迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ

文字の大きさ
15 / 90
1章

第6話

「うん、今日もいい天気だな」

 お天道様を見上げながら、ゼノは朝から活気づくフォーゲラングの村を歩いていた。
 昨日も感じたことだったが、皆がそれぞれ自分の仕事に誇りを持って働いているように、ゼノの目には映った。

(本当にいい村だな。また、時間ができたら来よう)

 そんなことを思いながら、村の出口を目指して歩いていると。

「そこの貴方」

 振り返れば、そこには微笑みをたずさえた少女の姿があった。

「こんにちは♪ ちょっとよろしいでしょうか?」
 
「え……昨日の聖女様?」

「はぁい♪ 皆さんに癒しを与えている心優しき聖女様です♡」

 たしかにそう自称するように、彼女の周りには癒しのマイナスイオンが飛んでいた。
 
「わたし、モニカ・トレイアと申します。貴方のお名前を教えていただけますか?」

「あ、初めまして。俺はゼノ・ウィンザーって言います」

「ゼノ?」

 その一瞬、ヒーラーの少女――モニカが驚いたような反応を見せる。

「……珍しい名前ですね♪ あの大賢者様と同じ名前じゃないですか」

「ええ、まぁ」

 ゼノはそこまで口にして、本当のことを話すかどうか迷った。
 自分の名前は、その大賢者様から付けられた名前なのだ、と。 

 が。

 ゼノが何かを口にする前に、モニカの鋭い質問が飛んでくる。

「それで、ゼノさんはどうしてここにいるんですか? この村の方じゃないですよね?」

「え?」

 その瞬間、突然、モニカの態度が変わった。
 ほわほわとした微笑みをスッと切り替えて、真剣な眼差しで訊ねてくる。

「あ……いや、たまたま途中で立ち寄りまして」

「そうなんですね。ふーん……」

 そう口にすると、モニカはゼノの全身を舐め回すように眺めてくる。
 そして、続けて罪状を読み上げるように、ビシッと人差し指を突き立てながら迫った。

「貴方。昨日ご婦人の傷を治療してましたけど、ライセンスはお持ちですよね?」

「ライセンス、ですか?」

「はい。南方教会が設置されていない場所で治療活動を行うには、教皇様が発行されたライセンスが必要なんです」

「そうだったんですか。すみません……。俺、ライセンスは持ってなくて」

「え? ライセンスをお持ちではないんですか? では、なんで治療しちゃったんでしょうか? ヒーラーなら、そんな当たり前の常識、知っていて当然ですよね?」

 口調は柔らかいが、モニカの態度は明らかにゼノを敵視していた。
 罪を許さないという目をしている。

(やべぇ……。聖女様、めちゃくちゃ怒ってるぞ。どうしよう……)

 ここで下手なことを言っても、さらに厳しく追及されそうだったので、ゼノは本当のことを話すことにした。

「あの……ごめんなさい。俺、ヒーラーじゃないんです」

「? ヒーラーじゃないのでしたら、どうやってご婦人の傷を癒したんですか? ムリですよね。その言い訳」

「いや、俺は魔導師なんです」

「はい? 魔導師……?」

 予想外の回答が返って来たのだろう。
 モニカはそれを聞いて固まってしまう。

「てっきり、村中で話題になっているものだって思ってたんですけど」

「し、知りませんっ……!」

 顔を赤くさせて、モニカはぷいと顔を背ける。
 彼女にとっては聞いても面白くない噂だったため、耳に届かなかったのかもしれない。

「というか、待ってください。魔導師ってことは……貴方、貴族ですよね? 貴族の方がどうしてこの村に、たまたま立ち寄る必要があったんですか?」

「えっと……今の俺はもう貴族じゃないんです」

「貴族じゃない?」

 ゼノがそう口にすると、モニカはあからさまに不審な目を向けてくる。
 
 それも当然だ。
 現代において、王族や貴族ではない魔導師というのは本当に稀な存在だからだ。

「……というか、その話は置いておくにしても、魔導師の方が〈回復術〉を使えるとか聞いたことがありませんけど」

「俺が使ったのは〈回復術〉じゃないんです。魔法で治療を行いまして……」

「ま、魔法っ……!?」

(やっぱり、こういう反応になるよなぁ)

