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序章
第6話
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「話を戻そうか。私が聖剣クレイモアとスキルポッドを預かっていた理由だったね」
「え? あ、はい」
「あいつに言われていたんだ。いずれこの2つを必要とする者が現れるって」
「? それが、俺だったってことですか?」
エメラルドは、とんがり帽子を直しながら、こくんと小さく頷く。
どうしてだろうか。
ゼノはそれを聞いて、突然話が飛んでしまったような印象を受けた。
何か大事な部分をわざと隠されたような、そんな感じがしたのだ。
だが、そんな違和感も、続くエメラルドの言葉で吹き飛んでしまう。
「さっき、私の魔法でスキルを受け渡したって言ったね? その受け渡したスキルっていうのが、〔魔導ガチャ〕っていうものなんだ」
「〔魔導ガチャ〕?」
「うん。クリスタルを使って、1日に1回、10個の魔石をランダムで召喚することができるんだよ」
「クリスタルに、魔石っ……?」
「まぁ、実際に使ってもらった方が分かりやすいんだけど。ひとまず、口頭で説明するよ」
そこでゼノは、エメラルドから〔魔導ガチャ〕の説明を受けることになった。
◆
まず前提として、これからゼノが扱おうとしている魔法は、エメラルドや他の魔導師が使用する魔法とは、その発動手順が異なるということを理解しなければならなかった。
ゼノは魔法適性ゼロのため、本来ならば魔法を使うことはできない。
だが、エメラルドいわく、これまで5年かけて魔法理論を学んできたゼノなら、この〔魔導ガチャ〕を扱うことができるのだという。
「ゼノくんの元々の魔力値は9999だからね。前にも言ったけど、君は天才魔導師としての素質を生まれながら持っているんだよ」
「はぁ」
ゼノとしてはまったく実感がなかったが、エメラルドは、ゼノが〔魔導ガチャ〕を扱えると信じて疑わないようであった。
エメラルドは、懐からキラキラと光輝く青色の小さな物質を取り出す。
「これはクリスタルって言って、〔魔導ガチャ〕で魔石を召喚するのに必要なアイテムなんだ」
「どうやって使うんですか?」
「まずは、自分の足元に魔法陣を発生させる。これは、これまで何度も教えてきたから、ゼノくんもできるはずだね?」
「はい」
エメラルドとの特訓によって、ゼノは魔法陣を発生させることは、簡単にできるようになっていた。
とは言っても、ただ単に発生させるだけだ。
魔法陣は、魔導師が魔法を詠唱する際に使用するものだが、ゼノはまだ魔法を発動させたことはない。
なぜ、エメラルドは、これを自分に習得させたのか。
これまでゼノはずっと疑問だったわけだが、どうやらようやく役に立つ日が来たようだ。
「そしたら、クリスタルを魔法陣の中へ投げ込む。あとは、自然に10個の魔石が浮かび上がってくるから」
「その、魔石っていうのは何なんです?」
「当然の疑問だね。簡単にいえば、魔法を発動するためのマストアイテムと言えばいいかな」
「魔法を発動するためのマストアイテム……」
通常、魔導師は物に頼ることなく魔法を使うことができる。
Lvが上がるたびに習得できる魔法が増えていき、魔法陣を発生させて詠唱文を唱えれば、いつでも発動が可能な状態となる。
ちなみに、魔導師は【魔力固定の儀】で固定された魔力値の数値によって、生涯習得できる魔法が変わる。
下位魔導師、中位魔導師、上位魔導師と3つのクラスに分類され、それぞれ習得できる魔法が異なるのだ。
----------
〇下位魔導師=魔力値1~33
[初期習得]
《発火》
[習得魔法一覧]
Lv.10 《達筆》
Lv.20 《疾走》
Lv.30 《アナライズ》
Lv.40 《ライト》
Lv.50 《クレアボヤンス》
〇中位魔導師=魔力値34~66
[初期習得]
《発火》《達筆》
《疾走》《アナライズ》
[習得魔法一覧]
Lv.10 《ライト》
Lv.20 《クレアボヤンス》
Lv.30 《バリア》
Lv.40 《幻覚》
Lv.50 《リフレクション》
