最弱勇者のギリギリライフ

奇妙な海老

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最弱勇者と戦争

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カグラとマナーがとあるマジシャンと料理を食べている時、シェイミーは街を全力疾走していた。

「住民の皆さん!各自、地下室に避難してください!地下室がない方は宿のほうへ!」

出来る限りの大声で叫ぶ。
人の多い街中では乗用車を使うことが出来ず、仕方なく自分の足で走る形になってしまう。
それもこの広大なアルティカーナ。この街を叫びながら回るのは不可能だった。
しかし、他の兵隊が迎撃に入っている以上、唯一兵隊ではなく、軍に関わっているシェイミーは一人で住民を避難させなければならない。
こんな無理難題、普通の少女にできるはずがなかった。

しかし、シェイミー・アルバレアはその限りではない。

「よし…ここならっ!」

街の中でも特に広い公園に出る。
そこでシェイミーは何やら術式を唱え始めた。

「超広範囲出音術式…■■■■■」

どうにも聞き取れないその発音に、僅かに出現した魔方陣は、シェイミーの声に合わせて巨大化していく。
そして魔方陣が超弩級大術式に変化したとき、今だ! と言わんばかりにシェイミーが空に向かって口を開いた。

「……住民の皆さん!只今、アルティカーナ要塞にて戦闘がおこっております!敵がいつ侵入してくるか分かりません!自宅に地下がある方はそこへ避難に!ない方は近くの宿に避難してください!!!」

その声似合わせて魔方陣が反応する。
すると今叫んだシェイミーと声は魔方陣を通り抜け、大音響と化した叫び声が街中を駆け巡った。
人々に響き渡る避難を呼び掛ける声。
暫くすると住民達が混乱しながら家から出てきた。どうやら宿に行くようだ。
もともと街中に放送を届かせる為に作られた物。おそらくもうアルティカーナすべての住民に聞こえていることだろう。
シェイミーはそう考えると急いでアルティカーナ要塞の応援に向かった。

しかし、もう少し街を回ってみれば、気づいたかもしれない。
ほんの僅かに声の届かない場所があった。

それは街の端にあった。
ぼろぼろの飲食店。
《桜花》







「はあぁぁぁぁあ!?戦争ー!?」

銃や、魔法の音に負けじと大きな声が響き渡る。
紛れもない俺の声だ。

「そうですよ!戦争!避難を呼び掛ける放送聞かなかったんですか!?」

「そんな放送全く聞こえなかったですよ!?」

「お、おかしい……それはおかしい。あの声がきこえない場所なんてあるわけなじゃないですか!あれが聞こえない場所なんてそれこそ虫みたいに建物の物陰に隠れている物達くらいしかないですよ!」

「俺達のいたところは虫のいる場所と同義だったのか……!」

「いや、もう今はそんなことどうだっていいのでとりあえず宿に避難してください!」

「宿が全部満員だったんですよおぉぉぉぉぉお!!!」

「えっ……ええぇぇぇぇぇぇ!?」

多分もう住民が皆避難したせいだろう。
リッカだってその事があるからしょうがなく俺達についてきているのだ。

「あぁ!今はそんなこともうどうだっていい!まずはこの方達を……」

その時、要塞の方から大爆音が聞こえた。
まるで何か壁の様なものが破壊されたような音が。
すると要塞の中から厳つい銃を持った兵隊が此方に駆けてきた。

「シェ、シェイミー様!第一防壁が突破されました!」

目を見開いた兵隊の様子はとても冗談を言っているとは思えなかった。

「えぇぇぇぇ!?嘘!だって敵は個が強いとしても所詮は寄せ集めの小兵団!
この要塞が突破されるわけが__」

そして、シェイミーは気づいた。
隣国、アダラクトスの存在に。

「まさか!?」

「はい!アダラクトスが戦争に気づいて我々に攻撃してきました!おそらく、敵がアダラクトスに攻撃をし、攻撃を受けたアダラクトスは隣国のアルティカーナによるものだと勘違いして進行してきたのかと思われます!」

「んなアホな!!お父さんは!?アダラクトスの科学力はアルティカーナを凌駕しています!兵器が出てきたら魔法でしか対抗できません!」

シェイミーの言う通り、アダラクトスは基本的に化学兵器を駆使して戦争をけしかけてくる。
対して五大都市の一つであるアルティカーナを保有している大国シドラクトは銃などの武器もあるにはあるが、アダラクトスの完全劣化だ。科学では勝ち目がない。
しかし、シドラクトは魔法の力が他の国より特化していた。
アダラクトスとは比べ物にならないほど。

