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第一章 増える黒柴犬
37話 合宿の始まり
しおりを挟む小町ちゃんが、友達2人に誰を選ぶのか。
シンプルに上司に相談してた。
まあそうだよな。国がお金出して参加する業務だもんな。
説明会の内容は、10人全員がすぐ報告したようで、友達枠の選考には全て所属組織が関わっていた。なので、全員が無難な人選になっていた。
小町ちゃんの友達枠は、大学剣道部の1年先輩と、7年先輩の2人だ。
強豪剣道部の警察就職率は高いから、小町ちゃんの先輩は組織内に何人も居る。
黒柴犬とよく模擬戦している剣鬼さんも、同じ大学の2年先輩だ。
友達枠の2人は俺としては初見だが、小町ちゃんとの関係は悪くないようだ。説明会の時は借りてきた猫のようだった小町ちゃんも、溌剌としている。
友達枠作ってよかったなと素直に思えるわ。
ちなみに爺さんが押し込もうとしていた孫は、無邪気で可愛い系の双子のアイドルだった。
黒柴犬の警護対象でもある。
黒柴犬にご執心で祝福も欲しがってたし、黒柴犬も飼いたがっていた。
まだ年齢16歳。
カメラ回ってない時でも無邪気。
計算高さと嗜虐性もちょっとだけ持っている。
爺さん、業務中にとんでもないの押し込んでこようとしたなぁ。悪い子じゃないけどさすがに駄目でしょ、未成年アイドルは。そりゃ同僚も慌てるわ。
ちなみに爺さんの友達枠は2人とも特殊部隊員の精鋭になった。
優先育成冒険者制度で、何度か10階層に潜っているが、獲得できずに居たそうだ。
かなり気合が入っている。
乗り物は二人乗りの電動レーシングカートを選択した人が多かった。
自衛官の女の人は、電動バイクを自分で運転したいと言っているので、実地試験に合格したら許可するつもり。後部座席に黒柴犬が乗れば、安全も保証できる。
俺も最近はダンジョン内を電動バイクでかっ飛ばしている。
二重オーラでぶつかっても安全だし、闇の手も超便利。壁や床を手で押すことで電動バイクの挙動をよりダイナミックに変えてくれる。壁走ったりも出来るんよ。ノーブレーキ100キロで、ゴブリンを引きまくっている。
闇の手はシートベルトやエアバッグ代わりにもなるので、本当に重宝している。
ダンジョンへの侵入は深夜。
12時頃にバス2台で乗り付けて、封印の解除と侵入、その後の再封印を行う。
バスの乗り付けは民間の監視網に引っかかっちゃうが、政府は封印しているダンジョンで異常が発生してないかの安全調査として発表する予定。
\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\
全員が統一感のある防刃装備で、ダンジョンエントランスに集合。
希望者の手荷物は黒柴犬が受け取ってアイテムボックスで運搬する。
小町ちゃんたちは手荷物の半分を黒柴犬に預けて、残り半分を自分たちで運搬。
彼女たちは移動に収容力のあるゴルフ場のカートを選択している。
ゴブリンの討伐数を増やすために、移動ルートは分散させる。
3人一組になって順番に発進していく。
半数以上のチームが10階層まで最短コースを希望して、小町ちゃんのチームはやや遠回りを希望。見るからに経験不足っぽいメンバーだしね。低階層から慣らしていったほうが良いと俺も思うよ。小町ちゃんたちは各階層ごとのゴブリンと戦ってみたいそうなので、安全に配慮しつつやらして上げる予定。
希望者にはダンジョン内でドロップした武具類の貸し出しも行った。
剣道ガールの小町ちゃんたち3人は剣豪ゴブリンがドロップする【鬼人刀】を喜んで借りていた。
銃器を使う予定だった人も、借りれるなら試したいって事で、ダンジョン産装備を幾つか貸し出した。
お、小町ちゃんのカートがゴブリンと接触。
というかカートで轢き殺したんだが。
1階層ではゴブリンは1匹ずつしか出ないからね。わざわざ停車する必要はない。
小町ちゃん顔を引きつらせてるけど悲鳴は上げなかった。
ドロップアイテムは後続の黒柴犬が拾っていく。
万が一の事故も無くすために、前後を黒柴犬が走っている。
移動を開始して1時間。爺さんからお願いがあった。
年齢的に若い二人に付いていくのは厳しいが、しかし若い二人を年寄りに付き合わせるのも心苦しい。お手数をかけるが別行動をお願いできないだろうか?
というもので、もちろんオーケーした。
各自を乗せたレーシングカートが別方向に走っていく。
これで多少は経験値効率やオーブのドロップ率が上昇する。
\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\
食事や睡眠のタイミングは各自に任せている。
その休憩中に幾つかのチームが別行動の可否を聞いてきたので、許可を出した。
その他のチームにもそのような打診があり許可していると伝えると、小町ちゃんのチーム以外は相談して別行動を選択した。
小町ちゃんのチームは最年長さんが相談することなく断ってきた。
「私たちは見ての通りダンジョン初心者ばかりですから。他の方たちのような行動はちょっと取れないですね」
と苦笑い。
まあ友達枠を用意した経緯を考えても、別行動はないと思ってた。
\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\
24時間が経過した。
俺はずっとは見てなかったけど、どのチームも休憩は最小限で、食事は携帯食をさっと食べて、きびきびと行動していたようで、感心する。
とはいえ、練度の差は大きいな。
何人かのガチ精鋭は、丸一日黒柴犬のドライブに付き合っているのに、疲労らしい疲労をしていない。どころか、ドライブ中に寝てやがった。
最速で10階層行きを希望した7人は、すでに10階層に到達している。
今は黒柴犬が闇の手で拘束して差し出すゴブリンを生き生きと殺傷していて、1人はすでにオーブをゲットしていた。
普段どんな鍛錬してたらこうなるのか恐ろしいわ。
こんな奴らがLRの祝福授かってたら、黒柴犬でも皆殺しになりそうだな。
それに対して小町ちゃんたちは隠せない疲労を抱えている。
ドライブ中も身体ガチガチやしね。スピードも出せなかった。
今は3階層の女神の間で就寝中だ。俺は覗けないし黒柴犬も女神の間から出ているので、確認はできないが。
こちらも1年先輩さんがオーブをゲットしていた。アイテムボックスを選んだようで、3人分の手荷物の一部を収納していた。
黒柴犬のサポートを受けつつ、ゴブリンとの実戦経験も積んでいる。
なお、2人の先輩はダンジョン未経験だったらしく、今回ゴブリンを倒して祝福を授かっている。
7年先輩が少年課で1年先輩が交通課。
合宿後の所属はどうなるんだろうね。
拾ったオーブの数次第ではエリート扱いされちゃうと思うんだけど。
爺さんも今までダンジョンに潜った経験がなかったらしく、今回自前の木刀でゴブリンとタイマンして、祝福を授かっていた。
何の祝福かはマナーとして聞いてないが、たぶん剣術系だろうな。
黒柴犬のサポートありで、3階層ボスゴブリンに勝利した後は、女神像の広間で就寝している。なお、負傷してポーションを1本使用した。無茶させんなって言ってるのに、黒柴犬も爺も聞く耳持たねえ。
自衛官の姉さんは、電動バイクでゴブリンを轢いてみたり、黒柴犬に運転させて後部座席で槍を振るったりとエンジョイしていた。
今は5階層。
24時間でのオーブドロップは30人で3個。
まあ移動に時間を取られた初日はこんなもんだろう。
そろそろ俺も寝るか。
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