Lv.60 《テレポート》
〇上位魔導師=魔力値67~99
[初期習得]
《発火》《達筆》
《疾走》《アナライズ》
《ライト》《クレアボヤンス》
[習得魔法一覧]
Lv.10 《バリア》
Lv.20 《幻覚》
Lv.30 《リフレクション》
Lv.40 《テレポート》
Lv.50 《転送》
Lv.60 《時間停止》
Lv.70 《支配》
----------
人魔大戦以降、魔力値を100以上で固定できた魔導師は現れていない。
そのため、100以上の魔力値で固定することができれば、新たな魔法が発見できるのではないかと言われている。
ゼノがウガンに期待されていたのはこのためだ。
(……けど、そう考えると、やっぱり物に頼るっていうのは、通常の魔法とは違うみたいだな。お師匠様も〝再現〟ってはっきり言っていたわけだし)
緑色のロングヘアを振り払うと、エメラルドはさらに説明を続ける。
「そこで必要になるのが、さっき渡した聖剣クレイモアだね」
「これですか?」
ゼノは聖剣クレイモアを手に取って、一度掲げてみる。
「剣の鍔に丸い穴が空いているだろう?」
「はい。たしかに空いてますね」
エメラルドが言うように、鍔の中央には丸いくぼみがあった。
「そこに魔石をはめると、魔法を発動できるようになるんだ」
「えぇっ!?」
「1個の魔石につき、魔法は1回しか使えないけどね。あとで試してみるといい」
どうやら魔石さえはめてしまえば、いつでも魔法が使える状態となるため、その発動手順は特に決まっていないようだ。
詠唱文を破棄しても特に問題はなく、ただ魔法名を唱えれば、それで発動することができるらしい。
まさか、こんな簡単に魔法が使えるとは思っていなかったゼノにとって、エメラルドの言葉はとても衝撃的であった。
「あの……それで、その魔石っていうのは、何種類あるんですか?」
魔石=魔法という図式が成り立つなら、その数が気になるのは当然だ。
(さっきお師匠様は、大賢者様が列挙した魔法って言ってたけど……)
つまり、現代では未発見の魔法も使えるのではないか、と。
微かな期待がゼノの中にはあった。
そして、その期待は大きく上回ることになる。
「魔石の種類かい? えーっと、ゼノが習得していた魔法だから……全部で666種類だね」
「666!? そ、そんなにっ……!?」
「あれ? この話は地上では有名じゃないのかい?」
「いえ……。俺は初めて知りました……」
「そっか。私も全部見たわけじゃないんだけどね。でも、間違いないよ。本人がそう言っていたから」
「666種類なんて……正直、凄すぎて上手く想像できません……」
「あはは、そうだろうね。私も扱える魔法は100種類くらいが限界だし」
そう口にしつつも、ゼノは一度冷静になる。
(現代では13種類の魔法が発見されていて、まだ98%の魔法が見つかっていないってことは……)
それを計算すると、トータルはおよそ666種類だ。
ひょっとすると、この話は伝承か何かで後世に伝わっていたのかもしれない。
そんなことをゼノが考えていると……。
「あっ、そうだ。これを渡すのを忘れていたよ」
何かを思い出したように、エメラルドは手のひらサイズの黒い袋を差し出してくる。
「これは?」
「それは魔導袋と言って、亜空間と繋がっている袋なんだ。《アイテムボックス》の魔法は知ってるよね? ようは、その袋はあの魔法と同じ機能を備えているんだ」
《アイテムボックス》は、自分の好きなタイミングで思うように、武器やアイテムを出し入れすることが可能な魔法である。
ゼノもエメラルドがそれを使う場面を何度も見てきたので、仕組みはなんとなく理解できた。
「そこに、手に入れた魔石をストックしていくといい。もちろん、ほかの武器やアイテムを入れることもできるから」
「たしかに、1回のガチャで10個の魔石を召喚できるってことは、毎日続けていたら、とんでもない数の魔石が手に入りますね」
だが、エメラルドの言う通り、1個の魔石につき1回魔法が使えるのだとすれば、魔石は貯めれば貯めるほど、魔法は使い放題ということになる。
(こんな異次元のスキルがあったなんて……凄すぎるっ!)