「総大将はまだ来ていないようです!」

「仕方ない!冒険者登録所に連絡しなさい!」

「は!?」

「冒険者を加勢に寄越しなさいと言っているのです!!早くしろっ!!」

「は、はいっ!」

「こ、これが軍人……」

シェイミーの凄まじい剣幕に後ろのリッカが怯んだ。
小さな少女が発する軍人のオーラに気圧されているのだろう。

無論俺もシェイミーのこんな顔は始めて見た。
涙が出てきた。恐ろしい。

「うぇ……か、かぐらぁ」

「ま、まなぁ……」

「ちょ……僕を一人にしないでよ……」

こんなことをしていると、シェイミーが話しかけてきた。

「カグラさんも冒険者でしょう!」

「い、いやぁ……実はまだ登録してなくて」

「あぁもうそう言うの良いですから。早く加勢に行ってきなさい!マナーちゃんもです!」

「「は、はいぃ……」」

「じゃ、僕は大人しく避難に……」

「おい待て、あなた、戦えますね?」

「え」

「隠しているようにも見えますが、しっかり付いていますよ。銃」

「ありゃ」

ここですかさず俺は解析レンズを使用する。

_____

リッカ・アラマチルダ

Level:32

HP:750
MP:300

攻撃力:54
筋力:36
防御力:58
魔力:150
魔防:58
素早さ:80
技:120
幸運:58

武器:魔道銃
防具:道化師の服


_____


「へぇ……魔法特化のスナイパーか」

《自由な世界》にはステータスに○○特化と言うものが存在する。
まぁネットで勝手にそう言われているだけだが。

例えばシェイミーの場合は技、素早さに特化した剣士型だ。マナーも技素早さ特化だがシェイミーはそれに加えて全体のステータスがバランスよく上がっていくのに対してマナーは攻撃力以外は極端に成長が遅い。
技、素早さ特化で攻撃力も成長すると言うことは割と珍しいアサシン型だ。
ちなみに攻撃力に補正がなく魔力が成長する変わった技素早さ特化は忍者型と呼ばれる。
俺は最弱勇者型。バカな。

そして俺の目の前にいるリッカは、魔力、素早さ特化で、同時に技にも補正がかっている。
遠くから高い技量で遠距離魔法を使用するスナイパー型だ。

「シェイミー様!敵がアルティカーナに入ってきてしまいます!」

「冒険者の応援はまだか!」

「もうじきやって来るものかと思われます!」

「それまで耐えきれっ!情報部にお父さんを連れてこさせろ!!」

「はっ!」

「さぁ行きますよ皆さん!魔物と科学の軍勢を押さえつけに!」

「「「了解……」」」

夜0時を回る頃か。
ここに来てもうすぐ六日目。

そろそろ本格的に命の危険がやって来ました。







凄まじい発光とともに仲間を貫いていく魔法。
凄まじい爆音とともに仲間を弾けさせる科学。
アダラクトスを巻き込んでアルティカーナ要塞を潰してもらう作戦は、それなりに成功し、アルティカーナ要塞はかなり慌てているように見える。
おそらくアダラクトスが攻撃してくるとは思わなかったのだろう。
段々とアルティカーナ要塞は押されている。

しかし、しかしだ。
元々小兵団級の戦闘力しか持っていなかった魔物の軍勢は、二つの大国に挟まれて壊滅の危機にあった。
片や魔法のプロフェッショナル、大国シドラクト。
片や科学の最先端、大国アダラクトス。

勝ち目など無かった。

「大将!かなりまずいです!」

「何がだ!」

「まじ五大都市ヤバイっす!魔物と科学に押されているのにまだ落ちません!科学の方だってこの軍勢でもまだ第一部隊でしかないみたいっす!他にも第二部隊第三部隊と……あわわわわ」

「えぇい落ち着け!あれはまだか!」

「もうすぐだそうっす!それまで耐えろと!」

「早くしろ早くしろ早くしろ早くしろ早くしろ早くしろぉ!!!」

「はっ、はいぃっ!!!」

魔物の大将は待っていた。
この状態を打開することのできる強力な力を。

「早く召喚しろ!黒竜バーシバルを!!!」







要塞の外はかなり混沌としていた。
嗅覚は科学の薬品のような臭いと魔物の獣臭い臭いで埋め尽くされ全く機能しておらず、視覚もそのSF映画のワンシーンのような光景にどこに目を向ければ良いか分からなかった。

「カグラさんっ!」

「は、はいっ!」

「敵が此方に気づいたようです!注意してください!」

その時、上空に黒い穴のようなものが現れた。
その光景に唖然とし、しばらく動けなかったが、中からなにかが出てくることで話が変わった。

「来ました。他の魔物とは比べ物にならないほどの気配があります」

「ま、マジか……」

ゴゴゴゴゴと聞こえてきそうな穴の中から、恐ろしい何かが歩いてくる。
それは長い無精髭を生やした男だった。
巨大なマントを棚引かせながら歩いてくる姿は威圧感が凄まじく、身に付けている黒い鎧も呪いかなんかで固めてそうなほど禍々しい力を持っていた。

