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18.
「おい、女。お前、雑魚の分際で何俺の事を呼び捨てにしてんの?」
「……え?」
「俺は次期公爵にして、この魔法界最強の男、アレン=ロスティシアだぞ?当然様付けで呼ぶだろ」
ギルド内に散らばった瓦礫を蹴り飛ばしながらそんな言葉を発する男。頭が理解するのを拒否した。
アレンとは似ても似つかない、あまりに粗暴な行動と言動。しかし彼の口から、一文字たりとも間違っていない、私がかつて愛していたアレンの名前が飛び出て来たことで、本人だと証明されてしまった。
「てかイルハルトどこ?俺がこんな汚ねえところまで来てやったのに、すぐに出てこないとかナメてんの?」
「…………アレン……様。イルハルトと何か約束が御座いましたか?」
「いや、そんなもんねえけど?」
あまりにも傲慢な態度と、イルハルトの所有物を壊しておいて、反省の欠片もないその態度にドン引きした。何様なのだろうこの男は。しかしそれを押し殺して、冷静に問うた。イルハルトが彼を呼びだしていたのかもしれないと思ったからだ。
けれどその返答はあまりに身勝手なモノだった。本当にこれがアレンなのだろうか。顔がそっくりで、名前が同じだけの別人だと言われても、今なら信じられる。
「まあ、お前でもいっか。イルハルトに伝えておけ。『サラマンダー達は強かったか?』と」
「は?」
「は?じゃねえよ。とりあえずそれだけ言えばアイツなら伝わるだろ。雑魚でも伝言くらいはさせてやるんだから、しっかりこなせよ?」
「……あの街でハンターの男を煽り、サラマンダーをけしかけたのは貴方ですか?」
「ん?お前も知ってんのか。じゃあ、イルハルトもこれはかなり怒ってるかもな。期待大」
「……最低」
あの街にいたハンターの男の主張を思い出す。
男は顔も名前も知らない誰かにサラマンダーの卵を取ってきてみろと煽った。それを聞いた時は、ハンターの男に煽られたどこかの馬鹿が取って来たのかと思っていたが、その予想は全く違った。
この男――アレンは絶対にサラマンダーの特性を知った上で、卵をハンターの男に引き渡した。街に被害が出ることも確実に分かっていて之行動だろう。しかもそれは、イルハルトを怒らせるため。あまりに最低な所業に思わず、口から言葉が漏れた。
「何か言ったか?雑魚」
「貴方が最低のゴミくず野郎だって言いました。あー、脳ミソが腐った生ゴミだから聞こえませんでしたか?ごめんなさい、私の配慮が足りませんでした。貴方はカスです」
「あ゛?」
激しい怒りの感情を感じたと同時。サーシャの頬を掠めた炎球が背後の壁を燃やす。
しかしそれに怯むことはなかった。あの街の人達は、街のハンターの穢れた願いもあったが、目の前の彼の身勝手な感情で危険に晒されたのだ。サーシャはそこに激しい怒りを覚えた。元の時代に戻ったら、アレンを一発殴ろうとだなんて考えていたのを忘れるくらいに、目の前の男を完膚なきまでに叩き潰したいと思った。
「カスな上に短気で野蛮だなんて、最悪」
「ぶっ殺す」
「二人共、止まりなさい!!」
まさに一触即発の状態。今にも双方強大な魔法を出そうとしていた瞬間。二人の間に割り込む人間がいた。イルハルトだ。
曰く、私があまりのギルドの汚さに怒っていると勝手に妄想したイルハルトは、爆発音がした時は怒りを察して隠れていたのだが、アレンの魔力が膨れ上がるのを感じて異変を察知したので、急いでここまで出てきたらしい。
「全く、アレン=ロスティシア。また貴方ですか――ってうわ、空が見えてる!書類も消し炭に……これ、いつも通り公爵家に請求しておきますね」
「おい!イルハルト、戻って来たんならさっさと俺と勝負しろ!!」
「黙りなさい!ステラさん、取り敢えず事情を聴きましょう。話してみてください」
自分が掃除をサボり続けた上に、私にそれらを押し付けた事などなかったことのように偉そうなイルハルト。そんな彼に少し呆れながらも、アレンの主張とやったことを全て話した。
「……なるほど。あのサラマンダーは、アレンさんが原因だったのですか。そして僕を怒らせるためにここまでわざわざ来た、と。相変わらず最低ですね。貴方」
「ハッ!弱いのが悪ぃんだろ。雑魚がどれだけ死んだところで俺には関係ないね」
「貴方に説教しようとしたところで無駄だということは知っています。僕は別に君と戦う気はありませんよ。君が望むことなんてしてあげません」
「それじゃあ、私がぶっ飛ばしても良いですか?この最低男を」
「まあ、事情が事情ですからね。ただし場所を変えましょう」
パンッとイルハルトが手を叩くと、周囲の景色が一変する。書類や書き物机は目の前から掻き消え、息を吐き出した瞬間には、森の開けた場所に全員立っていた。これはこのギルド自体にかけられた魔法なのだろう。
そうしてイルハルトは言った。