が。
そう感動するゼノとは異なり、エメラルドの反応はそこまで良くない。
「うーん。実はそういうわけでもないんだよ」
「え? だって1日に10個の魔石が手に入るなら、10日で100個ですよ?」
「まぁ、普通はそう考えるか。でも、そうじゃないんだよ。実は、魔石には寿命があってさ」
「え……寿命?」
「うん。寿命を迎えた魔石は、そのまま消滅してしまうんだよ。魔石は7つのレアリティに分かれていて、それぞれ寿命が異なるんだ」
エメラルドの話によれば、魔石の種類と寿命は以下の通りだという。
----------
〇魔石の種類
☆1 =300種類/寿命1日
☆2 =180種類/寿命2日
☆3 =80種類/寿命3日
☆4 =50種類/寿命4日
☆5 =30種類/寿命5日
☆6 =19種類/寿命6日
☆7 =7種類/寿命なし
----------
ちなみに、この寿命というのは、ガチャで召喚した日から起算しての日数であるようだ。
「☆7の魔石だけは特別で、その寿命はないんだ。所謂、究極魔法と呼ばれる魔法がこれに該当する」
「……究極魔法、ですか……」
思わずゼノはごくりと唾を飲んでしまう。
「あいつも、生涯のうちでこれらの魔法をすべて使ったわけじゃないと思うけどね。ちなみに、あいつが大陸間に結界を張るのに使った古代魔法と、魔王を倒すために使った禁忌魔法も、究極魔法のうちの1つだよ」
「え……えぇぇっ!?」
「どうしたの?」
「いやいやっ! 逆にお師匠様はなんでそんな冷静なんですか!? 究極魔法を発動できる魔石が、〔魔導ガチャ〕で手に入るってことですよね!?」
「そうだけど?」
ランダムで10個の魔石が手に入るということは、毎日魔石を召喚していたら、いつかは究極魔法の魔石を手にすることになる。
(そんなものが、この剣の穴にはめるだけで発動できちゃうなんて……)
世界を一変させた魔法がそんな簡単に手に入ってしまうという事実に、ゼノは突然恐ろしくなってしまう。
「ごめんなさい……。悪いですけど、俺にこんなすごい物は扱えません……」
ゼノは、手にした聖剣クレイモアをエメラルドに返却しようとする。
たしかに、魔法を使ってみたいという夢はあった。
エメラルドに命を救われた時。
彼女が魔法を自在に操る姿に感動して、ゼノはここまで修行に励んできたのだ。
(……でも。いきなり、究極魔法が使えるかもしれないなんて……。さすがに荷が重すぎるよ)
まだ、下級魔法の1つも扱ったことがないのだ。
ゼノがそのように弱気になるのも当然かもしれない。
が。
エメラルドは、ゼノが差し出した聖剣を突き返す。
「ゼノくん。君は何か勘違いをしているみたいだ」
「え? あ、はい」
「あいつに言われていたんだ。いずれこの2つを必要とする者が現れるって」
「? それが、俺だったってことですか?」
エメラルドは、とんがり帽子を直しながら、こくんと小さく頷く。
どうしてだろうか。
ゼノはそれを聞いて、突然話が飛んでしまったような印象を受けた。
何か大事な部分をわざと隠されたような、そんな感じがしたのだ。
だが、そんな違和感も、続くエメラルドの言葉で吹き飛んでしまう。
「さっき、私の魔法でスキルを受け渡したって言ったね? その受け渡したスキルっていうのが、〔魔導ガチャ〕っていうものなんだ」
「〔魔導ガチャ〕?」
「うん。クリスタルを使って、1日に1回、10個の魔石をランダムで召喚することができるんだよ」
「クリスタルに、魔石っ……?」
「まぁ、実際に使ってもらった方が分かりやすいんだけど。ひとまず、口頭で説明するよ」
そこでゼノは、エメラルドから〔魔導ガチャ〕の説明を受けることになった。
◆
まず前提として、これからゼノが扱おうとしている魔法は、エメラルドや他の魔導師が使用する魔法とは、その発動手順が異なるということを理解しなければならなかった。
ゼノは魔法適性ゼロのため、本来ならば魔法を使うことはできない。
だが、エメラルドいわく、これまで5年かけて魔法理論を学んできたゼノなら、この〔魔導ガチャ〕を扱うことができるのだという。
「ゼノくんの元々の魔力値は9999だからね。前にも言ったけど、君は天才魔導師としての素質を生まれながら持っているんだよ」
「はぁ」
ゼノとしてはまったく実感がなかったが、エメラルドは、ゼノが〔魔導ガチャ〕を扱えると信じて疑わないようであった。
エメラルドは、懐からキラキラと光輝く青色の小さな物質を取り出す。
「これはクリスタルって言って、〔魔導ガチャ〕で魔石を召喚するのに必要なアイテムなんだ」
「どうやって使うんですか?」
