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第八章 海の覇者
古き風習と英雄の息子
しおりを挟むチェリシュが大量に盛った野菜や肉を挟んだパンは、とてもすごいボリュームでしたが、リュート様はほとんど一人でそれを平らげ、親指についたケチャップをペロリとなめました。
そ、その仕草が……私のツボに入ったなんて口には出来ずにもだえていると、何故かキュステさんからジトリとした視線を投げかけられます。
な、なんですか、その視線は……
キュステさんもシロがいたら、人のことを言えないでしょうっ!?
皆様のように和やかに談笑しながら、ご飯を食べていてください!
私たちの攻防戦を知ってか知らずか、リュート様はコクリと紅茶を飲み干してから、自分で作ったサンドパンを頬張っていた時空神様へ問いかけます。
「さっきの話だけどさ、そんなことばっかりしてたらベオルフの体がもたねーだろうに……よくやれたよな。……いや、その前に、ルナとの記憶が無かったのに、そんなことできんの?」
言われてみれば、確かにその通りです。
私たちは、お互いの記憶を失った状態だったはず……それなのに、どうやって補給を行うことが出来たのでしょう。
魔力の使い方や、私たちの間にだけある、この感覚すら忘れていたのに……
「確かに二人には、父上や過去の自分たちに関する記憶は無かったヨ」
ナプキンで口元を拭った時空神様は、柔らかく微笑みながら当時のことを思い出すように語り出しました。
「でもネ、こうなる可能性を考えたベオルフが、父上に頼み込んでいたんダ。二人の記憶を封じた後の父上は、一定期間干渉することが出来なくナル。その間に何かあったら困るケド、全てを知っている父上もノエルもヘタに手を出せナイ」
「そうなると、ベオルフしかいねーわな」
「記憶が無くてもルナちゃんが弱ったら自分から不足分を補給できるよう、与えられるように、できる限りの加護を与えて欲しいってネ。正直に言うと、かなり危険な行為だっタ。でもね、どんなことをしても守りたかったんだヨ。父上が全幅の信頼を寄せるくらい出来た男は、伊達じゃナイってことダヨ」
それは、少し言葉を交わしただけで理解したと笑いながら言うリュート様の表情を、時空神様は満足げに見つめて頷きました。
「幼い子供であったというのに、やけに聡明じゃな」
「父上の加護を持つ人間が、普通だと思えるワケ?」
「確かにそうじゃな……」
人間は時に恐ろしい能力を持っておるから怖いわい……と、アレン様は苦笑します。
オーディナル様は、ユグドラシル様の補佐を務めるほど力を持った管理者ですし、他の管理者からも、一目置かれる存在だったに違いありません。
そのオーディナル様から全幅の信頼を寄せられるベオルフ様が、普通なはずありません。
学園でも文武両道で知られ、非の打ち所の無いような方でしたもの。
それなのに、愛し子と言われる私が、ベオルフ様から『運動神経が壊滅的』と酷評される程度であることに不安を覚えます。
他の世界でも愛し子がいて、その子たちを比べてみた時、私の能力なんて微々たる物ですから、オーディナル様が侮られたりしませんか?
あ、そうだ、そういう場合はベオルフ様を差し出しておけば良いのですね。
この世界で愛し子と言われる存在が居たとすれば、リュート様でほぼ間違いは無いでしょうし、相性が良いベオルフ様なら、全く問題はないはず。
完璧です。
ふふふっと笑い紅茶を飲んでいると、ぬっとチェリシュからベリリジャムたっぷりのパンを差し出されました。
え、えっと……チェリシュ?
先ほど、私と同じくらいのパンを食べていましたよね?
むしろ、その前からもくもく食べていて……ま、まだ入るのですかっ!?
その小さな体のどこに、それだけの食料が詰め込まれているのでしょう……ぷっくりとしたほっぺに蓄えられているのでしょうか。
「ルーは、もう食べない……なの?」
「もう、お腹いっぱいです。これ以上は、お腹が痛くなってしまいますから、私のことは気にしないで、チェリシュはたっぷり食べてくださいね」
「あいっ」
にぱーと笑ってもくもく食べているチェリシュは愛らしいのですが、やっぱり、どこに入っているのか気になります。
そういえば、リュート様も、未だもぐもぐとパンを頬張っていますよね。
先ほど、山盛りの野菜と肉のサンドパンを食べたところなのに……
この父娘……今日も絶好調ですね。
も、もしかしたら、寸胴鍋3つでは足りなかったかも……?
