41 / 68
2章-1
第5話
しおりを挟む
俺が世界を救う勇者さま?
覚悟していたとはいえ、またとんでもない話が飛び出してきたな。
けどマキマの表情は真剣そのものだ。
冗談を言ってるわけじゃないってことはすぐに分かった。
「大魔帝ニズゼルファを倒し、世界に平和をもたらすことができるのはルーデウスさま以外におりません。どうかご自身の使命を思い出してください」
「使命……」
「はい。勇者として大魔帝を倒すという使命です」
当然、そんな使命を背負った覚えはない。
でも。
そんな風に感じるのにも理由があったようだ。
続くマキマの言葉でこれまで抱いてきた違和感の正体が判然とする。
「驚かないでお聞きください。あなたさまが生まれ育ったというルーデウス村という村は……実在しないのです」
「!?」
「ルーデウスさまは5年もの間、大魔帝ニズゼルファの呪いによってその幻の村でずっと同じ一日を繰り返していました」
そのひと言から過去の扉が開くことに。
◇◇◇
今から10年前。
突如、出現した魔族の登場によって世界は混沌に包まれることになる。
魔族はモンスターを自らの手駒に変え、極意という特殊な異能によって瞬く間に世界中を掌握していく。
やがてその魔の手は人族にも及んだ。
そんな中。
ランドマン大陸のエアリアル帝国ではひとりの英雄が誕生しようとしていた。
それが第一皇子であるルーデウス・エアリアル――つまり俺だったようだ。
「このときルーデウスさまは15歳。ウェルミィさまは10歳でした」
俺は『天恵の儀式』を迎えたその日に〈皇子〉のジョブを授かるも、それがある特殊なジョブへと超覚醒する。
それが〈勇者〉のジョブだったらしい。
勇者っていうのは数百年おきに人族の間に誕生する英雄の名前でもあるみたいだ。
その歴史は大昔にまで遡るという。
人族に脅威が迫るタイミングで勇者は誕生することが多かったって話だ。
『死の大暴乱』の時代にも勇者は存在して、勇者は支配者としてほかの種族をまとめ上げ、モンスターの脅威から世界を守ったと言われているようだ。
そんな〈勇者〉のジョブを授かった俺もまた英雄と称えられた。
ランドマン大陸に襲いかかってきた凶悪なモンスターを次々に退け、エアリアル帝国の危機を救ったとマキマは口にする。
残念ながらまったく記憶にないが。
そして。
このままでは世界が魔族の手に落ちると考えた俺は、たったひとりで大魔帝ニズゼルファに戦いを挑む決意をしたのだという。
その話を俺はどこか他人事のように聞いていた。
(そんなすごい男が……本当に俺なのか?)
正直言ってまったく信じられない。
けどすごかったのはそこまでだったようだ。
マキマが神妙な表情でこう続ける。
「ですが、圧倒的な強さを持つルーデウスさまをもってしても大魔帝ニズゼルファには敵いませんでした」
その言葉に残りの三人は顔を俯かせる。
俺はというとさっき集会の間で聞いた話を思い出していた。
(そうだ。勇者さまは大魔帝に敗れたんだ)
みんなの話とも一致する。
どうやらマキマが嘘を言ってるって線はなさそうだ。
「エアリアル帝国に勇者が誕生したという話は魔族たちにもすぐ伝わったようなんです」
「そこで大魔帝が自らランドマン大陸へ向けて侵攻を開始したのじゃ」
「お兄さまはその情報を微精霊を通じて知ったんだよ。ニズゼルファが本土に上陸する前に倒そうって」
どうやら俺はランドマン大陸の前線にある小さな島で大魔帝を迎え撃とうとしたようだ。
その小島で一対一の戦いを挑み、敗れてしまったというのが真相らしい。
未だに俺が勇者さまだって話は信じられないけど。
いったんそれを受け入れない限り、続きに耳を傾けるのは難しそうだった。
オーケーだ。
ひとまずぜんぶ受け入れよう。
そう切り替えるといくぶん気持ちも楽になる。
「そのあと。ルーデウスさまはある村人へと転生させられました」
「だからさっき転生って言ったのか」
「うん。うちも最初その話を聞いたときは信じられなかったけどね」
「じゃが姫さま。【写天三眼】で確認したから間違いないのじゃ」
大魔帝ニズゼルファの呪いか。
まったく大したことしてくれやがる。
村人に転生させられた俺は記憶を消され、そこで同じ一日を永遠に繰り返すことになった。
詳しくは分からないけど、これもじいさんのスキルで判明したみたいだな。
(同じ一日を永遠に繰り返す、か)
だからあのとき。
デジャブを何回も見たのか。
(同じ一日を何度も繰り返していたから未来を予測することができたんだ)
タネが分かればなんてことはない。
昔の記憶をいっさい思い出せなかったのはこういう経緯があったからなんだ。
記憶を消されてたのなら思い出せなくて当然だ。
が。
次に新たな疑問が浮かび上がってくる。
(でも……。どうして同じ一日から脱出することができたんだ?)
