ロード・オブ・ファンタジア

月代 雪花菜

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こんな感じでいかがでしょうか

 
 
 IDは作ってあるということだったのでスマホアプリをダウンロードし、そこでキャラクター作成ができるからやってみる?と聞いたところ、1も2もなく頷いた彼女と共に、キャラメイクを開始した。
 画面を見ながら親友に聞いていたキャラクターを上手に作るコツをわかりやすく説明していたのだが、正面に座っていると見づらくて仕方なかったため断りを入れてから隣に移動し、一緒にスマホの画面を見つめて作った成果なのだろうか、とんでもなく愛らしい俺好みの……いや、俺の想像を上回るキャラクターがそこにいた。

 何とか彼女が納得の行くようなものに仕上がったようだけど、なんか……本当にすげー可愛い子ができたな。

 澄んだ空色の髪がとても綺麗だし、蜂蜜みたいな瞳もキラキラしていて宝石みたいだ。
 ふんわりしたイメージで、胸を小さくしようとしたところで「えっ」と声をあげてしまったのはマズかった。
 だってさ、ほら、本人っぽくねーだろ?
 いや、俺の好みとか……も、あるけどさ。
 さすがに、マズイことをした自覚があり固まってしまった俺を、不思議そうにジッと見ていた彼女は、何かを察したように慌てたあと「私に近い感じって言ってましたものね」と、焦ったように言ってから、「誤魔化しはよくないですよね」と照れたように笑った。
 こんな純真無垢な女性を相手に、俺の好みが大きな胸なんて言えない……言ったらダメなやつだ。
 むしろ、言えたら生粋のアホか空気が読めない馬鹿だろう。
 マジで「えっ」と声を出してしまった俺の馬鹿っ!
 自己嫌悪に陥っていた俺の横から、控えめな甘くも柔らかい声がかかった。

「こんな感じでいかがでしょうか」
「いや、結月ちゃんが気に入っているなら良いんじゃないかな」
「あ、あの……隆人さんは……ど、どう思いますか?」

 チラリと上目遣いで見てくる彼女に、心臓がドキリと大きく音を立て息がうまく吸えなくなる。
 マズイ……こういう場合、正直に言って良いのか?
 家族以外の女性と、こんなに近くで接したことが無かったから何が正解かわからないけど、彼女はこのキャラを見てどう思うか素直な感想が欲しいのだろう。
 心臓の鼓動がいつもより速いようだが、それどころではない。

「えっと……すげー可愛いと思う。結月ちゃんらしく、ふんわりとしてやわらかい感じで、とっても可愛い」

 素直な感想を述べてから彼女をチラリと見るが……あれ?固まってる?
 変なことは言っていないはずだが、どうしたのだろうと覗き込めば、いきなり動き出した彼女は、真っ赤な顔をして何かを言いたげに口を開くのだが、ピタリと動きを止めたあと両手でいきなり顔を覆い、か細い声でこう言った。

「あり……がとう……ございますぅ」
「お、おう」

 す、素直に言い過ぎた……かもしれない。
 可愛いって言いすぎたか?
 で、でも、ほら、キャラクターに対してだから……彼女に言ったわけではないし……いや!彼女が可愛くないとか絶対に言わないけど!
 スゲー可愛いからこそ、反対に面と向かって言うのは……照れるだろ?
 こういうことを、もっとスマートに言えるようになったらいいのだろうか。
 生まれ変わったら、そうなりたいものだ。

「か、髪は……短いほうが好きですか?それとも、長いほうが好きですか?」
「そうだな。風になびく長い髪って綺麗だと思う」
「で、では、長めにしておきますねっ」
「ありがとう」

 礼を言うのも変だなと思いつつ彼女を見ると、とても嬉しそうに笑うので細かいことは気にしないようにして、キャラメイクの画面をじっくり見つめる。
 本当に可愛いよな。
 白いローブとか似合いそう……あ、そういえば、ドロップ品の中にローブがあったっけ。
 俺は使わないから、取引所に出そうと思っていた品が倉庫に眠っていたはず。
 同じドロップ品でも性能が全く違うのだが、アレはいいオプションがついていたから、彼女にプレゼントしよう。
 Lv10までしか装備はできないけれども、初心者には心強い防具になるだろうし、自分がドロップしたアイテムを彼女が身につけていると考えるだけで、なんだか心が浮き立ってくる。
 いやいや、落ち着け俺。
 彼女が近くにいるからって、舞い上がりすぎてねーか?
 隣に……いるんだもんな。
 この距離は近くないか?
 スマホ画面を二人で覗き込んでいたのだから、近くなって当然だ。
 で、でもな……肩先が触れ合う距離って……

 意識し過ぎると良くない。
 奇妙な緊張を感じるだけではなく、喉が干上がってくるように張り付いた。
 コーヒーでも飲んで落ち着くか……って、いつの間にか空になってる。
 ハッとして彼女のマグカップを見ると、すっかり空になってしまっていて、これは失態とばかりに画面を操作して細かい部分を調整している彼女に声をかけた。

「気づかなくてごめん。コーヒーのおかわり、どう?」
「す、すみません。あの……本当にお気遣いなく……」
「遠慮しなくていいよ。俺も飲みたいしさ」

 空になった自分のマグカップを見せて言うと、彼女は目をパチパチさせたあと、気を抜いたようにふにゃりと笑う。
 可愛いなぁ……そういう反応するから嬉しくなってしまうんだって、この子は気づいているのだろうか。
 気づいているはずないよな。
 でも、来たときよりも打ち解けて、柔らかい雰囲気になっているのが嬉しい。
 それと同時に、もっと彼女を知りたいという欲が出てくる。

「結月ちゃんは、どんなコーヒーが好き?俺は、そういうことも知りたいんだ」

 素直な気持ちを告げると、彼女は目を大きく見開き数回瞬きをしてから俺を見上げ、柔らかく微笑んだあと小さく呟いた。

「み、ミルクたっぷりの……カフェオレが……好きです」
「了解」

 そっか、ミルクたっぷりのカフェオレね。
 コーヒーは、それが好みか。
 彼女の好みを1つ知って嬉しくなる俺の後ろ姿を、彼女が真っ赤な顔をしてジッと見つめていたことを、俺は随分長い間知らずに居たのである。



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