異世界デスゲーム? 優勝は俺で決まりだな……と思ったらクラス単位のチーム戦なのかよ! ぼっちの俺には辛すぎるんですけど!

真名川正志

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1回戦 Sランク冒険者ゲーム43

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 国吉文絵の方は、夏目理乃と違って顔の印象はあまり変わらなかった。だが、眼鏡を外し、髪型が大きく変化して、唇の色が明るくなったせいで、全体の印象は上品でオシャレな雰囲気になっていた。

 夏目理乃も国吉文絵も、着ている服が昨日までと違っていたせいもあり、有希に言われるまで全く気付かなかった。

「でも、値段交渉をするなら、今の方が有利になると思うよ。『お嬢ちゃん、可愛いから値引きしてあげるね!』とか言うオジサンはどこの世界にでもいるだろうし」

 有希は夏目理乃の方を見てそう言った。

「でも、同性の店員さんには嫌われて、値段交渉で不利になるような気がするのよね。だから一長一短だろうし、落ち着かないし、やっぱり私は昨日までの私の方が好きかな」

 夏目理乃は溜め息混じりにそう言った。

「結局、有希の職業レベルは上がったのか?」
「うん。理乃と文絵のおかげで、レベル2に上がったよ。新しい魔法は覚えられなかったけど」

 有希は嬉しげにそう言った。

「それはよかったな」
「――もう目的は達成したんだし、元に戻してもいい?」

 国吉文絵は居心地が悪そうに訊いた。

「えーっ。まだ駄目だよ。烏丸P以外の男子にも見せないと」

 有希はそう言うと、夏目理乃と国吉文絵から1つテーブルを挟んだ席に着いた。俺だけドッキリに引っかかるのも癪だったので、俺も紙の束を持って有希と同じテーブルに移動した。

「そう言えば、夜桜ちゃんと安来さんと立花さんは?」
「鮎見と光瑠には逃げられた。鮎見は川に早朝の釣りに、光瑠は外で素振りをしたいからって言って……。夜桜ちゃんに関しては、『眠いから嫌だ、って夜桜ちゃんは言ってるよ』ってコンちゃんに言われたの。夜桜ちゃんって、寝るときもコンちゃんの手袋を嵌めたままなんだよね……」

 有希はコップの水を飲みながらそう報告した。ちなみに、今はまだ朝食が提供される前の時間帯だが、水はセルフサービスで自由に飲んでもいいことになっていた。

「そうなのか。夏目さんと国吉さんは逃げ遅れちゃったんだな」

 俺はそう言うと、自分で水を汲んできて一口飲み、折り紙を再開した。

「それは職業レベルを上げるためにやってるの?」

 有希が不思議そうな顔でそう訊いた。

「ああ。これで複製師の仕事をしていることになるのかは分からないけど」
「烏丸くんって、手先が器用なのね。折るのが凄く早い。さすがは器用貧乏ね」

 夏目理乃は、俺が折った鶴の方を見ながらそう言った。

「器用貧乏って言うな。――何か、日本にいたときより早く綺麗に折れるようになった気がするんだよな。パラメーターの器用さの数値が高いおかげかもしれないな」
「ああ、それはあるかもね。夜桜ちゃんは昨日の夜遅くまで動物のヌイグルミを作ってたんだけど、やっぱり『予選のときより楽に作れる気がする』って言ってたし。で、夜桜ちゃんは夜中のうちに裁縫師のレベルが上がって、〈人形〉にスキルポイントを振ったら、〈人形歩行〉っていう通常スキルを覚えたよ」

 夏目理乃はそう教えてくれた。

「それはどういうスキルなんだ?」
「糸で手と繋がっている人形やヌイグルミを歩かせることができる能力なんだって。ただし、夜桜ちゃんが自分で作ったもので、生き物の形をしている人形やヌイグルミしか歩かせることができないみたいだけど。実際に見せてもらったけど、『歩行』って言うだけあって、動きはノロいからあまりバトル向きの能力じゃない気がするわ」
「まあ、それは使い方の問題じゃないかな。例えば黒い布でヌイグルミを作れば、夜間の隠密性が高いだろうから、敵の意表を突くことができるかもしれないし」

 俺はそう言いながらも、ステータス画面を出しながら折り紙を続けていた。

 すると、さっきまで【複製師Lv.1】だったのが【複製師Lv.2】に上がっていた。スキルポイントは4ゲットしていたが、〈スキルツリー複製〉にポイントを振っても、何も覚えることができなかった。

