迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ

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4章

第14話

「ごめんなさいっ!!」

 ギルド全体にそんな大声が木霊する。
 それは、ベルの声だった。

「……ラチャオの村を……ベルが、焼いたんですっ……!」

「っ?」 

 村長は、その時になって初めて、目の前の少女がエルフであることに気付いたようだ。

 さらにベルは、声を震わせながら謝罪を続けた。

「大切な村を……壊してしまって、本当に……ごめんなさいっ……!」

「まさか、光の盾を持った少女……!?」

 何かを察したように、マシューが驚きの声を上げる。
 ゼノはすぐさま弁解した。

「違うんです。この子は、レヴェナント旅団に利用されていたんです。炎をまき散らすようにって脅されて、命の危険に晒されたため、仕方なく……」

 だが、そんなゼノの言葉は、村長の耳には入らなかったようだ。
 表情がみるみるうちに変っていく。

「……このエルフの子が、我々の村を……焼いたのですか……?」

 フォローが必要だと感じたのか、モニカが間に割って入ってくる。

「たしかに、ベルちゃんが直接村を焼いてしまったのかもしれません。でも、ゼノ様が言うように、この子は長い間ずっと、レヴェナント旅団に苦しめられてきたんです」

「アタシらが、どうこう言える立場にないのは十分に分かってるぜ。自分たちの大切な村を焼かれちまったんだからな……。けどよ。ベルの事情も、少しは分かってやってほしいんだ」

「……」

 村長は、2人の言葉を聞いても黙ったままだ。
 その間も、ベルはずっと頭を下げ続けていた。

(ベル……)

 そんな彼女の姿を見て、ゼノは居ても立ってもいられなかった。
 言葉は、自然と溢れ出てくる。

「……俺は、ベルに助けてもらわなければ、ルーファウスに殺されてました」

「え?」

「ルーファウスから攻撃を受けた時、この子が命を懸けて守ってくれたんです。村長さん……。俺は、自分の力だけで、レヴェナント旅団を捕らえたわけじゃないんです。ベルがいなかったら、それは叶いませんでした」

 そこまで口にすると、ゼノは改めて頭を下げて、最大限の謝罪をした。

「俺からも謝らせてください。大切な村を焼いてしまって、本当に本当に……申し訳ありませんでした」

「お……お兄ちゃんっ……」

 隣りに並ぶベルは、ゼノの姿を見て困惑したような表情を浮かべる。
 それは、村長にしても同じであった。
 
 そして、ゼノは先程マシューから受け取った金貨が入った袋を村長に差し出す。

「これだけのお金じゃ、全然足りないかもしれません。でも、少しでも復興資金の足しにしてほしいんです。どうか、受け取っていただけないでしょうか?」

「いや、ゼノ様……。さすがにこれは……」

 村長が戸惑いの声を上げると、マシューも話に加わってくる。

「ちょ……ちょっと待ってくださいっ! それは、【天空の魔導団クランセレスティアル】の皆さんにお渡ししたクエスト達成の報酬で……」

「アタシたちで決めたんだ。それを、村の復興のために使ってほしいってな」

「わたしは、以前にラチャオ村へ行ったことがあります。本当に美しい村でした。ですから、村長や村の方たちの悲しい気持ちが分かるんです。それを使っていただけたら嬉しいです」

 3人のその言葉に、村長はマシューと顔を見合わせた。
 
 やがて、暫しの沈黙の後。
 村長は、ゼノとベルに声をかける。

「お2人とも。顔をお上げになってください」

 そして、モニカとアーシャにも顔を向ける。

「皆様のお心遣い、誠に嬉しく思います。村の仇をうっていただいたにもかかわらず、こんな温情まで頂戴できるとは……本当に感激しております」

 そこまで口にすると、村長は差し出された金貨の入った袋をゼノに返却する。

「それと、これは受け取れません」 

「えっ」

「ゼノ様。お気持ちだけで、十分でございます」

 村長はそのままベルに顔を向けた。

「貴女も正直に話してくれてありがとう。レヴェナント旅団を捕らえていただき感謝いたします」

「で、でもっ……ベルは……」

「違いますよ。本当に憎むべき相手はレヴェナント旅団です。貴女ではありません。ゼノ様が仰ったように、貴女がゼノ様を助けていなければ、またどこかで、旅団の反逆行為が行われていたかもしれません」

「……っ」

「それに、我々村民は強いのです。他の村よりも、その団結力は強固であると自負しております。だから、ここからまた美しい村を必ず取り戻します。そしたら、ぜひ村を見にいらしてください。それだけで、我々は十分ですよ」