 ただ、今の彼女に、実は未発見魔法が扱えるのだと言っても、信じてもらえる見込みは薄かった。
 それに、むやみやたらと人に話すことでもなかった。

 だから、ゼノは昨日の婦人に言った言葉をそのまま繰り返す。

「昔は、魔導師も傷の治療ができたみたいなんです」

「昔はって……。今は魔法は13種類しか発見されてないですよねっ? その中に治療が行える魔法なんて無いと思うんですが」

「いや、それは……」

「とにかくです。どういうインチキで傷を治したかは知りませんが、貴方が勝手にご婦人の傷を治療したことで、わたしの評価はだだ下がりなんです。これって、営業妨害ですよね?」

「ごめんなさい。本当に申し訳ないです。ただ、あの人を見ていたら放っておけなくて」

「そういうのをいらぬお節介って言うんですよぉ!」

 モニカは不機嫌そうに頬を膨らませる。
 そこには、昨日見かけた凛とした聖女の姿はなかった。

 今の彼女には、どこか駄々っ子のような幼さがあった。

 そして、何かに気付いたようにウィンプルをぱたぱたと振り払うと、姿勢を正してゼノに向き直る。

「あのぉー、何か誤解されてるようですけど、昨日はたまたま調子が悪かったんです。本来のわたしの力をもってすれば、あのご婦人の傷は治せたんですよ? 聖女の〈回復術〉は偉大ですから♪」

「ええ、そうだと思います」

「わたしは王都にある総本山教会から派遣されてこの村までやって来たんです。ですから、こういうのは困るんですよね。ヒーラーは2人もいりません。ほら、献金も上手く集められないと思いませんか?」

「そうですね」

 ゼノはそう口にしつつ、少しだけモニカの態度が気になった。

(……なんだろう。やけに絡んでくるな。たしかに、仕事の邪魔をして悪かったとは思うけど……)

「というわけですので。悪いんですけど、この村から早急に出て行ってもらえますか? 貴方がいると、今後の仕事に差し支えますので♪」

 にっこりと微笑みを浮かべて、モニカはそう言い放った。
 有無を言わさないという態度だ。

「実は、もうこの村を出て近くの町まで行こうと思っていたんです。これから仕事を探さないといけないので。邪魔をして本当にすみませんでした」

「そうですか。そうしていただけると助かります♪ 大丈夫です、安心してください。ゼノさんに代わって、この村の方々のフォローはわたしがしっかりと務めておきますから」

「はい。よろしくお願いします」

 ゼノは一度頭を下げて、その場を後にしようとする。

(そうだよな。俺みたいなヤツがいたら、仕事がやり辛いよな。即刻立ち去ろう)

 そう思って、モニカに背を向けるゼノだったが……。

「魔導師様っ!」

 突如、血相を変えて走って来た1人の男にゼノは声をかけられる。
 彼は息も切れ切れのまま、ゼノに向かってこう訴えた。 

「うちの娘を見てやってくれませんか!?」

 その表情を見て只事ではないと悟ったゼノは、すぐに男に訊ねた。

「何があったんですか?」

「え、えぇっ……。実は昨日、娘は友達と一緒に近くの山へ遊びに行っていたのですが、そこで見知らぬ木の実を食べてしまったみたいで……」

「木の実?」

 ひょっとすると騙しの実かもしれない、とゼノは思った。

 その昔、ドミナリアの町で暮らす子供が家族で山に出かけた際に、美味しそうな木の実を食べて命を落としたという事故があった。
 山や森には、そういった子供を騙す食べ物が時々落ちていたりすることがある。

「容態を確認したいので、案内してくれますか?」

「ありがとうございます、魔導師様! こちらです!」

 走り始める父親の後にゼノがついて行こうとすると、モニカが後ろから声をかけてきた。

「待ってください。わたしも行きます」

「……え? いいんですか?」

「いいも何も今言ったじゃないですかっ! ゼノさんに代わってこの村の方々のフォローはわたしがしっかりと務めておきますって。というか、貴方がいると邪魔なんですけどぉ!」

「でも、俺も放っておけないんです」

「……むぅっ。これは聖女の務めです! ゼノさんはわたしの後ろで黙って見ていてください!」

 結局、モニカも一緒について来る形で、2人は父親の背中を追いかけるのだった。
感想 5

あなたにおすすめの小説

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました