迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ

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4章

第6話

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「《氷焉の斬鉄アイスジャベリン》!」

 シュズゥゥゥゥーーーーーン!!

 聖剣クレイモアを振り抜きながらゼノが唱えると、氷の槍がレヴェナント旅団構成員たちの前に一斉に降り注ぐ。

「んだこりゃ!?」
「うぉッ……危ねっ……!」
「だ、誰がこんな真似を……!?」

 男たちが戸惑いの声を上げている隙に、ゼノは追われていた少女のもとへと駆けつけた。
 その場で尻もちをついていたのは、若い亜人族であった。

(……っ、エルフ……?)

 少し驚きつつも、ゼノはひとまず冷静に少女に声をかける。

「……君、大丈夫っ? 怪我はないか?」

 が。

「……なんで、ゼノが……こんな所に……」

 少女は、大きな瞳を見開いて、信じられないものでも見るように声を震わせていた。

「? 俺を知ってるの?」

 そうゼノが訊ねても、少女は何も答えない。

「っ!」

 すぐに立ち上がると、彼女は駆け出して、近くの岩場に隠れてしまう。

(なんで、名前を……)

 ゼノがエルフの少女に気を取られていると、アーシャが焦ったように声を上げる。

「おいゼノ! なんかヤバそうだぜ……!」 

 構成員の男たちは、いつの間にか弓矢を手に取って、術式発動の構えを取っていた。

「その女を渡せ! お前らに扱える代物じゃない!」
「抵抗するなら……〈弓術〉を今すぐに撃ち込む」
「どういう理由で来たか知らんが、即刻ここから立ち去れ!」

 キラリと鋭利に光る何本もの矢先が、ゼノたちの方を向く。

「……っ」

 その脅迫に、一瞬どうするかと迷うゼノだったが……。

「ゼノ様っ!」

 そんなモニカの声でハッと我に返る。

(……そうだ。ここで俺が怯むわけにはいかない!)

 すぐさま、魔導袋に手を伸ばして攻撃魔法の魔石を取り出すと、それを聖剣のガード部分にセットする。

「あの男……何か仕掛けてくるぞ!?」
「構うな! 先にこちらが先制を仕掛ければいい……!」
「もう一度、全員で〈トニトルス・アロー〉を撃ち込め!」

 その号令をきっかけに、構成員たちは一斉に術式を放ってくる。

 シューーン! シューーン!

 しかし。

 ゼノも同じタイミングで詠唱に成功した。

「《双翼の三竜旋エアリアルドラゴーン》!」

 ザジュザジュザジュズズズズズズズッッーーーーーー!!

 聖剣クレイモアを高く掲げながらゼノが唱えると、その瞬間、巨大な風の渦が発生する。
 それは、雷の矢の軌道を強引に捻じ曲げつつ、そのまま構成員たちにぶち当たった。

「「「なんだこりゃあああぁぁっ~~!?」」」

 うねりを帯びた狂乱の暴風に巻き上げられる形で、男たちは全員宙へと放り出される。

「やりましたね、ゼノ様♪」

「さすがゼノだぜ! 本当にレヴェナント旅団を倒しちまった!」 

 その場でモニカとアーシャは、ハイタッチをして喜び合う。
 
 ゼノは、すぐに聖剣クレイモアをホルスターへ差し込むと、岩場の陰に隠れているエルフの少女に声をかけた。

「もう大丈夫だよ。だから、出て来てくれないか?」

「……」 

 体を縮ませながら、怯えた様子で少女がゆっくりと岩場から出て来る。
 白銀色のセミロングヘアが風でふわりと靡き、オレンジ色の光が彼女の顔をはっきりと照らし出した。

(!)
 
