恋愛経験ゼロの俺が、一目惚れした天使にストーカーと勘違いされた挙句、男女比1対9のハーレム・シェアハウスで一緒に住むことになった話

永遠光(とわのひかり)

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第3章 揺れる想い

第78話 初デート(沙織編)

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 夏の日差しが降り注ぐ8月初旬のある日。
 横浜駅西口へ向かって歩いていた祐希は、待ち合わせ場所に沙織の姿を見つけ、思わず足を止めた。

 胸のラインがくっきりと分かる白のハイネック・ノースリーブに、太腿が眩しい赤いミニスカート姿の沙織は、その場を通りかかる男性全員が振り返るほど、一際ひときわ目を引いていた。

 (沙織って、あんなにいい女だったのか……)

 栗色のサラサラで長い髪、きめ細かな白い肌、化粧して着飾った沙織は傍目はために見てもかなりハイレベルな美女だ。

 人混みを縫って歩いていくと沙織がこちらに気付き、爽やかな笑顔で手を振った。

「せんぱ~い。遅いですよ~」

「でも、バスの時間、まだなんだろ?」

 祐希は平静を装っていたが、沙織の美貌とスタイルの良さに内心ドキドキだった。

「はい、まだ余裕ありますよ。 
 これチケットです。なくさないで下さいね」

「……ああ、サンキュ」

 渡されたのは、富士ハイランドリゾート行きの高速バスチケットだった。
「デートの場所は私が決めます」と宣言され、有無を言わさず沙織が決定した行先だ。
 言うなれば罰ゲームのようなデートで、費用は全て祐希が持つ約束だ。
「これは単なる予定の消化だ」と自分に言い聞かせ、祐希はバスに乗り込んだ。

 高速バスは横浜駅を出発し、首都高に入った頃。
 沙織がバッグから可愛らしいランチボックスを取り出した。

「先輩、朝ごはん食べてないですよね?
 よかったら、これ食べません?……」

 沙織が差し出したランチボックスには、彩り豊かな手作りサンドイッチがぎっしりと詰まっていた。
 ハムとレタス、厚焼き卵、そしてフルーツサンド。
 パンの耳はきれいに切り落とされ、具材の断面も美しい。
 コンビニとはレベルが違う、本格的なクオリティだった。

「これ……沙織が作ったのか?」

「はい。先輩のために、朝4時起きで頑張りました」

 沙織は悪戯っぽく微笑むと、卵サンドを一つ摘まみ、祐希の口元に差し出した。

「はい、あ~ん」

「い、いいよ自分で食べるから!」

「ダメです。
 先輩の手が汚れちゃうじゃないですか。
 いいから、大人しく私の愛を受け取ってください」

 周囲の目もあり、祐希は観念して沙織の手からサンドイッチを食べたが、なかなかに美味い。
 パンはふわふわで、マヨネーズとマスタードのバランスも絶妙だ。料理の腕は相当なものだ。

「どうですか?」

「……うまいよ。沙織、意外と女子力高いんだな」

「せんぱい、意外は余計ですよ。
 私、将来の旦那様のために花嫁修業中なんですから……」

 沙織は祐希を見つめ、嬉しそうに微笑むと、次々とサンドイッチを勧めてきた。
 胃袋を掴む、これも彼女の計算の一つなのだろう。
 一通り食べ終わると、沙織は小さくアクビした。

「ふぁ……。早起きしたから、眠くなっちゃいましたぁ……」

 沙織は躊躇なく祐希の肩に頭を預け、身体を密着させてきた。
 ノースリーブの露出した肌から伝わる体温と、甘い香水の香りが祐希の鼻腔を刺激した。
 早起きしてサンドイッチを作ってくれたその健気さを考えると、邪険にすることもできない。
 逃げ場のないバスの中で、祐希は到着までの2時間弱、沙織に翻弄され続けた。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 バスは定刻通り、富士ハイランドリゾートのバスターミナルに到着した。
 目の前には巨大なジェットコースターのレールが空を切り裂くように走っていた。

