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1週間後。学院の講堂に全校生徒が集まる中、壇上に立つクレイヴ先生を見上げながら、私はようやく心の底から息をついた。
――やっと、先生が戻ってきた。
学園長が端的に今回の事件の経緯を説明し、本来はリューガスのものだった不正行為とそれによる誤った懲戒処分について公に訂正した。生徒たちはざわめき、教師たちの中にも複雑そうな表情を浮かべる者がいたが、誰も文句を言えるはずがない。
「……以上のことから、クレイヴ=ハットランナーは本日をもって、正式に学院の魔術教師へ復職する」
「戻ってきましたー。またしばいてやるから、楽しみにしておけよー」
その言葉と同時に、講堂に大きな拍手が響き渡った。
クレイヴ先生はテキトーな挨拶をしたのに、拍手で迎えられたことに壇上で苦笑しながらも、とても嬉しそうに見えた。
私とマーカスは、拍手を送りながらちらりと互いの顔を見る。思えば、最初は犬猿の仲だった。学院の森の遥か遠くに置き去りにされ、喧嘩をして、戦って、ぶつかって、それから……共闘して。
まさか、ここまで来るとは思わなかった。
でも――
良かった。本当に。
******
放課後、私とマーカスは学院の廊下で、誰に言われるでもなく自然とクレイヴ先生の研究室へ向かっていた。
扉をノックすると、すぐに「入れ」と声が返ってきた。
「……よお」
クレイヴ先生は机に腰掛けたまま、なんだか気恥ずかしそうに視線を逸らした。
「……その、今回は、なんというか……助かった」
「ん? 先生、何か言いましたか?声が小さくて――」
マーカスがわざとらしく耳に手を当てる。私もそれに悪乗りして、ニヤニヤしながらクレイヴ先生に追い打ちをかける。
「もう一回!もう一回!!お願いします!!聞こえなかったので」
「お前らな……!」
クレイヴ先生はむすっとした顔をして、ぐしゃっと頭をかいた。
「助かったよ。お前らが俺の教え子で本当に良かった。最後まで信じてくれて、ありがとな」
思っていたよりも真っすぐな言葉。私とマーカスの頭をポンと撫でて、クレイヴ先生は満足そうに笑った。私もマーカスも笑いながら、そのまま机の上に適当に腰を下ろした。
「まあ、先生がいないと私も困りますから。複合魔法の研究も進めないといけないし、もっと教わりたいこともあるしで」
「僕もですよ。というか、そもそも先生が山奥になんか置き去りにするからこうなったんですからね!そこだけはまだ許していません」
「それはお前たちが最初から喧嘩しなければよかった話だろうが」
三人で顔を見合わせて、ふっと笑い合った。大きな笑い声だった。
クレイヴ先生はリューガスの裏切りがあったからか、まだ空元気な感じはしたが、安心したのは本当なのだろう。先生の心の内は知らない。けれど、先生は強い人だ。そのうち、また何も心の靄を抱えることなく笑えるようになる。
不思議と、肩の力が抜ける。
こんな風に、何気ない時間を過ごせることが、なんだかたまらなく嬉しかった。
――けれど、その瞬間。
私は背中に突き刺さるような視線を感じて、何気なく振り返った。
窓の外、渡り廊下の向こうに――1人だけ、苦々しげにこちらを見つめる男の姿があった。
オーランド。
彼は、まるで目の前の光景が気に入らないものでも見ているように、奥歯を噛みしめながら、私たちをじっと睨んでいた。
けれど、私が視線に気づいたことを悟ると、すぐに踵を返し、その場を去っていく。
「……何だったんですか?あの人、一瞬物凄くこちらを睨んでいましたが」
私が振り向いたのに気付いて、同じ方向を見たマーカスが怪訝そうに私に話しかけてきた。
「さあ……」
私は軽く首を振った。
だって、オーランドが私に対して何か関心を持っているとはあまり考えにくかったから。目障りだとでも思ったのだろうかくらいにしか思えなかった。
******
X(旧Twitterの方に小話載せています。読まなくても、物語には特に支障はないです)
