迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ

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1章

第16話

「俺様の名はダニエル・オースターだ! このギルドを仕切ってる」

「仕切ってるってことは……ギルドマスターなんですか?」

 どおりで他のギルド職員と雰囲気が違うわけだ、とゼノは思った。

「そうそう。昔は【震威の黒龍ローグベルセルク】っていう凄腕の冒険者が集まるパーティーのリーダーだったみたいだねぇ」

「おおぅ! なんとでも好きに呼んでくれ!」

「あの……それで、俺に何か用なんでしょうか? なんか探しているみたいでしたけど……」

「その件なんだがな。今ちょうど、ラヴニカの冒険者ギルドから伝書鳥が届いたのよ! てめぇ、ワイド山のボス魔獣を1人で倒したみたいじゃねーか!」

 ダニエルがそう口にした瞬間、これまでこちらのやり取りに注目していた冒険者たちがザワザワと騒ぎ始める。
 その中には、ギルドの常連であるグリーたちパーティーの姿もあった。

「おい、聞いたか? ワイド山のボス魔獣だってよ」
「リーディングホークを1人で倒した? さすがに嘘じゃね?」
「だよな……。グリーはどう思うよ?」

「……あのクソ魔導師野郎に、んな芸当ができるわけねーだろ」

 グリーがそう言い放つと、仲間もそれぞれに頷き合う。
 だが、彼らとは違って、他の冒険者たちはダニエルの言葉を信じたようだ。

 Fランク冒険者がワイド山のボス魔獣を1人で倒したという話は、相当にインパクトがあったようで、すぐにあちこちに話が広がっていく。

 そんな光景を目にして、ティナはぼそっと小さく呟いた。

「……あの子の、言った通りだ……」
 
(あの子?)

 ティナの言葉に気を取られていると、ゼノはダニエルにドン!と肩を叩かれる。

「いって!?」

「てめぇ、何者なんだっ? 調べたら、今回のクエストが初回みたいじゃねーか!」

「ちょ、ちょっと待ってください……。話が全然見えないんですけど……」

 その時、一度カウンターの奥へと消えていたリチャードが、何やら紙を持って戻ってくる。

「えーと、なになに……。『本日、当ギルド所属の【狂悪の凱旋トライアンフキラー】受注のクエストが、御ギルド所属のゼノ・ウィンザー氏により達成されたとの申し出があったことをここに報告する。該当クエストの詳細は以下の通りである。ワイド山のリーディングホーク討伐として――』って、これ。さっきゼノくんが言っていたパーティーの名前じゃないかい?」

「んおぉう! なら、やっぱりこの内容は本当なんだな!」

「たしかに、リーディングホークは倒しましたけど……。でも、あれは本当にまぐれみたいなもので……」

「オイッ! んな謙遜すんなよ、ゼノ! 相手もてめぇを認めたから、こんな風に報告してきたわけだろっ? 以前、うちの冒険者がやらかして、ラヴニカのギルドには借りがあったからな! ここで返すことができて正直助かったぞ!」

「いや……。俺は、なんかすごく申し訳ないです」

 それはゼノの本心だった。
 まさか、帰ってから3人がそのような申し出をするとは思っていなかったのだ。

(ジェシカさんたち、なんでこんな報告を……)

 何か自分だけがいい思いをしているようで、ゼノはダニエルに訴えた。

「あの……。それを言ったら、俺も【狂悪の凱旋トライアンフキラー】の皆さんには、いろいろと助けてもらったんです。このベリー草を問題なく採取できたのも、ジェシカさんたちのおかげで……」

「……んんッ? その前にちょっと待て!」

 そこで何かに気付いたように、ダニエルがしゃがれ声を上げる。

「リチャード! ゼノにクエストを紹介したのはどこのどいつだ!?」

「えっ? あーいや、それは……」

「てめぇッ! こういうのは、包み隠さず報告するのがチーフの役割だろぉが!!」

「ハ、ハイッ! すみません……っ!」

 さすがにトボけるのはマズいと思ったのか、リチャードはティナに気遣う素振りを見せながらも、本当のことを口にする。

「えっとですねぇ。実はその……ティナちゃんが、紹介しましてぇ……」

「うがああァァ~~!! ティナァッ! またてめぇかッ!!」

「ひっ……す、すみません……!」

 まるで親に叱られた子供のように、ティナはしゅんとしながら頭を下げた。
 そのままダニエルは、カウンターに置かれたベリー草の束に目を落とすと、状況を理解したようだ。

「ワイド山のベリー草採取クエストをゼノに任せたんだな……? Fランクのペーペーにやらせるクエストじゃねーってことくらいは、てめぇも分かるだろぉが!! ましてや、こいつは初回だったんじゃねーのか!?」

