【堕天】スキルのせいで速攻島流しされたけど、堕天希望の天使達が割と多いので、一緒に楽園を創ることにします

ゴトー

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Falling 1

堕天の影響

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 俺は無事にヘルヘイムで、最初の朝を迎えることができた。
 突然俺の前に現れた、この島流しの元凶である元天使のおかげで……。

 あの後ルルフェルは、下界の空気は汚くて気分が悪くなってきた、もう寝るとか言い出したので、それ以上の事は聞けなかった。
 ちなみに、俺はよく眠れなかった。
 理由は、またモンスターが襲ってくるのではないかという不安が半分、目の前で無防備に寝てるこいつが妙に気になったのが半分……。

 という訳で、俺は今この堕天使から聞けるだけ情報を得ようと、個人面談を行っているところなのだ。


「という事は、お前みたいなはぐれ天使が、これから続々俺のところに堕天しにやってくる……ってことか?」
「はい!天界に不満を持ってる天使は結構いますからね。私、力になってくれそうな子に声かけてきましたので!」
「で、そんな堕天使達が自由に暮らせる場所が欲しいと」
「はい!」
「それでここ人もいないし、ちょうどいいです!ここにみんなで暮らしましょう!……ってことか?」
「はい!」

 内容を確認する俺の質問に、ルルフェルは支給された食料を頬張りながら元気に肯定する。

「はい!……じゃないだろ!こんな危険な所に住むなんて、命がいくつあっても足りないだろうがッ!」
「大丈夫ですよぉ。私、強かったでしょう?他のみんなも色んな能力を持っているので、ここでの生活もきっと快適になっていきますよ!」

 返ってきたのは、あくまで楽観的な回答だった。

「それに、ここ以外にカイネさん行くあてあるんですか?もう帰る場所もないんですよね?」
「ぐ、それは……」

 お前のせいだろと言いたくなったが、ここで生き延びていくには、悲しいがこいつの力が必要だ。
 あまり機嫌を損ねないようにしなくては。

「……それよりルルフェル。お前、ちょっと食べ過ぎだぞ?まだろくに水も食料も確保できていないのに」
「あ、すいません!堕天してからやけに食べたい欲求が……。前は人間の祈りとか懺悔だけで満たされていたんですけどねぇ……」

 どうも堕天したことで体にどんな影響があるのか、自分自身でも把握しきれていないらしい。変な影響がなければいいのだが。
 とりあえず今は、堕天希望の天使達がくるのを待ちつつ、こいつが全てを消費し尽くす前に水と食料を探すべきだろう。
 危険ではあるが、可能な範囲でヘルヘイムの探索もしなくてはならない。

「…あの、カイネさん?ちょっといいですか?」
「え、どうした?」

 急に緊迫した表情をしたルルフェルに、俺もつられて不安になる。

「何だか…お腹の辺りに今まで感じた事のない違和感があるんです…。わ、私、死んじゃうんでしょうか……?下界の空気が汚いから……?」

 今にも泣き出しそうな顔の堕天使を、俺はあたふたするばかりだ。

「お、落ち着けよ。今まで大丈夫だったろ?違和感って……どんな感じだ?」
「な、何というか……ムズムズするというか、体の中から大切な何かが出ていってしまうような……」

 この世の終わりのような顔したルルフェルには申し訳ないが、その情報と彼女が手で押さえている位置から俺が考えられる可能性は一つだけだった。


「……それ催しただけだろ。ガブガブ水飲んでたし」


 デリカシーがなかったかもしれないが、不自然に動揺しているこいつを落ち着かせる方が先決だろう。
 

「も、催す……?何のイベントをですか?ふざけないでくださいぉ!」
「いや、ふざけてないから。いいから行ってこいよ、ここで待ってるから」
「行く……?どこへ?何をしに?」

 いまいち会話が噛み合わない。
 何だ、こいつ?
 そこまで言わせる気か?

「出すんだよ、飲み食いした物を」

 できるだけオブラートに包んだ言い方のつもりだったが、目の前の堕天使は硬直する。



「な!?ま、まさか俗に言う排泄ってやつですかぁ!?人間がするやつですよね!?そんなはしたないこと、天使の私がする訳ないじゃないですかぁ!!」



 ……そうか、そういう事か。
 どうやら、天使には排泄という現象がないらしい。
 さっきも天使は人間の祈りだけで、どうのこうのと言っていたし。

 だが、恐らく堕天使はじゃないのだろう。
 違う体質になって、初めての体験。
 恐らくそういう事だろう。

「そ、そんな……!ありえないです!天使は決して排泄なんてしない……子供でも知ってる常識なのに!」
「大人も知らねえよ。てかお前、昨日天使やめただろ」

 羽を世話しなく動かしていた堕天使の動きが、ぴたっと止まる。


「そ、そうでしたぁ!!」


 一瞬で納得したルルフェルは、慌てて小屋を出ようとする。
 絶対ついてこないでくださいねと、何度も念を押してやっと出ていくかと思ったら、心配そうな顔で最後に振り返って一言。


「わ、私、上手くできるでしょうか……?」
「知るか!!さっさと行ってこいッ!!」



 多感な年頃に変な性癖を植え付けられそうになり、取り乱しまくる俺だった。

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