迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ

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4章

第11話

 オレンジ色に染まるラウプホルツ古戦場跡。

「悪いが、そろそろ死んでもらうぞ」

 鋭く光る二本の刀をギュッと握り締めながら、ルーファウスがゆっくり近付いて来る。

(……ダメだ。もう防げる魔法がない……) 

 ゼノは、聖剣クレイモアを目の前に構えながら、ルーファウスにどう対抗すべきか考えを巡らせていた。

「どうした? まさかもう降参か?」

「っ」

「フフッ、すでに魔法を撃ち込むだけの余力が残っていないようだな。ならば、後悔もあるまい」

 目を据わらせたルーファウスがすぅーと息を吸い込むと、二本の刀を高く掲げる。

「くッ……」 

 死すらも覚悟した、その時。





「ゼノぉぉっーーーー!!」

 突如、後方からそんな女の子の叫び声が聞えてくる。

 とっさにゼノが振り返ると、そこには血相を変えてこちらへ向かって来るベルの姿があった。

「ベル!?」

 ゼノが剣を大きく振って来るのを止めさせようとするも、彼女は足を止めない。

「こっちに来たらダメだ! 戻るんだッ!!」

 すぐにルーファウスも、ベルの存在に気付いたようだ。

「ほう……。自ら戻って来るとは、こちらから出向く手間が省けた」

 そう口にしながら、ルーファウスはゼノに照準を合わせる。

「(あのエルフのスキルは、自分の身に危険を感じた時以外は発動しない。今さらやって来たところで、もう遅いのだよ……!)」

 そして、二本の刀を素早く振り回す。

「これで君も終わりだ! 〈双陣烈斬〉!!」

 ドゥゴゴゴーーンッ! ドゥゴゴゴーーンッ!

「っ!」

 乱れ撃ちされた白刃の衝撃波がゼノへ向かって飛んでいく。

(ベルだけは、なんとしても守らないと……!)

 そんな思いが原動力となり、ゼノは駆けつけて来た彼女を庇うように、前方へ出てルーファウスの攻撃をその身で受け止めようとする。

 ――が、その瞬間。
 この場にいる誰もが、想像もしていなかったことが起こった。
 
 キイイイィィィィィィーーーーーンッ!!

(っ!?) 

 ゼノは思わず目を疑った。

 なぜなら、自分の目の前では、青色の大きな光の盾を持ったベルが、相手の攻撃を防いでいてくれたからだ。

「なっ……に、これ……?」 

 当の本人も自分の身に何が起こったのか、まったく分かっていない様子だ。
 衝撃波はゼノに当たることなく、ベルの盾によって四方に分散される。

「バカなッ!」

 この状況に、一番驚いていたのはルーファウスだった。
 ベルのスキルが攻撃的な性能しか有していないことは、彼が一番よく理解していたのである。

(まさか、光の盾を持った少女って……ベルのことだったのか!?)

 目の前の光景を見ながら、ゼノは昼間にギルド職員の男から言われた言葉を思い出していた。

「……っ」 

 未だに自分のしたことが信じられないのか。
 右手の甲に出現した巨大な青色の光の盾に目を向けながら、ベルは唖然としていた。

 だが、すぐに我に返ってゼノの方を向く。

「……ごめんなさい。さっきは、ニセモノなんて言ってしまって……。あのゼノが、生きてるはずないって、そう思ったから……」

「え……。君は、大賢者様を知ってるの?」

「うん。ベルの故郷の島では英雄だったから。テフェリーって島なんだけど……」

「テフェリー?」 

 その名前を耳にして、ゼノは以前に聞いたエメラルドの話を思い出した。

(……たしか、スカージ諸島に侵略して来た魔族と戦うために、大賢者様が一時的に拠点としていた島だったよな?)

 テフェリー島の出身なら、彼の名前を知っていても不思議なことじゃない、とゼノは思った。

「それに、その黒いローブ……。本で何度か見たことがあるから……」

「あぁ、なるほど」 

(だから、俺を大賢者様と勘違いして、それで名前を……)

 そうゼノが納得したところで。

 ドゥゴゴゴゴゴゴゴーーーーーンッ!!

 白刃の衝撃波が2人に目がけて飛んでくる。
 ベルは、とっさに青色の光の盾を前に出すと、その攻撃を寸前のところで防いだ。

「何をこそこそと話しているのだ! 君たちは今、決闘の最中なのだぞッ! ハあぁぁッ――〈双陣烈斬〉!!」

 ルーファウスの乱れ撃ちによる攻撃を青色の光の盾で防ぎつつ、ベルはゼノに声をかける。

「……っ、あなたなら、きっとルーファウスを倒せる……。だから、お願い……。ベルを救って……ゼノッ!!」

「!」

 その言葉を耳にして、ゼノはハッとした。

 今ここで自分が倒れたら、ベルはこの先もきっと、ルーファウスに酷い目に遭わされるに違いない、と。
 それがはっきりと分かったのだ。

 会ったばかりの自分を、こうして無条件に信じてくれている少女のためにも。
 なんとか、目の前の敵を倒さなければ……とゼノは思う。

 聖剣クレイモアを握る手元にギュッと力が入った。

(なにも……攻撃魔法だけが、相手にダメージを与えられる手段っていうわけじゃない。こっちには、まだ魔石がいくつか残ってるんだ!) 