「村長さん……」

「ゼノ様。貴方はきっと、王国を代表する冒険者となるはずです。今後も困っている者たちを救ってください。どうかよろしくお願いします」

 最後には、村長はにっこりと笑顔を作り、お辞儀をしてから冒険者ギルドを出て行った。

 そんな後ろ姿を見守っていると、マシューが小さく声をかけてくる。

「あの……ゼノさん。ちょっとよろしいですか?」

「はい?」



 ◆



 モニカたち3人に、先にギルドの外へ出てもらうと、ゼノはマシューと一緒に執務室へと向かった。

 バタン。

 部屋のドアを閉めるなり、マシューが訊ねてくる。

「……あのエルフの少女、ベルさんと言いましたね。あの子は、これからどうされるおつもりですか?」

「あの子は、レヴェナント旅団に買い取られた奴隷なんです。ですから一度、イニストラードの奴隷商会と話をしようと思っています」

「いや、それはダメですね」

 マシューがきっぱりと口にする。

「……やっぱり、ベルも罪に問われるのでしょうか?」

 それは、覚悟していたことでもあった。
 利用されていたとはいえ、ベルがラチャオの村を焼き払ったのは事実なのだ。

 カロリング領内でそれを行ったのだから、領主の裁きを受けるのは当然のことと言えた。

 だが、マシューは予想外の言葉を口にする。

「いえ、ゼノさん。そういう意味で言ったわけじゃないんですよ」

「?」

「奴隷商会にベルさんの身柄を渡してしまうと、おそらく、ベルさんはものすごい高値で再び奴隷として売り飛ばされてしまうことでしょう。村を1人で壊滅させてしまうほどのスキルを持った若いエルフですからね。だから、ダメって言ったんです」

「……どういうことでしょうか?」

「私は、ベルさんもまた、ラチャオの村人と同じく、レヴェナント旅団の犠牲者だと考えています」

「つまり……。裁かれる必要はないってことですか?」

「少なくとも、私はそう思います。村長もベルさんを許されたようですしね。今回の件は、私がお父様に話しておきます。大丈夫です、安心してください。これまでずっと、私にギルドを任せきりだったので、お父様にはこれくらいの願いは聞いてもらいますから」

「……すみません、恩に着ます。ベルに代わってお礼を言わせてください。本当にありがとうございます」

 マシューは頷くと、再び口を開く。
 まだ何か言いたいことがあるようだ。

「それで、もしよろしければ……。ベルさんの面倒は、ゼノさんたちが見ていただけないでしょうか? このままだと、あの子はまた利用されてしまう可能性があります。その分、ゼノさんたちがベルさんの面倒を見ていただけたら安心ですし」

「そういうことなら任せてください。最初からあの子の面倒は見るって決めてましたから」

「まさか……奴隷商会から買い取るつもりでいたんですか?」

 マシューの言葉に、ゼノは首を縦に振った。

「そこまでベルさんのことを考えていらしたんですね。なおさら、安心できました。ゼノさん。我が領の問題を解決していただき、誠に感謝いたします。ゼノさんたちに声をかけてよかったです」

 ゼノはマシューと固く握手をかわすと、一礼してから執務室を後にした。



 ◆



 冒険者ギルドを出ると、そこには不安そうな表情を浮かべた3人が待っていた。

「ゼノ……遅かったじゃねーか。何話してたんだ?」

「ああ、待たせてごめん。ベルの処遇についてちょっと話してたんだ」

 それを聞いた瞬間、ベルがビクッと体を震わせる。

「マシューさん、ベルちゃんの身柄を奴隷商会へ引き渡すことを認めてくれました?」

「いや。その必要はないって言われたよ」

「んぁ? どういうことだよ?」

 そこでゼノは、今しがたマシューに言われたことを3人へ伝えた。

「……ってことは、ベルはこのままでいーんだな!?」

「やりましたね、ベルちゃんっ♪ もう不安に感じなくていいんですよぉ~?」

「……ベル……お兄ちゃんたちと、一緒にいてもいいの……?」

「うん。これからはずっと一緒だ」

「~~っ!」 

 そこでベルは、ぺたっとゼノに抱きつく。

「……うぅっ……お兄ちゃぁ……んっ……!」 

 これまで心細かったのだろう。
 ベルの瞳には、薄っすらと涙が浮かんでいた。

「おいベルっ! お前だけずりぃーぞ! アタシと代われぇー!」

「……(ぷるぷる)」

「ベルちゃ~ん? ゼノ様は、ベルちゃんだけのものじゃないんですよぉー? それと、そろそろ〝お姉ちゃん〟ってちゃんと呼んでくれないと、お仕置きしちゃいますから♪」

「ひっ……。モニカ姉、怖い……」

「モニカ〝お姉ちゃん〟ですぅ!! まぁ、それもかわいいんでいーですけどね~」

「へっ! こうなりゃ、強引にゼノを奪うまでだ!」

「て……うぉっ!?」

 アーシャがゼノの腕に飛びつく。
 ちょうどいい柔らかさの胸が、ぷにぃぷにぃとゼノの体に当たった。

「あ~~っ! アーシャさん、勝手に色仕掛け使って! ずるいですぅ~~!」

「ダメ……。お兄ちゃんは、ベルのもの……」

「ちげぇーぜ! ゼノはアタシのもんだ!」

「わたしのゼノ様から離れてくださいぃ~~!」

「お、おいっ……体をあちこちに引っ張らないでくれぇぇ……!」

 結局、いつもの流れで、ゼノは少女たちに弄ばれるはめに。
 だが、そこにベルが加わっても、不思議と違和感はなかった。

 以前からずっとこうしていたようなそんな関係が、4人の間には自然と出来上がっているのであった。
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