「まずは、自分の足元に魔法陣を発生させる。これは、これまで何度も教えてきたから、ゼノくんもできるはずだね?」
「はい」
エメラルドとの特訓によって、ゼノは魔法陣を発生させることは、簡単にできるようになっていた。
とは言っても、ただ単に発生させるだけだ。
魔法陣は、魔導師が魔法を詠唱する際に使用するものだが、ゼノはまだ魔法を発動させたことはない。
なぜ、エメラルドは、これを自分に習得させたのか。
これまでゼノはずっと疑問だったわけだが、どうやらようやく役に立つ日が来たようだ。
「そしたら、クリスタルを魔法陣の中へ投げ込む。あとは、自然に10個の魔石が浮かび上がってくるから」
「その、魔石っていうのは何なんです?」
「当然の疑問だね。簡単にいえば、魔法を発動するためのマストアイテムと言えばいいかな」
「魔法を発動するためのマストアイテム……」
通常、魔導師は物に頼ることなく魔法を使うことができる。
Lvが上がるたびに習得できる魔法が増えていき、魔法陣を発生させて詠唱文を唱えれば、いつでも発動が可能な状態となる。
ちなみに、魔導師は【魔力固定の儀】で固定された魔力値の数値によって、生涯習得できる魔法が変わる。
下位魔導師、中位魔導師、上位魔導師と3つのクラスに分類され、それぞれ習得できる魔法が異なるのだ。
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〇下位魔導師=魔力値1~33
[初期習得]
《発火》
[習得魔法一覧]
Lv.10 《達筆》
Lv.20 《疾走》
Lv.30 《アナライズ》
Lv.40 《ライト》
Lv.50 《クレアボヤンス》
〇中位魔導師=魔力値34~66
[初期習得]
《発火》《達筆》
《疾走》《アナライズ》
[習得魔法一覧]
Lv.10 《ライト》
Lv.20 《クレアボヤンス》
Lv.30 《バリア》
Lv.40 《幻覚》
Lv.50 《リフレクション》
Lv.60 《テレポート》
〇上位魔導師=魔力値67~99
[初期習得]
《発火》《達筆》
《疾走》《アナライズ》
《ライト》《クレアボヤンス》
[習得魔法一覧]
Lv.10 《バリア》
Lv.20 《幻覚》
Lv.30 《リフレクション》
Lv.40 《テレポート》
Lv.50 《転送》
Lv.60 《時間停止》
Lv.70 《支配》
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人魔大戦以降、魔力値を100以上で固定できた魔導師は現れていない。
そのため、100以上の魔力値で固定することができれば、新たな魔法が発見できるのではないかと言われている。
ゼノがウガンに期待されていたのはこのためだ。
(……けど、そう考えると、やっぱり物に頼るっていうのは、通常の魔法とは違うみたいだな。お師匠様も〝再現〟ってはっきり言っていたわけだし)
緑色のロングヘアを振り払うと、エメラルドはさらに説明を続ける。
「そこで必要になるのが、さっき渡した聖剣クレイモアだね」
「これですか?」
ゼノは聖剣クレイモアを手に取って、一度掲げてみる。
「剣の鍔に丸い穴が空いているだろう?」
「はい。たしかに空いてますね」
エメラルドが言うように、鍔の中央には丸いくぼみがあった。
「そこに魔石をはめると、魔法を発動できるようになるんだ」
「えぇっ!?」
「1個の魔石につき、魔法は1回しか使えないけどね。あとで試してみるといい」
どうやら魔石さえはめてしまえば、いつでも魔法が使える状態となるため、その発動手順は特に決まっていないようだ。
詠唱文を破棄しても特に問題はなく、ただ魔法名を唱えれば、それで発動することができるらしい。
まさか、こんな簡単に魔法が使えるとは思っていなかったゼノにとって、エメラルドの言葉はとても衝撃的であった。
「あの……それで、その魔石っていうのは、何種類あるんですか?」
魔石=魔法という図式が成り立つなら、その数が気になるのは当然だ。
(さっきお師匠様は、大賢者様が列挙した魔法って言ってたけど……)
つまり、現代では未発見の魔法も使えるのではないか、と。
微かな期待がゼノの中にはあった。
そして、その期待は大きく上回ることになる。
「魔石の種類かい? えーっと、ゼノが習得していた魔法だから……全部で666種類だね」
「666!? そ、そんなにっ……!?」
「あれ? この話は地上では有名じゃないのかい?」
「いえ……。俺は初めて知りました……」
「そっか。私も全部見たわけじゃないんだけどね。でも、間違いないよ。本人がそう言っていたから」
