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「で?なんで学生が授業サボってあんなところにいたんだ?」
「…………」
「だんまりじゃ、わかんねーよ」
私は学院に戻ってすぐ。職員室の面談室で、先程助けてくれた男性に事情聴取をされていた。
学院までそれなりに離れた距離に居たにも関わらず、『ポーター』と呼ばれる移動魔法で一瞬でここまで移動させられたその技量から、それなりに強い魔導士だということが分かる。しかし誰なのかは分からない。職員室に連行されたこと、そしてネクタイを締めたスーツ姿に、この学院の紋章が付いたローブを纏っていることから、この学院の教師であるということは察せられる。しかし名前までは分からない。
そんな見ず知らずの人に、婚約者が浮気したいから夢中になれる趣味を見つけろと言われたなんて理由でモヤモヤして逃げてきたという傍から見れば痴情のもつれ的な事情を話したくなどなかった。あまりにも子供っぽく、貴族としても情けない。これが公になれば、一生陰でこそこそと笑われる……のは割とどうでも良いが、母に迷惑を掛けるかもしれない。
「名前も素性も分からない人に話せません」
考えに考えた私の口から出たのはそんな子供じみた言葉だった。
自分でも馬鹿だとは思うし、言わない理由にも言い訳にもなっていないことは分かっている。でも人の視線から逃げて、その逃げた先で襲われたというのに、事情がこんなしょうもないものだなんてことは言いたくなかったのだ。正直、この時点であまりにも情けない。
「俺、何度かお前の授業担当してるぞ?どんだけ他人に興味ねえんだよ」
「……申し訳ありません。覚えておりません」
「俺はクレイヴ=ハットランナー。21歳にしてこのクラドベル魔導学院で実践魔法の担当をしている天才教師だ」
名前まで名乗られてみれば、なんとなくぼやけた教師の記憶が蘇ってきた。
正直、実践魔法の科目は教科書通りに魔力を操作すれば簡単に出来てしまい、授業中も虚無感に駆られて他の生徒が苦戦しているのを尻目に故に雑に受けていた記憶がある。要はつまらなさすぎて覚えていなかった。
その授業で教鞭を執っていたのが彼だったようだ。
「で。素性は分かったわけだが、話す気になったか?」
「……自分を天才と自称する人にはきっと馬鹿にされる様な理由なので、やはり話したくありません。助けてくれてありがとうございました。それではこれで失礼――」
「待て。悩んでる理由にくだらねえクソもねえよ。それにお前は学生だろ?学生なんて、沢山悩んで、沢山ぶつかり合って成長していくもんだろ。俺だって学生時代は何もかもが簡単で、退屈で、悩んでたさ。今となっては贅沢な悩みだがな」
少し、意外だった。
このような一見高圧的なタイプはこんな下手に出てこないと思っていたからだ。それに、この学院の教師というのは偏屈な人が多い……ような気がする。そういうこともあって、少し偏見が過ぎたのかもしれない。
それに、彼の学生時代の悩みが今の自分に近かったこともある。こんな自称天才なんて言う人と悩みが同じだなんて言うのは少し屈辱的ではあるが、なんだか親近感を感じて突き放せなくなってしまっていた。
「大人にとっては小さな悩みでも、学生にとっては人生が揺らぎかねない大きな悩みだからな。それを馬鹿にするわけがない。困っているなら、教師に言え。……って言ってもまだ新米だから、力になれるかは約束できねえけどさ」
その言葉を掛けられた時、なんだか泣きそうなくらいに心が動かされ、染み入ってしまった。
そうして私は全てを洗いざらい、この私にとっては初めましての教師に話すことになる。彼が私の運命の歯車を大きく回すことになる人間だとも知らずに――。
「…………」
「だんまりじゃ、わかんねーよ」
私は学院に戻ってすぐ。職員室の面談室で、先程助けてくれた男性に事情聴取をされていた。
学院までそれなりに離れた距離に居たにも関わらず、『ポーター』と呼ばれる移動魔法で一瞬でここまで移動させられたその技量から、それなりに強い魔導士だということが分かる。しかし誰なのかは分からない。職員室に連行されたこと、そしてネクタイを締めたスーツ姿に、この学院の紋章が付いたローブを纏っていることから、この学院の教師であるということは察せられる。しかし名前までは分からない。
そんな見ず知らずの人に、婚約者が浮気したいから夢中になれる趣味を見つけろと言われたなんて理由でモヤモヤして逃げてきたという傍から見れば痴情のもつれ的な事情を話したくなどなかった。あまりにも子供っぽく、貴族としても情けない。これが公になれば、一生陰でこそこそと笑われる……のは割とどうでも良いが、母に迷惑を掛けるかもしれない。
「名前も素性も分からない人に話せません」
考えに考えた私の口から出たのはそんな子供じみた言葉だった。
自分でも馬鹿だとは思うし、言わない理由にも言い訳にもなっていないことは分かっている。でも人の視線から逃げて、その逃げた先で襲われたというのに、事情がこんなしょうもないものだなんてことは言いたくなかったのだ。正直、この時点であまりにも情けない。
「俺、何度かお前の授業担当してるぞ?どんだけ他人に興味ねえんだよ」
「……申し訳ありません。覚えておりません」
「俺はクレイヴ=ハットランナー。21歳にしてこのクラドベル魔導学院で実践魔法の担当をしている天才教師だ」
名前まで名乗られてみれば、なんとなくぼやけた教師の記憶が蘇ってきた。
正直、実践魔法の科目は教科書通りに魔力を操作すれば簡単に出来てしまい、授業中も虚無感に駆られて他の生徒が苦戦しているのを尻目に故に雑に受けていた記憶がある。要はつまらなさすぎて覚えていなかった。
その授業で教鞭を執っていたのが彼だったようだ。
「で。素性は分かったわけだが、話す気になったか?」
「……自分を天才と自称する人にはきっと馬鹿にされる様な理由なので、やはり話したくありません。助けてくれてありがとうございました。それではこれで失礼――」
「待て。悩んでる理由にくだらねえクソもねえよ。それにお前は学生だろ?学生なんて、沢山悩んで、沢山ぶつかり合って成長していくもんだろ。俺だって学生時代は何もかもが簡単で、退屈で、悩んでたさ。今となっては贅沢な悩みだがな」
少し、意外だった。
このような一見高圧的なタイプはこんな下手に出てこないと思っていたからだ。それに、この学院の教師というのは偏屈な人が多い……ような気がする。そういうこともあって、少し偏見が過ぎたのかもしれない。
それに、彼の学生時代の悩みが今の自分に近かったこともある。こんな自称天才なんて言う人と悩みが同じだなんて言うのは少し屈辱的ではあるが、なんだか親近感を感じて突き放せなくなってしまっていた。
「大人にとっては小さな悩みでも、学生にとっては人生が揺らぎかねない大きな悩みだからな。それを馬鹿にするわけがない。困っているなら、教師に言え。……って言ってもまだ新米だから、力になれるかは約束できねえけどさ」
その言葉を掛けられた時、なんだか泣きそうなくらいに心が動かされ、染み入ってしまった。
そうして私は全てを洗いざらい、この私にとっては初めましての教師に話すことになる。彼が私の運命の歯車を大きく回すことになる人間だとも知らずに――。
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