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君だけちょっと、やんちゃの方向ベクトルが違っていますよ
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※作中の麻雀のルール、及び役満は現実にはあり得ないものですので、一種のファンタジーとしてお楽しみ下さい。
「何か暇な気がする。いや暇だと思う。うん暇だ」
生徒会長を免職となった柏木亮は、2年F組の教室で呑気に過ごしながら大欠伸をした。彼はもうすっかりと問題児だらけのF組に溶け込んでいた。そればかりか驚くほど浮世離れした行動をとる彼は、突拍子もない事を起こすという意味では、F組内でもトップクラスの問題児となりつつある。
「何意味分かんないこと言ってんの。何で麻雀してんのに暇なんだよ」
ショッキングピンクに髪を染めている少年。百瀬佑《たすく》は右隣の席にいる亮の頭を軽くはたいて突っ込みを入れた。麻雀をしながら暇だと言える亮は、馬鹿なのか器用なのかよく分からないと彼は呆れて溜息を漏らした。
「あ、俺ドンジャラね」
亮はブルーハワイ色に髪を染めている少年。高梨歩生が捨てた牌を見て目をキラキラと輝かせ、自分の牌をまるで雀プロのように左端から綺麗に倒した。ただ残念なのは上がりの掛け声を間違えてしまっている事だ。どうやら彼は、ドンジャラという単語をえらく気に入ってしまったらしい。何度仲間が訂正しようとも、頑なにドンジャラと言い続けるのだ。
「だから麻雀だって言ってんだろ。ロンだろうが。何でドンジャラなんだよ」
もういっそこの際、実家の押入れに眠っているドンジャラを送ってもらおうか。そう思いながら歩生は役が分からない亮の代わりに倒れた牌を確認した。大体亮はドンジャラを基準としてルールを覚えてしまっている為、役なしで上がり減点になる事が多く、今回もまたそうじゃないのかと彼は半分呆れた気持ちで牌を覗き込んだが、すぐに悲鳴のような喚声を上げた。
「うわ、え、何なのこれ。天和八連荘大四喜字一色四暗刻単騎待ちって。こんな役、初めて見たんだけど」
歩生は有り得ない役満がそこにあるのを確認し、驚きのあまり何度も何度も目を擦った。その歩生の驚き様に百瀬や、もう一人の仲間である銀色に髪の毛を染めた灰谷章太郎まで亮の手元を覗き込み歩生と同様に喚声を上げた。更にその騒ぎを聞きつけたクラスメイト達が続々と牌を覗きやはり同様に皆が叫んだ。大きな音が苦手な亮はそれに驚き、両手で耳を塞ぐと三人の仲間やクラスメイトの顔をキョロキョロと交互に見た。
「それ凄いの」
「凄えよ馬鹿。凄すぎてギネスレベルだよ」
佑は怒鳴って亮の問いに答えながら、スマホで世にも珍しい役満の写真を取りまくっていた。はい亮君。笑ってピースしてと歩生が言うものだから、亮は素直にその指示に従い満面の笑みを浮かべ被写体となった。クラスメイト達も面白がり、次々に写真を撮り始めたものだから、まるで芸能人の記者会見さながらといった大量のシャッター音が教室中に響いた。
「ええ。何点になんのこれ。ああっと、えっと。え、三十三万六千点」
「やべえな亮。運使い過ぎて明日死ぬんじゃね」
佑が有り得ない点数を呟くと、章太郎がにやにやと笑いながら亮の頭を軽く小突いた。彼は亮をよくいじっては面白がるところがある。
「ええ、それは嫌かもしんない。まあ、いいや。気にしないことにする。これが最終局だし俺の勝ちだから、皆言うこと聞けな」
F組はホームルーム以外は授業が無いという、驚愕の特別カリキュラムが設けられている為、在籍する生徒は亮を含め、毎日の様にトーナメント形式のゲームや試合を行い暇を潰している。今回は一番高い点数を出した奴が勝者という分かりやすいものだ。
