"自称"異能力者は迷宮でも超余裕です!!

オオミズチ亜種

文字の大きさ
1 / 5

0.プロローグ

しおりを挟む
2023年……地球は迷宮によって支配された!!

 なんて程でもないが世界各地で濃霧に包まれた迷宮”霧異迷宮”が現れ始めた。
 特に日本はその被害が大きく、2030年には各国に比べて数倍程度の数だったのが17年後である2040年には10倍程に膨れ上がってしまう。
 狭い日本でその規模は凄まじく、家から5分以内にコンビニではなく霧異迷宮がある程度には日本人にとっては身近な存在になってしまった。

 2023年当初、普通であれば各国の様に混乱するはずの日本は、政府としては”非常に珍しく”霧異迷宮に対する対策と法整備を制定し、2040年に至るまでの17年間で霧異迷宮による多くの恩恵を得る事ができるようになる。

 1つが” 魔霧 ”
 霧異迷宮が現れる時、その周囲を囲むように現れる濃霧の事だがこれを人間が吸引することにより体内の細胞に特殊な変化が起こり超人的な力を手にすることができる様になる。

 2つめが”遺物”
 本来の意味とは違うが、現存の技術体系と余りに逸脱した道具が、霧異迷宮には多く存在している。物によるが地形や天候を自由に操作できてしまうお釈迦話の様な遺物もあると言われている。

 3つめが”魔石”
 これが一般人にとって一番大きな恩恵である。
 霧異迷宮では怪物……俗に言う”魔物”が闊歩しているのだが、この魔物を倒すと色とりどりの石に似た物質を残して煙のように消えてしまう。

 霧異迷宮ができた当初、この石はただの綺麗な石程度の扱いであったが、日本含めた各国の研究努力の結果、石には未知のエネルギー存在が判明し、そのエネルギー引き出す方法が編み出された。

 霧異迷宮には無数の魔物が存在し、その魔物が持つ魔石には炭、石油、電気に変わる新たなエネルギーがある。

 この瞬間、霧異迷宮は金の生る木になり迷宮には多くの人間が殺到した。

 その流れに勿論政府も乗り”迷宮探索法案”により霧異迷宮に潜る人間を”探索者”と定め探索者を全力でサポート。

 政府による全力のサポートを受けた探索者は、霧異迷宮で大量の魔石と偶に遺物を持ち帰り、政府はそれを他国に売りつけ大儲け、借金国家と言われたのは過去の話になった。

 世はまさにアメリカン・ドリームならぬ”ダンジョン・ドリーム”!!

 そんなダンジョン・ドリームの恩恵は高校生から受けいれるようになる。

 迷宮探索法案により日本国民は16歳になれば誰でも探索者になることができ、大概の子は高校進学と共に探索者になっていく。

 なにせ探索者になれば魔霧を吸って超人的な力を手にすることができ、霧異迷宮に潜り魔物を倒して魔石を手に入れればお小遣い稼ぎもできる。

『自分のペースでお金が稼げるから助かる』

『コンビニで糞客を相手にするならゴブリンの頭を勝ち割った方がストレスフリー』

『非現実的な冒険ができるから面白い』

『タノシイ!!マモノコロスノタノシイ!!』

 等の理由により2040年現在で、高校生のバイト人気ランキングは探索者が常に1位をキープしている。

 そんなノリに乗っている日本において、西宮佐古(にしみや さこ)は不機嫌だった。
兵庫県、神戸の迷宮管理庁。その一室で、彼女は不愛想にパイプ椅子に座り、目の前の姉――西宮佐奈(にしみや さな)を睨みつけていた。
 
​「……で? 姉貴、またオレに『掃除』押し付ける気か?」
 
​180センチの長身に、顔を走る大きな古傷。ギザついた歯を見せて威嚇する姿は、現役の迷宮探索者というよりは、路地裏の用心棒に近い。
だが、世間での彼女の通称は『関西の聖女』。
鈍器(メイス)で敵を粉砕し、即座に回復魔術で味方を癒やす(あるいは無理やり立たせる)そのスタイルからついた、皮肉と畏怖の混じったあだ名だ。
​スーツ姿の佐奈は、涼しい顔でタブレットを差し出した。
 
​「人聞きの悪いこと言わないでよ、佐古。今回は正規の調査依頼。……これを見て」
 
​画面に映っていたのは、ブレブレの手持ちカメラ映像。
映っているのは『小鬼巣穴』。初心者向けの低級迷宮だ。
だが、そこに映っていたのは異常な光景だった。
ゴブリンの上位種、オーク。それも一匹や二匹ではない。群れをなして、撮影者を追いかけ回している。
 
​「合成やろこれ。最近多いねん、DunTuber(ダンチューバー)の売名行為。厨二病みたいな編集して」
「私も最初はそう思ったわ。でもね、この撮影者に話を聞きに行ったら……」
 
