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第二章 外堀はこうして埋められる
2-10 お弁当作り(やっと)開始!
しおりを挟むさて、ようやく歩けるようになりました!
本当に……リュート様には困ったものです。
「歩けるようになるまではダメ。俺の腕の中にいなさい」
なんて言って、離してくださらないのですもの。
その間、ずっと嬉しそうに私を抱きしめては頭に頬を寄せて、うっとりとするのですよ?
リュート様のその表情の破壊力と言ったら!
写真にして永久保存処理しておきたいです。
勿論、持ち歩く用と観賞用と保存用を準備しないといけないくらい、凄いのですもの。
それを家宝だといっても、通用します。絶対です。
「これでいいかな」
お手伝いをするために、リュート様もエプロンの着用をお願いしていたのですが、どうやら家宝が増えるようです。
っていうか、本当にカメラありませんか!?
貴重なリュート様のエプロン姿……い、いけません……何故、エプロンを着用するだけで、こんなに色気を振りまくのですか!
こんなに格好良い……いえ、格好良すぎるカフェ店員がいたら、通いつめます。
三食そこで、ご飯をいただきながらリュート様がお仕事している姿を眺める……なんて贅沢っ!
そのお店は絶対に、リュート様のファンばかりになってしまいますね。
……そ、それはなんだか面白くありません。
リュート様は、私の召喚主……あ、主なのですよ?
ぎゅーってして優しく撫でていただいたりするのは、召喚獣である私の特権でっ! ───い、いえ、そういう話ではありませんでした。
「ん? どうした、急に抱きついてきて……そんなに気に入った?」
嬉しそうに顔を綻ばせるリュート様に、首まで真っ赤になってしまいます。
っていうか、私……な、何故抱きついて!?
「え、えっと……すごく、格好良い……です」
「それは良かった。着用したことあるエプロンって普通のヤツだけだったから、キュステが着用しているソムリエタイプしか手元になくて、似合うかどうか心配だったんだよな」
黒いソムリエタイプのエプロンだけでも破壊力抜群なのに、そ、そういうはにかんだ笑みを浮かべられたら、胸キュン過ぎて動悸が激しくなってしまいます!
い、いけない……また足に力が入らないとか、とんでもないことにならない内に、お弁当を作らなければ。
しかし、このリュート様のお姿をキュステさんには見せられませんね。
店の売り上げにつながるから、時々その格好で店に顔だしてとか言い出しそうですもの!
ダメですよ、それはいけません。
このお姿は、一緒にお料理する私だけの特権なのです。
洗浄石で手やお弁当箱などを綺麗にしてから、冷蔵庫から必要食材を取り出す。
私は、唐揚げの下ごしらえからです。
リュート様には、お野菜のカットをお願いしましょう。
ボウルにハーブソルトと白ワインとニンニクと生姜を入れてよく混ぜ、鶏肉をまずは一口大にそぎ切りにしてその中に入れてよく揉む。
「……唐揚げって、醤油がなくてもできたのか」
「リュート様……塩からあげさんの立場がありませんよ?」
「あ、そんな名前聞いたことあったな」
やっぱり、料理を作らない人にとって、他のもので補うという発想は難しいのでしょうか。
応用は基本が出来ていて初めて考えつくもの……でしたね。
リュート様は、その基本がまず出来ていないから、難しいに決まっています。
私だって、魔法で応用とか言われても、基本がまずわからないのだから無理ですよね。
そんなことを考えながら、ウィンナーをタコさんの形に切っているとリュート様が「懐かしいなぁ」と笑っていました。
完成したら、もっとタコさんらしくなるでしょうから、ソレを見たら、もっと喜んでくださるでしょう。
「ルナ、ブロッコリーとトマトは切れたけど、他に何かあるかな」
「では、ブロッコリーはタコさんと一緒にレンジへお願いします。その後、この小さな木製ボウルにポテトサラダを詰めてください」
「了解」
こうして見てみると、リュート様はお料理に慣れていないはずなのに手際が良い。
器用……羨ましいくらいに器用な方ですね!
