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私で良ければ、お力になりたいです
新たにコーヒーを淹れて戻り、結月ちゃんにカフェオレのカップを渡すと、彼女は嬉しそうに礼をいって受け取ってくれたあと口をつけ、目を輝かせて俺を見る。
「うわぁ……すごく美味しいです」
「そうか、それは良かった」
カフェオレひとつでこんなに喜んでくれるなら、いくらでも!って言ってしまいそうだ。
でも、まあ……家に彼女が来ているときなら淹れるだろう。
この笑顔が見たいからな。
「キャラメイクは完了です」
「そっか、やっぱ……可愛いよなぁ」
「わ、私が使ってもいいのかどうか迷うくらい可愛らしいですよね」
「何いってんだ。結月ちゃんっぽい感じで、スゲー可愛くていい感じだと思う」
ビクッと横で体が震えた気配がして、何事かと視線を向けると、彼女は小刻みに震えてスマホを持っていない右手で頬を包み込んでいた。
「どうかした?」
「い、いえ……嬉しかった……だけです」
「そっか、それは良かった」
せっかく可愛く出来たのに、結月ちゃん以外に誰が使うというのか……この愛らしさは、彼女が入ってこそ輝くような気がする。
俺の持っている白のローブを着たら、愛らしさがハンパないだろう。
そういえば、装飾が凝った杖もあったよな。
アレを取りに行けば、もっと可愛いだろう。
今の課金アイテムであるアバターは微妙なものが多いが、そのうち彼女に似合う物が出てくるかもしれない。
専用アバターか……いいな。
夏になれば水着なんて出てきそうだ。
冬はサンタ服かっ!?
……ヤバイ、絶対に可愛いやつだろ!
許可を貰ってからスクショさせてもらおう。
「あの、職業選択画面になったのですが、ヒーラーって……どれでしょう。ヒーラーという職業が見当たらないのですが……」
たくさんある職業の中から必死に探している様子ではあるが、もともとヒーラーという職業名ではない。
「そこのローブを着た、聖職者が回復職だね」
「これですか……隆人さんの騎士はありますが、エンチャンターという職業も見当たりませんね」
「ああ、俺のはそこにいる付与術師がLv20になったらなれる二次職なんだ」
スマホ画面を指し示して教えると、彼女は驚いたようにこちらを見て目を丸くする。
「え?も、もうLv20なんですかっ!?」
「それくらいまでは、レベルが上がりやすいから、メインクエストをしていればすぐ転職できる。問題はLv30からだな。途端に上がりづらくなるんだ。経験値を稼ぐなら、PTでダンジョンがオススメだね」
「へ、へぇ……そうなんですね」
感心した声を上げる彼女のスマホ画面を見て気づいたことがあり、思わず待ったをかける。
そうか、結月ちゃんは知らないんだな。
「最初に選ぶ職業は、メイン職業とサブ職業なんだ。メインはLv50で三次職が解放され、サブ職は二次職までとなる」
「じゃあ、どちらかメインにする職業を決めないといけないのですね」
「まあ、一次職が戦闘、二次職が補助か生産にする人が多いな」
「どうしてですか?」
「戦闘職は三次職のスキルが強力だと言われているからだね。綾音みたいに戦闘+戦闘という人もいるし、生産+生産という人もいる。何をメインとサブにするかによって、多種多様の楽しみ方ができる」
彼女は「意外と奥が深いのですね」と言うと、うぅーんと悩みだしてしまった。
まあ、メインに料理人というのも悪くはないが、彼女はヒーラーをしたいと言っていたので、それを考慮するとメイン職を聖職者にして、サブに料理を持ってきたほうが効率は良いだろう。
聖職者の二次職は、どちらになるかわからないが、復活があったり回復があったりと様々だ。
それに、生産職をサブに持ってくることは、公式でも推奨されている。
デメリットが少ないからだ。
生産職は、三次職が存在しない。
二次職までなのだが、メインを生産職にしているとLv50からは『特殊生産』という特別なコンテンツが解放される。
しかも、これがかなり難しいけれども性能が段違いだというから、生産メインの人たちは今から楽しみでならないようだ。
「隆人さんを回復したいから……聖職者メインで……次に料理かしら」
「……へ?」
「これと……これ……って……あっ!」
いま、俺を回復したいって言った?
え?
回復……してくれるの?
俺と一緒にってこと?
それって、これからもこうして一緒に居たいと考えてくれている……なんて、都合のいいことを考えてしまう。
でも、素直に一緒の時間を共有できることが嬉しい。
赤くなって固まってしまった結月ちゃんを、出来るだけ刺激しないように囁くように声をかける。
「回復してくれる?」
ピクリと反応した彼女は、パッとこちらを見てから勢いよく首を縦に振った。
「は、はい!隆人さんは、盾職ですもの。回復が必要ですよね?わ、私で良ければ、お力になりたいです」
「スゲー嬉しい。助かるよ。結月ちゃんとなら頑張れそう」
「……っ!?」
再びピタリと動きを止めた彼女は、唇をきゅっと結び、何故が小刻みに震えている。
あれ?
耳まで赤く……
慌てたようにマグカップを掴んでカフェオレをコクコク飲んでいるけど、大丈夫か?
「え、えっと……が、頑張ります。一緒に……PTとか組んでくださるのでしょうか」
「勿論」
「本当ですかっ!?わ、わぁっ、嬉しいです!」
目をキラキラ輝かせてこちらをパッと見た彼女の喜びの表情に、俺まで嬉しくなってしまう。
ここまで喜ばれるとは思っていなかったから、なんだか少しくすぐったい。
「大丈夫。ちゃんと結月ちゃんを守るよ」
「は、は……はぃ……よろしく……お願いしますぅ」
前衛職の不人気な盾職を選んで良かったと、心から思う。
結月ちゃんに回復してもらえるんだって考えるだけで、胸の中がむずむずしてくる。
彼女に敵が向かわないように、ちゃんとヘイト管理しないとな。
俺の次に狙われやすいんだから、死なせないように守らないといけない。
照れたような笑みを浮かべて、こちらをチラリと見てはえへへと笑う愛らしさに胸を高鳴らせながら、そんなことを俺は考えるのであった。
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