 決断してからのゼノは早かった。
 一度、ベルの盾の外へと素早く飛び出す。
 
「見え見えだぞッ!!」 

 それに気付いたルーファウスが両刀を使って、ゼノに目がけて〈暴双刃〉を繰り出す。

 が。

 二つの衝撃波は、ゼノに当たることなく空を斬った。
 どうやら、まだ《ヒットハック》の効果が継続しているようだ。

(今なら近付ける……!)

 ゼノはそのまま駆け抜けると、ルーファウスの懐に飛び込もうとする。
 しかし、近距離戦はルーファウスが最も得意とする間合いであった。

「こざかしい!」 

 ルーファウスは、近距離から両刀をぶん回して、〈双陣烈斬〉を再び繰り出そうとする。
 ――けれど。
 
「《ミスリード》!」 

 走りながらゼノは、聖剣クレイモアに新たな魔石をセットして詠唱していた。

「なッ!?」 

 すると、ルーファウスの手元は大きく狂い始める。
 刀を振り回すも、白刃の衝撃波はあらぬ方向へと飛んで行ってしまう。

 ほとんど目と鼻の先まで迫って来ているというのに、攻撃は1つもゼノに当たらない。

「……だったらァ!! こうするまでのことッ!」 

 すぐに体勢を立て直したルーファウスは、二本の刃先を突き立てながら突撃を仕掛けてくる。
 
「ぐおお゛おお゛ぉぉ゛ぉぉーーーーッッ!!」

「くっ!」

 その鋭利な二本の刀が、ゼノの体を貫通しようかというところで。

 ガギイイィィーーンッ!! 

「ベルっ!?」 

 ルーファウスによる突撃は、駆けつけて来たベルの青色の光の盾によって阻止される。

「奴隷ごときにぃぃいいーーーッッ!!」

 ものすごい剣幕でルーファウスが力任せに押し切ろうと試みるも、ベルの盾はビクともしない。

「チぃッ!」

 体勢を立て直すことにしたのか。
 ルーファウスは一度後方へと下がって間合いを取る。

 その隙を見て、ベルがゼノに話しかけた。

「今がチャンス! ゼノ、お願い……っ!!」

「分かった」

 ベルに目で合図を送ると、ゼノは魔導袋の中から2つの魔石を同時に取り出す。
 そのうちの1つをすぐさま聖剣クレイモアのくぼみにはめ込んだ。

「《肉体強化》」

 剣を構えながらそう唱えると、ゼノの全身は眩い光によって包まれる。

 すると、自分の内側からこれまで感じたことのなかった力が湧き起こってきて、ゼノの肉体は一時的に鋼のように強化された。

(攻撃魔法がなくたって……やりようならほかにある!)

 再度、盾から飛び出したゼノは、そのままルーファウスのもとを目指して突っ走る。
 足腰も強化されたため、先程とは見違えるほどに、ゼノの体は俊敏性を増した。

「ふざけた手を使ったところで、このマジックメイルがすべてを防ぐッ!! 青年ッ! そちらの負けだああァァーーーーッッ!!」

 ドゥゴゴゴーーンッ! ドゥゴゴゴーーンッ!

 両刀から振り抜かれる衝撃波の中を駆け足で回避しながら、ゼノはルーファウスに迫っていく。

 その最中。
 ゼノは、手にした最後の魔石を聖剣の穴にセットした。

「なにッ!?」

 そして、この時になってルーファウスは初めて気付く。
 ゼノが自分の目の前で、光り輝く剣を大きく振り上げているということに。

「流れのままに敵を斬り伏せろ――《無拍子》!」

 ズバシュギギギィィィーーーーーンッ!!

 力の限り聖剣を振り下ろすと、それが見事にルーファウスの体にぶち当たる。

「ぐがぁああ゛あぁあ゛ぁぁ゛っ~~~!?!?」 

 勢いよく振り下ろされた剣先は、そのままマジックメイルを粉砕し、ルーファウスを大きく吹き飛ばした。

 そう。

 ゼノは、攻撃魔法を使ったのではなく、自身の肉体を極限にまで強化し、その力をもって、武器としての性能は皆無な聖剣クレイモアで、物理攻撃を与えたのだった。
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