43 / 50
第3章〜カイン学園編〜
第42話。遠足前日
しおりを挟むカイン学園に入学してから何度も授業を受け、気づけばもう遠足前日だ。
今は授業後の掃除を終え、帰る前のHRで遠足のしおりを確認したり説明を受けている。
「行き先は獣人国の首都ベスティエ。移動に片道1日。着いてからの初日は首都観光。2日目はグループで自由行動だ」
神魔国王都からここまでは3日もかかったが、ここからベスティエまでは王都同士の位置が近いので、それだけ早く着ける。
「観光も大きな目的だが、一番の目的は他国を知ることだ。子供らしくはしゃぐのも良いが、それは忘れるなよ。準備するものとかはしおりに書いてある通りだから、今日中に用意しとけ。明日は朝7時に駅に集合。そんじゃ解散」
気だるげに出ていったリカルドに続き、仲の良い俺達5人を含めた、いつもよりテンション高めのクラスメイトがゾロゾロと教室を出ていく。
ルーシィと同室のラウラをB組に迎えに行き、並んで歩きながら遠足のことについて話す。
「いよいよ明日だね。俺ちょっと気になってたんだけど、観光って言ったらやっぱり城とかだよね。獣人国の城ってどんな感じなの?」
「あたしが先に言っちゃうより直接見た方がいいと思うわよ。そのために行くんでしょ」
「じゃあじゃあ、他にいいところある!? 僕、美味しい食べ物とか大きな建物とか見たい!」
「ベスティエはカインに比べて食べ物の屋台が多いわ。どれも美味しいけど、やっぱり牛の獣人が作る料理は格別よ! 彼らは獣人の中でも味覚が鋭いから味に細かく調整を加えてるみたいなの」
「まぁ、それはとても楽しみですわね」
もしかして、街でルーシィが頻繁に屋台で買い食いしていたのはそれが原因か。城では豪華なものばかり食べていたんだろうけど、平民になってからは所謂庶民の味にハマってしまったようだ。
使用人も居なかったと言っていたし、一族に料理が得意な者がいなかった可能性が高い。となると……毎食屋台で食べていたのかもしれないな。
「僕はベスティエの冒険者ギルドが気になるよ。ギルドは世界中の大きな街にはだいたいあるけど、せっかく行くなら一度見ておきたいかな」
「冒険者ギルドは結構大きいらしいわよ。でも、大きさなら比べるまでもなくコロシアムの方が上ね。コロシアムは獣人国で最も大きな行事である獣王祭が行われる場所だから、お城に負けないくらい大きいわ」
以前冒険者志望だと言っていたアマゾネスの僕っ娘アリスは、やはりギルドが気になるらしい。かく言う俺も、ちょっと気になったりしているのだが。獣人国のギルドなんだし、きっと獣人だらけなんだろうな。
ずっとモジモジして黙っているラウラをチラッと見た俺は、彼女にも話題を振ってみた。
「ラウラはどこか行ってみたいところとかある?」
「えっ? 私は……えっと。美術館とかあったら……行ってみたい、です……」
美術館か。なんとも芸術を好むエルフらしい。俺も半分はエルフのはずだが、魔族があまり芸術には頓着しない民族性のせいか、そこまで興味がある訳では無い。至って普通レベルだ。
「美術館は残念ながらないわよ。獣人はそういうのに関心が薄いから」
「そう……ですか」
酷く肩を落としたラウラを見て、ルーシィが慌てて代わりの施設を紹介した。
「でも、図書館ならあるわ! そこの本になら獣人国特有の花とか鳥について載ってるかも。美術品じゃないけど、綺麗なものよ」
「楽しみ、です……!」
期待に胸をふくらませた俺たちの会話は、寮の前についてからも暫く続いた。
カイン学園寮の1階、108号室。自室に戻ってきた俺とミシェルは、風呂や夕食を済ませてそれぞれ明日の荷物をまとめていた。
だが、俺には見過ごせない問題があった。
「ねぇ、ミシェル。荷物多すぎじゃない……?」
そう、ミシェルの荷物が異様に多すぎるのである。彼一人では持ちきれないのではないかと思うほどに。身体強化をすれば可能だろうが、些か見た目的にアレである。
心配する俺をよそに、天使の顔をコテンと傾げて彼は当然のように答えた。
「そうかなぁ? これくらい普通だと思うんだけど。それにこれ、半分お菓子だもん!」
普通……なのか? 4日分の着替えやら何やらの必需品と、同じ量だけ持っていくお菓子の量が?
この世界の子供は皆そうなんだろうか。 いやはや、恐ろしい。
「そ、そうなんだ……」
もう、そうなんだとしか言えない。前世の遠足ではお菓子の購入上限金額が決まっていたし、今でもお菓子はお茶請け程度にしか食べない。
「うん! よし、僕はもう準備終わったから兄様のところに行ってくるね!」
数ヶ月で恒例となった、ミシェルが兄の元へ通う行動。今日中に済ませたいことがあり、俺はそれを待っていた。
最後の荷物を旅行カバンに詰め込み、情報部隊一員の彼の名を久しぶりに呼ぶ。
「ツヴァイ」
「は! お呼びでしょうか」
忍び装束を纏い、音もなく現れた俺の専属伝令役。彼はいつも身を隠しているために存在を忘れがちだが、きちんと俺の声が届く範囲に居てくれている。
「明日の遠足、付いてこれるか」
「殿下が向かわれるのなら、どこへでも参ります」
「なら頼みたいことがある。獣人国新王が何か企んでいる可能性がある。俺達に危害を加えそうな動きがあったら教えてくれ。できるか?」
「お任せ下さい」
「頼んだ」
一礼してツヴァイが姿を消す。
引き受けてくれて安心した。俺やルーシィが警戒したところでたかが知れている。情報収集の専門家である彼の協力を得られたのは大きいだろう。
ベッドにダイブし、明日に備えて早く寝ようと目を閉じた。
今回の遠足は絶対に何かあるだろう。新王が何を考えているのかわからないし、父様の伝言にあった[失われた要]とやらも気になる。何があっても全力で対処するつもりだが、もし……もし、俺の手に余る状況になってしまったらと思うと怖くてたまらなくなる。
ルーシィは今どうしているだろう? 彼女も今、こんな気持ちなんだろうか。
そんなことをつらつら考えていたら、いつの間にか眠ってしまっていた。
24
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
お気に入り・感想、宜しくお願いします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる