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Falling 1
仲良くなれそうです!
しおりを挟む「えーと、あのユール……だっけ?」
何らかの覚悟を決めて、力強く目を閉じているユールには、戸惑っている俺が見えていない。
ルルフェルはと言うと、何かじっと見ている。
何をするでもなく、じっと見守っている。
そして頷いた、何のサインだよこの野郎。
「じゃ、じゃあお前の輪……壊すぞ?」
「………うん」
ユールは俺の身長に合わせるように、顔を少し上へ向ける。
こいつが何を勘違いしていようが、俺は俺の仕事をこなすだけだ。
俺は右手から例の黒い霧状のスキルを発動し、ユールの天輪に一気に触れる。
─── パリーンッ!!
俺の運命が狂いだしたあの日と、同じ音が鳴り響いた。
この音を俺は、あと何回聞くことになるのだろう。
「ほら、終わったぞ」
「え……?え?」
目を開けたユールは、天輪がなくなった自分の頭を何度も触って確認する。
本当にこれで終わりなのと言いたそうに、きょとんと俺を見つめている。
「て、天輪に触るだけでよかったの…?」
「そうだよ、この右手の黒いのでな」
俺は黒いのを見せて、淡々と説明した。
ユールが口をパクパクして何か言いたそうにしたところで、ようやくルルフェルが話に参加する。
「ユールちゃんは、天界のおとぎ話に出てくる堕天を想像してたんですよね?」
「おとぎ話……?」
ルルフェルは屈託のない笑顔で、楽しそうに語りだす。
「はい!人間と天使が恋をするんですが、それは天界の禁忌の一つで、2人は引き裂かれてしまうんですけど……。最後に二人が別れのキスをしたら、奇跡が起きて堕天したってやつです!」
どちらかというと、おとぎ話に出てくる側のやつが、純なおとぎ話を熱弁した。
「ユールちゃんってば、きっとそのおとぎ話を無邪気に信じて……」
「ちょ、ちょ、いい加減にしなさいよ!!」
優しげな視線を送るルルフェルに、真っ赤な顔したユールが襲いかかる。
「な、何よ!!おとぎ話を信じてて悪い!?ユールは、小さい頃からそう聞かされてたんだから!!」
夢見るピュアな乙女は、腕を組んで開き直る。
「ハ、お前も結構かわいいところあるんだな、安心した」
「か、かわっ!?」
ユールの様子を見て、俺が何気なく言った言葉に、ユールの赤くなった顔がさらに赤くなる。
赤面されたことで、そんなつもりのなかった俺もすごい恥ずかしくなってきた。
「あ、あーよかったぁ!!こんな汗臭い人間とキ、キ、キ……口づけなんて冗談じゃなかったもの!!あんた、ちゃんとお風呂入ってるの!? 」
そんな心の防御力がない状態で、急に痛いところを突かれた俺は、思いきり動揺してしまった。
華々しい貴族出身の俺は、臭いなどと言われた経験はただの一度もなかったのだから。
「し、仕方ないだろ、ここにはそんなものないんだから!お前だって、海水臭いだろ!?磯の香りがしてんだよ、羽についてるワカメ取れよ!」
俺の必死の反撃にユールも応戦する。
「仕方ないでしょ!空からだと他の天使に見つかるかと思って、海から侵入を敢行したのに……。ここら辺の海、何でやばいのばっかりいるのよ!?聖水が効くモンスター全然いないし!!」
俺達は喧嘩する猫みたいに威嚇し合う。
見かねたルルフェルは、まぁまぁとなだめながら、無理やりまとめようとする。
「……ていうことで、二人ともすっかり仲良くなったみたいですね!私、嬉しいです!あ、ユールちゃんも釣りします?また誰か釣れちