貴方の『好きな人』の代わりをするのはもうやめます!

皇 翼

文字の大きさ
22 / 31

21.

今日の任務は、王都から半日程移動した場所にある小さな村でのものだった。
依頼内容は、最近畑を荒らしている魔物の退治。現場に行ってみれば、名前も付いていないような雑魚魔物がいただけだった。
依頼が完了したことを伝えると同時に、必要書類に署名を貰いに行くために依頼者の家に向か――おうとしたところで、腕を掴まれた。

「やっと捕まえた」
「え……」
「しょう、ぶ……しろ!俺と!!」

完全に油断しきっていた私の腕を掴んで静止したのは、ここに来る前に絡んできていた男・アレンだった。
きっと瞬間移動で飛ばされた地点から、私の魔力を辿ってここまで来たのだろう。いくら目的があるとはいえ、熱心な人間だと思う。未来の彼とは執着の度合い、しつこさが違うなと思ってしまう。私にとってのアレンはいつでも余裕を見せていて、私がどんなことをしても笑って受け入れてくれている。なんなら浮気したとしても、受け入れてくれるんじゃないかというレベルで私に対して執着していなかった気さえしてくる。
けれど、今の彼を見ていると、そういう部分を隠していただけなのではないだろうかと思えた。

過去のことを思い出していたせいだろう。今目の前にいるアレンは、私が無視したのだと思い込み、プンプンと怒っていた。
感情をそのまま噴出させていて、子供っぽく映る。そういえば今の彼の年齢はいくつなのだろうか。少し気になった。

「そういえば、アレン……様は今おいくつですか?」
「は?なんでお前に年齢なんて言わねえと――」
「あ。じゃあ、いいです」
「って、なんでだよ!!知りたくねえのかよ!?」

うっわ、なんていうかこの人……面倒くさい。聞かれたくないのか、聞かれたいのか、どっちなんだ。
私としては、どうせアレンの本来の年齢を思い出して、今の年代と照らし合わせれば分かるかと考えて、聞かなくていいかという結論に至ったのだが。
アレンはアレンで、私なぞに興味を持っていないと明言されたようでムカついたのかもしれない。なにせ今の彼は、20歳である今の私よりも確実に年下だ。精神年齢も低い故に、そういう部分が出やすいのだろう。否、まだ隠そうという気がないのかもしれない。

「……15」
「え?」
「だから!15歳だ!!お前、興味あったんじゃないのかよ、俺の年齢に」

意外だ。答えてくれたようだった。
そしてやはり今の私よりも5個下。そりゃ、子供に感じるわけだ。私がずっと接していたアレンは出会った時が22歳、そして現在は26歳。11年分の差があるわけだ。それだけあれば、人間は変わるということだろう。雰囲気や性格、言葉遣いなどなど、全然違うのだから。

「で、ステラ。お前はいくつなんだよ」
「私ですか?私は20歳です」
「はっ!ババアじゃねえか!!イルハルトよりも2個上だし」
「でもそのババアに負けたんですよね、貴方」
「…………」

否定のしようがない事実を言ったら、彼を言い負かしてしまったようだ。彼は顔を伏せてしまっている。
ちょっと可哀想なことをしてしまったかもしれない。しかしここで慰めたら慰めたで、アレンが怒り狂うことを悟っているので、何も言えない。もうギルドに帰りたいと思ったところで、アレンが伏せていた顔を上げた。

「俺の部屋に行くぞ」
「は???」

アレンの思考は、過去も現在も相変わらず読むことが出来ない。

あなたにおすすめの小説

真実の愛の裏側

藍田ひびき
恋愛
アレックス・ロートン侯爵令息の第一夫人シェリルが療養のため領地へ居を移した。それは療養とは名ばかりの放逐。 男爵家出身でありながら侯爵令息に見初められ、「真実の愛」と持て囃された彼女の身に何があったのか。その裏に隠された事情とは――? ※ 他サイトにも投稿しています。

結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です

柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。 そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。 真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。 けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。 「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」 彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。 アンリは実は、亡き国王の婚外子。 皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。

三度裏切られた私が、四度目で「離婚」を選ぶまで

狛犬
恋愛
三度、夫に裏切られた。 一度目は信じた。 二度目は耐えた。 三度目は――すべてを失った。 そして私は、屋上から身を投げた。 ……はずだった。 目を覚ますと、そこは過去。 すべてが壊れる前の、まだ何も起きていない時間。 ――四度目の人生。 これまでの三度、私は同じ選択を繰り返し、 同じように裏切られ、すべてを失ってきた。 だから今度は、もう決めている。 「もう、陸翔はいらない」 愛していた。 けれど、もう疲れた。 今度こそ―― 自分を守るために、家族を守るために、 私は、自分から手を放す。 これは、三度裏切られた女が、 四度目の人生で「選び直す」物語。

【完結】好きでもない私とは婚約解消してください

里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。 そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。 婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。

戦場から帰らぬ夫は、隣国の姫君に恋文を送っていました

Mag_Mel
恋愛
しばらく床に臥せていたエルマが久方ぶりに参加した祝宴で、隣国の姫君ルーシアは戦地にいるはずの夫ジェイミーの名を口にした。 「彼から恋文をもらっていますの」。 二年もの間、自分には便りひとつ届かなかったのに? 真実を確かめるため、エルマは姫君の茶会へと足を運ぶ。 そこで待っていたのは「身を引いて欲しい」と別れを迫る、ルーシアの取り巻きたちだった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

彼女の離縁とその波紋

豆狸
恋愛
夫にとって魅力的なのは、今も昔も恋人のあの女性なのでしょう。こうして私が悩んでいる間もふたりは楽しく笑い合っているのかと思うと、胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちになりました。 ※子どもに関するセンシティブな内容があります。

【完結】愛されていた。手遅れな程に・・・

月白ヤトヒコ
恋愛
婚約してから長年彼女に酷い態度を取り続けていた。 けれどある日、婚約者の魅力に気付いてから、俺は心を入れ替えた。 謝罪をし、婚約者への態度を改めると誓った。そんな俺に婚約者は怒るでもなく、 「ああ……こんな日が来るだなんてっ……」 謝罪を受け入れた後、涙を浮かべて喜んでくれた。 それからは婚約者を溺愛し、順調に交際を重ね―――― 昨日、式を挙げた。 なのに・・・妻は昨夜。夫婦の寝室に来なかった。 初夜をすっぽかした妻の許へ向かうと、 「王太子殿下と寝所を共にするだなんておぞましい」 という声が聞こえた。 やはり、妻は婚約者時代のことを許してはいなかったのだと思ったが・・・ 「殿下のことを愛していますわ」と言った口で、「殿下と夫婦になるのは無理です」と言う。 なぜだと問い質す俺に、彼女は笑顔で答えてとどめを刺した。 愛されていた。手遅れな程に・・・という、後悔する王太子の話。 シリアス……に見せ掛けて、後半は多分コメディー。 設定はふわっと。

立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~

矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。 隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。 周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。 ※設定はゆるいです。