悪役令嬢の次は、召喚獣だなんて聞いていません!

月代 雪花菜

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第四章 心を満たす魔法の手

4人で今後の相談中!

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 魔力の流れを見てもらっている途中だった黒騎士様たちは、椅子に座り私を抱っこしたチェリシュを膝の上に乗せて準備万端といったリュート様の前に並びました。
 彼らの手を順々に握って、訓練はついていけているか、体調はどうだと気遣うリュート様に、彼らは心配性が出たと笑います。
 楽しそうに会話をしながらリュート様に見てもらった去り際に、私とチェリシュの頭を撫でて行くのですが、無邪気に笑う姿は年相応の青年そのものでした。

 リュート様の元クラスメイトである黒騎士様たちは、みんな優しいのです。
 だって、私とチェリシュを撫でていく手のぬくもりや優しい手付きがリュート様に似ているのですもの。
 守りたい人たちを守るための覚悟を持った人の手ですよね。

 全員のチェックを終えたリュート様は、ロン兄様の持っていた資料に何かを書き込み、お父様も参加して3人で新人の黒騎士様たちの今後を話し合っているようです。
 これまでの細かな情報が記された書類に目を通すために取り出した眼鏡をかけて、細かい文字を追っているリュート様を見上げました。

 ひ、久しぶりに眼鏡男子になっているリュート様を見ましたが、破壊力は抜群ですよっ!?
 どうしてそんなにイケメン男子なのですかああぁぁっ!

 じわじわ上がってくる体温を意識して、これはいけないと視線を慌てて外し、周囲を見渡します。
 お母様と愛の女神様はお茶を飲みつつ、リュート様がカットしたウサギのリンゴを見て談笑していらっしゃいますし、セバスさんはお二人の側に控えており、テオ兄様はカカオとミルクに朝食の感想を尋ねられているようで、言葉にして伝えることが苦手なのに考えながら答えているテオ兄様の言葉を、二人は真剣な表情で聞き相槌を打ちながらメモに取っておりました。
 魔力の流れを見てもらった黒騎士様たちは少し離れた場所に移動して、お父様から出された鍛錬のメニューをこなしているのです。
 さすがは聖騎士の家というところでしょうか、広い庭というか……もう、あれは訓練所ですよね。
 見るからに整備された広い空間は、リュート様の寮の庭にある設備と同じようなものなのだと感じました。
 四方に散ってペアになり鍛錬を行っている黒騎士様たちは、何やら話をしながら体を動かしているようで、多少のことでは音を上げることが無さそうだと感じられる余裕を伺わせます。
 息も乱れていないですし、笑いながら剣を交えている姿は楽しそうで何よりですね。
 さすがは、リュート様にしごかれてきただけの事はあります。

「ふむ。ならばこれでどうだ」
「んー、こいつとこいつは、変な時に衝突することがあってストッパーが必要になる。だから、こっちと入れ替えたほうがいいんじゃねーかな」
「それならスキル属性かぶりもないし、俺もそっちのほうがいいと思うよ」
「そうだな。ならば、こちらと……こちらもどうだ」
「いいと思う。さすがは親父だな。でもさそうなると、こっちが……」
「問題はそこだな」

 お父様とリュート様は、仕事のことだったら衝突することもなく話が出来るのですね。
 真剣な表情で考え込んでいるお父様に、柔軟な発想で助言をするリュート様と、その意図を説明しなくても理解してしまうロン兄様。
 さすがです!

 リュート様が説明するようにサラサラ書き出した文字を見て、お父様の片方の眉がピクリと反応しました。
 どうやら、リュート様が意図していることを理解したみたいです。

「なるほど。こちらの班は、短期集中型というわけか」

「持久力に欠けるメンバーを班に1人ずつ加えるよりも、機動力を生かした速攻チームみたいにすれば、戦略の幅が広がると思うんだ」
「それだと短期決戦に特化したチームが、長期戦に入った時のフォローも必要かな」
「だから、このチームがあるんだよ」
「そうなると、2チーム派遣になるが……待てよ。2チームを1組として派遣する形を本格化するか。1チームを派遣して討伐できなければ1チームを追加で派遣しているよりも、最初から2チーム1組として派遣し、依頼討伐のあと周囲の問題を解決してくるだけの余力を残しているほうが住民たちにとっても良いのでは……」

 お父様が考え込み、何か閃いたのかペンを持ってサラサラ文字を書き込みはじめました。
 それに気づいたテオ兄様もこちらへやってきて、お父様の書いている文字を目で追います。