「先輩、フリーパスチケット2枚。お願いしますね♡」

「……はいはい」

 入園ゲートの窓口で、祐希は大人2名分のフリーパス代金を支払った。
 ゲートをくぐり、2人はパーク内へと足を踏み入れた。

「先輩、あれ乗りましょう! 『FUGAKU』!」

「怖いけど乗ってみたい」と、沙織は好奇心と恐怖が入り混じったような表情で腕を引いてくる。
 そのあざとい態度の裏には「怖がって抱きつきたい」という可愛らしい下心が見え隠れしていた。
 当然、祐希もそれに気付かないほど鈍感ではない。
 だが、これだけの美女に「守ってほしい」と頼られて、悪い気がするはずもなかった。
 祐希は彼女の計算を分かった上で、あえてその策に乗ることにした。

 さらに、世界最大級のお化け屋敷『絶叫迷宮』では、その密着度は限界を超えた。

「きゃっ! 怖いです先輩、待って!」

 暗闇に乗じて、沙織が背後から抱きついてくる。
 豊かな胸の感触が、これ見よがしに祐希の背中や腕に押し付けられる。
 演技か本気か分からないその悲鳴と吐息に、祐希の理性は確実に削られていった。

 昼食のベンチで、沙織はソフトクリームを舐めながら、上目遣いで祐希を見た。

「さくらさんじゃ、こういう刺激的なデートは無理ですよね?」

「……さくらは関係ないだろ」

「ふふ、そうですね」

 沙織は余裕たっぷりに微笑んだ。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 夕方になり、時計は午後4時を回っていた。
「そろそろバスの時間だ。沙織、帰るぞ」

 祐希が切り出すと、沙織は足を止め、にっこり微笑んだ。

「え~? 帰りませんよ。
 だって、ホテル予約してあるんですから……」

「は?」

 沙織は、パークに隣接する『富士ハイランドリゾートホテル&スパ』を指さした。

「泊まるなんて聞いてないぞ!」

「あれ、LINKでメッセージ届いてないですか?」
 沙織は白々しく驚いてみせた。

「あ、あれ!?
 送信し忘れてました……
 てへ……」
 沙織の奥義『てへぺろ』が炸裂した。

 これはおそらく、沙織の計画的な犯行だろう。
 LINKのメッセージ送信忘れも、おそらく故意だ。

「ほらぁ、せんぱい……予約になってるでしょ」
 沙織は涼しい顔でスマホの画面を見せた。
 それはホテル予約サイトの完了メールだった。

「しかもこれ、カードで支払い済みなんです。
 お盆だから、ホテル代安くなかったんですよ」

「そんなこと言ったって、どうするんだよ……!?」

「当日キャンセルは返金不可なんですから。
 ねえ、せんぱい……お願いだから泊まっていきましょうよぉ」
 沙織は甘えた声で、祐希の首に腕を回して懇願した。

 さらに沙織は、例の画像をチラつかせた。
 葉山のホテルで撮った「添い寝写真」だ。

「もし、このまま帰ったら……
 契約不履行で、この写真、今すぐシェアハウスのみんなに送っちゃいますけど……いいんですかぁ?
 さくらさん、泣いちゃうかも……」

「沙織……汚いぞ!」

「せんぱい……これは取引ですから……
 誤解しないで下さいね。
 さあ、チェックインしましょう」

 祐希は渋々、ホテルへの宿泊を承諾した。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 チェックインを済ませ、ホテル内のレストランで夕食をとった。
 その後、沙織は「宿泊者は無料なんですから、入らないと損ですよ!」と、隣接する『天空スパ』へ祐希を連れ出した。

 男女別の大浴場。
 広い湯船に一人漬かりながら、祐希は大きく息を吐いた。

(ふぅ……。まあ、部屋はツインだし、温泉に入って寝るだけなら問題ないか……)

 温泉のリラックス効果で、張り詰めていた祐希の警戒心は完全に緩んでいた。

 風呂上がりの待ち合わせ場所に現れた沙織は、温泉の効果で肌が上気し、艶っぽさが倍増していた。

「温泉、気持ちよかったですね~、せんぱい」
 沙織のほのかに赤みを帯びたうなじに、祐希はつい見入ってしまった。
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