追加の分を考えた方が良いのでしょうか。
それとも、別の物を増やす方向で考えた方が……
よし、ナンのバリエーションとボリュームを増やしましょう。
チーズナンとかっ!
アレは良いですよね、ずっしりお腹にたまりますし、美味しいですし、辛いカレーもマイルドになりますもの。
カレーの考えがまとまったら、途端に先ほどの話が気になってきました。
私を守るための加護……かすかに記憶を刺激される物があったのです。
二人で庭園を出ることを決め、オーディナル様を説得しているときに、様々なことを忠告された……ように感じてはいるのですが記憶には残っておりません。
しかし、その中でベオルフ様が、何かを必死に懇願していたことだけは覚えておりました。
私はダメだと言ったのに聞く耳を持たず、それを承諾しなければ、ここへ一人置いていくとまで言われてしまったのです。
きっと、その時にお願いしていたのが、先ほどの加護なのでしょう。
私を守るために、己を削り、記憶が無くても定期的に会いに来て救ってくれた……
考えれば考えるほど、頭が上がりません。
ずっと、そうやって守られていたというのに……卒業パーティーでは、ミュリア様の味方だなんて考えて……
今なら、彼がどうして「それで良いのか」と問いかけてきたのかわかります。
一時的にでも時間を稼ぐために、相手の提案をのむという手もあると言いたかったのでしょう。
ベオルフ様の父上が率いる騎士団は無能な集団では無いので、その間に真相を突き止めてくれる。
もしくは、ベオルフ様自身が、調査に乗り出そうとしていたのかもしれません。
きっとベオルフ様のことです。
騎士団長である父を信じて、私のそばにいて守ってくれるつもりだったのかも……
そう考えると、本当に申し訳なさで胸がいっぱいになります。
どんなときでも、私のことを考えて動いてくれていたのに……黒狼の主に操られてベオルフ様を疑ったなんて、信じられませんっ!
つまり、それは……いつか、リュート様にもそういう感情を抱いてしまう可能性があるかもしれないということです。
あのときの私は、いつもよりも長い期間、ベオルフ様と接触をしておりませんでした。
つまり、極限状態であったはず。
食べることもせず操られ、相手の術中にはまったまま、絶望のどん底にたたき落とされる寸前だった……
常に、己のコンディションを良い状態へ持って行かなければなりません。
それは、自分だけでは無く、周囲を守ることにも繋がります。
「……ナ……ルナっ!?」
「はい?」
どうやら自分の思考に没頭しすぎて、周囲の音が聞こえていなかったらしく、顔を上げると、心配そうなリュート様の表情と、みんなの視線を感じました。
「あ、す、すみません。ちょっと考え事を……」
「何かあったのか?」
「いえ、些細なことです。卒業パーティーの時に操られていたような状態にならないように、これからはシッカリ食べないとな……と」
決意を新たにしていたところだと知ったチェリシュが、可愛らしくにぱーっと笑いました。
「そうなったら、ベオにーにがルーのために、ご飯を運んでくれるのっ」
「それはダメです。ベオルフ様は黒狼の主と対峙しておりますし、これからは南の辺境……少し治安が悪い場所へ行くので、無理はさせられません。それに、オーディナル様とノエルのご飯も作るようですし、人間社会をあまり理解していないオーディナル様のフォローもしなければならないようですから……こ、これ以上は……さすがに……」
いっぱい忙しそうなのっと、チェリシュが目を丸くしてびっくりしている様子を見ながら、もしかしてベオルフ様って苦労人なのかしらと考えてしまいます。
面倒見が良いところもありますし……でも、それって、リュート様も同じですよね。
でも、リュート様は苦労人という感じがしません。
どちらかといえば、社畜のイメージが強いです。
まあ……どちらも、良いイメージではありませんよね。
「父上はベオルフのことを褒められたら嬉しくなっちゃうみたいデ、ちょっぴりマズイことをしているみたいだからネ」