「666種類なんて……正直、凄すぎて上手く想像できません……」
「あはは、そうだろうね。私も扱える魔法は100種類くらいが限界だし」
そう口にしつつも、ゼノは一度冷静になる。
(現代では13種類の魔法が発見されていて、まだ98%の魔法が見つかっていないってことは……)
それを計算すると、トータルはおよそ666種類だ。
ひょっとすると、この話は伝承か何かで後世に伝わっていたのかもしれない。
そんなことをゼノが考えていると……。
「あっ、そうだ。これを渡すのを忘れていたよ」
何かを思い出したように、エメラルドは手のひらサイズの黒い袋を差し出してくる。
「これは?」
「それは魔導袋と言って、亜空間と繋がっている袋なんだ。《アイテムボックス》の魔法は知ってるよね? ようは、その袋はあの魔法と同じ機能を備えているんだ」
《アイテムボックス》は、自分の好きなタイミングで思うように、武器やアイテムを出し入れすることが可能な魔法である。
ゼノもエメラルドがそれを使う場面を何度も見てきたので、仕組みはなんとなく理解できた。
「そこに、手に入れた魔石をストックしていくといい。もちろん、ほかの武器やアイテムを入れることもできるから」
「たしかに、1回のガチャで10個の魔石を召喚できるってことは、毎日続けていたら、とんでもない数の魔石が手に入りますね」
だが、エメラルドの言う通り、1個の魔石につき1回魔法が使えるのだとすれば、魔石は貯めれば貯めるほど、魔法は使い放題ということになる。
(こんな異次元のスキルがあったなんて……凄すぎるっ!)
が。
そう感動するゼノとは異なり、エメラルドの反応はそこまで良くない。
「うーん。実はそういうわけでもないんだよ」
「え? だって1日に10個の魔石が手に入るなら、10日で100個ですよ?」
「まぁ、普通はそう考えるか。でも、そうじゃないんだよ。実は、魔石には寿命があってさ」
「え……寿命?」
「うん。寿命を迎えた魔石は、そのまま消滅してしまうんだよ。魔石は7つのレアリティに分かれていて、それぞれ寿命が異なるんだ」
エメラルドの話によれば、魔石の種類と寿命は以下の通りだという。
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〇魔石の種類
☆1 =300種類/寿命1日
☆2 =180種類/寿命2日
☆3 =80種類/寿命3日
☆4 =50種類/寿命4日
☆5 =30種類/寿命5日
☆6 =19種類/寿命6日
☆7 =7種類/寿命なし
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ちなみに、この寿命というのは、ガチャで召喚した日から起算しての日数であるようだ。
「☆7の魔石だけは特別で、その寿命はないんだ。所謂、究極魔法と呼ばれる魔法がこれに該当する」
「……究極魔法、ですか……」
思わずゼノはごくりと唾を飲んでしまう。
「あいつも、生涯のうちでこれらの魔法をすべて使ったわけじゃないと思うけどね。ちなみに、あいつが大陸間に結界を張るのに使った古代魔法と、魔王を倒すために使った禁忌魔法も、究極魔法のうちの1つだよ」
「え……えぇぇっ!?」
「どうしたの?」
「いやいやっ! 逆にお師匠様はなんでそんな冷静なんですか!? 究極魔法を発動できる魔石が、〔魔導ガチャ〕で手に入るってことですよね!?」
「そうだけど?」
ランダムで10個の魔石が手に入るということは、毎日魔石を召喚していたら、いつかは究極魔法の魔石を手にすることになる。
(そんなものが、この剣の穴にはめるだけで発動できちゃうなんて……)
世界を一変させた魔法がそんな簡単に手に入ってしまうという事実に、ゼノは突然恐ろしくなってしまう。
「ごめんなさい……。悪いですけど、俺にこんなすごい物は扱えません……」
ゼノは、手にした聖剣クレイモアをエメラルドに返却しようとする。
たしかに、魔法を使ってみたいという夢はあった。
エメラルドに命を救われた時。
彼女が魔法を自在に操る姿に感動して、ゼノはここまで修行に励んできたのだ。
(……でも。いきなり、究極魔法が使えるかもしれないなんて……。さすがに荷が重すぎるよ)
まだ、下級魔法の1つも扱ったことがないのだ。
ゼノがそのように弱気になるのも当然かもしれない。
が。
エメラルドは、ゼノが差し出した聖剣を突き返す。
「ゼノくん。君は何か勘違いをしているみたいだ」
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