――やっと、先生が戻ってきた。
学園長が端的に今回の事件の経緯を説明し、本来はリューガスのものだった不正行為とそれによる誤った懲戒処分について公に訂正した。生徒たちはざわめき、教師たちの中にも複雑そうな表情を浮かべる者がいたが、誰も文句を言えるはずがない。
「……以上のことから、クレイヴ=ハットランナーは本日をもって、正式に学院の魔術教師へ復職する」
「戻ってきましたー。またしばいてやるから、楽しみにしておけよー」
その言葉と同時に、講堂に大きな拍手が響き渡った。
クレイヴ先生はテキトーな挨拶をしたのに、拍手で迎えられたことに壇上で苦笑しながらも、とても嬉しそうに見えた。
私とマーカスは、拍手を送りながらちらりと互いの顔を見る。思えば、最初は犬猿の仲だった。学院の森の遥か遠くに置き去りにされ、喧嘩をして、戦って、ぶつかって、それから……共闘して。
まさか、ここまで来るとは思わなかった。
でも――
良かった。本当に。
******
放課後、私とマーカスは学院の廊下で、誰に言われるでもなく自然とクレイヴ先生の研究室へ向かっていた。
扉をノックすると、すぐに「入れ」と声が返ってきた。
「……よお」
クレイヴ先生は机に腰掛けたまま、なんだか気恥ずかしそうに視線を逸らした。
「……その、今回は、なんというか……助かった」
「ん? 先生、何か言いましたか?声が小さくて――」
マーカスがわざとらしく耳に手を当てる。私もそれに悪乗りして、ニヤニヤしながらクレイヴ先生に追い打ちをかける。
「もう一回!もう一回!!お願いします!!聞こえなかったので」
「お前らな……!」
クレイヴ先生はむすっとした顔をして、ぐしゃっと頭をかいた。
「助かったよ。お前らが俺の教え子で本当に良かった。最後まで信じてくれて、ありがとな」
思っていたよりも真っすぐな言葉。私とマーカスの頭をポンと撫でて、クレイヴ先生は満足そうに笑った。私もマーカスも笑いながら、そのまま机の上に適当に腰を下ろした。
「まあ、先生がいないと私も困りますから。複合魔法の研究も進めないといけないし、もっと教わりたいこともあるしで」
「僕もですよ。というか、そもそも先生が山奥になんか置き去りにするからこうなったんですからね!そこだけはまだ許していません」
「それはお前たちが最初から喧嘩しなければよかった話だろうが」
三人で顔を見合わせて、ふっと笑い合った。大きな笑い声だった。
クレイヴ先生はリューガスの裏切りがあったからか、まだ空元気な感じはしたが、安心したのは本当なのだろう。先生の心の内は知らない。けれど、先生は強い人だ。そのうち、また何も心の靄を抱えることなく笑えるようになる。
不思議と、肩の力が抜ける。
こんな風に、何気ない時間を過ごせることが、なんだかたまらなく嬉しかった。
――けれど、その瞬間。
私は背中に突き刺さるような視線を感じて、何気なく振り返った。
窓の外、渡り廊下の向こうに――1人だけ、苦々しげにこちらを見つめる男の姿があった。
オーランド。
彼は、まるで目の前の光景が気に入らないものでも見ているように、奥歯を噛みしめながら、私たちをじっと睨んでいた。
けれど、私が視線に気づいたことを悟ると、すぐに踵を返し、その場を去っていく。
「……何だったんですか?あの人、一瞬物凄くこちらを睨んでいましたが」
私が振り向いたのに気付いて、同じ方向を見たマーカスが怪訝そうに私に話しかけてきた。
「さあ……」
私は軽く首を振った。
だって、オーランドが私に対して何か関心を持っているとはあまり考えにくかったから。目障りだとでも思ったのだろうかくらいにしか思えなかった。
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X(旧Twitterの方に小話載せています。読まなくても、物語には特に支障はないです)
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