転生王子の異世界無双

海凪

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第3章〜カイン学園編〜

第42話。遠足前日

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 カイン学園に入学してから何度も授業を受け、気づけばもう遠足前日だ。
 今は授業後の掃除を終え、帰る前のHRで遠足のしおりを確認したり説明を受けている。

「行き先は獣人国の首都ベスティエ。移動に片道1日。着いてからの初日は首都観光。2日目はグループで自由行動だ」

 神魔国王都からここまでは3日もかかったが、ここからベスティエまでは王都同士の位置が近いので、それだけ早く着ける。

「観光も大きな目的だが、一番の目的は他国を知ることだ。子供らしくはしゃぐのも良いが、それは忘れるなよ。準備するものとかはしおりに書いてある通りだから、今日中に用意しとけ。明日は朝7時に駅に集合。そんじゃ解散」

 気だるげに出ていったリカルドに続き、仲の良い俺達5人を含めた、いつもよりテンション高めのクラスメイトがゾロゾロと教室を出ていく。
 ルーシィと同室のラウラをB組に迎えに行き、並んで歩きながら遠足のことについて話す。

「いよいよ明日だね。俺ちょっと気になってたんだけど、観光って言ったらやっぱり城とかだよね。獣人国の城ってどんな感じなの?」

「あたしが先に言っちゃうより直接見た方がいいと思うわよ。そのために行くんでしょ」

「じゃあじゃあ、他にいいところある!?  僕、美味しい食べ物とか大きな建物とか見たい!」

「ベスティエはカインに比べて食べ物の屋台が多いわ。どれも美味しいけど、やっぱり牛の獣人が作る料理は格別よ!  彼らは獣人の中でも味覚が鋭いから味に細かく調整を加えてるみたいなの」

「まぁ、それはとても楽しみですわね」

 もしかして、街でルーシィが頻繁に屋台で買い食いしていたのはそれが原因か。城では豪華なものばかり食べていたんだろうけど、平民になってからは所謂庶民の味にハマってしまったようだ。
 使用人も居なかったと言っていたし、一族に料理が得意な者がいなかった可能性が高い。となると……毎食屋台で食べていたのかもしれないな。

「僕はベスティエの冒険者ギルドが気になるよ。ギルドは世界中の大きな街にはだいたいあるけど、せっかく行くなら一度見ておきたいかな」

「冒険者ギルドは結構大きいらしいわよ。でも、大きさなら比べるまでもなくコロシアムの方が上ね。コロシアムは獣人国で最も大きな行事である獣王祭が行われる場所だから、お城に負けないくらい大きいわ」

 以前冒険者志望だと言っていたアマゾネスの僕っ娘アリスは、やはりギルドが気になるらしい。かく言う俺も、ちょっと気になったりしているのだが。獣人国のギルドなんだし、きっと獣人だらけなんだろうな。

 ずっとモジモジして黙っているラウラをチラッと見た俺は、彼女にも話題を振ってみた。

「ラウラはどこか行ってみたいところとかある?」

「えっ?  私は……えっと。美術館とかあったら……行ってみたい、です……」

 美術館か。なんとも芸術を好むエルフらしい。俺も半分はエルフのはずだが、魔族があまり芸術には頓着しない民族性のせいか、そこまで興味がある訳では無い。至って普通レベルだ。

「美術館は残念ながらないわよ。獣人はそういうのに関心が薄いから」

「そう……ですか」

 酷く肩を落としたラウラを見て、ルーシィが慌てて代わりの施設を紹介した。

「でも、図書館ならあるわ!  そこの本になら獣人国特有の花とか鳥について載ってるかも。美術品じゃないけど、綺麗なものよ」

「楽しみ、です……!」

 期待に胸をふくらませた俺たちの会話は、寮の前についてからも暫く続いた。








 カイン学園寮の1階、108号室。自室に戻ってきた俺とミシェルは、風呂や夕食を済ませてそれぞれ明日の荷物をまとめていた。
 だが、俺には見過ごせない問題があった。

「ねぇ、ミシェル。荷物多すぎじゃない……?」

 そう、ミシェルの荷物が異様に多すぎるのである。彼一人では持ちきれないのではないかと思うほどに。身体強化をすれば可能だろうが、些か見た目的にアレである。
 心配する俺をよそに、天使の顔をコテンと傾げて彼は当然のように答えた。

「そうかなぁ?  これくらい普通だと思うんだけど。それにこれ、半分お菓子だもん!」

 普通……なのか?  4日分の着替えやら何やらの必需品と、同じ量だけ持っていくお菓子の量が?
この世界の子供は皆そうなんだろうか。  いやはや、恐ろしい。

「そ、そうなんだ……」

 もう、そうなんだとしか言えない。前世の遠足ではお菓子の購入上限金額が決まっていたし、今でもお菓子はお茶請け程度にしか食べない。

「うん!  よし、僕はもう準備終わったから兄様のところに行ってくるね!」

 数ヶ月で恒例となった、ミシェルが兄の元へ通う行動。今日中に済ませたいことがあり、俺はそれを待っていた。
 最後の荷物を旅行カバンに詰め込み、情報部隊一員の彼の名を久しぶりに呼ぶ。

「ツヴァイ」

「は!  お呼びでしょうか」

 忍び装束を纏い、音もなく現れた俺の専属伝令役。彼はいつも身を隠しているために存在を忘れがちだが、きちんと俺の声が届く範囲に居てくれている。

「明日の遠足、付いてこれるか」

「殿下が向かわれるのなら、どこへでも参ります」

「なら頼みたいことがある。獣人国新王が何か企んでいる可能性がある。俺達に危害を加えそうな動きがあったら教えてくれ。できるか?」

「お任せ下さい」

「頼んだ」

 一礼してツヴァイが姿を消す。
 引き受けてくれて安心した。俺やルーシィが警戒したところでたかが知れている。情報収集の専門家である彼の協力を得られたのは大きいだろう。

 ベッドにダイブし、明日に備えて早く寝ようと目を閉じた。
 今回の遠足は絶対に何かあるだろう。新王が何を考えているのかわからないし、父様の伝言にあった[失われた要]とやらも気になる。何があっても全力で対処するつもりだが、もし……もし、俺の手に余る状況になってしまったらと思うと怖くてたまらなくなる。
 ルーシィは今どうしているだろう?  彼女も今、こんな気持ちなんだろうか。

 そんなことをつらつら考えていたら、いつの間にか眠ってしまっていた。

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