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29.
「なあ、お前さっきからどこ向かってんだよ」
「クロフィリエ。あ、メイド業は暫くお休みなので、私以外を指名してくださいねー、ご主人サマー」
「ばっ!お前がいないんだったら、そもそも行かねーよ!!」
私は久々に遠方での任務をイルハルトから任されていた。
任地はクロフィリエという獣人族が数多く住むところである。知らない土地だが、位置は把握しているからなんとかなるだろう。
そこでいくつか依頼をイルハルトからお願いされているので、暫く滞在して一人でそれらをこなしていく予定だ。
そうしてアレンの相手をテキトーにして、辿り着いたこの町はずれの馬車の停留所。
「あった。それではこの停留所の馬車に私は乗っていくので。予約をしていない哀れなアレン様~」
「は?待てよ!!そもそもクロフィリエってあの、野蛮って言われる獣人族の街だろ!なんでそんなとこ行くんだよ」
「任務。以上」
そういえば、この時代にはまだ獣人族への差別があったのだと歴史の教科書に載っていた知識が頭の中で思い出される。ここ10年で少し収まってきて、この時代の5年後くらいには獣人と人間の結婚が許可されたりしだしたのだった。特にアレンは名家――金持ちの家系だ。そういう偏見も強いのだろう。大体他人を人間かと思っているのかすら怪しい男だ。獣人に対してどんな感情を抱いているのか想像はあまりしたくない。
特にこの時代のアレンは気性が荒いのだ。余計そう思ってしまう。
「俺も行く!!」
「え……?」
嫌な顔をしていたアレンから予想外の言葉が出た。
***
「なんで無理矢理乗り込んできたんですか。流石に他の客を脅してチケットを買い取るなんて、人間として最低では?」
「奪い取らなかっただけマシだろ?……お前はそういうのを嫌うからな。配慮してやったんだ」
アレンは相変わらずである。
それなりに広い馬車なのだが、わざわざ私の隣にしっかりと場所を取って座っている。私が思うのもなんだが、本当に10年後にアレンは表面上は真人間アレンになっているのだろうか。こんな傍若無人で性格が悪い、そして常識を無視しているような男が。
果たしてそれはどんな切っ掛けなのだろうか。誰か近しい人の影響なのか、それとも……私なのだろうか。
「確かに、最終的には大金を積まれて笑顔になっていたので、全面的に悪いとは言いませんが。でも常識外れの行動で、恥ずかしいことである自覚は持ってくださいね。お金だけは無駄に持ったお子ちゃまさん」
「……お子ちゃまって馬鹿にしてんだろ!!ふざけんなよ!折角俺が心配して――あ」
「え?心配??もしかして私をですか???」
途端に黙ってしまうアレン。
今日もまたしょうもない付きまとい行動かと思っていたのだが、今回は何故だか私を心配しての行動だったらしい。獣人族という彼らが忌避している種族の街に単身向かうからだろうか。理由は分からないが、正直彼の心遣いは感じた。
ここに至るまでの行動はどうかと未だに思うが。それに言いたくなかったであろうことまで言ってしまって、耳まで赤くなって顔を隠そうとしているところは少しだけ可愛いと思った。
「心配してくれたのは少し嬉しいですが、あまり他人に迷惑を掛けるような行動をとるのは好ましくはないです」
「……分かった。今後は気を付ける」
私の言葉にしっかりと耳を傾けるアレン。少し意外だった。
私が彼を一度負かしているからだろうか。ほんのちょびっとだが、彼の変化を感じた。
「クロフィリエ。あ、メイド業は暫くお休みなので、私以外を指名してくださいねー、ご主人サマー」
「ばっ!お前がいないんだったら、そもそも行かねーよ!!」
私は久々に遠方での任務をイルハルトから任されていた。
任地はクロフィリエという獣人族が数多く住むところである。知らない土地だが、位置は把握しているからなんとかなるだろう。
そこでいくつか依頼をイルハルトからお願いされているので、暫く滞在して一人でそれらをこなしていく予定だ。
そうしてアレンの相手をテキトーにして、辿り着いたこの町はずれの馬車の停留所。
「あった。それではこの停留所の馬車に私は乗っていくので。予約をしていない哀れなアレン様~」
「は?待てよ!!そもそもクロフィリエってあの、野蛮って言われる獣人族の街だろ!なんでそんなとこ行くんだよ」
「任務。以上」
そういえば、この時代にはまだ獣人族への差別があったのだと歴史の教科書に載っていた知識が頭の中で思い出される。ここ10年で少し収まってきて、この時代の5年後くらいには獣人と人間の結婚が許可されたりしだしたのだった。特にアレンは名家――金持ちの家系だ。そういう偏見も強いのだろう。大体他人を人間かと思っているのかすら怪しい男だ。獣人に対してどんな感情を抱いているのか想像はあまりしたくない。
特にこの時代のアレンは気性が荒いのだ。余計そう思ってしまう。
「俺も行く!!」
「え……?」
嫌な顔をしていたアレンから予想外の言葉が出た。
***
「なんで無理矢理乗り込んできたんですか。流石に他の客を脅してチケットを買い取るなんて、人間として最低では?」
「奪い取らなかっただけマシだろ?……お前はそういうのを嫌うからな。配慮してやったんだ」
アレンは相変わらずである。
それなりに広い馬車なのだが、わざわざ私の隣にしっかりと場所を取って座っている。私が思うのもなんだが、本当に10年後にアレンは表面上は真人間アレンになっているのだろうか。こんな傍若無人で性格が悪い、そして常識を無視しているような男が。
果たしてそれはどんな切っ掛けなのだろうか。誰か近しい人の影響なのか、それとも……私なのだろうか。
「確かに、最終的には大金を積まれて笑顔になっていたので、全面的に悪いとは言いませんが。でも常識外れの行動で、恥ずかしいことである自覚は持ってくださいね。お金だけは無駄に持ったお子ちゃまさん」
「……お子ちゃまって馬鹿にしてんだろ!!ふざけんなよ!折角俺が心配して――あ」
「え?心配??もしかして私をですか???」
途端に黙ってしまうアレン。
今日もまたしょうもない付きまとい行動かと思っていたのだが、今回は何故だか私を心配しての行動だったらしい。獣人族という彼らが忌避している種族の街に単身向かうからだろうか。理由は分からないが、正直彼の心遣いは感じた。
ここに至るまでの行動はどうかと未だに思うが。それに言いたくなかったであろうことまで言ってしまって、耳まで赤くなって顔を隠そうとしているところは少しだけ可愛いと思った。
「心配してくれたのは少し嬉しいですが、あまり他人に迷惑を掛けるような行動をとるのは好ましくはないです」
「……分かった。今後は気を付ける」
私の言葉にしっかりと耳を傾けるアレン。少し意外だった。
私が彼を一度負かしているからだろうか。ほんのちょびっとだが、彼の変化を感じた。
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