それにしてもF組だけ授業が無いとか。幾らなんでもここまで露骨に差別をしていては、保護者からクレームが起きないのだろうかと当初、亮は疑問に思っていたが、金さえ払えば授業単位も無く自由であるという事にF組の連中は満足しているらしく、今までそういった事態にはならなかったらしい。一応彼らも将来の事は考えているようで、不良然とした格好からは想像がつかないが、午後からは自習の時間と暗黙のルールが決められている。最近では完全無欠の元生徒会長様が勉強を教えている為か、クラスの偏差値が鰻上りとなり教師陣を驚かせる現象が起きていたりするのだけれども。
「ええ。今度はなにやる気だよお前。こないだみたいな全員参加の昆虫採集で、小学生の夏休み気分とかそういうのは止めろよ」
クラスメイトの一人が亮にそう言い、険しい表情を見せた。
つい数日前だ。勝者となった亮の命令で校外に飛び出し、山中を駆けずり回ってカブト虫やクワガタを取りまくったのは。誰かの提案で虫相撲トーナメントが始まってしまったものだから、午後からの自習もそっちのけで一日が終わってしまったのは記憶に新しい。ついでに言えば全員、気持ち悪いくらいの虫刺されが出来たのは思い出したくもない出来事だ。そういえば険しい表情をした彼は、虫刺されの数がぶっちぎりで酷かったような気がする。
「何言ってんの。俺、高校生よ。もっと風流なことしちゃうもんね」
得意げにそう言う亮を横目に撮影会ごっこに飽きた歩生は、麻雀を片付けながら和歌でも詠むか。それとも琵琶でも弾くのかよと茶化した。それに亮は首を横に振って答えると呆れた表情で溜息を吐き、いやに得意げな口調で言葉を紡いだ。
「もっと想像力を働かせたまえ。夏と言ったら流しそうめんだろうが。2年F組で流しそうめん大会を開催したいと思います。今日の昼にやるから皆そうめん以外の流すもん持ってきてね」
流石は世間の常識から、大幅にずれた思考回路を持つ箱入りのお坊ちゃまだ。誰がド田舎の山奥にある全寮制の学校で大規模な流しそうめんを個人でしようと思うだろうか。仮にやりたいと思ったとしても、資材調達の事などを考えると普通は諦めるはずだ。
「流す台がねえのにどうすんだよ。今から竹林探しに山ん中、駆けまわんのかよ」
章太郎が眉を顰めて亮を見ると、彼は益々得意げな顔をして笑った。
「御心配なく。昨日じいやにしたいって言ったら、今朝一番で届けてくれたから。多分、第二校庭に設置してくれたはずだと思う」
そうだ。亮は一般人ではなかった。あまりに裕福過ぎ、もはや現実味を感じないような家庭のお坊ちゃまだった。彼が実家に残した坊ちゃまを溺愛する教育係のじいやは、坊ちゃまがあれがしたいと一言呟いただけで勝手にこの学園まで来てそれを用意をしてしまう人物だというのを、章太郎を含めたF組の皆はすっかりと忘れてしまっていた。この前の虫取り大会でも、クラス全員分の虫取り網と籠を用意したのは彼だったというのに。
「本当にお坊ちゃんだなあ、お前」
章太郎はため息とともに、亮の頭を軽く何度か撫でた。それを褒められたと思った亮は気を良くし、もっと褒めろといったように彼の手に頭を押し付けた。まるでそれは飼い主に甘える飼い犬のようで、なんだかペットを飼ったこともないのにそんな気分になってしまう。
「うん。血統書付のお坊ちゃんだもん」
胸を張って亮が言うと、クラスメイト達からは「よ、お坊ちゃん」というお決まりのコールが起きた。すると亮は椅子の上に乗り、街頭演説をする政治家よろしく皆に手を振り始めた。
もしこの場に現生徒会の役員たちがいたら、卒倒するのではないだろうか。なにせ生徒会長だったころの亮は、常に不機嫌でしかめっ面をしていたし、人当たりはそれはそれは悪かった。こうして冗談を言う事も、ふざけたノリに付き合うなんてことも一切無かったのだから。
