異世界デスゲーム? 優勝は俺で決まりだな……と思ったらクラス単位のチーム戦なのかよ! ぼっちの俺には辛すぎるんですけど!

真名川正志

文字の大きさ
4 / 126

予選4

しおりを挟む
「デスゲームの内容は?」

 俺はそう訊いた。

「最初は予選ですー。今回は過去最多となる1024組のチームが参加していますが、予選で256組に絞られますー。あなた達、239番のチームは、225番から240番までの16組のチームが参加する第15ブロックで戦ってもらいますー。第15ブロックの戦場となるのは『ナイカモナ星』という惑星ですー。あなた達には、そのナイカモナ星の半分以上を支配する超大国、『アルカモナ帝国』の通貨『ゼン』を集めてもらいますー。期間は8日間ですー。最終日の真夜中時点で、所持金額の多い上位4組が予選通過となり、下位12組が敗退となりますー。予選での禁則事項として、殺人と窃盗がありますー。人を殺した場合、被害者1人つきマイナス1億ゼンとしますー。他人のお金や物を盗んだ場合、被害金額の2倍を所持金から引いて計算させてもらいますー」

 対戦相手のチームと直接殺し合いをするわけじゃなくて、稼いだお金の多寡で勝敗を決めるのか。
 おまけに殺人が禁止と言いつつ、失格にはならずに、所持金が1億ゼン減るだけなのか。『ゼン』の貨幣価値がどれくらいなのかは分からないけど、意外と甘いルールだな。

 ……いや。こいつは「予選での禁則事項」と言ったのか。本戦では殺人も窃盗も解禁されるのかもしれないな。

「アルカモナ帝国では、言葉は通じるのか?」
「はいー。すでに皆さんには、私が翻訳魔法をかけていますー。私と会話が通じるのも、その翻訳魔法のおかげですー。文字の読み書きも大丈夫ですー」
「アルカモナ帝国の文明レベルはどれくらいだ?」
「抽象的な質問は答えにくいので、もう少し具体的に質問してくださいー」
「アルカモナ帝国の文明は、地球の時代にたとえると、どれくらいだ?」
「ちょこーっとあなた達の頭の中を覗かせてもらいますねー。……日本の江戸時代くらいの文明レベルみたいですねー」

 頭の中を覗かれても、そう言われなければ分からないんだから、黙って覗けばいいのに!

「っていうと、電気もガスも水道もないくらいの文明レベルか?」
「電気とガスは自然界に存在するものなので、ありますよー。その存在もアルカモナ人に発見されていて、知識人達はそれを実用化しようと努力していますが、実現には至っていませんー。一般庶民は電気もガスも存在すら知りませんねー。水道は、特権階級の人々が住まうエリアで、下水道のみ実用化されていますー」
「アルカモナ帝国の法律はどうなってる?」
「抽象的すぎますー。もう少し具体的に質問してくださいー」

 抽象的な質問に答えるのが苦手なのは、AIに似ているな。実体はないと言っていたし、案外、魔法生命体というのは地球で言うところの人工知能に相当するのかもしれない。

「例えば、地球のほとんどの国ではチューインガムを噛むのは普通のことだけど、シンガポールでは医療用のガム以外違法だ。他にも、大抵の国では成人がお酒を飲むのは合法だけど、イスラム教の国では違法なことが多い。こんな風に、俺たちの常識では合法だけど、アルカモナ帝国では違法なことがあったら教えて欲しい」
「はいはいー。あなた達の頭の中をちょこーっと覗かせてもらいますねー。……アルカモナ帝国では、卵を食べるのが違法ですねー」
「えっ! マジか!」

 俺は驚きの声を上げた。他のクラスメート達も驚いている。

「はいー。卵を食べると、懲役10年の犯罪奴隷にされますー。アルカモナ帝国の国教では、卵を生命の象徴として神聖視していて、それを食べるのは生命に対する冒涜と見なされますー。というのは建前で、実は大昔のアルカモナ帝国の王族の中に卵アレルギーの人が何人もいて、アレルギーに関する知識がなかった当時の人達はそれを天罰だと思い込み、卵を食べるのが国中で禁止され、後付けで卵を生命の象徴として神聖視するようになったみたいですがー」

 聞いておいてよかった。知らずにアルカモナ人の前で卵を食べたら大変なことになるところだった。

「卵っていうのは、鳥の卵のことだよな?」
「鳥類や魚類や両生類やは虫類など、生き物の卵全般を食べるのが禁止ですねー。それから、哺乳類の胎児を食べるのも違法ですー」
「ああうん、それは日本でも一般的じゃないから別にいいや。他には何か、俺たちの常識では合法だけど、アルカモナ帝国では違法なことはあるか?」
「特にありませんねー」
「逆に、俺たちの常識では違法だけど、アルカモナ帝国では合法のことってあるか?」
「アルカモナ帝国には、麻薬や覚醒剤のような中毒性のある薬物の所持や売買が合法ですー。お酒は未成年でも飲むことができますー。それから、買春や売春が合法ですー。身分制度があって、犯罪奴隷や借金奴隷の売買や所持が合法です-」

