのか戸惑う様子を見せる
「あ…れ?」
「どしたの?アレクちゅ?」
アレクス君の声でウリュ君も目が覚めた様だ。アレクス君は眼をパチパチ瞬いて私の顔を観て、周りを観てまた私の方を見る。
「二人とも目が覚めたみたいだね、お腹すいてるでしょ、一緒にご飯食べようか」
辺りにに鍋から上がる匂いが漂っている。
ぎゅ~、ぐるりゅりゅ~~
激しい音になんか塔にいた時のことを思い出した。お腹が空くって悲しいよね。
鍋の蓋を開け出汁用の骨を取り出して肉団子を入れてから蓋をする。コッコ鳥の卵ふたつとお深皿、スプーンを出す。肉団子が煮えた頃を見計らって溶き卵を回しかけ火を止め余熱で卵に火が通るのを待つ。振り向くと二人は固まった様に動かず鍋を見ていたあ、アレクス君よだれ。
もういいかな?ゆっくりかき回すと卵に火か通ってる。米はグズグズに蕩けていい感じ。アレクス君には肉団子のまま、ウリュ君には潰して混ぜて木の深皿によそう。早速役立つ器たち。スプーンをつけて二人に差し出すが二人とも動かない。
「熱いから気をつけてね」
「食べて、いいの?」
「二人が食べないと食べきれないよ、私一人じゃ余っちゃう」
ニッコリ笑って二人の手元に持っていくと恐々受け取った。
「ウリュ君はお腹のこともあるからゆっくり食べるんだよ」
二人は深皿を受け取りスプーンを持った。先に口にしたのはアレクス君から
「アチアチアッツ」
「アレクちゅ、オネーちゃんが『熱いよ』っておちえてくれたのに…」
「だって、だってよぉ」
「おかわりあるから、遠慮しないで食べてね」
ウリュ君はふーふーしてから一口ほおばる、ううう、かわええ。
「おいち、あったかい、あったかいご飯食べるの久ちぶりでちゅ」
くっ、思わず顔を背けてしまった、涙を見られたくなくて。こんな可愛いケモ耳を誰がこんな目に合わせたぁ、この世には神も仏もないのかぁ!
もう、心配ないからねオネーさんがなんとかするから。うん、絶対。
自分の分をよそって食べようと思ったらアレクスの深皿が空になっていた。手を差し出し
「おかわりいる?」
と、たずねると、ブンブンと音がしそうな勢いで頷く。ウリュ君が1杯食べる間にアレクス君は3杯食べた。ウリュ君はおかわりは半分でお腹イッパイという。オジヤは綺麗になくなった。
外はすっかり暗くなったが二人が寝ている間に《ライト》を灯しておいたのでふだんより明るいと思う。この部屋に灯りらしきものは無いし崩れ掛けた木造の小屋では火は焚けないだろうから。
ウリュ君は食べる間座っていただけで疲れた様子なのですぐ毛皮の上に横になるよう促す。
「これオネーちゃんの?」
「ん、遠慮しないで使って。寒かったら他にもあるから」
フルフルと首を振る。
「あったかいでちゅ、ありが、とう…オネーちゃん……」
睡魔に勝てずウリュ君は眠りに落ちた。アレクス君も眠そうだ。
「ウリュ助けてくれてありがと。オレ、オレ…」
二人とも心体共に消耗してるし、連れて帰りたいけど知らない場所じゃ落ち着かないかも。今日は動かさない方がいいかもしれないな。帰りたく無いけどレイディの様子も見てこないと。一応結界張りなおし、明日また来るかな。
「アレクス君も寝ていいよ、明日また来るけどウリュ君は無理しないで休んでるように言ってね」
「う、ん…ありが…」
すー、すーと二人の寝息が聞こえる。毛布を掛けなおしそっと部屋を出、《ライト》を消しもう一度《ウインドバリア》を掛け直す。これで明日の朝まで冷えることはないだろう。後ろ髪引かれるとはこのことか。ついなんども振り返ってしまった。
さあ、宿に戻ってレイディにご飯あげなきゃ。まってるだろうな、拗ねてるかも。
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今週分予約投稿済み、バンザーイ\(≧∇≦)/
ケモ耳は筆が進む♡
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