「そうめん以外の流すもんって何だよ」
「何でもいいよ。ウマい棒でもいいよ。俺の希望は生野菜サラダ味ね」
クラスメイトから投げかけられた疑問に、亮は斜め上の方向性で答えた。ウマい棒が流れてくる流しそうめんなんてまともじゃないが、既に亮がまともではないので、彼が主催するものはそうなんだろうと、もはや彼の突拍子もない行動や発言に慣れっこのF組の皆は誰も突っ込みを入れなかった。むしろ、いやチーズ味の方が麺つゆに合うんじゃないか。いや、明太子味じゃないかと。どのウマい棒と麺つゆが一番よく合うのかという議論さえ繰り広げられていた。
「じゃあ鶏卵所の息子の俺は、実家から送られてきた嫌がらせのような大量の卵で煮玉子でも作ろっかな」
「じゃあ茄子農家の息子の俺も、嫌がらせのような量の茄子で焼き茄子でも作ろう」
「じゃあ白玉粉を製造してる実家を持つ俺は、大量の白玉茹でて持ってくわ」
「じゃあ缶詰生産を生業とする肉親を持つ俺は、果物の缶詰ダンボールで持ってくとするか」
次々とクラスメイト達から自室の不要品。もとい実家からの仕送りを利用して流しそうめん大会を盛り上げる提案が上がった。麺つゆと茄子。麺つゆと煮玉子とは最強の相性だ。これは腹が減って来た。亮の腹の虫が大きな音を立てて鳴いた。
「やべえ。完璧な布陣が出来たな。流しそうめんしながら焼き茄子食って、お口直しに煮玉子があって、デザートにフルーツポンチだなんて幸せすぎだろ」
亮は腹を擦りながら、今日の昼食を思い浮かべて唾を飲み込んだ。そして早く昼休みにならないかと教室のホワイトボードの上にある時計に視線をやった。ふと佑、歩生、章太郎も同じ様に時計を見ていたのに亮は気付き、それがなんだか可笑しくて声を出して笑ってしまった。
なんだよ亮。なに笑ってんだよ。そう三人に言われて軽く小突かれながら、亮は気の合う友人がこんなに近くにいてくれるというのは、本当に幸せだとその思いを噛み締めまた笑い声を上げた。それから生徒会長を免職になって本当に良かったと、しみじみそう思ったのだった。
「何か暇な気がする。いや暇だと思う。うん暇だ」
生徒会長を免職となった柏木亮は、2年F組の教室で呑気に過ごしながら大欠伸をした。彼はもうすっかりと問題児だらけのF組に溶け込んでいた。そればかりか驚くほど浮世離れした行動をとる彼は、突拍子もない事を起こすという意味では、F組内でもトップクラスの問題児となりつつある。
「何意味分かんないこと言ってんの。何で麻雀してんのに暇なんだよ」
ショッキングピンクに髪を染めている少年。百瀬佑《たすく》は右隣の席にいる亮の頭を軽くはたいて突っ込みを入れた。麻雀をしながら暇だと言える亮は、馬鹿なのか器用なのかよく分からないと彼は呆れて溜息を漏らした。
「あ、俺ドンジャラね」
亮はブルーハワイ色に髪を染めている少年。高梨歩生が捨てた牌を見て目をキラキラと輝かせ、自分の牌をまるで雀プロのように左端から綺麗に倒した。ただ残念なのは上がりの掛け声を間違えてしまっている事だ。どうやら彼は、ドンジャラという単語をえらく気に入ってしまったらしい。何度仲間が訂正しようとも、頑なにドンジャラと言い続けるのだ。
「だから麻雀だって言ってんだろ。ロンだろうが。何でドンジャラなんだよ」
もういっそこの際、実家の押入れに眠っているドンジャラを送ってもらおうか。そう思いながら歩生は役が分からない亮の代わりに倒れた牌を確認した。大体亮はドンジャラを基準としてルールを覚えてしまっている為、役なしで上がり減点になる事が多く、今回もまたそうじゃないのかと彼は半分呆れた気持ちで牌を覗き込んだが、すぐに悲鳴のような喚声を上げた。
「うわ、え、何なのこれ。天和八連荘大四喜字一色四暗刻単騎待ちって。こんな役、初めて見たんだけど」