 うわあ……。結構エグいことをさらっと言いやがった。
 あれ? 待てよ、奴隷が合法ってことは――。

「ちょっと待って。予選に勝ったら、私達はどうなるの?」

 眼鏡をかけた、地味な外見の女子が会話に割り込んだ。その髪型は多分ボブなんだろうけど、この女子の場合は「おかっぱ」と言いたくなる。この女子のことは地味子ちゃんとでも呼ぼう。

「一旦この魔空間に戻り、次のゲームである本戦1回戦の説明を行います-」
「予選終了時点で、私達が奴隷になっていたとしても、ここに戻されるのね?」
「はいー」
「じゃあ例えば、最終日の8日目の夜に、32人の中の誰か1人に全員分の『ゼン』を集めて持たせて、その1人が他の31人を奴隷として売って、所持金を底上げすることもできるの?」

 地味子ちゃんががそう質問すると、あちこちから感心したような声と、非難するような声が同時に上がった。感心したような声は、その方法を思いつかなかった生徒からだろうが、非難するような声は一時的にとはいえクラスメートを売ることに忌避感を覚えた生徒からだろう。

 俺も地味子ちゃんと全く同じ方法を思いついていたんだけど、言わなくて正解だったっぽいな。

「できますー。ただし、例えばAさんがBさんを100万ゼンで売った場合、Aさんの所持金は100万ゼン増えますが、Bさんは100万ゼンの借金を背負ったと見なされますー」
「Aさんの所持金は増えるけど、チームとしてはプラスマイナスゼロで、意味がないってことね?」
「そうですー」

 ザイリックの答えに、地味子ちゃんはがっかりした表情になった。

「借金をした場合も、手持ちのお金から自動的にその金額が引かれると思えばいいのか?」

 俺はそう訊いた。

「そうですー」
「大量の現金を持ち歩くのは危険だと思うけど、銀行に預けることはできるか?」
「できますー」
「銀行に預けているお金も、俺達の所持金として扱われるのか?」
「扱われますー」

 それなら強盗に狙われる心配は少ないか。

「アルカモナ帝国の中で転移する場所は選べるのか?」
「予選開始時の1回に限り、自由に選べますー」
「っていうか、アルカモナ帝国以外にも転移できるのか?」
「できますー」

 まあ、最終的にはアルカモナ帝国の通貨『ゼン』に換金しないといけないから、アルカモナ帝国以外に転移するメリットは少ないんだけど、一考の余地はあるな。

 次に優先的に訊いておかないといけないのは――と、俺が考えていると。

「信じらんない。あんた達、こんなバカみたいなゲームに、本気で参加するつもりなの?」

 呆れと非難が入り混じったような表情で、質問子ちゃんが俺を睨みながらそう言った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

追放料理人とJKの異世界グルメ無双珍道中〜ネットスーパーは最強です〜

音無響一
ファンタジー
わーい、異世界来ちゃった! スキルスキル〜何かな何かな〜 ネットスーパー……? これチートでしょ!? 当たりだよね!? なになに…… 注文できるのは、食材と調味料だけ? 完成品は? カップ麺は? え、私料理できないんだけど。 ──詰みじゃん。 と思ったら、追放された料理人に拾われました。 素材しか買えない転移JK 追放された料理人 完成品ゼロ 便利アイテムなし あるのは、調味料。 焼くだけなのに泣く。 塩で革命。 ソースで敗北。 そしてなぜかペンギンもいる。 今日も異世界で、 調味料無双しちゃいます!

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

勇者召喚の余り物ですが、メイド型アンドロイド軍団で冒険者始めます

水江タカシ
ファンタジー
28歳独身、一般事務の会社員である俺は、勇者召喚に巻き込まれて異世界へと転移した。 勇者、聖女、剣聖―― 華やかな肩書きを持つ者たちがもてはやされる中、俺に与えられたのは聞いたこともないスキルだった。 【戦術構築サポートAI】 【アンドロイド工廠】 【兵器保管庫】 【兵站生成モジュール】 【拠点構築システム】 【個体強化カスタマイズ】 王は落胆し、貴族は嘲笑い、俺は“役立たず”として王都から追放される。 だが―― この世界には存在しないはずの“機械兵器”を、俺は召喚できた。 最初に召喚したのは、クールな軍人タイプのメイド型戦闘アンドロイド。 識別番号で呼ばれる彼女に、俺は名前を与えた。 「今日からお前はレイナだ」 これは、勇者ではない男が、 メイド型アンドロイド軍団と共に冒険者として成り上がっていく物語。 屋敷を手に入れ、土地を拠点化し、戦力を増強しながら、 趣味全開で異世界を生きていく。 魔王とはいずれ戦うことになるだろう。 だが今は―― まずは冒険者登録からだ。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...