さて、リュート様に負けていられません。
鶏肉の下味をつけている間に、トルティーヤの生地と参りましょう。
小麦粉とオリーブオイルとぬるま湯と塩だけで出来ますから、楽ですよね。
小麦粉のくぼみにオリーブオイルとぬるま湯と塩を入れ、少しずつ崩すように混ぜていきます。
粉っぽさがなくなってきたら一纏めにして、室温で放置。
だいたい、30分が目安ですね。
次は、湯剥きしたトマトと玉ねぎをリュート様にカットしていただいたので、オリーブオイルで炒めていきましょう。
フライパンにオリーブオイルを引いて、すりおろしたニンニクと鷹の爪を焦げないように炒めていきます。
香りが出てきたらそこに玉ねぎを投入して、半透明になってきたら続いてトマトをだばーと、遠慮なく入れましょう。
ハーブソルトを適量入れて味を調えて水分を飛ばすように煮込みます。
酸味の強いトマトなので、砂糖を少々入れて味を調えましょう。
普通のトマトなら、必要ないのですけれど……
これで、簡単なトマトソースの完成です。
念のために味を見てもらおうと、スプーンで掬って差し出すと、迷うこと無くぱくんっと食べるリュート様が可愛い。
そんなに「美味しい」って目を輝かせないでください、普通のトマトソースですよ?
ドキドキしてしまうので慌てて目を逸して、つ、次です!
リュート様には、レタスを一口大にしたものや玉ねぎのスライスと、トルティーヤに挟んで食べたいお野菜をチョイスしていただき、カットをお願いしましたら、とんでもなく大きなパプリカがでてきましたよ!?
そ、それ、大きさがおかしくありませんか?
大人の頭くらいの大きさがありますが!?
「驚いただろ? このパプリカな、樹木に実るんだ。すげーでけーの。これでも小さい方なんだ」
「ええぇっ……だ、だって……え?」
「小さい子供の大きさに成長するのもあるらしい」
「大きすぎませんかっ」
「こっちの世界さ、大きさが普通じゃないのが多いんだよな。かといって大味ってわけでもねーし。赤が完熟、黄色が熟し始め、緑が未完熟で、緑はピーマンと同じく程よい苦味がある。肉厚でみずみずしくて美味しいぞ」
「それは……助かります」
大きいことは良いことだ……とは言えないような気もしなくもないですが、フードカッターの器が何故あんなにも大きな物であったのか理解しました。
これが入る大きさなのですね……?
かぼちゃくらいは余裕で入る大きさだと思っていましたけれど、これが基準だったとはビックリです。
ピーマン嫌いな子がいたら、この緑のパプリカを見て、ピーマンおばけ! と泣くかもしれませんね。
「レタスと玉葱と人参とパプリカで足りるかな」
「はい、色とりどりで綺麗ですね」
「そうだな」
ボウルに卵と塩、少しふんわりさせたいので牛乳を少量加えて、白身を切るようにときほぐしながら言うと、彼は興味津々に熱しているフライパンと卵液を見ている。
程よく熱したフライパンに油をひき、混ぜた卵液をフライパンへと流し込む。
じゅっと音がして、すぐにふつふつ膨らんでくるので、周囲を剥がし終わったら手前へ巻いていく。
巻き終わったら奥へやり、液を流し込んでまた剥がして手前に巻くということを数回繰り返す。
すると、綺麗な卵焼き……というか、歪なオムレツっぽい感じの物ができる。
まあ……フライパンでやりましたからね。
形を熱い内にある程度整え、まな板に載せて両端を切り落とせば、見慣れた形になった。
「うわぁ……卵焼きだ……」
感動を滲ませる声。
お手伝いを頑張ってくれているリュート様にご褒美をあげましょう。
切り取った端っこをつまんで、あーんとすると、彼はぱあっと顔をわかりやすいくらい輝かせて、ぱくりと頬張る。
「んまっ! へぇ、少しふんわりしていて柔らかい。甘くないけど好きかも」
「甘いほうが良かったですか?」
「んー、どっちも好きだ」
「じゃあ、今度は甘いのを作りますね」
「ん、楽しみにしてる」
ふにゃりと笑うリュート様は、もう一つの切れ端をつまみ上げ、食べるのかと思いきや、私に卵焼きを差し出す。
「あーん」
「え、えっと……あ、あーん……」
これは引いてくれないパターンだと悟り、小さく口を開いてぱくりと食べたら、それを満足そうに見ていたリュート様は、手に残っていた卵焼きをぱくんっと食べてしまわれました。
リュート様!
それは私が口をつけたものですよっ!?
も、もう……そういうことを当たり前のようにしないでください。
だ、ダメです、顔が……赤くなってしまいますから!
もぐもぐと慣れ親しんだ味より、少し上達している卵焼きを味わいながら、恨めしくリュート様を見つめる。
旨いなって笑う無邪気な彼に、この熱を与えた罪悪感など微塵もない。
それどころか、とても嬉しそうである。
困った人……だけど、嬉しい。
1人だけではなく、一緒に味わいたいのだという彼の心遣いが嬉しかった。
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