歩生は有り得ない役満がそこにあるのを確認し、驚きのあまり何度も何度も目を擦った。その歩生の驚き様に百瀬や、もう一人の仲間である銀色に髪の毛を染めた灰谷章太郎まで亮の手元を覗き込み歩生と同様に喚声を上げた。更にその騒ぎを聞きつけたクラスメイト達が続々と牌を覗きやはり同様に皆が叫んだ。大きな音が苦手な亮はそれに驚き、両手で耳を塞ぐと三人の仲間やクラスメイトの顔をキョロキョロと交互に見た。
「それ凄いの」
「凄えよ馬鹿。凄すぎてギネスレベルだよ」
佑は怒鳴って亮の問いに答えながら、スマホで世にも珍しい役満の写真を取りまくっていた。はい亮君。笑ってピースしてと歩生が言うものだから、亮は素直にその指示に従い満面の笑みを浮かべ被写体となった。クラスメイト達も面白がり、次々に写真を撮り始めたものだから、まるで芸能人の記者会見さながらといった大量のシャッター音が教室中に響いた。
「ええ。何点になんのこれ。ああっと、えっと。え、三十三万六千点」
「やべえな亮。運使い過ぎて明日死ぬんじゃね」
佑が有り得ない点数を呟くと、章太郎がにやにやと笑いながら亮の頭を軽く小突いた。彼は亮をよくいじっては面白がるところがある。
「ええ、それは嫌かもしんない。まあ、いいや。気にしないことにする。これが最終局だし俺の勝ちだから、皆言うこと聞けな」
F組はホームルーム以外は授業が無いという、驚愕の特別カリキュラムが設けられている為、在籍する生徒は亮を含め、毎日の様にトーナメント形式のゲームや試合を行い暇を潰している。今回は一番高い点数を出した奴が勝者という分かりやすいものだ。
それにしてもF組だけ授業が無いとか。幾らなんでもここまで露骨に差別をしていては、保護者からクレームが起きないのだろうかと当初、亮は疑問に思っていたが、金さえ払えば授業単位も無く自由であるという事にF組の連中は満足しているらしく、今までそういった事態にはならなかったらしい。一応彼らも将来の事は考えているようで、不良然とした格好からは想像がつかないが、午後からは自習の時間と暗黙のルールが決められている。最近では完全無欠の元生徒会長様が勉強を教えている為か、クラスの偏差値が鰻上りとなり教師陣を驚かせる現象が起きていたりするのだけれども。
「ええ。今度はなにやる気だよお前。こないだみたいな全員参加の昆虫採集で、小学生の夏休み気分とかそういうのは止めろよ」
クラスメイトの一人が亮にそう言い、険しい表情を見せた。
つい数日前だ。勝者となった亮の命令で校外に飛び出し、山中を駆けずり回ってカブト虫やクワガタを取りまくったのは。誰かの提案で虫相撲トーナメントが始まってしまったものだから、午後からの自習もそっちのけで一日が終わってしまったのは記憶に新しい。ついでに言えば全員、気持ち悪いくらいの虫刺されが出来たのは思い出したくもない出来事だ。そういえば険しい表情をした彼は、虫刺されの数がぶっちぎりで酷かったような気がする。
「何言ってんの。俺、高校生よ。もっと風流なことしちゃうもんね」
得意げにそう言う亮を横目に撮影会ごっこに飽きた歩生は、麻雀を片付けながら和歌でも詠むか。それとも琵琶でも弾くのかよと茶化した。それに亮は首を横に振って答えると呆れた表情で溜息を吐き、いやに得意げな口調で言葉を紡いだ。
「もっと想像力を働かせたまえ。夏と言ったら流しそうめんだろうが。2年F組で流しそうめん大会を開催したいと思います。今日の昼にやるから皆そうめん以外の流すもん持ってきてね」
流石は世間の常識から、大幅にずれた思考回路を持つ箱入りのお坊ちゃまだ。誰がド田舎の山奥にある全寮制の学校で大規模な流しそうめんを個人でしようと思うだろうか。仮にやりたいと思ったとしても、資材調達の事などを考えると普通は諦めるはずだ。