 その時。

 ゼノは、思わず目を奪われる。
 息をするのも忘れるくらいの美少女がそこに立っていたからだ。

 隠された原石のような神秘さを、ゼノは彼女に抱いた。 

「こっちへ来られるかい?」

 そう言って、ゼノは手を差し出す。

 少女の髪の間からは、とがった耳がちょこんと突き出ていた。
 頭にはピンク色の花飾りを付け、白を基調としたワンピースを着ており、右腕には赤色の装飾がされたブレスレットをはめている。

「うん……」

 ゼノは、少女の透き通るような白い手を掴むと、自分たちのもとへと案内した。

「それで、君の名前は?」

「……ベル……」

「ベルか。いい名前だね。もう大丈夫だよ。追っ手は来ないから」

「マジかよ……。こいつエルフだぜ!?」

「……本当ですね。こんなところで珍しいです」

 2人が口々にそう言うと、ベルは警戒したように目を細める。
 グリューゲル修道院で会ったハーフエルフのポーラとは違い、彼女は純粋な亜人族のようだった。

(しかも、かなり若い……)

 おそらく、自分たちよりも2、3歳は年下だ、とゼノは思った。

 なぜ、ゼノがベルの若さが気になったかというと、近年、若い亜人族が奴隷としてメルカディアン大陸へ連れて来られることが問題となっているからだ。 

 亜人族は、人族が使う魔法や術式と違って、若いうちほど強力なスキルが使えると言われている。

 そのため、若い亜人族が悪意ある人々によって捕らえられ、奴隷市場へ流されるという問題が起こっている。
 けれど、メルカディアン大陸の国々はそれを黙認し、奴隷商会にその辺りのいざこざを一任していたりする。

 奴隷を購入するのは、ほとんどが貴族階級だ。
 なぜなら、上級魔法である《支配》の魔法が使えれば、意のままに奴隷を扱うことができるからだ。

 亜人族のスキルを使えば、あたかも自分が第二の異能に目覚めたような感覚となれる。
 そのことが、若い亜人族がよく売り買いされる原因となっていた。

 特にエルフは、亜人族の中でも希少性の高いスキルを所有していることが知られており、その価値は高いとされている。

 ゼノはベルを見ながら、この子もスカージ諸島から強制的に捕らえられてきた奴隷の子なんだろう、と思った。

(きっと、レヴェナント旅団に利用されてきたんだ……) 

 人族に対して警戒心があるのは当然と言えた。

 だから、ゼノはベルの目の高さまで腰を下ろすと、「安心してくれ。俺たちは敵じゃない」と、笑顔で彼女の髪を優しく撫でた。

「自己紹介が遅れたな。俺の名前は、ゼノ・ウィンザー。さっき、俺のことを知ってたみたいだったけど……」

 ゼノがそう訊ねると、突然――。

 ぺシン! 

 ベルがゼノの手を振り払って拒絶する。

「……違う。やっぱり、この人……ゼノじゃない……」

「えっ?」

 そして、微かに肩を震わせながらこう続けた。

「……あなたは、ニセモノ……」

「いや、俺は」

 ゼノがそう口にしたところで、アーシャが割って入ってくる。

「おいガキんちょ! せっかくゼノが助けてやったってのに、その態度はねーだろ!」

「ちょっと待ってください、アーシャさん。この子、手首から血が流れてます……って、え……?」

 モニカはベルの手首を見てハッとする。
 なぜなら、彼女の手には無数の傷跡があったからだ。

 しかも、よく見れば、傷はそれだけではなかった。
 頬や首筋、脚の辺りにも痛々しい傷の跡が確認できた。

「ゼノ様……」

 何か察したように、モニカがゼノの顔を覗き見る。
 彼女もベルが奴隷として無理矢理連れて来られたことに気付いたようだ。

「うん。ベルの傷を治療してもらえる?」

「はい、分かりました」

 一度小さく頷くと、モニカはベルに優しく手を差し伸べる。

「ベルちゃん。大丈夫ですよ~? お姉ちゃんたちはお友達です♪ ちょっと傷を見せていただけませんか?」

「……」

「そのままで、お願いしますね……」

 ベルをその場に待たせたまま、モニカは〈回復術〉を唱えようとする。
 だが……。

 ドスン!

「きゃっ!?」 

 ベルはモニカを押し倒すと、一目散に逃げ出してしまう。

「おいっ……待ってくれ!」
 
 ゼノが止めようとするも、すべては遅かった。
 ベルは、警戒心むき出しの状態で、遺跡の中を走り抜けてどこかへと行ってしまうのだった。

「やっぱ亜人族だぜ。アタシら、人族に心を開くはずがねーよ。あんなヤツは放っておこうぜ」

「……でも、あの子の体……。たくさんの傷跡がありました」

 立ち上がりながら、どこか心配そうにモニカが呟く。

「……」

 ゼノもベルが消え去った方を目で追うのだった。
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