「行ったら?」 
「思い出すだけで過呼吸起こして、その場で失禁したの。三回も」
 
​佐奈は真顔で指を三本立てた。
 
​「……演技やったらアカデミー賞もんやな」
「でしょ? だから嘘じゃない。何かがいるのよ、あそこに」
 
​探索当日。
『小鬼巣穴』の入り口で、佐古は探索用ドローンを起動しながら、もう一度あの動画を見返していた。
​映像の後半、オークに追い詰められた撮影者が悲鳴を上げる。
だが、次の瞬間。
画面の端から『それ』は現れた。
ぬらりとした黒い触手。
それがオークの太い首を、まるで豆腐のように軽々とねじ切った。
捕食者が、より上位の捕食者に蹂躙される瞬間の映像。
オークの群れがあっという間に肉塊へと変わり、静寂が訪れる。助かった、と撮影者が息を吐いた直後――。
​触手にぎょろりと『目』が開いた。
カメラ越しに、撮影者を、見ている。
​『ヒッ、ア、アアアア……!』
​絶叫と共に映像はプツリと途切れた。
 
​「……そら、こんなん見たら誰でも漏らすわな」
 
​佐古は重いため息をつき、愛用のメイスを肩に担いだ。
ドローンが先行して闇の中へ消えていく。
 
​「ほな、行こか」
 
​迷宮内部は異様だった。
本来ならキャンキャンとうるさいゴブリンたちが、岩陰に隠れて震えている。
本能だけで生きる魔物が、ここまで怯えるなど異常事態だ。
​(やっぱり、おるな。何かが)
​佐古の「聖女(物理)」としての勘が警鐘を鳴らす。
奥へ進むにつれ、空気は重く、鉄錆のような血の匂いが濃くなっていく。
​そして、最奥の広場。
佐古はそこで、信じられないものを見た。
 
​「……なんや、あれ」
 
​そこにいたのはオーガだ。
この迷宮の本来の主(ぬし)であろう、巨体の亜人種。
だが、そのオーガは今、無数の黒い触手に絡め取られ、空中に吊り下げられていた。
身動き一つ取れず、ただ恐怖に目を見開いている。
​そして、そのオーガの顔のすぐ近く。
中空に浮く触手の足場に、ローブを被った小さな人影が立っていた。
 
​「クックックックッ……この我に、少々図体が大きい程度で挑んできたことは褒めてやろう」
 
​朗々とした、しかしどこか幼い声が響く。
 
​「しかし、異能力者である我にとっては、貴様の肉体など『ダルマさん』にすぎん……」
 
​人影は芝居がかった手つきで顔を覆った。
 
​「さて、本来であれば我が右目に封印されし深淵の相棒(バディ)、エーヴのおやつになるところであるが……」
 
​人影がビシッとオーガを指差す。
 
​「泣いて詫びるなら許してやろう!!」
​「……」
 
オーガは白目を剥きかけている。
 
「……」
 
人影がポーズを維持している。
 
「……」
 
岩陰の佐古も動けない。
 
「?」
 
オーガが、恐怖の中で一瞬だけ「何言ってんだこいつ」という顔をした。
 
​「……もしかして日本語が通じてない?」
 
​人影が素に戻って呟いた。
​「Genie(ジーニー)!! 謝ったら許してあげるよって、赤鬼風に翻訳して!」
 
​虚空から、無機質な合成音声が響く。
 
『すみません。よくわかりません』
 
​「なんやこいつ……?」
 
佐古は思わず口に出していた。
 
​「ええー……じゃあジーニー! 英語でいいから翻訳して! 雰囲気で!」
 
​『"Beg for forgiveness, and I'll spare your miserable life."(許しを乞え。そうすれば、その惨めな命だけは助けてやろう)』
 
​「……言いすぎじゃない?」
 
『すみません。よくわかりません』
 
​これ以上は見ていられない。
佐古は溜息と共に、岩陰から姿を現した。
 
​「なにしとんの君」 
​「ヒッ、メスオーガ!?」
 
​人影が飛び上がった。
 
​「誰がメスオーガや!!」
 
佐古の額に青筋が浮かぶ。
 
​「す、すまない……オスオーガだったか?」
「オスでもないわ!! 人間じゃボケェ!」
「じゃあ……オーガ(配慮)?」
「昨今のジェンダー配慮の話ちゃうわぁ!!」
 
​佐古はメイスを地面に叩きつけた。轟音が響き、吊るされていた本物のオーガがビクリと震える。
この「メスオーガ」発言にカチンときた佐古は、臨戦態勢をとって一歩踏み出した。
 
​「舐めるのもええ加減にせえよ。そんなに殺り合いたいならそういいや」
 
​凄む佐古に対し、人影――少女も負けじとローブを翻す。
 
​「ふっ、いいだろう! ただの人間風情がこの『異能力者』に挑むか! 名乗ってやろう、我が名は江野本 彩(えのもと あや)!」
 
​少女がバッとフードを取り払う。
現れたのは、眼帯をした、あどけない顔立ちの少女だった。
 
​「……なんやガキやん。中学生が来る所やないで、帰り」
 
佐古の毒気が少し抜ける。
 
​「中学生じゃないよ!!"私"は 高校生だよ!」
 
​彩は顔を真っ赤にして叫んだ直後、
​グゥゥゥゥ~~~~……
​盛大な腹の虫の音と共に、白目を剥いてその場に崩れ落ちた。
ドサッ。
 
​「……は?」
 
​倒れた少女に、恐る恐る近づく佐古。
ピクリとも動かない少女の口が、微かに動いている。
 
​「……お腹、しゅいた……」
​「…………ふっ」
 
​張り詰めていた空気が霧散する。
佐古は肩の力を抜き、呆れと、僅かな笑みを含んだ声で呟いた。
 
​「アホか、ほんまに」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...