異世界デスゲーム? 優勝は俺で決まりだな……と思ったらクラス単位のチーム戦なのかよ! ぼっちの俺には辛すぎるんですけど!

真名川正志

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1回戦 Sランク冒険者ゲーム42

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【お知らせ】
夏バテしてしまったのか、体調が悪い日が続き、昨日も更新できませんでした……。すみません。
厳しい暑さが続くうちは更新が遅れがちになりそうですが、できるだけ毎日更新する、ということでお願いします……。

―――――――――――――――――――――――

 受付の人から受け取った報酬を、夏目理乃は早速佐古くんのアイテムボックスに収納してもらった。

 続いて有希が、初級ポーションの作り方を教えてくれる人を探していると受付の人に相談した。

「少しでも魔族との戦争で有利になるように、ギルドでは〈調合〉スキルを持っている人に情報提供をしています」

 受付の人はそう前置きをして、明日の早朝に、この街に住む高齢の錬金術士を紹介すると言ってくれた。いつも、このギルドに納品された薬草を買い取って初級ポーションや傷薬を作ってくれている錬金術士なのだという。

「こんなに簡単に話が進むなんて……。訊いてみてよかったわ。ありがとう」

 国吉文絵は有希の方を見てそう言った。

「ウチは何もしてないよ」

 有希は笑顔でそう言った。

「ところで、この後はどうする? 僕は図書室で読書をしたいんだけど」

 鈴本がそう言いだした。

「あー……。もう自由時間にしよう。明日の朝に宿の食堂で待ち合わせってことで」

 俺がそう言うと、みんな頷いた。

 それにしても、何で俺が引率の先生ポジションをやらないといけないんだろうな……。俺は絶対にそういうタイプじゃないのに。

「俺も国吉さんみたいに〈鍜治〉のスキルツリーを持っている人を探して、どういうふううに運用しているのか訊いてみるよ」

 千野は俺達にそう言い、サーシャに相談し始めた。

「俺も、少しでも職業レベルを上げられるように、調理スタッフのアルバイトを募集しているところを探してみようかな」

 青山は千野の後ろに並んで順番待ちを始めた。

 俺は、少し迷ったが図書室に移動した。鈴本と国吉文絵が読書をしていたが、他には誰もいなかった。

 本棚から『魔法の修行』という本を選んで開く。現在、この世界には複製師の職業の人は俺以外にいなさそうだから、国吉文絵や千野のように、この街で複製師の人を探して弟子入りすることはできない。そこで、一般的な魔法について書かれた本を読み、せっかく覚えたアイテム複製魔法Lv.1をもう少し役立たせる方法を探したかったのだ。

『魔法の修行』によると、魔法やスキルを実行するときに大事なのはイメージ力らしい。魔法とは、頭の中のイメージを実現する行為である。例えば暑い国に生まれ育ち、雪や氷を見たことがない人が氷魔法を覚えて実行しようとしても、うまく想像できずに失敗してしまったり、効果が著しく下がったりしてしまうのだという。その場合、実際に氷を見て触れることで、劇的に効果が改善されたという実例が『魔法の修行』に書かれていた。

 俺の場合、初級ポーションを実際に使ったことがなかったのが、複製した初級ポーションの品質が大幅に下がってしまった原因の1つだったのかもしれない。

 また、魔力が低いと威力や効果も下がってしまうので、単純に基礎レベルを上げるのも有効らしい。後は、MPが許す限り魔法を使って、慣れるのも大事だということだったが、俺のMPはまだ4分の1しか回復していなかった。

 後は、寝るまでの間に、MPに頼らずに職業レベルを上げる方法を模索することにした。

 俺は複製師なんだから、何かを大量にコピーすればレベルが上がるんじゃないだろうか。1番簡単なのはコピー機で書類をコピーすることだろうが、この世界にはコピー機もプリンターも存在しない。

 となると、ひたすら同じ物を作り続けるのがいいだろうか。

 予選のときは、ことあるごとに文房具屋に行っていたのを思い出し、文房具屋に移動することにした。図書室を出てロビーに行くと、千野が他の冒険者に混じって酒を呑んでいた。何やってんだ、と思ったが、どうやら冒険者達の中に〈鍛治〉スキルツリー持ちの奴がいて、そいつから情報収集をしているようだ。

