悪役令嬢の次は、召喚獣だなんて聞いていません!

月代 雪花菜

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第九章 遠征討伐訓練

9-25 ポーションが目指す道

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 スムージーとアイスココアを手に持ち、キャンピングカーから離れて表へ出ると、特殊クラスと元クラスメイト達が集まっていたので近づいてみたら、先ほどの凄まじい味がする薬液を、全員が試しに嘗めているという状態になっており、「何がそんなにマズイのだろう」と首を傾げていた。
 やはり、リュート様やマリアベルのような人は少ないのかもしれないと考えていたら、意外にもガイアス様から「うぐっ」というくぐもった叫び声が聞こえ、涙目になって慌ててスムージーを飲み出した。

「意外だな。俺並みの反応じゃねーか」
「少し苦いなーっていう人は、僕を含めて何名かいましたが、ガイアスほどの反応はリュートクラスと考えた方が良いみたいですね」

 シモン様も意外そうに、咳き込むガイアス様の背中を眺めて、反応があった人の名前をピックアップしているようであった。

「ほら、ガイアス、コレも飲め。こっちの方が甘いから」
「あ、ありがとう……感謝……する……」

 自分と同じ苦しみを味わっていることに共感を覚えたのか、リュート様は持っていたアイスココアを差し出して、背中をさすってやるほどの甲斐甲斐しさを見せ、何となくだが……羨ましいと感じてしまう。
 い、いけません。リュート様は善意でやっているのですから……と、自らに言い聞かせて輪の中に混じって座ると、待っていましたとばかりにチェリシュが膝の上へやってきた。
 ベリリが沢山入ったスムージーが気に入ったのか、手に抱えてご機嫌である。

「今のところ、確認方法は薬液を舐めるくらいですねぇ」

 シモン様に渡された資料とロヴィーサ様が持っていた抽出液の小瓶を手にしていたアクセン先生は、どうやらマリアベルクラスだったようで、ポーションは元々苦い物だと思っていたらしい。

「しかし、今までよく問題にならなかったな……これほど違いが出ていれば、何かしら話題に上がっていそうだが……」

 レオ様の言葉はもっともだ。
 今まで全くその気配が無かったという事にも驚きを覚えるが、これまでと何か違いでもあったのだろうか。

「あー、それは簡単だよ。今までロヴィーサほどの純度でマナ草の成分を抽出して精製できなかっただけでしょー。つまり、それだけ優秀だってことだよー」
「でも……リュートたちには迷惑をかけちゃったし……」

 シュンッとしているロヴィーサ様の肩にぽよんっと跳ねて飛び乗った真白は、不思議そうな顔をして首を傾げる。

「何で落ち込むの? 薬って、そういうもんじゃない? 体質によって、向き不向きがあって、その人に合う物を作っていくのが大事なんだと思うよー?」
「その人に合う……」
「ほら、マナ草は純度が上がれば、この成分がいきなり上昇するの。これが、マナの吸収を阻害する成分なんだけど、この世界の人は殆どが免疫を持っているんだよ。リュートやルナにはその免疫が無いから、拒絶反応が起こっているって感じ」

 これを見て見てと、何やらデータを見せているようだが、その文字がこの世界の文字では無い時点で、ロヴィーサ様や周囲の人たちにはわからない。

「真白……その言語は、この世界で通用しませんよ」
「あ、そっか! これって、ルナとベオルフとオーディナルしかわからなかったんだった!」
「え? そんな言語があんの?」
「え、えっと……これは……その……えーと……」

 真白が普段使っている言語は、ユグドラシルのシステムを運用する上で使っている物だから、一般的では無い。
 むしろ、オーディナル様くらいの管理者にならないと、理解も出来ないだろう。

「不思議ですねぇ……召喚獣の契約を結んでいる以上、リュート・ラングレイには読めるはずなのですが……わからないのですか?」
「全然わかんねーわ」
「そりゃわからないはずだよー、だって……もがもがもふぅ」
「真白。それを言ったら、紫黒に怒られるのではありませんか? オーディナル様も困りますし、ダメですよ」

 慌てて真白の口を塞いで止めるのだが、この子は言って良いラインがわかっていないのではないかと不安になってくる。

「かなりヤバイことなのか……お前な……オーディナル関連の暴露はヤメロ。俺らが消される」
「やだなー、さすがのオーディナルもそこまでは……」

 やらないと言いかけてから思案した真白は何かに気づいたかのように、うぅむと唸り出す。
 断言できないのなら、絶対に言わないでくださいねっ!?
 全員が顔色を悪くしている中、私は盛大に溜め息をつく。
 この子は本当に困った子だと私のところへ戻ってきて、チェリシュの頭の上に乗り、「ねー、オーディナルってリュートたちには危険なのー?」と言っている真白の脳天を指でグリグリしてやると、何が楽しかったのかきゃっきゃ笑い出してしまった。
 無邪気で自由奔放な真白に溜め息をこぼしながらも、突っ込んで聞いてこないリュート様や周囲にホッとしてしまう。
 さすがにコレを詳しく説明することは出来ないから助かった。

