ユミの秘めた炎

通りすがりの

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鏡の中の孤独

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秋の夜風が、カーテンの隙間を抜け、冷たく忍び込む。
窓の外、雨が降り始め、ガラスを叩く。ポツ、ポツ。
細かな水滴が、紅葉の赤を滲ませる。
東京郊外、世田谷のマンション。7階の角部屋。
リビングの時計が、コツ、コツと秒針を刻む。
まるで有希乃の心を焦らすように、執拗に。彼女はソファに沈み、膝を抱える。
遠く、東京タワーの赤い光が、雨に滲んだ闇で揺れる。
夫・健太は今夜もいない。大阪の出張先で、数字と会議に埋もれている。
リビングのテーブルに、健太の残したコーヒーカップ。
冷めた黒い液体が、彼女の孤独を映す。洗剤とタバコの匂いが、かすかに漂う。
スマホが、点滅する。健太からの不在着信。3件。折り返す気力もない。
健太の温もりは、ここにはない。雨音が、彼女の孤立を包む。

有希乃、30歳。鏡の向こうで、かつて「美人」と呼ばれた面影が揺れる。
肩を過ぎるダークブラウンの髪が、雨の湿気で頬に張り付く。
スレンダーな身体、柔らかな曲線。
だが、鏡に映るのは、男たちの視線を浴びたあの頃の残像だ。
「もう、女として終わったの?」心の奥で、囁きが響く。
薄いTシャツが、雨の湿気で肌に貼り付く。乳首が、布越しに硬く尖る。
気づいた瞬間、頬が熱くなる。こんな身体、健太さえ見ないのに。

仕事部屋へ移動する。アンティークの木製デスク、乱雑に積まれた本。
窓の外、紅葉が雨に濡れ、落ち葉が地面を擦る。サクサク、ザアザア。
湿った土と枯葉の匂いが、開けた窓から漂う。
モニターの青白い光が、彼女の顔を照らす。
ライターの仕事、育児コラムの原稿。子供のいない彼女には、空虚な言葉の羅列だ。
指がキーボードを叩く。カタカタ、カタカタ。
だが、頭の片隅で、記憶が蠢く。
3年前のあの夜。健太の長期出張が続き、孤独が彼女を押し潰した。
ネットサーフィンの果て、女性向けコラムの取材中、読者投稿の片隅にあったURL。

「欲望チャット」

匿名で、誰とも繋がれる場所。彼女の指が、リンクをクリックする前に震えた。
健太への裏切り。自分への嫌悪。だが、好奇心が勝った。
27歳の有希乃は、誰も見ない身体に疼きを感じていた。
クリックした瞬間、黒い画面が現れた。
赤い文字で「欲望を解放しませんか?」と誘う。ぞくりと背筋が震えた。
インターフェースは、簡素だが妖艶。黒い背景に、白いチャット窓。
匿名のユーザー名が、誘惑するように点滅。最初のメッセージは、下品な男。
「ねえ、どんな女?」胸が締め付けられた。
だが、別の男の「君の秘密、聞かせてよ」に、身体が熱を持った。
人妻というだけで、言葉が群がった。
「ユミ」と名乗り、初めての返信を打った。
「こんばんは。」たったそれだけで、乳首が硬くなり、太ももが締まった。
あの快感は、罪だった。でも、甘かった。

今夜、3年ぶりにその記憶が蘇る。
健太の不在着信が、スマホで点滅する。4件目。無視する。
冷めたコーヒーカップが、デスクの端で彼女を嘲る。
指が、キーボードの上で止まる。モニターの光が、瞳を濡らす。
葛藤が、胸を締め付ける。健太、ごめん。
こんなこと、しちゃダメ。なのに、好奇心が疼く。
自分は、まだ女として欲しいと思える? 
指が震え、検索履歴から「欲望チャット」を探す。
リンクをクリックする。黒い画面、赤い文字。
「欲望を解放しませんか?」3年前と同じ誘惑。
だが、今はもっと危険な香りがする。チャット窓が、妖しく光る。
匿名のユーザー名が、誘うように並ぶ。ぞくりと背筋が震える。
今回は、自分でチャットルームを作る。心臓が、ドクンと鳴る。
ルーム名:「秘めた夜」。待機メッセージを入力する指が震える。
「誰か、私の疼きを見て…言葉で、触れて。」
ライターの彼女らしい、扇情的な言葉。だが、羞恥心が胸を刺す。
送信した瞬間、身体が熱くなる。誰も入室しなければいいのに。
いや、誰かに見て欲しい。チャット窓が、静かに光る。
雨音が、ガラスを叩く。ポツ、ポツ。紅葉が、雨に滲む。
枯葉の匂いが、鼻腔をくすぐる。太ももが、ソファの上で締まる。
Tシャツの裾が、ずれる。素肌が、冷たい空気に晒される。
ローズの香水が、強く漂う。

「こんばんは、ユミさん。」

画面に、名前が浮かぶ。信二。
彼が、彼女の作った「秘めた夜」に入室した。
丁寧だが、支配的な響きが潜む。彼の言葉は、彼女の心を握り潰す力を持つ。
まるで、彼女の待機メッセージ「私の疼きを見て」に誘われ、
反応を操ることに快感を覚えているかのように。
指が、震えながらキーボードに触れる。

「こんばんは。」

返信した瞬間、身体の奥が熱くなる。
健太の不在着信が、スマホで点滅する。5件目。彼女を自由にする。
冷めたコーヒーの匂いが、罪悪感を刺激する。
乳首が、Tシャツを押し上げる。熱は、隠せない。