5年もの間、同じ一日を繰り返してきたわけで。
なにがきっかけで呪いを打ち破ることができたのか、今思い返してみてもよく分からない。
そんな疑問の答えはこのあとの話で判明することになる。
覚悟していたとはいえ、またとんでもない話が飛び出してきたな。
けどマキマの表情は真剣そのものだ。
冗談を言ってるわけじゃないってことはすぐに分かった。
「大魔帝ニズゼルファを倒し、世界に平和をもたらすことができるのはルーデウスさま以外におりません。どうかご自身の使命を思い出してください」
「使命……」
「はい。勇者として大魔帝を倒すという使命です」
当然、そんな使命を背負った覚えはない。
でも。
そんな風に感じるのにも理由があったようだ。
続くマキマの言葉でこれまで抱いてきた違和感の正体が判然とする。
「驚かないでお聞きください。あなたさまが生まれ育ったというルーデウス村という村は……実在しないのです」
「!?」
「ルーデウスさまは5年もの間、大魔帝ニズゼルファの呪いによってその幻の村でずっと同じ一日を繰り返していました」
そのひと言から過去の扉が開くことに。
◇◇◇
今から10年前。
突如、出現した魔族の登場によって世界は混沌に包まれることになる。
魔族はモンスターを自らの手駒に変え、極意という特殊な異能によって瞬く間に世界中を掌握していく。
やがてその魔の手は人族にも及んだ。
そんな中。
ランドマン大陸のエアリアル帝国ではひとりの英雄が誕生しようとしていた。
それが第一皇子であるルーデウス・エアリアル――つまり俺だったようだ。
「このときルーデウスさまは15歳。ウェルミィさまは10歳でした」
俺は『天恵の儀式』を迎えたその日に〈皇子〉のジョブを授かるも、それがある特殊なジョブへと超覚醒する。
それが〈勇者〉のジョブだったらしい。
勇者っていうのは数百年おきに人族の間に誕生する英雄の名前でもあるみたいだ。
その歴史は大昔にまで遡るという。
人族に脅威が迫るタイミングで勇者は誕生することが多かったって話だ。
『死の大暴乱』の時代にも勇者は存在して、勇者は支配者としてほかの種族をまとめ上げ、モンスターの脅威から世界を守ったと言われているようだ。
そんな〈勇者〉のジョブを授かった俺もまた英雄と称えられた。
ランドマン大陸に襲いかかってきた凶悪なモンスターを次々に退け、エアリアル帝国の危機を救ったとマキマは口にする。
残念ながらまったく記憶にないが。
そして。
このままでは世界が魔族の手に落ちると考えた俺は、たったひとりで大魔帝ニズゼルファに戦いを挑む決意をしたのだという。
その話を俺はどこか他人事のように聞いていた。
(そんなすごい男が……本当に俺なのか?)
正直言ってまったく信じられない。
けどすごかったのはそこまでだったようだ。
マキマが神妙な表情でこう続ける。
「ですが、圧倒的な強さを持つルーデウスさまをもってしても大魔帝ニズゼルファには敵いませんでした」
その言葉に残りの三人は顔を俯かせる。
俺はというとさっき集会の間で聞いた話を思い出していた。
(そうだ。勇者さまは大魔帝に敗れたんだ)
みんなの話とも一致する。
どうやらマキマが嘘を言ってるって線はなさそうだ。
「エアリアル帝国に勇者が誕生したという話は魔族たちにもすぐ伝わったようなんです」
「そこで大魔帝が自らランドマン大陸へ向けて侵攻を開始したのじゃ」
「お兄さまはその情報を微精霊を通じて知ったんだよ。ニズゼルファが本土に上陸する前に倒そうって」
どうやら俺はランドマン大陸の前線にある小さな島で大魔帝を迎え撃とうとしたようだ。
その小島で一対一の戦いを挑み、敗れてしまったというのが真相らしい。
未だに俺が勇者さまだって話は信じられないけど。
いったんそれを受け入れない限り、続きに耳を傾けるのは難しそうだった。
オーケーだ。
ひとまずぜんぶ受け入れよう。
そう切り替えるといくぶん気持ちも楽になる。
「そのあと。ルーデウスさまはある村人へと転生させられました」
「だからさっき転生って言ったのか」
「うん。うちも最初その話を聞いたときは信じられなかったけどね」
「じゃが姫さま。【写天三眼】で確認したから間違いないのじゃ」
大魔帝ニズゼルファの呪いか。
まったく大したことしてくれやがる。
村人に転生させられた俺は記憶を消され、そこで同じ一日を永遠に繰り返すことになった。
詳しくは分からないけど、これもじいさんのスキルで判明したみたいだな。
(同じ一日を永遠に繰り返す、か)
だからあのとき。
デジャブを何回も見たのか。
(同じ一日を何度も繰り返していたから未来を予測することができたんだ)
タネが分かればなんてことはない。
昔の記憶をいっさい思い出せなかったのはこういう経緯があったからなんだ。
記憶を消されてたのなら思い出せなくて当然だ。
が。
次に新たな疑問が浮かび上がってくる。
(でも……。どうして同じ一日から脱出することができたんだ?)
5年もの間、同じ一日を繰り返してきたわけで。
なにがきっかけで呪いを打ち破ることができたのか、今思い返してみてもよく分からない。
そんな疑問の答えはこのあとの話で判明することになる。
142
あなたにおすすめの小説
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・
竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります
しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。
納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。
ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。
そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。
竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる