迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ

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3章

第8話

(……ダメだ。全然眠れない……)

 しばらくそのまま寝ようと試みるゼノだったが、慣れない椅子での就寝に悪戦苦闘。
 どうしても、意識がアーシャに向いてしまうのだ。

 ゼノにとって、年頃の女の子と同じ空間で寝るのは二度目のことだった。

(この前野宿した時は、ずっと外に気を配ってたからなぁ……)

 モニカともテントで一晩共にしたゼノだったが、今回は状況がだいぶ異なる。

 そぉーと彼女が寝ているベッドを覗くも、寝息は聞えない。

(ひょっとして、まだ起きてるのかな?)

 そんなことを考えていると――。

「……ゼノ、まだ起きてるか?」

 突然、アーシャの声が上がる。

「え? あ、あぁ……」

「なんか目が冴えちゃって。あんま眠れねーぜ」

「うん……。俺もだよ」

「そっか」

 しばらく沈黙した後、アーシャはこうゼノに訊ねてくる。

「一つ聞こうと思ってたんだ。なんで、ゼノは冒険者やってるんだ?」

「急にどうした?」

「べつにいいじゃん? アタシ、純粋に気になってたんだぜ」

「そうなのか?」

 ゼノがそう返すと、アーシャは白状するように続ける。

「……いや、実はさ。こうやってゼノの部屋にやって来たのは、話がいろいろ聞きたかったからっていう理由もあったからなんだ。聞けば、冒険者になってまだ1ヶ月も経ってないって話じゃねーか」

「たしかにそうだな」

「なのによ、もうSランク冒険者に任命されたとか、すげーぜ。それと、どうして未発見魔法なんてものが扱えるんだ? その、いつも持ってる白い剣……なんだっけ?」

「聖剣クレイモアのこと?」

「そう! んなのを使って魔法を発動するとか、前代未聞だぜっ! 普通の魔導師が魔法を使う発動手順とも全然違うしな。あんたと初めて会った日から、ずっとそれが気になってたんだ」

「ああ……」

 それを聞いて、さすがにこのまま何も話さないのは不自然か、とゼノは思う。

(アーシャは貴族なんだし。俺が見たことない魔法を使っているのが不思議に思えて当然か)

 そう思ったゼノは、アーシャに事情を打ち明けることにする。

「聖剣クレイモアは……大賢者様が列挙した魔法を再現するための発動具なんだよ」

「なにぃ? 再現するための、発動具だぁ……?」

 ゼノは頷くと、部屋の壁に立てかけてある聖剣に目を向けながら続ける。

「これはある人から譲り受けた物で、その人は俺のお師匠様でもあって……長い間ずっと、迷宮に囚われているんだ」

「おいおい……急にすごい情報量じゃねーかっ。ゼノの師匠が……迷宮に囚われているだって?」

「うん。死神の大迷宮っていう場所なんだけど」

「死神の大迷宮…………あぁっ! 聞いたことがあるぜ! たしか、ファイフ領のシャトー密林にあるダンジョンのことだよな?」

「そう。そこにお師匠様は、もう400年近く囚われているんだ」

「は……400年!?」

「モニカにもそうやって驚かれたな。でも、お師匠様は《不老不死》っていう魔法をかけられたから。ずっと、歳を取らずに若い時の姿のままで生きていられるんだよ」

「マジ、かよっ……」

「その証拠として。お師匠様も、現代でいうところの未発見魔法が使えるんだ。人魔大戦以前の生まれだから、俺みたいに発動具を用いなくても昔の魔法が扱えるんだよ。自分では、魔女って言ってるくらいだから」

「……400年の時を生きる魔女……。んなヤツが実際にいるなんて……。まったく信じられねーぜ……」

「それで……。俺は、そのお師匠様を助けたくて、冒険者をやっているんだ」

「? どういうことだよ? 全然話が見えねーんだけどぉ……」

 そこでゼノは、どうして自分が冒険者をやっているのか。
 その理由を詳しくアーシャに説明する。

 ベッドから起き上がると、彼女は食い入るようにしてゼノの話に耳を傾けた。



 ◆



「――つまり、その魔女のお師匠様を迷宮から出すためには、〔魔導ガチャ〕ってスキルで666種類の魔石を手に入れる必要があって、そのためにはクリスタルが必要で……希少性の高いクリスタルは魔大陸でしか手に入らないから、だから筆頭冒険者になるために冒険者をやってる……ってそーゆうことか?」

「呑み込みが早くて助かる。そういうことだ」

「はぁー……なんかすげーぜぇ……。ゼノが冒険者やってるのに、そんな理由があったなんて」

「べつに、すごくなんかないよ。お師匠様は俺の命の恩人だから。お師匠様のために何かしたいって思うのは当然のことだと思う」

「アタシなんか、そんな立派な生きる目的なんてねーからなぁ。ぶっちゃけ尊敬するぜ!」

「でも……。アーシャも何か目的があってあんなことしていたんだろう? どうして、強い相手と戦いたかったんだ?」

「あぁ、それか」

「それと、最初会った時にも聞いたと思うけど。なんで〈斧術〉が使えるんだ? 普通、貴族は術式が使えないはず……。ずっと気になってたんだ」

 そのほかにも、ゼノにはアーシャについて気になる点がいくつかあった。
 
 貴族の生まれなのに、魔導師を毛嫌いしていたのはなぜなのか?
 どうして家族と一緒に暮らしていないのか?
 
 これまでは、やはりプライベートなことだから訊くのを避けてきたが、ゼノは、今ならそれが聞けるような気がしていた。

「……」 

 ゼノにそう訊ねられたアーシャは突然黙り込んでしまう。
 暗闇の中でよく見えなかったが、彼女が真剣な表情でこちらを見ていることだけは、ゼノには分かった。

 やがて、アーシャは静かに口にする。

「……んなこと、訊いてどうすんだ?」

「アーシャのことが知りたいだけだよ。一時的にせよ、こうやって一緒にパーティーを組んでいるんだからさ」

「けど、ゼノみたいに立派な話じゃねーぜ。絶対笑われる」

「なんで笑うんだ?」

「だってこの話は……まだ誰にも話したことがないし……」

「アーシャが真剣に話すことを笑うわけがないよ。だから、できれば聞かせてほしい」

「……へっ。そこまで言うなら、分かったぜ。ゼノもいろいろと打ち明けてくれたんだからな。アタシも話すよ」
 
 夜闇にそんな彼女の声が小さく響き渡った。
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