恋人を目の前で姉に奪い取られたので、両方とも捨ててやりました

皇 翼

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4.

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発表の後、個室に向かった二人。
部屋に着いてもやはりペアの再抽選などある筈がなく、そのまま今回の卒業試験についての説明を試験官から受け――。

「ちょっと、アーサー!私の膝を枕にしないでください!!」
「このソファーは狭いからね。仕方ない仕方ない」
「キモイキモイキモイキモイ!!あっちに座ってください!!!」
「……これから卒業試験の内容説明を始めます」

ようとしていたが、私がアーサーに絡まれて、それどころではなくなっていた。
奥に既に着席していた試験官の対面、入り口側にあった普通に座れば十二分に間を空けて座れるはずの二人掛けのソファー。試験官の『着席してください』という言葉に従った私が座った直後に、この男は寝っ転がるように私の膝に頭を乗せたのだ。

案の定、その行動に対してブチ切れる私。
しかしながら、この争いは学院の教師も兼任しているこの試験官からしたらいつもの光景であった。内心、またやってるな~くらいにしか思われていないことをその表情で察してしまった。最悪すぎる。
それ故に、我慢の限界を超えた私が試験官自身の真横にアーサーを寝た体制のままで投げつけてこようと、動揺することなく試験の内容説明を始めるのだった。

「さて、今回の卒業試験で貴方達は『ジョーカー』の難易度を引き当てました。試験を受けるのであれば、こちらの書類に目を通した上でサインをしてください。引き返すのならこれが最後です」
「……この免責同意書って、エスパーダになるためのものじゃないですか?」

この学校出身の魔道士として新たな働き手が生まれるというのに、欠片も嬉しさが感じられない無機質な声で、担当官が淡々と説明をする。
それに対して、アーサーへの怒りをなんとか収めてから、書類に目を通した上で、試験官へ疑問の言葉を発した。

「はい。この『ジョーカー』の試験は特殊なものなので、実際のエスパーダとしての任務となっています。これらの書類にサインをした時点で貴方達は学院の卒業資格を得ることによって他の学生よりも一足先に、晴れて正式なエスパーダとしてこの任務に就けますよ」

ここまで説明されて、なるほどと納得する。
これは、資格を得られるのではない。資格がなければ達成できないレベルのものなのだ。
基本的にエスパーダには特殊な権限が与えられる。それは多様な国での滞在許可であったり、本来であれば高い権力や権限が必要な資料の閲覧許可、禁足地や禁域と言った一般人では立ち入りが出来ない場所への立ち入りなどなど多岐に渡る。
だからこれは与えてもらえないのではなく、前提として与えないと絶対に完遂することが出来ない試験任務なのだ。

「一つ質問なのですが、この『ジョーカー』の試験は今まで何人くらい帰ってきたのですか?」

先程とは打って変わって、キリッとした表情で敬語を使い、試験官に質問をするアーサー。
きっと他の生徒が噂する『ジョーカー』の難易度が嘘くさいと思ったのだろう。なにせ受ければ即エスパーダだなんて、もしかしたら噂が盛られているだけという可能性もなくはない。

「この50年の中で難易度の試験を引き当てた人は、貴方達を含めないと8組。そのうち受けることを選択したのが3組、そしてその3組とも帰ってきていません」
「なるほど。全員、生きて帰る価値のない程の雑魚だったんですね」

アーサーがニコリと笑顔を見せながらも、失礼極まりないことを発言するが、担当官が気にした様子はなかった。それがこの学校での普通である。負けて死ぬような弱者はいらない。
しかしながら、こんな質問をするのであれば 言葉ではこう言いつつもアーサーも同じように感じてるのだろう。この『ジョーカー』の試験には、一筋縄ではいかない何かがあると。

そう感じていながらも、アーサーと私は特に動揺することなく渡された書類に目を通し、サインをしていった。

この試験で命を落としても、学院側は責任を負わない。遺体は遺族の元に戻らない可能性がある。今回の試験内容を他人に話さない、など。よほど機密性が高いのか、無駄に難解且つ細かく書かれた書類全てに目を通し、サインするのには1時間近くかかった。

「書類、受け取りました。試験……いえ、任務開始は1カ月後です。それまでこの任務詳細に目を通した上で準備をお願いします。ご武運を」
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