【堕天】スキルのせいで速攻島流しされたけど、堕天希望の天使達が割と多いので、一緒に楽園を創ることにします

ゴトー

文字の大きさ
3 / 74
Falling 1

後悔させませんから

しおりを挟む
 
 ヘルヘイムで迎えた初めての夜。

 それは風と波の音しか聞こえないほど静かで、想像していたよりもずっと穏やかなものだった。
 その静寂のせいか、自分の置かれた状況も忘れ、ついうつらうつらと睡魔に襲われていたのだが…。


── ザ……ザ……ザ……ザ……


「…!!」

 何かが小屋に近づく音がする。
 ここは数多くの罪人が送られてきた流刑地で、その中の誰一人として生き延びる事のできなかった場所。

 きっと、新しいエサが来たと、この地獄に住むモンスターが俺を食らいに近づいてきたのだ。
 俺は腰に携えていた剣を抜き、入り口の前で構える。

 立派な騎士になるために、俺は必死に修行してきた。
 その夢はぐしゃぐしゃに壊れてしまったが、モンスターなんかに大人しく食われてたまるか。全力で抵抗して、生き延びてやる!
 剣の腕には自信があった俺だが、その手は恐怖で震えていた。
 そして、足音が鳴りやんだその時、


コン…コン…

 
 ドアを叩く音が聞こえたのだ。
 
 何だ今の……?ノック……されたのか?
 モンスターがノックするか?
 人間?いや、ヘルヘイムに人間なんかいるはずない。
 そうだ、今のはノックなんかじゃない。
 きっとモンスターが鼻先をぶつけて、ニオイでも嗅いでいたんだろう、そうに違いない。
 
 葛藤の末、俺は木製のドアに向かって切っ先を向ける。

「俺は生き延びるんだッ!!」

 生への執着が込められた叫びと共に、俺はドアごと剣で突き刺す。
すると…。


「にゃあああ!!!!いきなり何するんですかぁ!!?」


 予想の180度斜め上の反応だった。
 信じ難かったが、明らかに甲高い少女の声が聞こえたのだった。
 俺は、慌てて外へ飛び出す。
 そこにいたのは…。
 

「な、て……天使ッ!?」


 背に真っ白い羽を持った、可愛らしい少女が尻餅をついていた。
 そして、その綺麗な顔は、どこかで見た覚えがあるような……。
 ていうかこの天使、頭の上に何か大事なものがないのだが。

「お前…!あの時の天使か!?」
「そうです!よかったぁ、覚えててくれたんですね!」

 なんとその少女は、俺が頭の輪を破壊した天使本人のようだった。
 天使は安心したような顔をしているが、俺はドアの剣を抜き取り構えなおす。

「あ、あれ?何で私はまだ剣を向けられているのでしょうか……?再会のハグはなしですか?」
「あるかそんなもん!!お前のせいで、俺は何もかも失って……こんな所に流されてしまったんだぞ!?」

 どの面下げてノコノコやって来たんだ、こいつは。
 しかも、あの後何のフォローもせず、しれっとその場からいなくなってたし。

「そ、その件は本当にすいませんでした!!でも、どうしてもやらなきゃいけなくて……!あなたにしかお願いできなくて……!私はただ、頭の輪っかを外して欲しかっただけなんです!!」

 天使は全身全霊で素直に謝った。
 正座で必死に謝っている女子に、剣を向けて怒鳴りつけている自分が、少しいたたまれなく感じてきた。

「……どうして俺に輪を壊させたんだ?納得できるように説明してくれ」

 俺がいったん剣を納めると、天使は申し訳なさそうに語り出す。

「辛いんです、天界……」
「は?」

 からかっているのかと思い、俺は再び剣構えようとする。

「わわ!最後まで聞いてくださいよぉ!」

 羽をバタバタさせて、天使は俺を制止する。

「天使は頭の天輪がある限り、神様には絶対服従……。毎日毎日、創世から終わりのないお仕事の繰り返し。たまの休みも娯楽も何もなく、人間っていいなぁ~って、空から眺めてるだけの生活なんですよ!」

 天使は感情的になって、どんどん語りだす。

「私達も人間みたいに自由に生きたいんです!でも、自分じゃ絶対に天輪は外せなくなっていて……。だから、唯一適性のあったあなたに、こっそり秘密の堕天スキルを授けて壊してもらったんです!」
「堕天スキル…?」
「はい、あの黒いモヤモヤが出るやつです!天輪を壊して、天使を堕天使にしちゃう力なんですよ!堕天した後はもう天使じゃないので、神様はもう手出しできないって訳です!」

 以上が、この天使改め堕天使の主張だった。
 確かに、彼女の言う通りなら、天界の生活は少し辛そうだ。
 俺が同じ立場でも、自由が欲しいと願っただろう。
 だから、相手の事情もおもんばかって、可能な限り大人の対応をしようと心がけた。

「完っ全にお前の都合じゃねーか!!俺の人生、お前の輪と一緒にぶっ壊れてんだけど!?どうしてくれるんだよ!?」

 まだ思春期の16歳なので、大人の対応はちょっとできなかった。

「えと、だから、その、カイネさんについては、本当に申し訳ないと思ってるので……。私が責任を持ってですねぇ……」


 彼女がそこまで言いかけたところで、空に突然巨大な影が出現した。


── ギャアアアアアア!!!!!


 けたたましい鳴き声をあげながら、巨大な怪鳥がこちらへ向かって飛んできていた。

「うわあああ!!何だあのモンスター!?や、やばい!早く逃げるぞ!!」

 俺は思わず彼女の手を取り、逃げるようとするが、

「もぉ!何ですか、この鳥さんは!?まだお話ししてる途中でしょうが!」

 全く動じていないどころか、モンスターに文句を言い出した堕天使は、怪鳥に向かっておもむろに右手をかざす。


── 破滅ノ光ルイン・レイ!!


 次の瞬間、白い閃光が彼女の手から放たれたと思ったら、目の前にいたモンスターは、気づけば跡形もなく消え去っていた。
 呆気に取られている俺の方に、堕天使はこほんと咳払いをして振り向く。

「あの、そういえば…まだ自己紹介していませんでしたね」

 美しい羽を大きく広げて、彼女はキメ顔で名乗り出す。



「私は破滅を司る元天使、ルルフェル!これからよろしくお願いしますね、カイネさん!」



「破滅……?」

 月明かりに照らされ、キラキラと輝くその神々しい姿に、俺はつい見とれてしまっていた。

「と・に・か・く!私と出会った事はぁ……絶対後悔させませんから!!」


 パチンっとウインクするルルフェルを見て、俺は今すぐにでも後悔したくなった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

処理中です...