 千野は俺には気付いていない様子だったので、そっとギルドの外に出た。

 何となく、1人になったのは随分と久しぶりのような気がした。

 俺は本当は、群れるのがあまり好きではない。1人でいると安心するタイプの人間だし、1人の時間を大切にしたいと思うタイプだ。集団行動も苦手だ。それが決して悪いことだとは思っていないのだが、チーム戦のデスゲームに巻き込まれている今は、少し不利なような気もした。

 街の中心部近くで文房具屋を見かけたことがあった気がしたので、記憶を頼りに探すと、見つかった。

 あまり広くないが、文房具の種類は豊富だった。日本では見たことがないような文具に関する魔道具も置いてあるようだった。

 店内を見て回るうちに、俺は正方形の紙の束を発見した。色は白だが、折り紙のように見えた。ただし、店員に確認すると、それは折り紙ではなくメモ用紙だと言われた。実際に手に取ってみて確かめる。予選のときの街は和紙のように分厚い紙しかなかったが、この世界には薄くて丈夫な紙も存在している。

 これで大量の折り鶴を作れば、複製したことになるんじゃないだろうか、と思いつき、そのメモ用紙を200枚購入した。

 宿屋に移動し、お風呂に入った後、自分の部屋の備え付けのランプ型の魔道具のスイッチを入れ、数十羽の鶴を折った。途中で集中力が続かなくなったので、寝ることにした。

 翌朝、目を覚ますと、同室の青山が爆睡していた。青山より早く起きるのは珍しかったが、きっと夜遅くまで調理のアルバイトをしていたのだろう。

 俺が紙の束を手にして、青山を起こさないように気を付けながら部屋を出て、宿屋の食堂に行くと、知らない女性2人組がテーブルに着いていた。他には誰もいなかったので、俺はその女性2人から離れたテーブルに座った。ここで鶴を折りながら他のメンバーが起きてくるのを待とうと思ったのだ。

 すると――。

「ちょっ。烏丸P、マジ?」

 柱の陰から、有希が笑いながら出てきてそう言った。

「え? 何が? っていうか、何で隠れてたんだ?」

 俺は訳が分からず、そう訊いた。

「何であの2人から離れた席に座ったの?」

 有希は俺の質問には答えず、知らない女性2人組の方を手で示してそう訊いた。

「何でって……」

 改めて、その女性2人を確認する。片方は赤みがかった茶色い髪のギャルっぽい雰囲気の美少女で、もう片方は緩くウェーブのかかった綺麗な黒髪が印象的な、大人っぽい清楚系の美人だ。だが、何となく見覚えもあるような気がした。どこかで会ったことがあったっけ……と思いながらまじまじと見て、突然気が付いた。

「え? えっ? まさか、夏目さんと国吉さん!?」

 俺は驚愕してそう叫んだ。

「あははは、烏丸P、驚きすぎだよ」

 有希はお腹を抱えて笑っていた。

「美容師の職業レベルを上げるためだって言われて、有希ちゃんにお化粧させられて、髪を染められたりエクステをつけられたりしたの。私にはこういうのは似合わないって言ったんだけど、聞いてくれなくって……」

 夏目理乃は恥ずかしげにそう言いながら、テーブルの下に持っていた眼鏡をかけて俺を見た。確かに夏目理乃で間違いなさそうだが、髪型が派手になっていて、目や唇が大きくなって、眉が整っていて、俺の認識していた「腹黒地味子ちゃん」とは大きく印象が異なっていた。

 あー、そうか。化粧映えする顔っていうのは、夏目さんみたいな顔のことなんだろうな、と俺は思った。
 有希は顔立ちがはっきりしたタイプの美少女だから、すっぴんのときも、バッチリとメイクをしたときも、それほど印象は変わらなかった。だが、夏目理乃のようなタイプは化粧をすると劇的に変化するのだろう。

 ただ、「化粧映えする顔」と言われるのを嫌がる女性が一定数いるという話は聞いたことがあったので、その言葉は口にしないように気を付けることにした。
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