 そのことを報告すると、有希も夏目理乃も国吉文絵もレベルアップを喜んでくれた。

 だが、ここからが本題だった。

 すでに昨夜から100羽くらいの鶴を折ったと思う。この状態で、折り鶴を魔法で複製したら、品質はどうなるのか? という実験がしたかったのだ。

「アイテム複製魔法Lv.1!」

 俺は右手に折り鶴を持ち、左手にただの正方形の紙を持った状態で、そう唱えた。

 正方形の紙が一瞬光り、折り鶴に変化した。

 ステータス画面で確認すると、MPは1しか減っていなかった。昨日初級ポーションを複製したときにはMPを8消費していたはずだが、これはおそらく、複製の難易度によって消費MPが変化するのだろう。水と薬草からポーションを作るのに比べたら、紙を折り鶴に変化させる方が絶対に簡単だろうからな。

「夏目さん、この2羽の鶴を鑑定してくれないか?」

 俺がそう頼むと、夏目理乃はそれぞれの鶴に手をかざして「対物鑑定魔法Lv.1!」と2回言った。俺の両手の鶴が順番に光った。

「……えーっと、まず、どっちもただの【紙】って表示されてるね。この世界には折り紙って言葉がないからだと思う。で、品質はオリジナルの方が71で、コピーの方が61よ」
「昨日のポーションよりも、品質の差が少なくなってるわね」

 国吉文絵は鶴を見ながら興味深そうな口調でそう言った。眼鏡を外しているせいで遠くのものが見えにくいのか、目を細めていた。

「俺は1回もポーションを使ったことがないけど、鶴は昨夜から100回くらい折ったからな。何も考えなくても鶴を折れるようになって、イメージしやすくなった結果、品質が上がったんだと思う。昨日読んだ本に、『魔法やスキルを実行するときに大事なのはイメージ力である』って書かれていたから。後は、単純に折り紙の方が難易度が低いっていうのも関係しているんだろうけど」
「品質に差があっても、見た目は全然変わんないよね。折り目の1つ1つや、鶴の首の角度までそっくりだよ」

 有希は2羽の折り鶴を見比べてそう言った。

「これって、コピーからさらにコピーを作ったら、品質はどうなるのかしら?」

 国吉文絵は興味津々という表情でそう訊いた。

「試してみよう。――アイテム複製魔法Lv.1!」

 俺は右手に先ほどコピーした鶴を持ち、左手に正方形の紙を持ってそう唱えた。左手の紙は一瞬光ったが、正方形の紙のまま何の変化もなかった。

「……失敗したみたいだな。MPも減ってない」

 俺はステータス画面を見ながらそう報告した。

「コピーからさらにコピーを作ることはできない、ってことなのかもしれないわね」

 国吉文絵は口元に手を当ててそう呟いた。

「〈アイテム複製〉のスキルツリーにはそんな説明は書かれてなかったんだけどな。細かいルールは自分で実験して調べてみるしかないのかな」

 俺は折り紙を再開しながらそう言った。

 しばらくして、階段から誰かが降りてくる気配があり、俺達4人はテーブルごとに他人の振りをしてみた。夏目理乃は素早く眼鏡を外して懐に仕舞った。

 食堂にやってきたのは、鈴本と千野と佐古くんの3人だった。3人は食堂の中を見回した後、俺と有希がいるテーブルにやってきて着席した。

 朝の挨拶をした後、俺はアイテム複製魔法の仕様について分かったことを説明した。有希は夜桜の〈人形歩行〉について説明した。

 その間、鈴本と佐古くんは、夏目理乃と国吉文絵の方を一切見なかったが、千野だけは国吉文絵が気になるのか、チラチラと見ている様子だった。

「あー。気付いたのは千野っちだけっぽいね」

 有希はクスクスと笑ってそう言った。

「え? 何の話だ?」

 鈴本は眼鏡のズレを直しながらそう訊いた。

「理乃と文絵がどこにいるか、気付いてる?」
「どこにって……え? ええええっ!」

 鈴本は「知らない女性2人組」の方を見て、ギャルっぽい雰囲気の美少女と、清楚系の大人っぽい美人がクラスメートの女子であることに気付き、驚いた様子で大声を出した。
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