女神に同情されて異世界へと飛ばされたアラフォーおっさん、特S級モンスター相手に無双した結果、実力がバレて世界に見つかってしまう

サイダーボウイ

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第3章

4話 バヌーSIDE

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 それから一週間後。
 年間を通して開催されてきた王選もいよいよ大詰めを迎えようとしていた。

 最終投票日が間近に迫ったこの日、バヌーはこれまでの中で一番の大物モンスターを倒しに行くと配信中に宣言。

 バヌーはゲントとともに、ディンルー領のダンジョンへと赴いていた。

 リーダーの最終出陣ということもあって、[ヘルファングの煉旗]のメンバーは勢ぞろいしている。

 馬車を降りると、バヌーたち3人が先頭を歩き、そのうしろからレモンとゲントがついて来た。

 それからしばらく山岳地帯を歩くと、ダンジョンの入口が見えてくる。
 『レギヤド竜炎城』だ。

 このダンジョンの攻略難易度はAランク。
 『フルゥーヴ伝承洞』と『幻影飛魔天』に並ぶロザリア国内で一番の難易度を誇るダンジョンだった。

 その最下層には、ロザリア最強と謳われるボスが潜んでいる。
 [四つ角の龍皇]の異名を持つデスドラゴンだ。

(こいつを配信中にぶっ倒せば、バカな民衆はオレサマの実力の前にひれ伏すことになるだろぉーよ)

 すでにゲントとは打ち合わせ済みだ。
 
 デスドラゴンをゲントが弱らせ、最後の一撃をバヌーが決める。
 おいしいところだけ横取りする予定だ。
 
 そのあと。
 バヌーは黒の一帯を自分が消し去ったと配信の中で宣言するつもりだった。

 これまで発表を控えていた一番のサプライズでもある。

(これでオレサマの1位は確実なものとなる。今から楽しみだぜ、くっくっく)



「バヌーさん」

「あん?」

「まず自分が先を行けばいいんですよね?」

「んなの当たり前だろーが! てめーがダンジョンのモンスターをぜんぶ倒すんだろ? こっちは報酬渡してんだからよぉ、きちんと報酬分は働けや!」

「すみません。了解です」

 ゲントは一礼をしてから先にダンジョンの中へと入っていく。

「バヌー、そう苛立つなって。ゲントのおっさんも俺たちのためにきちんと考えて動こうとしてくれてるわけだからよ」

「あんっ? ぐだぐだ当たり前のことぬかしやがったから黙らせたまでのことだろーが」

「わかってるさ。貴重な手駒なんだろ?」

「くっくっく、そうさ。あのおっさんには手足となってきっちり働いてもらう! オレサマたちも行くぞ」

「おう」

 続けてバヌーとジョネスが『レギヤド竜炎城』へ足を踏み入れていく。

 その姿を見届けると、うしろに控えていたアウラがだるそうに声を上げる。

「アタイは自分が楽できればなんでもいーんだけどねぇ。実際、あんたもそうなんだろ?」

「そーかも」

「・・・フン。いつもなに考えてるか読めない女だね。アタイらも行くよ」

 最後に女性陣がそのあとに続いていく。



 ***



 ――レギヤド竜炎城 第1層――

 バヌーの企みもよそに、ゲントはさっそくダンジョンで無双しはじめた。
 出会うモンスターを次々に瞬殺している。

 レモンを除くほかの3人は、ゲントが活躍する場面を目にするのはこれがはじめてのことだった。

(やっぱりとんでもねぇーな。あのおっさん・・・)

 事前にレモンからゲントの神がかった強さを耳にしていたバヌーだったが、実際にその光景を目にするとさすがに驚きが隠せない。

 ふつうの冒険者ではあり得ないような動きをしていたからだ。

「間近で見るとバケモンだわ。こりゃすげぇ・・・」

「旧時代の道具であんな簡単にモンスター葬れるとか、あのオヤジ。いったいどーなってんのよ?」

「俺たちが来た意味、マジでなかったかもな」

 ジョネスもアウラもゲントの圧倒的な強さを目の当たりにして唖然としている。
 もはや引いていると言ってもいいレベルだ。

「・・・」

 レモンだけは表情も変えずにゲントの動きを静かに目で追っていた。

「まあ、バカであるのが幸いだったぜ」

「だな。バヌー、とことん利用してやれ」

「んなの、てめぇに言われるまでもねぇ。当たり前だろーが。くっくっく」



 そんな風に仲間たちと馬鹿にしていると、当の本人が剣を鞘に収めながら戻ってくる。

「バヌーさん。この階層のモンスターはぜんぶ倒しました。もう下へ降りてしまってもよろしいでしょうか?」

「待てや。その前に拾ったアイテムはぜんぶジョネスに渡してこい」

「あ、そうでした。すみません」

 ゲントはそのままジョネスのもとへ向かうと、マジックポーチから戦利品を取り出してそれを手渡す。

 べつにアイテムはあとでいっぺんに受け取ればいいのだが、バヌーはわざわざゲントをあごで使った。

 そうして小さな命令を積み重ねることで、主従関係をはっきりさせようとしているのだ。
 これこそがバヌーの唯一の才能と言えた。
 
 魔法学院では、教師や生徒らをこんな風に操ることで、自らの地位を確立させてきたという経験がある。
 まさに領主の息子という立場を最大限に利用してきたのがバヌーだった。



「それじゃ、もう降りちゃってよろしいでしょうか?」

「おう。先に降りてモンスターどもを蹴散らして来い。オレサマたちもすぐ行くからよ」 

「わかりました」

 その場で一礼し、ゲントは言われたとおり先行して下層へと降りていった。

 それを見届けるとバヌーは仲間たちに声をかける。

「お前ら。予定どおりそろそろ配信はじめるぞ」

「もういいのか?」

「いーんだよ。おっさん、あの調子だと最下層まですぐだろうからな。すべこべ言わずに早く取りかかれや」

「わかったよ。これくらいアタイらも役に立たないとね。ジョネス、レモン。やるよ」

 アウラのかけ声に2人は頷く。

(よぉーし! 今日もやるぜ!)

 バヌーはパンパン!と両手で顔を叩くと、いつもの営業スマイルを浮かべて配信の準備をはじめるのだった。
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