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「愛ちゃん。7歳の誕生日、おめでとう。本当なら小学校に通っている年齢だよね。でも、もしも小学校に通えていなかったとしても、落ち込まないで。パパは色んなことを知っているから、パパを先生だと思ってね。朝はおはよう、昼はこんにちは、夜はおやすみなさい、ってちゃんと挨拶してね。何かをしてもらったらありがとう、ってお礼を言うんだよ。そして、別れるときにはさようなら、って言ってね。さようなら、また来年会おうね」
「愛ちゃん。8歳の誕生日、おめでとう。愛ちゃんがいい子に育ってくれて、本当に嬉しい。あなたのことが大好きよ。あなたと一緒にいられないのが、あなたの成長を見届けることができないのが、本当に辛い。愛ちゃんは、何が好きなんだろう。何をして、何を考えているんだろう。それを知ることができなかったのが、凄く悔しい。でも、愛ちゃんが生きていてくれて、本当に良かった。私は、それだけで満足よ。じゃあ、元気でね」
「愛ちゃん。9歳の誕生日、おめでとう。元気にしてる? 寂しい思いをしていない? 実はね、ママには妹がいたんだよ。ママが9歳のときに、妹が生まれたの。凄く可愛くて、ママは妹のことが大好きだったんだ。今はどうしているか分からないけど、妹も元気にしているといいな。愛ちゃんに弟や妹を作ってあげられなくて、ごめんね。でも、もしも外の世界で誰かと会うことができたら、その人のことを代わりに大切にしてあげて。元気でね」
「愛ちゃん。10歳の誕生日、おめでとう。そろそろあなたも、この世界が酷いことになっているのを理解してしまっているんでしょうね。確かに、人間は馬鹿なことをして、取り返しのつかないことをしてしまった。でも、だからといって、生き残っている人たちを憎むことだけはしないでほしい。きっと、中には嫌な人もいるでしょう。ひどいことをする人もいるでしょう。でも、誰かを赦したり、誰かを愛したりすることの素晴らしさも知ってくれると、私は嬉しい。じゃあ、元気でね」
「愛ちゃん、11歳の誕生日、おめでとう。そろそろ、身体つきが変わってきて戸惑っているかもしれないわね。成長は痛みを伴う、という言葉があるわ。今は暗闇の中で苦しい思いをしているかもしれないけど、いつかその暗闇から脱出できるといいね。正直、私は子供の頃、あまりいい子供じゃなくて、私のお父さんやお母さんを何度も困らせていたの。だから、もしも愛ちゃんが今、誰かを困らせるようなことをしているのなら、それは愛ちゃんが傷ついているからだと思う。いつか、その傷が癒えるときがくるといいね。じゃあ、元気でね」
「愛ちゃん、12歳の誕生日、おめでとう。もうだいぶ大人っぽくなってきているのかな。大きくなった愛ちゃんも、きっと凄く可愛いんでしょうね。こんなことを言ったら、親馬鹿だって言われるかもしれないけど。もしも他の人と違っていても、そのことを受け入れる勇気を持ってね。愛ちゃんがどんなふうに育っていても、私はあなたのことが大好きよ。そのことだけは忘れないでね。私はずっと、天国であなたのことを考えているから」
「愛ちゃん、13歳の誕生日、おめでとう。私があなたの歳には、中学校っていうところに通っていたのよ。そこで、卓球部に入っていたの。卓球は、多分、パパと一緒にやったことがあるよね? 結局パパにはシェークハンドっていう持ち方しか教えていないから、きっと愛ちゃんもシェークハンドでラケットを振っているんでしょうね。シェークハンドは英語で握手って意味なんだよ。愛ちゃんが色んな人と握手できるようになっているといいな。じゃあ、また来年」
「愛ちゃん、14歳の誕生日、おめでとう。このメッセージを撮影しているとき、私は29歳だから、ちょうど折り返し地点くらいだね。もう随分と昔のことだけど、たった1つ、はっきりと憶えていることがあるの。14歳のときに、初めて好きな人ができたの。友達の中では遅い方だったけど、そんなこと私は全然気にしていなかった。結局、その人とはまともに話をしたことすらないまま、疎遠になっちゃったんだけど、そのおかげで愛ちゃんのお父さんと結ばれたんだから、人生って不思議だよね。愛ちゃんにも好きな人ができているといいな。でも、もしもそんな人が見つからなくても焦らないで。じゃあ、元気でね」
「愛ちゃん、15歳の誕生日、おめでとう。私が15歳の頃は、高校受験で大変な思いをした記憶しかないな。どこの高校に行くか進路を決めるのにも迷って、結局家から1番近いという理由で高校を決めたのよ。ふふ、今にして思うと馬鹿みたいな理由だよね。でも、人生って、自分の意志で決められることって、実は凄く少ないんだと思う。大抵は、環境に流されて、身を任せることしかできない。だけど、人生には何回か、自分の意志で自分の将来を決めないといけないときが必ず来る。そのときに選択を間違えないように気を付けてね。でも、悩みすぎて何もできないまま終わっちゃうのが1番最悪だと、私はそう思うから、ときには無理矢理決めることも必要なのかもね。……って、何を言ってるのかよく分からない話になっちゃったけど、もしも後で選択を間違えていたことに気付いても、そのときに軌道修正すればいいんだ、くらいの気持ちで考えていた方が気が楽になるかもしれないよ。じゃあ、元気でね」
