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2章

第14話

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(レベルに応じて威力とヒット数が上昇か。なかなかぶっ飛んだ必殺技だ)

 扱う者によっては破格のダメージを叩き出せるに違いない。
 だが、残念ながらレベル1の俺には無意味な効果だ。

 たとえこの必殺技を直撃させたとしてもダメージは期待できそうにない。

 それにこの【破幻の重叢剣】を使うには今所持している大斧を破棄する必要がある。
 今の俺は武器を一つしか所有できないからだ。 

 けれどその時。
 ハッとあることを閃く。

(待て。こいつに【羅刹鬼鉄丸】を強化素材として付与すれば今よりも強力な武器が完成するんじゃないか?)

 ベースとなる【破幻の重叢剣】の性能を引き継ぐのだとすれば、自ずと〔悪魔殺し〕のアビリティも付いてくる。
 武器を強化素材にしてしまうなんてこれまで検証したことはなかったが、理論上は可能のはずだ。

(武器にだってマナは宿っている。それを取り出してこの大剣に付与すればいいだけの話だな)

 何よりもここで迷っているような暇はない。
 視線を向ければ、ナズナは今もベルセルクオーディンからの攻撃を防ぎ続けていた。

 力をセーブしないって決めたんならもう出し惜しみはなしだ。

 俺は【破幻の重叢剣】を地表に深く突き刺すと手を伸ばして唱える。

「〝聖具発現マテリアライズ〟」

 宙に浮かび上がるような形で出現した【羅刹鬼鉄丸】を掴み取り、俺はそれを大剣の前にかざした。

(今こそ《金字塔の鍛造》の力を見せる時だ。俺にそれを示してみせろ)

 大斧に宿ったマナを【破幻の重叢剣】へ付与するように意識を集中させていく。
 見えざる力を動かすように強くイメージするんだ。

 すると。
 これまでに抱いたことのないマナの大きな流れを体内に感じる。

 体の奥底で熱いエネルギーが爆発するような感覚を抱くと、二つの武器は輝きを放ち始めた。

 キラリーン!

 やがてそれは一つの武器へと収束していく。
 どうやら強化付与することに成功したようだ。

(これはすごいぞ)

 地面から引き抜いて手に取ってみるとこれまでの武器とはまったく違う感覚を抱く。
 すぐに頭の中でステータスを確認してみた。

------------------------------
【デーモンスレイヤー】
〔レアリティ〕B
〔再現度〕15%
〔攻撃力〕4500
〔必殺技/上限回数〕冥界王の領域 / 15回
〔アビリティ〕悪魔殺しLv4、回避率上昇Lv.3
------------------------------

(【デーモンスレイヤー】。まさに悪魔系の魔物を断つために誕生したようなものだな)

 武器は斧と剣が組み合わさったハルバートのような形をしている。
 レアリティもBとこれまで作った武器の中で最強だ。

 これなら問題なく敵を葬れそうだが、再現度は決して高くない。

(一撃勝負ってところか。望むところだ)

 俺は【デーモンスレイヤー】をぐっと握り締めるとベルセルクオーディンに目がけて全力で駆け出す。
 防衛ラインを死守してくれているナズナのためにもここは瞬殺するのが礼儀だ。

「マスター?」

 《轟竜の護盾》を前に構えながらこちらの動きに気付いたようにナズナが顔を向けてくる。

「ナズナ! そこから離れろ!」

 走りながら大声でそう指示すると、ナズナは何かを察したように瞬時にその場から退避した。

 視界は開けた。
 あとはこいつを使って必殺技を撃ち込むだけだ。

「シュロロロロ~~!」

 ベルセルクオーディンは俺が突撃して来ていることに気付いたようだ。
 鋼の槍を天高く掲げて雷を刃先に落とすとそれをこちらに向けて放ってきた。

 バッゴゴゴーーーン!!
  
 その瞬間、近くの草地が大きな衝撃音とともに激しくめくれ上がる。
 
「どこを狙ってる。俺はここだぞ」

 これまで培ってきた経験と〔回避率上昇〕のアビリティのおかげで、俺は難なく敵の攻撃を回避しながら駆け抜ける。

「シュロロロロッッ~~!!」

 この時、相手は初めて焦ったような様子を見せた。
 俺の気迫を前に並々ならぬものを感じたのかもしれない。

(だが今さら気付いたところでもう遅い)

 乱れ撃ちしてくる相手の攻撃を上手く避けながら俺は徐々に距離を詰めていく。

「すごいです……これがマスターの本気」 

 少し離れたところでそんなナズナの声が上がるも、それに反応できないくらい俺の意識は目の前の相手に集中していた。

(今度こそ本当にこれで終わりだ)

 間合いに入った瞬間。
 俺は躊躇することなく【デーモンスレイヤー】を素早く振り上げる。

 そして。
 敵の体躯を正面に捉えると力の限りそれを振り抜いた。

「主を仇なすものを地獄の淵へと誘い、狂宴の生贄に捧げよ――〈冥界王の領域〉!」



 ドドゴゴォォゥゥゥーーーン!!


 
 鎧ごと亡霊は斬り裂かれ、ベルセルクオーディンは一瞬のうちにして闇の彼方へと消え去るのだった。
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