「さて、存分に暴れてください。ステラさん」
「……え?」
「俺は次期公爵にして、この魔法界最強の男、アレン=ロスティシアだぞ?当然様付けで呼ぶだろ」
ギルド内に散らばった瓦礫を蹴り飛ばしながらそんな言葉を発する男。頭が理解するのを拒否した。
アレンとは似ても似つかない、あまりに粗暴な行動と言動。しかし彼の口から、一文字たりとも間違っていない、私がかつて愛していたアレンの名前が飛び出て来たことで、本人だと証明されてしまった。
「てかイルハルトどこ?俺がこんな汚ねえところまで来てやったのに、すぐに出てこないとかナメてんの?」
「…………アレン……様。イルハルトと何か約束が御座いましたか?」
「いや、そんなもんねえけど?」
あまりにも傲慢な態度と、イルハルトの所有物を壊しておいて、反省の欠片もないその態度にドン引きした。何様なのだろうこの男は。しかしそれを押し殺して、冷静に問うた。イルハルトが彼を呼びだしていたのかもしれないと思ったからだ。
けれどその返答はあまりに身勝手なモノだった。本当にこれがアレンなのだろうか。顔がそっくりで、名前が同じだけの別人だと言われても、今なら信じられる。
「まあ、お前でもいっか。イルハルトに伝えておけ。『サラマンダー達は強かったか?』と」
「は?」
「は?じゃねえよ。とりあえずそれだけ言えばアイツなら伝わるだろ。雑魚でも伝言くらいはさせてやるんだから、しっかりこなせよ?」
「……あの街でハンターの男を煽り、サラマンダーをけしかけたのは貴方ですか?」
「ん?お前も知ってんのか。じゃあ、イルハルトもこれはかなり怒ってるかもな。期待大」
「……最低」
あの街にいたハンターの男の主張を思い出す。
男は顔も名前も知らない誰かにサラマンダーの卵を取ってきてみろと煽った。それを聞いた時は、ハンターの男に煽られたどこかの馬鹿が取って来たのかと思っていたが、その予想は全く違った。
この男――アレンは絶対にサラマンダーの特性を知った上で、卵をハンターの男に引き渡した。街に被害が出ることも確実に分かっていて之行動だろう。しかもそれは、イルハルトを怒らせるため。あまりに最低な所業に思わず、口から言葉が漏れた。
「何か言ったか?雑魚」
「貴方が最低のゴミくず野郎だって言いました。あー、脳ミソが腐った生ゴミだから聞こえませんでしたか?ごめんなさい、私の配慮が足りませんでした。貴方はカスです」
「あ゛?」
激しい怒りの感情を感じたと同時。サーシャの頬を掠めた炎球が背後の壁を燃やす。
しかしそれに怯むことはなかった。あの街の人達は、街のハンターの穢れた願いもあったが、目の前の彼の身勝手な感情で危険に晒されたのだ。サーシャはそこに激しい怒りを覚えた。元の時代に戻ったら、アレンを一発殴ろうとだなんて考えていたのを忘れるくらいに、目の前の男を完膚なきまでに叩き潰したいと思った。
「カスな上に短気で野蛮だなんて、最悪」
「ぶっ殺す」
「二人共、止まりなさい!!」
まさに一触即発の状態。今にも双方強大な魔法を出そうとしていた瞬間。二人の間に割り込む人間がいた。イルハルトだ。
曰く、私があまりのギルドの汚さに怒っていると勝手に妄想したイルハルトは、爆発音がした時は怒りを察して隠れていたのだが、アレンの魔力が膨れ上がるのを感じて異変を察知したので、急いでここまで出てきたらしい。
「全く、アレン=ロスティシア。また貴方ですか――ってうわ、空が見えてる!書類も消し炭に……これ、いつも通り公爵家に請求しておきますね」
「おい!イルハルト、戻って来たんならさっさと俺と勝負しろ!!」
「黙りなさい!ステラさん、取り敢えず事情を聴きましょう。話してみてください」
自分が掃除をサボり続けた上に、私にそれらを押し付けた事などなかったことのように偉そうなイルハルト。そんな彼に少し呆れながらも、アレンの主張とやったことを全て話した。
「……なるほど。あのサラマンダーは、アレンさんが原因だったのですか。そして僕を怒らせるためにここまでわざわざ来た、と。相変わらず最低ですね。貴方」
「ハッ!弱いのが悪ぃんだろ。雑魚がどれだけ死んだところで俺には関係ないね」
「貴方に説教しようとしたところで無駄だということは知っています。僕は別に君と戦う気はありませんよ。君が望むことなんてしてあげません」
「それじゃあ、私がぶっ飛ばしても良いですか?この最低男を」
「まあ、事情が事情ですからね。ただし場所を変えましょう」
パンッとイルハルトが手を叩くと、周囲の景色が一変する。書類や書き物机は目の前から掻き消え、息を吐き出した瞬間には、森の開けた場所に全員立っていた。これはこのギルド自体にかけられた魔法なのだろう。
そうしてイルハルトは言った。
「さて、存分に暴れてください。ステラさん」
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