「ユミさん、どんなときに心が震える? 俺に、素直に教えてみなよ。」

信二の言葉が、画面を滑る。教えてみなよ? その命令口調に、息が浅くなる。
彼は、彼女の待機メッセージに反応し、従順さを求める。
彼女の心を、言葉で縛る快感。どんなとき? 高校時代、大学のサークル。
男たちの視線が、肌を這った。
首筋、鎖骨、太もも。視線だけで、身体が熱くなった。
夜の公園、初恋の彼のキス。唇が触れた瞬間、首筋が疼いた。
今は? 健太の視線さえ、彼女を素通りする。スマホの不在着信が、彼女を嘲る。

「視線を感じたとき、かな。」

タイプする手が震える。モニターの光が、頬を青く染める。
雨音が、ガラスを叩く。ポツ、ポツ。紅葉が、雨に滲む。
冷たい空気が、素肌に触れる。乳首が、Tシャツを押し上げる。
唇を噛む。こんな反応、恥ずかしい。なのに、指が首筋に滑る。
滑らかな肌が、熱を持つ。ローズの香水が、鼻腔を満たす。身体が、疼く。

「視線、か。いいね、ユミさん。『秘めた夜』で、俺の目で君の肌を見つめるよ。
 今、鏡の前に立ちなよ。俺のために、服を脱いで見せなよ。」

信二の文字が、心を突き刺す。鏡の前? 服を脱いで? 
彼は、彼女の待機メッセージに反応し、羞恥心を剥ぎ取ることに興奮する。
彼女の反応を、言葉で支配する快感に溺れる。
彼女は立ち上がり、仕事部屋の姿見の前に移動する。鏡に映る自分。
Tシャツが、雨の湿気で肌に貼り付く。乳首が、はっきりと浮かぶ。
指が、Tシャツの襟を引っ張る。鎖骨が、鏡に映る。白く、滑らか。
信二の視線を感じる。指が、首筋をなぞる。敏感な肌が、熱を持つ。
太ももが締まり、下着の縁が食い込む。そこが、熱く湿る。顔が熱くなる。
健太、ごめん。こんなこと、ダメなのに。スマホの不在着信が、点滅する。
6件目。健太の不在が、彼女をユミに変える。
冷めたコーヒーの匂いが、罪悪感を刺激する。

「どうやって、俺に見せるんだ? 鏡で、君の身体をよく見て。
 どんな風に震えてる? 隠さず、全部教えてよ。」

送信した瞬間、罪悪感が胸を締め付ける。
だが、信二の命令が、頭を支配する。Tシャツを、ゆっくり脱ぐ。
鏡に映る乳房が、冷たい空気に晒される。乳首が、痛いほどに硬く尖る。
「んっ…」小さな声が、漏れる。雨音が、部屋に響く。ポツ、ポツ。
落ち葉のサクサクという音が、窓の外で混じる。
モニターの光が、汗ばんだ肌を青く照らす。指が、乳房を強く握る。
敏感な頂点に、爪が軽く食い込む。「あっ…!」身体が、震える。
首筋に指を戻し、強く押す。そこが、熱く脈打つ。
健太の不在が、彼女を自由にする。

「今、Tシャツを…脱いだ。鏡で、乳首が…見えてる。熱い…」

タイプする手が、震える。信二の返信が、すぐに来る。

「いい子だ、ユミさん。次は、下着をずらして。
 鏡で、自分の身体を俺に見せるつもりで、触ってみなよ。
 太ももの内側を、強く擦れ。どんな感触か、全部俺に晒せ。」

息が、止まる。鏡で? 太ももの内側? その命令に、身体が従う。
信二は、彼女の待機メッセージに導かれ、
反応をコントロールすることに陶酔している。
彼女の羞恥心を、鏡越しに暴く快感。指が、下着の縁に滑り込む。
湿った布を、ずらす。熱い湿り気を、直接触れる。
太ももの内側に、指を滑らせる。柔らかく、熱い肌が、指先に吸い付く。
「はぁ…!」吐息が、叫びに変わる。鏡に映る自分の姿。
汗で光る肌、震える乳房、濡れた下着。信二の視線を想像する。
滑らかな肉が、指先に吸い付く。熱い液体が、太ももを伝う。
濡れた音が、静寂を破る。ズチュ、ズチュ。
雨音が、ガラスを叩く。ポツ、ポツ。枯葉の匂いが漂う。

「濡れてる…太ももが、熱くて…滑らか…」

送信した瞬間、恥ずかしさが身体を焼く。なのに、指は止まらない。
信二の次の言葉が、画面に浮かぶ。

「最高だ、ユミさん。鏡を見ながら、もっと速く動かして。
 俺の声で、君を導くよ。首筋を、強く握ってみなよ。君は、俺のものだ。」

指が、動きを速める。太ももの内側を、強く擦る。
熱い脈動が、身体を震わせる。もう一方の手が、首筋に滑る。
強く握ると、敏感な肌が疼く。「んんっ…!」叫びが、部屋に響く。
濡れた音が、雨音と混じる。ズチュ、ズチュ。ポツ、ポツ。
信二の「君は、俺のものだ」が、頭を支配する。
彼は、彼女の反応を操ることに執着する。
彼女の快楽を、言葉で支配する快感に溺れる。
健太の不在着信が、スマホで点滅する。7件目。
冷めたコーヒーカップが、デスクの端で静かに見つめる。
罪悪感が、快楽を甘くする。秋の紅葉が、雨に滲み、赤く燃える。

明日、銀座のワインバーで同窓会がある。
有希乃として、美咲の笑顔、元クラスメイトの視線を浴びる。
だが、今夜はユミだ。信二の命令に溺れるユミ。鏡に映る身体は、ユミのもの。
なのに、明日、ワインバーの光の下で微笑むのは有希乃だ。
ユミは囁く。有希乃、あなたなら、この疼きをどう満たす?
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