「愛ちゃん、16歳の誕生日、おめでとう。愛ちゃんが16歳になった頃はどうなっているのか、想像もつかないけど、私が16歳だった頃は、日本では女の子は結婚することもできたんだよ。と言っても、実際には晩婚化が進んで、結婚の平均年齢は30歳くらいになっちゃってたんだけど。16歳の愛が生きている世界は、私が知っているものとは全然違うものになっちゃってるんだろうね。でも、きっと、変わっていないものもいくつか残っていると思う。そういうものを見つけたら、大切にしてね。じゃあ、元気でね」
「愛ちゃん。8歳の誕生日、おめでとう。愛ちゃんがいい子に育ってくれて、本当に嬉しい。あなたのことが大好きよ。あなたと一緒にいられないのが、あなたの成長を見届けることができないのが、本当に辛い。愛ちゃんは、何が好きなんだろう。何をして、何を考えているんだろう。それを知ることができなかったのが、凄く悔しい。でも、愛ちゃんが生きていてくれて、本当に良かった。私は、それだけで満足よ。じゃあ、元気でね」
「愛ちゃん。9歳の誕生日、おめでとう。元気にしてる? 寂しい思いをしていない? 実はね、ママには妹がいたんだよ。ママが9歳のときに、妹が生まれたの。凄く可愛くて、ママは妹のことが大好きだったんだ。今はどうしているか分からないけど、妹も元気にしているといいな。愛ちゃんに弟や妹を作ってあげられなくて、ごめんね。でも、もしも外の世界で誰かと会うことができたら、その人のことを代わりに大切にしてあげて。元気でね」
「愛ちゃん。10歳の誕生日、おめでとう。そろそろあなたも、この世界が酷いことになっているのを理解してしまっているんでしょうね。確かに、人間は馬鹿なことをして、取り返しのつかないことをしてしまった。でも、だからといって、生き残っている人たちを憎むことだけはしないでほしい。きっと、中には嫌な人もいるでしょう。ひどいことをする人もいるでしょう。でも、誰かを赦したり、誰かを愛したりすることの素晴らしさも知ってくれると、私は嬉しい。じゃあ、元気でね」
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「愛ちゃん、12歳の誕生日、おめでとう。もうだいぶ大人っぽくなってきているのかな。大きくなった愛ちゃんも、きっと凄く可愛いんでしょうね。こんなことを言ったら、親馬鹿だって言われるかもしれないけど。もしも他の人と違っていても、そのことを受け入れる勇気を持ってね。愛ちゃんがどんなふうに育っていても、私はあなたのことが大好きよ。そのことだけは忘れないでね。私はずっと、天国であなたのことを考えているから」
「愛ちゃん、13歳の誕生日、おめでとう。私があなたの歳には、中学校っていうところに通っていたのよ。そこで、卓球部に入っていたの。卓球は、多分、パパと一緒にやったことがあるよね? 結局パパにはシェークハンドっていう持ち方しか教えていないから、きっと愛ちゃんもシェークハンドでラケットを振っているんでしょうね。シェークハンドは英語で握手って意味なんだよ。愛ちゃんが色んな人と握手できるようになっているといいな。じゃあ、また来年」
「愛ちゃん、14歳の誕生日、おめでとう。このメッセージを撮影しているとき、私は29歳だから、ちょうど折り返し地点くらいだね。もう随分と昔のことだけど、たった1つ、はっきりと憶えていることがあるの。14歳のときに、初めて好きな人ができたの。友達の中では遅い方だったけど、そんなこと私は全然気にしていなかった。結局、その人とはまともに話をしたことすらないまま、疎遠になっちゃったんだけど、そのおかげで愛ちゃんのお父さんと結ばれたんだから、人生って不思議だよね。愛ちゃんにも好きな人ができているといいな。でも、もしもそんな人が見つからなくても焦らないで。じゃあ、元気でね」
「愛ちゃん、15歳の誕生日、おめでとう。私が15歳の頃は、高校受験で大変な思いをした記憶しかないな。どこの高校に行くか進路を決めるのにも迷って、結局家から1番近いという理由で高校を決めたのよ。ふふ、今にして思うと馬鹿みたいな理由だよね。でも、人生って、自分の意志で決められることって、実は凄く少ないんだと思う。大抵は、環境に流されて、身を任せることしかできない。だけど、人生には何回か、自分の意志で自分の将来を決めないといけないときが必ず来る。そのときに選択を間違えないように気を付けてね。でも、悩みすぎて何もできないまま終わっちゃうのが1番最悪だと、私はそう思うから、ときには無理矢理決めることも必要なのかもね。……って、何を言ってるのかよく分からない話になっちゃったけど、もしも後で選択を間違えていたことに気付いても、そのときに軌道修正すればいいんだ、くらいの気持ちで考えていた方が気が楽になるかもしれないよ。じゃあ、元気でね」
「愛ちゃん、16歳の誕生日、おめでとう。愛ちゃんが16歳になった頃はどうなっているのか、想像もつかないけど、私が16歳だった頃は、日本では女の子は結婚することもできたんだよ。と言っても、実際には晩婚化が進んで、結婚の平均年齢は30歳くらいになっちゃってたんだけど。16歳の愛が生きている世界は、私が知っているものとは全然違うものになっちゃってるんだろうね。でも、きっと、変わっていないものもいくつか残っていると思う。そういうものを見つけたら、大切にしてね。じゃあ、元気でね」
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