「なるほど、父上が以前言っていたやり方ですね」
「待った!それなら、応用を利かせようぜ」

 そういったリュート様は、お父様の書き記した文字に更に書き込み、単に班分けを特化した物にするのではなく、他の班と組み合わせることで依頼内容に沿ったチームを作るというものでした。

「そっか、全体的なバランスを取るのも良いけど、特化したチームの組み合わせで、依頼内容により沿った構成を作るわけだね」
「そういうこと!このチームは、飛空タイプに強い。こちらは、数が多いタイプ。メリット・デメリットをシッカリ把握して派遣しないといけないけどさ、親父ならその辺り問題ねーだろ?」

 リュート様の何気ない言葉に、お父様は驚き目を丸くしたあと、不敵な笑みを浮かべました。

「誰に物を言っている。これでも黒の騎士団の団長だぞ」

 リュート様とテオ兄様とロン兄様が顔を見合わせて吹き出すように笑い、お父様も釣られたように笑い出します。
 仲の良い光景に、心がじんわりとあたたかくなりました。
 この方々がトップに立っていたら、黒騎士様たちだって安心ですよね。

「っ!」

 書類をめくっていたリュート様が、いきなり手を引きます。
 驚いて私とチェリシュがリュート様を見ていると、彼は肩をすくめて片目を瞑って心配ないというように笑いました。

「紙で指を切っちまっただけだ」
「あー、俺もよくやるよ。ちょっと待ってて、傷薬とテープを……」

 心配ないよとリュート様はおっしゃいますが、ぱっくり切れてしまった傷口に血がじわりとにじみ出てきて、ロン兄様が傷の手当ができるように薬箱を取りに行こうとしましたが、リュート様がそれを大げさだと言って止めてしまいました。

「こんなもの、舐めてりゃ治るから平気だって」
「でも、けっこう深かったよ?」

 ロン兄様のおっしゃるとおり、傷口は深そうです。
 傷薬よりもポーションを持ってくるといい出したロン兄様を、リュート様が必死に止めておりますが、いつものやり取りなのか、お父様とテオ兄様が苦笑を浮かべておりました。

 ああぁぁ……リュート様の傷口から血がっ!
 あ、そうです!
 舐めていれば治る……ですよね?

 ぺろり

「なっ!?」

 ロン兄様から傷口を隠すように下げた右手の傷口を、舐めて血止めを行います。
 カーバンクルの唾液には、治癒効果があったはず……
 私が変じたカーバンクルでも、特性は引き継いでいると思いたいです。

 暫く舐めて、血が完全に止まったのを確認した私は、ホッと胸をなでおろしました。
 これくらいの小さな傷なら癒せましたね。
 ガルムだったら、もっと大きくてひどい傷でも癒せるのでしょうけど、私にはこれが精一杯のようでした。

「る……ルナちゃん?」
「ロン兄様、傷が治りました。もう、大丈夫です」
「治したの?」
「はい!私の世界では、森で迷子になるとカーバンクルが現れて外へ連れ出してくれるというお話が沢山残っていて、その際に小さなキズならば舐めて癒やしたとありましたから、もしかしてと思って……」
「それで舐めたのか」

 なるほど、納得だというようにテオ兄様が頷きます。

「ルー……」

 呼ばれて顔を上げると、にぱーと笑ったチェリシュが、リュート様の方を見て口を開こうとしますが、リュート様の大きな手がチェリシュの口を塞ぎました。
 もごもご言っているチェリシュと、無言のリュート様。
 ど、どうされたのでしょう。
 リュート様の方を見ても、完全に顔をそむけられてしまいました。

「うふふ、ベリリねぇ」
「母さん!」

 なるほど、そういうことでしたか。
 真っ赤になった顔を見せないようにしていたのですね。
 意味ありげに笑っているお母様と愛の女神様からは、丸見えだったようです。
 ……って、何に照れたのでしょう。

「まあ、女の子に指を舐められたらそうなっちゃうよね」

 どうしてかしらと首を傾げていた私に、ロン兄様が楽しそうに笑いながら教えてくださったのですが……
 確かに……確かにそう考えたら……理解……でき……ますぅぅぅっ!
 わ、私はなんてことをしてしまったのでしょうか!

 ぷしゅぅと顔から湯気が出そうなくらい勢いよく真っ赤になった私は、幸いなことにカーバンクルの姿だからわからなかったよう……

「ルーも、ベリリなの!」

 ああああぁぁっ!
 どうしてわかるのですかーっ!
 リュート様の手から抜け出した高性能ベリリ数値測定器のチェリシュからは、どうやら逃れられないようです。
 
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