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5.
「はは、すみませんね。僕の分まで夜ご飯を作ってもらってしまって」
「少しでも申し訳なく思っているのであれば、付きまとうのをやめてください」
「え?いやですが??」
「……はあ」
これ見よがしに溜息を吐いても、男に気にした素振りはない。割と失礼な態度をとっていると自分でも思うのだが、彼は鈍いのか、それともわざとなのか――きっと後者である――全く気にする様子がなかった。
あれから。結局、私が森の中に作っている野営地にまで男はついてきた。
道中で勝手に自己紹介し始めた彼の名はイルハルトというらしい。とてつもなく嫌な名前だ、と失礼ながらに思う。
なにせここに来る切っ掛けとなったあの看板……イルハルト討伐ギルド、その看板の名前と同じ名前なのである。流石に関係ないとは思うが、嫌なイメージが浮かんでしまう名前であることは変わりなかった。
そして現在。私が夜ご飯を軽く作り――作ってる最中も散々邪魔された――、いざ出来たものを食べようとしたところで、何もせずじーっと見つめてくるイルハルトの視線に耐え切れなくなった。そして冒頭の会話に戻る。
イルハルトはとても美味しそうに私が用意したご飯、そしてしつこく絡むことで奪った手間暇かけて作ったスイーツをも頬張っていた。
「それにしても、君。女の子一人なのにこんな場所に居て平気なのですか?」
「近くに魔物除けの魔道具を置いているので、平気です。お気遣いとかいう邪魔なものはいらないので、さっさと帰っていただいて結構ですよ?」
「このお菓子、美味しいですね!っと、そういえば君の名前を聞いていませんでした。名前を教えてくれますか、お嬢さん」
ニコリと微笑み、手を軽く引き寄せられる。パチリと音がしそうなウィンクをかまされた辺り、女慣れしているなという感想が自然と湧き上がってくる。更にこの男への印象が悪くなった瞬間だった。
「……他人の希望を無視して、ずっと付きまとってくる人に教える名前はありません」
しかしそれは男も分かったのだろう。私にこの手の手練手管が効かないということを察すると、手を自身の方に引き寄せる彼女をそのまま離した。
「う~~ん、つれないですね。女性の手を握ってそんな嫌な顔をされたのは初めてです」
「貴方の周りには変わった女性が多かったのですね。それか我慢していただけかも」
「君……中々辛辣ですね。だからこそ、益々君の事が知りたくなる」
「冷たくされて興味を持つだなんて、被虐趣味なのですか?気持ちが悪いです」
会話していて分かった事がある。この男、飄々としているように見えるが、油断ならない男だ。
きっと私が戦闘担当であり、そもそも協力者などいないということも線に入れて疑っているのことを察することが出来た。むしろ、私の言い訳をほぼ信じていないだろう。
ずっとピリピリとした魔力を感じるのだ。それも普通の……しかも魔法をある程度扱えるくらいの中途半端な人間ではプレッシャーで既におかしくなっているレベルの。
だから私は敢えて何も分からない弱者の振りをする。強力な魔力を周囲に張り巡らされていることすらも気が付かない程の弱者の振りを。
そしてそれを悟らせる前に追い払う。あくまで絡んでこられることが邪魔であるということを前面に出しながら。
「私はもう眠るので、いい加減帰ってください。流石に寝床までは面倒みられません」
「……分かりました。女性の寝所まで奪うわけにはいきませんしね」
先程の言い合いで感じたねちっこさやしつこさなどなく、案外大人しく引き下がるんだな――なんて不思議に思っていたら、最後の最後に特大の爆弾を投げつけられる。
「そういえば、フェアじゃないので言っておきますね。僕、感知系の魔法が結構得意なんです。そしてここには先程貴女からこっそり抜いた髪の毛があります。……僕の言いたい事、分かっていただけますよね?」
本当に嫌だ、この男。そう私は隠せる気力もないくらいに項垂れながら思った。この男ならきっと人体の一部さえあれば、かなりの精度でその対象の位置を知ることが可能だろう。
でもこれだけは言っておきたかった。
「初対面の女性の髪の毛を勝手に抜くのは犯罪だと思います」
「少しでも申し訳なく思っているのであれば、付きまとうのをやめてください」
「え?いやですが??」
「……はあ」
これ見よがしに溜息を吐いても、男に気にした素振りはない。割と失礼な態度をとっていると自分でも思うのだが、彼は鈍いのか、それともわざとなのか――きっと後者である――全く気にする様子がなかった。
あれから。結局、私が森の中に作っている野営地にまで男はついてきた。
道中で勝手に自己紹介し始めた彼の名はイルハルトというらしい。とてつもなく嫌な名前だ、と失礼ながらに思う。
なにせここに来る切っ掛けとなったあの看板……イルハルト討伐ギルド、その看板の名前と同じ名前なのである。流石に関係ないとは思うが、嫌なイメージが浮かんでしまう名前であることは変わりなかった。
そして現在。私が夜ご飯を軽く作り――作ってる最中も散々邪魔された――、いざ出来たものを食べようとしたところで、何もせずじーっと見つめてくるイルハルトの視線に耐え切れなくなった。そして冒頭の会話に戻る。
イルハルトはとても美味しそうに私が用意したご飯、そしてしつこく絡むことで奪った手間暇かけて作ったスイーツをも頬張っていた。
「それにしても、君。女の子一人なのにこんな場所に居て平気なのですか?」
「近くに魔物除けの魔道具を置いているので、平気です。お気遣いとかいう邪魔なものはいらないので、さっさと帰っていただいて結構ですよ?」
「このお菓子、美味しいですね!っと、そういえば君の名前を聞いていませんでした。名前を教えてくれますか、お嬢さん」
ニコリと微笑み、手を軽く引き寄せられる。パチリと音がしそうなウィンクをかまされた辺り、女慣れしているなという感想が自然と湧き上がってくる。更にこの男への印象が悪くなった瞬間だった。
「……他人の希望を無視して、ずっと付きまとってくる人に教える名前はありません」
しかしそれは男も分かったのだろう。私にこの手の手練手管が効かないということを察すると、手を自身の方に引き寄せる彼女をそのまま離した。
「う~~ん、つれないですね。女性の手を握ってそんな嫌な顔をされたのは初めてです」
「貴方の周りには変わった女性が多かったのですね。それか我慢していただけかも」
「君……中々辛辣ですね。だからこそ、益々君の事が知りたくなる」
「冷たくされて興味を持つだなんて、被虐趣味なのですか?気持ちが悪いです」
会話していて分かった事がある。この男、飄々としているように見えるが、油断ならない男だ。
きっと私が戦闘担当であり、そもそも協力者などいないということも線に入れて疑っているのことを察することが出来た。むしろ、私の言い訳をほぼ信じていないだろう。
ずっとピリピリとした魔力を感じるのだ。それも普通の……しかも魔法をある程度扱えるくらいの中途半端な人間ではプレッシャーで既におかしくなっているレベルの。
だから私は敢えて何も分からない弱者の振りをする。強力な魔力を周囲に張り巡らされていることすらも気が付かない程の弱者の振りを。
そしてそれを悟らせる前に追い払う。あくまで絡んでこられることが邪魔であるということを前面に出しながら。
「私はもう眠るので、いい加減帰ってください。流石に寝床までは面倒みられません」
「……分かりました。女性の寝所まで奪うわけにはいきませんしね」
先程の言い合いで感じたねちっこさやしつこさなどなく、案外大人しく引き下がるんだな――なんて不思議に思っていたら、最後の最後に特大の爆弾を投げつけられる。
「そういえば、フェアじゃないので言っておきますね。僕、感知系の魔法が結構得意なんです。そしてここには先程貴女からこっそり抜いた髪の毛があります。……僕の言いたい事、分かっていただけますよね?」
本当に嫌だ、この男。そう私は隠せる気力もないくらいに項垂れながら思った。この男ならきっと人体の一部さえあれば、かなりの精度でその対象の位置を知ることが可能だろう。
でもこれだけは言っておきたかった。
「初対面の女性の髪の毛を勝手に抜くのは犯罪だと思います」
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