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5章 嵐は…
25話 嵐は去る
しおりを挟む「2人に話したいことがあるの」
いつもと違って真剣な感じの私の雰囲気を察したのか、2人は背筋を伸ばして椅子に座りなおす。
じっと真剣にこちらを見る2人と私をママンは微笑みながらカップのふち越しに見ている。
私は姿変えの指輪を外す。一瞬で髪は銀色に、瞳はママンと同じアメジスト色に戻る。
「私、家出同然で出て来たから追いかけて来られても分かりにくいように変装してたの。この指輪で」
「すっげー」
アレクス君は単純に魔法に感嘆していた。ウリュ君は視線をママンに向ける。
「父の部下とかだったら誤魔化せたと思うけど、まさかリッサ…お母様が来るとは思わなくて、家族なら色を変えても無理だわ」
「ちょれが話ちでちゅか?見た目が違ってもオネーちゃんはオネーちゃんでちゅ」
「変えられるならオレもやってみたい」
見た目などどうでもいいみたいな2人に苦笑が漏れる。
「それだけじゃなくて…エルと言うのは…まあ愛称みたいなもので。本当の名前はエレーニア=アリア=ディヴァンと言うの。隣のオルフェリア王国の貴族でお父様は侯爵なの」
2人はしばし黙り込む。
「…げー」
「え?」
「すっげー、じゃあ、じゃあさ、リッサ姉はこーしゃくふじん?って言うの?でもさ『ショウカン』に来てた『奥様』にもそんな人いたけど全然違うぞ、エル姉は『おじょーさま』ってやつ?兄様の常連でさ、『おじょーさま』って言うのがいたんだ、オレ嫌いだった。いっつも見下した目で見るもん。でもさエル姉全然違うぞ、店主は『絶対逆らうな、粗相のないように』って言うんだよ」
アレクス君の貴族知識は娼館時代のものだけのようです。貴族=上客、でしかないようです。
しかし貴族令嬢が娼館の常連って、やっぱり帝国腐ってるなあ。
「ちゃっきも言いまちたがオネーちゃんはオネーちゃんでちゅ。僕をたちゅけてくれたのはオネーちゃんで、ちょれだけでちゅ。貴ぢょくだといっちょにいたいと思うのは駄目でちゅか?」
2人の言葉にびっくりするやら嬉しいやらで
「おほほほほ、そうね。貴族だから偉いのではないですわ。何をしたか、何を成したかが人の価値を決めるのですもの。生まれなど、たまたまそこに生まれたと言う人間の本質とは関係ないもの」
ママンがウリュ君の頭を撫でると、くすぐったそうにめを細める。
「まあアレクスはもう少し世間というものを学ぶ必要がありそうですわ」
言われても訳が分からず『へ?』という顔をするアレクス君。
「貴方達、これからもエレーニアを助けてあげてちょうだい。わたくしが国に帰った後もお願いね」
「え?リッサ姉帰っちゃうの?」
「そろそろ帰らないと、泣きながら追いかけて来そうな夫がいるの。それはそれで鬱陶しいのよ。
貴方達もエレーニアと共に色々な所に行って、見て、学ぶといいですわ。それは貴方達の力となるでしょうから。特にアレクス、貴方はわたくしの弟子でもあるのですから、次に会う時にはしっかり成長した姿を見せてちょうだい」
「弟子、オレリッサ姉の弟子」
「そうよ、鞭使いを教えて差し上げたでしょう」
「だったら僕も棒術おちえてもらったでちゅ」
「そうね、貴方もわたくしの弟子ですわ」
ママンは私の方を向く。
「2年よ。2年後成長した貴方達をわたくしに見せてちょうだい。あ、でも手紙はマメによこしなさい。出ないとキースが泣きながら追いかけて来るわよ」
…パパンってそんな人だったかな?
「じゃあ月イチ「週イチよ、出ないと流石のわたくしでも抑えられなくてよ」わかりました、努力します」
「一行、いえ一言でもいいの、元気にしていると分かればあの人も…まあなんとか」
少し遠い目をするママン、珍しい。
「オレもリッサ姉に手紙書く」
その言葉にニッコリするママン。
「嬉しいわ、じゃあもっと字の練習もしてちょうだいね」
「あ、うん、がんばる」
その日の午後、ママンとカルラは出発することになった。
目一杯拡張したマジックバックにクレイゴーレムの泥とケイブタートルの肉(肉に直接時間遅延の魔法をかけて腐らないようにした)を入れたものを渡す。それとパパンへの手紙と一枚の魔法陣が描かれた角羊皮紙(紙よりかなり丈夫)
「これ、転送魔法陣が書いてあるの。私の持つ対の魔法陣から一方方向だけど手紙程度のものなら送れるから。これなら速文屋が無くとも手紙が遅れるわ。ただし広げておいてくれないと送れないからどこか人目につかない所に設置してね」
ママンは受け取った魔法陣をクルクルと巻きながら
「あら、一方方向なの、相互には出来ないのかしら」
「これはそういう風に作ってないから。それに私の方は常に魔法陣を広げてられないもの。まあそのうち考えるわ」
本当は簡単にできるのだが通信可能となったらうるさいだろうとしなかった。ママンには読まれてそうだ。
「カルラ、乗せてくれてありがとな、元気でな」
アレクス君がカルラと別れを惜しんでます。ウリュ君はいつも私とレイディに乗っていたのでアレクス君ほども愛着がないかも。
「道中気をつけて」
「貴女も精進しなさい」
「ありがとうごぢゃいまちた」
「リッサ姉、ありがとう」
「ふふふ、それはエルを連れ帰らないことに対する礼かしら」
このひと、絶対ダンジョンの夜営中の私達の話聴いてたな。
こっちをちらりと見てフッと口角をあげる。
「では失礼するわ、ご機嫌よう」
ママンを乗せたカルラはしばらく駆けてから飛び立っていった。
こうして嵐は去って行った。
第5章ー終ー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
乙女ゲームの面々のお話を別に投稿します。こぼれ話的なものなので短いですが。
気がむいたらのぞいて見てください。読まなくとも本編には影響しません。
【その頃の面々(番外・乙女ゲームか悪役令嬢転生ラノベの世界に転生?したようだが…)】という題で今日の16時投稿予定です。こっちの次話は章末オマケなので6章はまだです。
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