女神に同情されて異世界へと飛ばされたアラフォーおっさん、特S級モンスター相手に無双した結果、実力がバレて世界に見つかってしまう

サイダーボウイ

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第3章

7話

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「剣を失ってもうお手上げか?」

 丸腰だと思っているのだろう。
 ジョネスは勝利を確信したように、にやりと口元を釣り上げながらゲントににじみ寄ってくる。
 
 もちろん、青銅の剣を失ったところでゲントが焦ることはなかった。

『マスター。そろそろいいんじゃないでしょ~か?』

「そうだね」

 たっぷりと悪事をお届けすることができた、とゲントは思う。

「なにブツブツとひとり言呟いてんだ、おっさん? グラディウスに神頼みでもしてんのか?」

「いえ。もう十分だと思いまして」

「なに?」

「それに剣ならまだほかにありますので。問題ありません」

「まだあるだ? おいおい、んなもんどこにあんだよ? 鞘は空っぽじゃねーか?」 
 
 ハッタリだと思ったのだろう。
 ジョネスは得意そうに大声で指摘を続ける。

「いくらあんたが強いと言っても、ご自慢の武器が無けりゃどーすることもできねーだろ? 追いつめられてハッタリかますとか・・・正直見損なったぜ、ゲントのおっさんよ」

 目の前に複数の魔法陣を展開させながら、ジョネスはゆっくりと歩みを進める。

「舐めんなよ? 俺はエンペルト魔法学院を2位の成績で卒業してんだ。丸腰のあんたに負けるわけにはいかねぇ」

「・・・」

「あんたに恨みはないが・・・バヌーが王選で1位を確実にするためだ。俺たちに歯向かうってんなら、ここで消えてもらうしかない」

 ジョネスが詠唱文を口にしようとしたその時。

 ザンッ!!

「なっ!?」

 立ち上がった複数の魔法陣はバッサリと真っ二つに斬られてしまう。
  
 その刹那。

(!)

 ゲントは目にも留まらぬ速さでジョネスの正面に突進すると、魔剣のグリップを使ってみぞおちを食らわせる。

「がぐぅ・・・!?」

 この間、ほんの一瞬の出来事だった。

 あっさりとジョネスは気絶し、その場で白目を向いたまま倒れてしまう。

(さすがに魔剣の刃で傷付けるわけにはいかないからね)