「ベオルフ様が疲れておりました」
「何か言ってたカンジ?」
「珍しく『疲れた』……と」
「まあ、なんていうか……父上至上主義の人々がいる中で加護を貰っただけではなく、本人がついてきているからネ」
「その噂に、背びれも尾ひれもつけて歩いていたら、大変ですよね」
「まぁね。彼は頭の回転が速くて人柄も良いカラ、大事にはならないヨ」
それはわかっていても、とても心配になります。
先ほど周囲にいた方々を見ても、良い感じの方が多く、人には恵まれているように感じました。
しかし、これから面会予定の方はどうでしょう。
物腰は柔らかく穏やかに微笑んでいるように見えて、首元にナイフを突きつけられているような感覚がするような人物でした。
ああいう人だからこそ、南の辺境をまとめていくことが出来るのでしょうが……不安になってしまいます。
「フルーネフェルト卿は……大丈夫でしょうか」
「彼なら問題ないと思うヨ。確かにベオルフは勢力図は知らないだろうケド、南の辺境に居る彼は見かけによらず根っからの武人ダカラ、そこまで心配する必要はないと思うヨ」
「それなら良いのですが……」
「それよりも、ミュリアだよね。変な動きがあるみたいだカラ、要注意カナ」
「あぁ……もう、本当に……あの方はっ!」
「まー、ベオルフが『ミュリア・セルシア男爵令嬢には、信頼できる者をつけているから問題は無い』って言っていたし、大丈夫デショ」
「そうですか……」
黙って私たちの会話を聞いていたリュート様は、不思議そうに小首を傾げてから、私たちを見つめて問いかけてきました。
「なあ……ベオルフって、フルネームで呼んでんの? 長ったらしくて、面倒くさくないのか?」
「此方ではどうか知りませんが、あちらで未婚の男性には、女性の呼び方にルールがありまして……」
「ルール?」
「私の名前を使って説明するなら、普通は『クロイツェル嬢』と呼びます。親しい者や階級が上の者は、『ルナティエラ嬢』と呼ぶのが一般的です。しかし、親しくない、親しくするつもりが無い時には、『ルナティエラ・クロイツェル嬢』と呼ぶ場合があるのです」
「ベオルフは、男爵令嬢までつけているけど?」
「それは、完全なる拒絶……今後一切、親しくするつもりは無い上に、形式上の付き合い以外は考えていない方に対する呼び方ですね」
「うへぇ……呼び方一つで、そこまで変わるのか」
未婚の男女にはありがちなトラブルを防ぐためにある、古くからのしきたりであり、現在は一般的ではありません。
公爵家や侯爵家の者は、未だにその風習を重んじておりますが、どういう意味合いがあるのか知らない者も多くなりつつある現状です。
「まあ、ベオルフ様の場合、私以外はフルネーム呼びです。元々懇意にするつもりはないらしく……本人曰く、結婚する気はないので、変に期待を持たせないため……だそうです。これも、最近では古き風習となりつつありますので、意味を理解しているかどうかは不明ですが……」
「あの子が、そんなことを理解していると思ウ?」
「ですよねぇ……」
時空神様の言う通りです。
異世界のゲーム知識しか持たないと思われる、現ミュリア様が、ベオルフ様の拒絶を理解しているとは到底思えません。
ベオルフ様の家は騎士ですが、我が国では騎士の階級は別として考えられており、騎士団長を務める家は侯爵家と同等の権力を持ちます。
むしろ、英雄と名高いアルベニーリ家は、歴代の騎士団長よりも強い影響力を持つ家だと言えますから、一般的な呼び方で「ミュリア嬢」と呼んでも問題はないのですが、彼女は「打ち解けられた!」と捉えるに違いありません。
無用なトラブルを防ぐためにも、彼は今後一切の妥協を許さず、『ミュリア・セルシア男爵令嬢』と呼ぶことでしょう。
そういう風習が残る我が国だからこそ、愛称呼びや呼び捨てには、とても意味があるのです。
「そこを慮り、ベオルフもルナちゃんの呼び方が変わってるしネ」
……ん?
あ……やっぱり……やっぱり「ルナ」って呼んでいましたよねっ!?