「ごめんなさいぃ~~!!」

 ティナは怯える小動物のように縮こまる。
 これまでに何度も、こうしてダニエルに叱られてきたのだろう。

「なんでこういつも、新人を潰そうとすんだよ、てめぇは!」

「で、ですけど……今回のは違うんですっ! 彼が……魔導師だって言うから……」

「魔導師ぃ……?」

 その時、ダニエルのしかめっ面がゼノの方を向く。
 左目の眼帯が威圧感を放っていた。

「てめぇ……ゼノ! そりゃ本当なのか!?」

「へっ? そ、そうですけど……」

 背丈の高いダニエルに凄まれると、さすがに萎縮してしまう。
 恐る恐るゼノがそう答えると、暫しの間を置いてから、ダニエルはニカッと笑みをこぼした。

「……ほぅ、こりゃ面白いッ!! 魔導師が1人でワイド山のボス魔獣を倒しちまったのか! なんて野郎だ!」

「でも、ギルマス……。いいんですか? 魔導師なんかに、冒険者をやらせてしまって……」

 ティナが食い下がってそう訴えるも、ダニエルはそれをすぐに突っぱねた。

「うちのギルドは術使いだろーが、魔導師だろーが関係ねーんだよッ! ティナ。てめぇ、次に仕事に私情を挟んだら、本当にクビだぞ!!」

「ぅっ……。わ、分かりましたっ……!」

 そこでようやく、ティナは納得したようだ。
 さすがにクビと言われてまで、抗議をするつもりはなかったらしい。

 そんな様子を傍で見ていたゼノは、ティナに対しても罪悪感を抱いてしまう。

「職員が迷惑をかけたな。嫌な思いをさせてすまなかった」

「いえ、俺は全然……」

「うちは魔導師ももちろん歓迎だからよ! 次に何か言われたら俺様に言いつけろ!」

「は、はぁ」

「ほら、てめぇもちゃんと謝れ!」

「も、申し訳ありませんでした……ゼノさん。危険なクエストを押し付けるような真似をしてしまって……」

「いや、もとはと言えば、俺が勝手に頼んだことなので。ティナさんがそんな風に責任を感じないでください。俺……嬉しかったんです。ティナさんにクエストを紹介してもらって」

「えっ?」

「俺の勝手な思い込みですけど、ちょっと信頼してもらえたって思ったんです。だから、それに応えたいって」

「……ゼノさん……」

 その言葉の何かが、彼女の心に響いたのか。
 ティナは少しの間だけ黙り込む。

 ――そして。

 背筋をピンと正すと、これまでの態度が嘘のように、ティナは深々と頭を下げた。
 
「……また、ギルド職員として、あるまじき態度を取ってしまいました。ゼノさん……本当に本当に、ごめんなさいっ!」

 魔導師を毛嫌いしている術使いは多い。
 特に、ここは冒険者ギルドだ。

 きっと、些細なプライドから、これまでのような態度を取ってしまっていたのだろう。
 だが、頭を下げる今の彼女には、確かに誠意が存在した。

「ティナさん、やめてください。俺に謝るような義理はないですよ」

「ですけど……」

「だったら、俺は代わりにティナさんに感謝します。俺にクエストを紹介してくれて、本当にありがとうございます。そのおかげで、俺は素晴らしい経験ができましたから」

「んおぉぉーーぅ!! なんていいヤツなんだぁ~~ゼノはよぉぉ!!」

「へ? ちょっ……!?」

 ダニエルはゼノの両手を取ると、ぐるんぐるんと回して喜びを表現する。

「てめぇみたいな規格外の冒険者がうちに来てくれて、ホントに嬉しいぞぉぉーーーッ!!」

「ゼノくんはいいヤツってだけじゃないですよん。ほら、超レアのクラウンベリー草まで集めて帰って来るくらいですから」

「んんぉッ!? マ……マジじゃねーかッ! 凄すぎんだろぉが……。日没までにワイド山から行って帰ってきて、べリー草とクラウンベリー草をこんな大量に集めて、リーディングホークまで1人で倒しちまうなんて……。待てよ……魔導師? 一体、どうやってこれを全部達成したんだ?」

 そこでダニエルはゼノから手を離すと、スッと真剣な顔になる。

 伊達にギルドマスターを任されていないのだろう。
 責任者としての責務を果たそうという思いが、その表情の裏に隠れていることにゼノは気付いた。

(……)

 さすがにここまで大々的に注目されたら、もう言い逃れはできない。
 
 現代だと、魔導師は攻撃魔法は使えないのだ。
 これだと、ワイド山のボス魔獣を1人で倒したという話の辻褄が合わないことになる。 

(このギルドでやっていくって決めたのなら、皆さんにちゃんと話しておかないと)

 ゼノはそう決意すると、ダニエルに告げる。

「少々お時間をいただいてもよろしいですか?」

「ん? お、おう……」

「できれば、ティナさんとリチャードさんもお願いします」



 ◆



 受付カウンターの奥は、ギルド職員の控室となっている。
 ゼノは、ダニエルに案内され、その場所へと通された。

 今、控室に職員の姿はなく、ティナとリチャードだけが同席している。
 全員でテーブルに腰を下ろすと、ダニエルがまず口を開いた。

「それで、どうした?」

「はい。皆さんには話しておきたいと思いまして。実は俺……ただの魔導師じゃないんです」

「? どういうことですか?」

 ティナが制服の襟元を触りながら、少しだけ不安そうに訊ねてくる。

「正確には、魔導師ですらないんですけど……。俺は、ある方からこの聖剣クレイモアと〔魔導ガチャ〕っていうスキルを授かっただけで」

「な、なにぃ……? 聖剣に……スキル? おいおい……コイツ、何言ってんだ……!?」

「まぁ、ダニエルさんも落ちつきましょうよ。一旦、ここはゼノくんの話を聞いてみましょうねぇ」

 リチャードにそう促され、ゼノはこれまでの経緯を3人に順を追って話した。
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