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第一章 増える黒柴犬
15話 五大魔王
しおりを挟む【乗車】を取得してみた。
重力や力学を僅かに無視して、操縦が安定する能力みたいだった。
自転車の挙動が気持ち悪くて気持ちいい。
石畳の段差を無理やり直進しても、車輪の跳ねが今までより格段に少ない。
生物に乗っても発動しないし、操縦法を教えてくれたり、操縦を代行してくれるわけではないので、対象となる乗り物は限定されるが、俺的にはめっちゃ当たり。
やべえわ。楽しいわ。
普通じゃ無理な速度でコーナーも曲がれてキモくて楽しい。
レーシングカートとか買って乗ろうかなぁ。
黒柴たちも電動三輪を操縦していたが、乗りにくいし遅すぎるって以心伝心を残して見向きもしなくなった。姿勢的にすごく乗りにくそうだったし、まあ気に入らんか。お前ら走るの速いしな。
【乗車】を伸ばしたいんだけど黒柴の説得どうしようかなぁ。
断固として拒否。勝手に取得したら噛むぞって以心伝心してくるんだけど。
犬でも乗りやすい乗り物を何処かに発注するかなぁ。
\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\
ダンジョン発生60日に、とんでもない大事件が勃発した。
五大魔王の1人、インフェルノ・トナティウが、アメリカにテロを仕掛けようとしたのだ。
トナティウは麻薬カルテルの元幹部だと言われているが、真実かどうかは分からない。
トナティウはアステカの太陽神の名前で、つまり偽名だ。彼の所属していたとされる麻薬カルテルは、すでに彼の手で焼却されている。
トナティウの祝福は、自称〔インフェルノLR〕だ。
鉄すら溶かす炎を自在に操り、自らは燃えることがない。
ライフル弾すら、炎のオーラが全力全開だと通さない。
身体に触れた炎を取り込んでMPを補充したり、身体の欠損を治すことも出来る。頭部の損傷すら治してみせた。
これらの能力は、彼自身が公表したわけではない。
従わない麻薬カルテルや警察、政府軍を虐殺する過程で映像に撮られ、分析されたものだった。
何十万人も焼き殺して、彼は魔王の1人と呼ばれるようになった。
現在は太陽国家アステカの建国を宣言して、その支配域を拡大中。
国の真横にやべえやつが登場したアメリカでは、トナティウが更に凶悪になる前に、アメリカに牙を剥く前に先制攻撃すべき、メキシコの民衆を救おうと、メディアを中心にその声が大きくなっていた。
逆にトナティウは、時間が経つほどアメリカの祝福持ちは数を増やして成長し、自分では勝てなくなると認識していた。
どうやらトナティウの祝福は規格外に最初から強いが、レベル上昇による成長率は【R】相当しか無いようだった。
で、今ならやってやれない事はないと、アメリカに侵入して暴れまわろうと計画したのだが、当然のようにアメリカは彼をマークしていた。
傍受した通信を公表して、先制攻撃の正当性を主張。
国内への侵入を阻止すべく、国境を超えて航空戦力を派遣した。
アメリカに向かう乗用車ごと、爆撃されるトナティウ。
千切れ飛んだ腕をカメラがズームで捉える。
親指の指輪は、トナティウの物だ。
しかし超高温の爆炎の中から、トナティウが出現。哄笑を上げる。
映像の中で彼の傷ついた身体は、どんどんと回復していく。
トナティウは、口汚くアメリカ政府を罵り、俺こそが世界の王であり神だと宣言。アメリカ国民に死ぬか奴隷となるか選択しろと宣った。
失ったはずの腕も完全に生えていて、その手で、指で、合衆国の方向を指さした。
他の五大魔王。
彼ら彼女たちも南米やアフリカ、インドで同じようなやり方で頭角を現していた。
そうして魔王と呼ばれるようになったのだ。
そのうちの2人が、リアルタイムの配信で、アメリカを、世界を煽り始めた。
世界中大パニック。
トナティウには液体窒素など冷やす攻撃も通じない。
彼自身がそれを上回る熱量を放出するからだ。
アメリカとの国境まで、50キロ。
戦術核を使うべきだとアメリカのネットがヒステリックになる中。
トナティウは運動エネルギー弾を大量に喰らって普通に死んだ。
戦車の装甲とかぶち抜く系の兵器らしい。
音速を軽く超える速さと硬さが全てで、爆発とかしない。
トナティウは粉微塵になって死んだ。1発目で頭部が消えてたんでその時点で死んでそうだが、沢山喰らって死体も大地も念入りに耕された。何十発撃つん? ってくらいアメリカの対戦車ヘリの群れが耕しました。
ヘリの群れの映像。トナティウより怖いんだが?
配信していた五大魔王の1人はすんとなって無言で配信を終えた。
もう1人の配信していた魔王はそりゃそうだろうと大爆笑。
死んだトナティウを煽りまくっていた。
そりゃそうだよなと俺も思った。
ネットにも「知ってた」って書き込みが溢れた。
正面からじゃ無理だから、秘密裏に侵入して民間人を盾にゲリラ的に暴れまくろうとしてたんだしね。そういう会話を側近としてたのも公表されている。アメリカの超越者たちは全力を出せないが、俺は遠慮なく燃やせるって。
なんか沢山人を殺すことで、他と隔絶した存在になれるんじゃないかって期待してたみたい。ニューヨークを地獄に変えることで、本当の魔王になれるって。重度の麻薬中毒者で妄想に取り憑かれていたんだと、テレビで精神科医が結論づけた。
まあ何にしろ、監視されていた時点で詰んでいた。
というか、侵入に成功してても大虐殺に成功しただけで、その先はなかったと思うけど。
この日、五大魔王は四大魔王となった。
四大魔王のうち2人は、後日、他国への侵攻をしないと宣言。
内政干渉はやめようと世界に呼びかけた。
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