えええぇぇぇ、それでは、未だに「ルナ」と呼んでくださらないのは……
「親しくしたくないからですかあぁぁ!?」
「命がけで守っている相手にそんなこと考えるわけないデショ!? ルナちゃんに変な迷惑をかけたくないからに決まっているじゃないカ。それでなくても、英雄の息子って注目を集めているのニ……」
「そうですよね……」
とても残念です……と、唇を尖らせて呟いていると、リュート様がきょとんとした表情で此方を見つめます。
「英雄の息子?」
「ベオルフ様のお父様である、バンフェルト・アルベニーリ騎士団長は、10年前に大流行した熱病の薬を得るため、特効薬に必要な素材があると言われる国へ単身で向かわれ、見事に確保されたのです。そのおかげで、沢山の命が助かりました。私もその内の一人なので、感謝してもしきれません」
「へぇ……思い切ったことをしたもんだ」
「その帰りに、ベオルフ様を拾われたと聞いております。熱病にかかった子を捨てたようで、これも何かの縁だと、騎士団長は養子にしたのです」
「家族とは全く血が繋がっておらぬのか……」
神妙な面持ちでランディオ様が問いかけてきたので、私は頷いて肯定しました。
「血のつながりは無くても、仲の良いご家族ですよ。弟のガイセルク様は、とても兄を慕っていらっしゃいますし、両親ともに実の子のように接してくれていると、ベオルフ様は感謝しておりました」
「なんていうか……生い立ちもすげーな」
その言葉には「俺の知っている生い立ちとは違う」という意味合いが含まれているのでしょう。
小説版とは全く違いますものね。
「熱病の後遺症で、1年ほど療養が必要になったのもありますが、その後、騎士団長のすすめで始めた武術の上達が凄まじく、年の近い第二王子を守るよう、国王陛下に頼まれたのですよね……それが運の尽き……いえ、一応栄誉なことです」
「……ルナが棘のある言い方をしているけど、言いたくなる気持ちもわかる」
「でも、そのおかげで、私と接触していても不思議では無かったので良かったのかもしれません」
「なるほどな。立場上、ルナとセルフィスを守るように言われていたのか」
王太子殿下の護衛にできるかどうかという思惑が、国王陛下にはあったのだと思います。
それくらい、ベオルフ様の力は無視できるレベルではなかったのですもの。
「次期当主はガイセルク様に譲ると公言しているベオルフ様の力を、出生はわからずとも野に放つのは惜しいというのが大半の意見でした」
「強そうだもんな」
「強いですよ。とーっても! それに、現在はオーディナル様の加護を得ました。国としても、絶対に外へ出したくは無いでしょうし、最近は王太子殿下と交流があるそうなので、お抱え騎士にでもするつもりでは無いでしょうか」
「それに納得すると思うか?」
「神殿がうるさいでしょうし、ベオルフ様自身が、それを良しとはしないでしょう。元々国外へ行く予定だったので、この件が落ち着いたら旅立つのでは無いでしょうか」
オーディナル様とノエルを連れて、グレンドルグ王国以外の世界を見て回る旅路───そちらの方が、ベオルフ様の望みに近い気がします。
私も、リュート様に召喚されなければ同行していたことでしょう。
古くから伝わる、オーディナルの愛し子と黎明の守護騎士のようですね。
「リュートくんが召喚をミスれば、父上とベオルフとルナちゃんとノエルの世直し旅がはじまったかもネ。でも、今の状態が最良なんだって父上は言っていタ。だから、頑張るんだよリュートくん。父上は愛娘との旅を邪魔されて、少し機嫌が悪いケド、仕方ないヨネ」
「……やっぱり、そういう意味もあって、あの当たりの強さかよ」
「そりゃ、可愛い娘のそばにいられないんだモノ。そうなるヨネ」
仕方ねーなとリュート様は苦笑してから、何かを思い出すように目を閉じて肩をすくめます。
「でも、感謝している部分もある。言われて気づけた事も多いから……」
「父上は、厳しいけど優しいからネ」
「そう思う……良い親父だよな」
「……うん、そうダネ」
何故か、一瞬だけ泣きそうな顔をした時空神様は、優しく……淡く微笑んでおりました。
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