「しかし、ルナの作った料理や飲み物は、しっかり回復してくれるから助かるな」

 話題を変えるように、リュート様はスムージーを飲み、ご満悦な様子で笑いかけてくれたので、助かったのは此方の方だと考えながら笑みを浮かべる。

「良かったです。リュート様の魔力が回復できなければ、色々と問題ですから」
「ルナが来る前は、それが当たり前の状態だったんだけどな……」

 今では、それも思い出せないくらい充実しているし、満タンだと笑うリュート様の言葉で嬉しくなってしまう反面、とても大変な時代があったことを再認識し、今後そんな状態にならないように気をつけてストックを作っておこうと心に決めた。

「ベリリとブルーベリリのスムージーは甘酸っぱくて美味しいし、ココアは甘くてコクがある。どっちもいいなぁ……」

 どうやら、ココアがみんなにも行き渡ったようで、全員が甘い香りに誘われるように口を付けている。
 疲れたときに甘い物は体に染み渡りますよね。

「ルナの料理みたいに、ポーションも美味しかったら良いのに……」
「ロヴィーサ様。お料理だって、好みがありますよ? 好きな食材があるように、その人の嗜好によって別れるのです。それが、ポーションにあってもおかしくないと思いませんか?」
「嗜好……」
「ただ、ロヴィーサ様のハーブやポーションは、味というよりも体の反応となりますが……そちらの方が難しいのではないでしょうか。今わかっているだけでも、3タイプ……いえ、私みたいな特殊タイプもいるので、ポーション一つを見ても多種多様でしょうから」
「それこそ、一般的に効果がなくても、俺たちには効果がある成分を含むハーブだって存在するかもな」

 リュート様の言葉を聞き、ロヴィーサ様の表情に生気が宿る。

「タイプ別で……そっか……そうだよね、タイプ別にポーションを作れば良いんだ! タイプを振り分けるのも、検査薬を作れば良い話だし、薬に詳しい人がいないかなぁ」
「それなら、うちにいるリルビット族の三姉妹に聞けば良い。特に、クロはスペシャリストだからな」
「いいのっ!?」
「仲介はしてやるから、本人の同意があれば良いんじゃねーか?」

 そこは自分で交渉しろというリュート様に、ロヴィーサ様は目を輝かせて元気を取り戻したようである。
 目標が決まって、活力を取り戻したロヴィーサ様に安堵していると、何やら真白がブツブツ呟いているのが気になった。
 どうしたのだろう……

「おっかしいなぁ……なーんで、この世界のデータベースに繋がらないんだろう……あれー?」
「ダメダメなの?」
「うん。いつもなら抵抗なく繋がるのに、管理者権限の閲覧しかできないよ?」

 真白……普通にソレもヤバイですからね?
 むしろ、それ以上に何がわかるというのだろう……思わず尋ねてみたくなるが、ここではマズイと口を噤んだ。

「お前、正規ルートで来たわけじゃねーから、バグか制限がかかっちまったんじゃねーの? 雑に扱うからそうなるんだよ」
「ああぁぁ……リュートの言う通り、バグが発生して真白の能力に制限がかけられてるー! これじゃあ、普通の神獣と変わんないじゃないかー!」

 こんな弱い真白ちゃん意味なーい! と騒ぎだし、チェリシュの頭の上でコロコロ転がり出すので拾い上げようとしたのだが、横から伸びてきた手が真白をさらっていった。

「お前は少しうるせーよ。ほら、生クリームやるから食ってろ」
「もぐもぐもぐもぐ……もっとー!」
「……俺のが減る」

 そう言いながらも、甲斐甲斐しく世話を焼くリュート様と、甘える真白を見ていて羨ましくなったのか、チェリシュがジーッと私を見上げてくる。
 わ、わかっておりますとも、生クリームですよね?
 アイスココアの生クリームを取り出したスプーンで掬って食べさせると、チェリシュはにぱーと満足そうに笑い、お返しとばかりに自分の分をくれた。
 真白が転がったので乱れている髪を直してやり、スムージーとアイスココアを作って良かったなと、皆の表情を眺めながら思う。
 水分補給と栄養補給、それに魔力も補給できて一石二鳥です。

「そうだ、リュート。ゴーレムの件で話があったんだけど、今晩時間は取れそう?」
「ああ、俺もそれは聞きたかった。お前……また寝ないで研究してたんじゃねーだろうな」
「さすがに昨日は寝たよ」

 ボリス様が胸を張って、そういうのだが「昨日は……って」と、リュート様だけではなく周囲も呆れ顔だ。
 しかし、ゴーレムって……調味料を作る工場に導入する予定のゴーレムですよね?
 何か進展があったのでしょうか……とても気になります!
 聞きたいことは沢山あったが、そろそろ移動を開始しなければならない時間だと全員が片付けに入る中、私は慌てて残っているスムージーを飲み干した。


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