「アルティカーナ要塞の総大将は誰だ!この戦況を覆すため我が直々に来てやったのだ!早く出さんと許さんぞ!」

意味わからん自論を展開する敵方。
すると横にいたシェイミーが、いっぱいの息を吸って名乗りを上げた。

「私がこのアルティカーナ要塞の総大将です!私が相手をして差し上げましょう!」

すると何の躊躇いもなくお決まりの台詞を吐いた。

「はっ!貴様のような小娘にこの軍の大将が勤まるわけがないだろう!本物を出せ!怖じ気づいて逃げたか?」

「くっ!」

シェイミーは自分の父親がバカにされたことに火がついたのか長い赤色のポニーテールに本当に火がついた。

「ならば実際に戦ってみて考えると良いでしょう!」

シェイミーは服の裏側から剣を抜いた。
あの服の裏側どうなってんだ。

「良かろう!ならば相手してやろう小娘ぇ!」

そう言うと男の方もマントの裏側から巨大な剣を抜きシェイミーに向けた。

「我が名は魔軍の総大将マガラ・グラズストーン!人間を滅されかけた魔物の生き残りだぁ!!」

「ならば今度こそ最後まで滅ぼして差し上げましょう!私はシェイミー・アルバレア!人間最強の娘だあ!」

魔物と人間の大将同士の戦いが切って落とされた。

「まぁ大将って言っても臨時だけどね~」

「心を読むな」







しばらくシェイミーの戦いを観戦していこうかと思ったが、いかんせん敵が多くまったく集中できなかったので、俺以外の連中は仕方なく他の敵に攻撃を仕掛けていた。





そう、俺以外。

「おぉ……無理無理無理スライムはマジで無理死ぬ死んでしまいます……」

「……君さぁ……はぁ」

リッカやマナーが奮闘している最中、俺は大きな岩に隠れて踞っていた。
リッカはどこから出したのか腰についている物よりより巨大な銃を掲げ並み居る魔物達に撃ちまくっている。
マナーはナイフで切り刻み、その優秀な素早さで攻撃を一度も食らっいないようだった。

するとリッカがいきなり顔を驚愕に染め横へずれた。
その瞬間、岩の上半分が消し飛び、俺の頭上に凄まじい威力の光線がとんだ。

「うぎゃあぁぁぁぁぁぁあ!?」

「あぁもう!うるさい!ちょっと黙ってなよ!全く照準が合わないじゃん!」

「うるせぇ!ラッキーエンジェルがあったって俺は二発で死ぬんだぞ!落ち着いていられるか!」

「意味わかんないこと言ってないで君も戦いなよ!僕が死んじゃうよ!」

「さっきから爆弾投げてるだろうが!」

「こんな状況で分かるか!」

確かに俺の投げている爆弾の行方はこの状況では全く分からなかった。
敵味方関係なく爆発しているのだ。分かるわけがない。

「カグラ!危ない!」

「え?」

するとマナーが子供とは思えない速度で走ってきた。

「ふっ!」

「ガッ!?」

すぐさま俺の横に視線を写してみると体から血を吹き出した魔物がいた。
敵はしばらく悶えていたがやがて力尽きたのかその場に倒れ黒い霧を纏って消えてしまった。
本当にこんな風に死ぬんだ……

「カグラ大丈夫?」

「あ、ああ。助かった」

「うぉお……早いねぇ……鉄砲の玉も切れそうだ」

マナーの素早さに感嘆するリッカ。
するとアダラクトスの兵士から銃弾が飛んできた。

「さすがに無理」

マナーはそう言って弾を顔を反らして避けた。
何がさすがに無理だ。最早人じゃねぇ反応速度だよ。ユニークスキルでもついてんじゃねぇのか。
するとシェイミーの方から何か大きな声が聞こえてきた。

「ぐっ!なかなかやるではないか!おい!召喚はまだ終わらんのか!」

「ぐっ!なかなかやるじゃないですか!諜報隊!お父さんはまだ来ないんですか!」

「「まだです!!」」

「「ちいぃぃぃ!!」」

どうやら二つの勢力の最終兵器はまだ来ていないようだ。
まだまだ戦いは長引きそうだと思っていたところ、上空から奴は現れた。

『そこをどけ雑魚共が』

「「あぁ?」」

『アルティカーナと魔物の総大将は何処だ?まとめて殲滅してくれる』

「な、なんだあれ……」

「カグラ……」

巨大な鉄の翼を携えた巨大な戦闘機。
近未来のデザインに翼から飛び出る神々しい光。

「あ、あれはアダラクトスの飛行兵器 《シュバルツ》……アダラクトスの戦闘兵器だ……」

あぁ……成る程ね……
最初に兵器が到着したのはアダラクトスの方だったみたいだ……
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