「流す台がねえのにどうすんだよ。今から竹林探しに山ん中、駆けまわんのかよ」
章太郎が眉を顰めて亮を見ると、彼は益々得意げな顔をして笑った。
「御心配なく。昨日じいやにしたいって言ったら、今朝一番で届けてくれたから。多分、第二校庭に設置してくれたはずだと思う」
そうだ。亮は一般人ではなかった。あまりに裕福過ぎ、もはや現実味を感じないような家庭のお坊ちゃまだった。彼が実家に残した坊ちゃまを溺愛する教育係のじいやは、坊ちゃまがあれがしたいと一言呟いただけで勝手にこの学園まで来てそれを用意をしてしまう人物だというのを、章太郎を含めたF組の皆はすっかりと忘れてしまっていた。この前の虫取り大会でも、クラス全員分の虫取り網と籠を用意したのは彼だったというのに。
「本当にお坊ちゃんだなあ、お前」
章太郎はため息とともに、亮の頭を軽く何度か撫でた。それを褒められたと思った亮は気を良くし、もっと褒めろといったように彼の手に頭を押し付けた。まるでそれは飼い主に甘える飼い犬のようで、なんだかペットを飼ったこともないのにそんな気分になってしまう。
「うん。血統書付のお坊ちゃんだもん」
胸を張って亮が言うと、クラスメイト達からは「よ、お坊ちゃん」というお決まりのコールが起きた。すると亮は椅子の上に乗り、街頭演説をする政治家よろしく皆に手を振り始めた。
もしこの場に現生徒会の役員たちがいたら、卒倒するのではないだろうか。なにせ生徒会長だったころの亮は、常に不機嫌でしかめっ面をしていたし、人当たりはそれはそれは悪かった。こうして冗談を言う事も、ふざけたノリに付き合うなんてことも一切無かったのだから。
「そうめん以外の流すもんって何だよ」
「何でもいいよ。ウマい棒でもいいよ。俺の希望は生野菜サラダ味ね」
クラスメイトから投げかけられた疑問に、亮は斜め上の方向性で答えた。ウマい棒が流れてくる流しそうめんなんてまともじゃないが、既に亮がまともではないので、彼が主催するものはそうなんだろうと、もはや彼の突拍子もない行動や発言に慣れっこのF組の皆は誰も突っ込みを入れなかった。むしろ、いやチーズ味の方が麺つゆに合うんじゃないか。いや、明太子味じゃないかと。どのウマい棒と麺つゆが一番よく合うのかという議論さえ繰り広げられていた。
「じゃあ鶏卵所の息子の俺は、実家から送られてきた嫌がらせのような大量の卵で煮玉子でも作ろっかな」
「じゃあ茄子農家の息子の俺も、嫌がらせのような量の茄子で焼き茄子でも作ろう」
「じゃあ白玉粉を製造してる実家を持つ俺は、大量の白玉茹でて持ってくわ」
「じゃあ缶詰生産を生業とする肉親を持つ俺は、果物の缶詰ダンボールで持ってくとするか」
次々とクラスメイト達から自室の不要品。もとい実家からの仕送りを利用して流しそうめん大会を盛り上げる提案が上がった。麺つゆと茄子。麺つゆと煮玉子とは最強の相性だ。これは腹が減って来た。亮の腹の虫が大きな音を立てて鳴いた。
「やべえ。完璧な布陣が出来たな。流しそうめんしながら焼き茄子食って、お口直しに煮玉子があって、デザートにフルーツポンチだなんて幸せすぎだろ」
亮は腹を擦りながら、今日の昼食を思い浮かべて唾を飲み込んだ。そして早く昼休みにならないかと教室のホワイトボードの上にある時計に視線をやった。ふと佑、歩生、章太郎も同じ様に時計を見ていたのに亮は気付き、それがなんだか可笑しくて声を出して笑ってしまった。
なんだよ亮。なに笑ってんだよ。そう三人に言われて軽く小突かれながら、亮は気の合う友人がこんなに近くにいてくれるというのは、本当に幸せだとその思いを噛み締めまた笑い声を上げた。それから生徒会長を免職になって本当に良かったと、しみじみそう思ったのだった。
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