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悪役令嬢が婚約破棄しようとするのは当然です
002 計画的婚約破棄
しおりを挟む二
「それで、昨日のことですが……」
「え、それだけ?聞かないの、昨日何をしていたか?」
「聞いても無駄というとこはわかりきっていますからね。もう諦めてますよ」
「今日のルシは話しわかるね」
小馬鹿にした様子で私は笑う。いつもなら私の主張に反駁をし、終わるまで待つ展開が続くけど、今日はそれがないようだ。でも、私は同時に不安な気持ちになった。
「聞かせて」
「はい、国の方針を決める大事な会議、軍国会議がありました。その内容についてです」
「あったことは知っているの。わざわざ、朝から来るってことは、内容が私に関係あるってことよね」
「見抜いていらっしゃいましたか、その通りです。軍国会議において予算、税、皇子の婚約者の3つが議題に上がりました。そこで、婚約者にお嬢様が選ばれました」
遂に、この日が……。半年前、姉が婚約に行ったことでうすうす勘づいていた。もうすぐ、なのだと。
けれど、ニヶ月前から考えが変わった。どうすれば回避できるのか、闇雲に反対しても意味はない、ここでまず味方にするべき人物。
「ルシ、どっちの立場なの?」
「旦那様が決めたです。本来なら異論はないはず、ですが、後に起こる面倒事を考えると私はお嬢様側に付きます」
「よくわかってんじゃん、ルシ」
「まだまだ新入りですが、長いことお嬢様と関わってましたから。あの表情、嘘ではないと誰が見ても理解出来ます」
「ふふ、ありがと」
何度も何度も繰り返した喧嘩、価値はあったようだ。普段もこうであれば楽なのに。
「よし、じゃあ婚約破棄計画について、話し合いを始めましょうか」
「はい、まずですが、今の現状を確認するとしましょう。現在、旦那様のお決めによって、お嬢様と皇子様を婚約をしています。お嬢様はそれを破棄したいということで宜しいですか」
「うん、宜しいです」
ふざけた様子でいる私に呆れたのか、ルシは何も反応もせず続けた。
「では、私はまず、旦那様を説得するのが良いかと」
「私もまずはそれを考えたけど、何日も旅行するとか言っていたし、会うのを避けてると思う」
「婚約破棄の相談をさせない意思が旦那様に見えますね」
「だから、皇子にまずは会ってみようと思うの」
「いいですが、会ってどうするおつもりですか」
「どういう性格か判断して決める。でないと話しにならないと思うから」
「わかりました。それなら、向こう側と話しをつけましょう」
こうして、二日後に皇子と私の面談が始まった。
「ブヒ、ブヒヒヒ」
「あの~、皇子様で合ってますか?」
「当たり前でしよ!皇子様に失礼よ」
甲高い声で侍女と見られる人物が言う。どう見ても尻尾生えてるし、ブヒブヒ言ってるし、豚に見えるのは私だけでしょうか。
侍女が皇子を落ち着かせ、ゆっくりと話し始めた。
「すいません、焦ると、豚が出てきて、しまって」
やっと人が理解できるまでに皇子の口調が変わった。豚が出てくるって何?と思うが、会話はできそうだ。
「今日は相談したいことがありまして……」
「婚約の件、ですよね」
核心をついた議題がいきなり来たことに私はそうですと歩調を合わせた。まぁ、でも、それしか私が来る理由がないし、気づくか。さらに私は一歩進んだ質問をする。
「婚約破棄をしたいのです。今の私には好きな人がおりますし……」
「ハァぁー!逆じゃないのかしら。皇子様が婚約破棄を言うなら納得できますけど、あなたは言える立場じゃないでしょうが!」
「いいんだ、止めてくれ。それで、私にはどうしろと、言うのですか?」
「お父様に打診してほしいのです、婚約破棄の件を。私のお父さんは強制的に結婚をさせるつもりです」
「そうでしたか、私も、突然の婚約に、戸惑いを隠せませんでした。私でそうなら、好きな人がいるあなたの困惑は、より酷いものでしたでしょう。お父様に相談してみたいと思います」
「ですが、皇子様……」
「ありがとうございます!」
話しな割り込もうとする侍女を強引に押し切る。
「こちらで話しは進めていきましょう」
最初はどうなるかと思ったけど、皇子様、意外といい人ポジじゃん。これでもうちょいビジュアルが良ければなぁ。
長いこと喋りすぎてしまった。朝から向かったはずなのに昼過ぎを指す時計に目を丸くする。帰り道、皇子との会話を思い出し笑ってしまった。
思い出し笑いって、少しばかり自分がアホらしくなる。
ガタンゴトン、ガタンゴトン。馬車はリズミカルに気持ち良く揺れていた。帰りの馬車で急な眠気に襲われ、眠ってしまった。
チュン、チュン。鳥のさえずりは朝が来たことを知らせる。もう朝、はやくない?夜までにルシに相談をするつもりだったのに。
コン、コン。ドアの音が聞こえる。私ははーいと返事をした。
「おはようございます、お嬢様。失礼致します。昨日のことで相談があります。」
執事、ルシファーだった。私が起きるのを待っていてくれたのかな。ルシの魅せる優しさに謝らくてはと「ごめん」がまず初めに出る。
「はやくに寝ちゃって。昨日の件で話しをしよっか」
「わかりました。昨日の軍国会議のことですが……」
「何言っての?私が皇子に会った話じゃん」
「そんなことはなかったですよ、お嬢様」
……え……?
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