 倒れたジョネスに目を向けていると、ルルムの焦った声が脳内に木霊した。

『マスター! レモンさんが危ないですぅ・・・!!』

「うん。わかってる」

 ゲントは振り向くと、疾風の如き速さでアウラの前に到達する。

「こ、このオヤジッ! なんで・・・!?」

 常軌を逸脱したその動きを目の当たりにし、アウラは思わず言葉を詰まらせた。

「すみません。レモンさんを解放していただけませんか?」

「ば、化け物が・・・! それ以上近づくんじゃねー! 一歩でも踏み込めば、この女の首をへし折ってやるッ・・・!」

「う゛ぅぅ゛・・・ゲントっ・・・」

 アウラが腕に力を込めていく。
 女性には手を出したくないという思いがゲントにはあったが、このままではレモンの身が危ない。

 躊躇している暇はなかった。

「悪いですが・・・アウラさん。その暴力は見過ごせません。やらせていただきます」

「くそ゛がぁぁぁ!!」

 レモンを投げ飛ばすと、アウラは瞬時に『火の書』を手元に呼び出し、攻撃魔法を放とうとする。
 
 が。

 ゲントの前ではそのモーションはあまりにも遅すぎた。

「ヒッ!?」

 ジョネスの時と同じく相手の懐へ入り込むと、ゲントはまたもみぞおちを食らわせ、一瞬のうちにしてアウラを気絶させる。



「レモンさん、大丈夫ですか?」

 倒れたレモンのもとへと駆け寄り、ゲントは彼女の体をすぐに抱いた。

「・・・っ、ありがと・・・」

「これでよかったんですよね? ちょっと待ちすぎだったでしょうか?」

 レモンは首元を押さえながら、顔を横に振る。

「・・・ううん、これでいいんだよ。みんなにも、ちゃんと伝わったって思うから・・・」

 そう口にしながら立ち上がり、レモンはある方へと目を向けた。
 その視線の先にはバヌーのうしろ姿があった。
 
 どうやら準備を終え、これからデスドラゴンを倒そうとしているところのようだ。

「ゲントお願い・・・。あとはウチがやるね」

「わかりました」

 ゲントはレモンの体を抱いたまま、瞬時にバヌーの前に躍り出る。

「!? な、なんだ・・・!?」
 
 そこでようやく。

 バヌーは、すでにジョネスとアウラがゲントの手によって気絶させられていることに気づいたようだ。

「て、てめー・・・いつの間に・・・」

 ここでレモンは衣服を払うと、一歩前へ出て声を上げた。

「バヌー。もう観念しなさい。これまでの不正をすべて認めて国民の皆さんにきちんと謝罪して」

「・・・国民の皆さんだぁ? ハッ! 正義のヒーロー気取りか。まだ配信はスタートしてねぇんだよ、バーカ!」

「ううん。もう配信中だよ?」

「なに言ってんだ? どこで映してるって言うんだよ! てめぇのパネルはさっきジョネスに消されただろーがぁ! ハッ! それになんでオレサマがバカな民衆に謝らなくちゃならねーんだよ。死んでもお断りだねぇ!」

 余裕を見せて嘲笑するバヌーだったが、レモンは表情ひとつ変えない。

「ずっと配信中だったって言った方が正しいかな?」

「なに・・・?」

 そこでバヌーは眉をひそめる。
 ここまで堂々としているレモンに違和感を抱いたのかもしれない。

 まるでなにかに急き立てられるように、バヌーは自身の光のパネルに目を向ける。
 当然、ここにはなにも映し出されていなかったが・・・。

「まさか・・・」

 なにか勘づいたように、バヌーは素早く伝達魔法を唱えた。

「心を共振し対峙する時、存在の境界を超越し交わりの証を紡ぎ出さん――伝達魔法レベル1〈接続アクセス〉!」

 立ち上がった光のパネルが青色に変化する。

 そして。
 そこに映し出されたものを目にして、バヌーは顔を青ざめさせた。

「う、嘘だろぉ・・・オレサマが映ってやがる・・・!?」

 しかもそれだけではない。
 そこに表示された同接数を見てバヌーはさらに言葉を失った。

「ひゃ、100万だとぉぉ・・・!? いつの間に・・・なんでこんな増えてんだよぉ・・・!?」

「それだけ皆さんの関心を集めたってことだね。ある意味、これはあなたがはじめて挙げた手柄って言えるかも」

「ッ!」

 バヌーは光のパネルにかじりつく。
 どの方角から今配信が行われているのか、必死になって確認しているようだ。

(そろそろ気づく頃か)

 その時。
 ゲントはバヌーと目が合う。

 続けて怒りに震えた怒声が飛んできた。

「て、てめぇぇかぁぁ、ゴラァァ・・・!!!」

「ご明察です」

「ゲントォォッ!! どこにパネルを隠してやがるッ・・・!!」

「残念ですけど、これはヒト族の皆さんには認識できません」

「あんだとォ・・・!?」

「だから、いくら探しても無駄です」

「この死にぞこないのクソ老害がぁぁぁーーー!!」

 そこで激高したバヌーが飛びかかってくる。
 これらもすべて配信されているというのに、頭に血がのぼってそれすらも忘れてしまっているようだ。

(仕方ないか)
 
 ゲントは一度うしろに退避すると、魔剣をバヌーに向ける。

「っ!? てめぇ・・・! 逃げるなぁぁ!!」

「バヌーさん。今、剣先をあなたに向けています。このまま向かってくれば、剣がすぐに体を貫通することでしょう」

「け、剣だとぉぉ・・・!? んなもん、どこにもねぇぇだろがぁぁ!!」

「これも同じです。目に視えない代物なんですよ。これがあったからこそ、俺はこれまでモンスター相手にも戦いを優位に進めることができてたんです」

「ふ、ふ、ふざけるなァ、ボケぇぇ!! このオレサマをどこまで愚弄するつもりだァァ!! オレサマは次期国王になる男だぞぉぉ!! こいつぶっ殺してやるッ!!」

 『火の書』を呼び出すと、バヌーは魔法陣を立ち上げる。

 しかし、その時。

「ギィィィシャアアア~~~!!」

 これまでフロアの隅で大人しくしていたデスドラゴンがいきなり翼を大きく広げて立ち上がった。
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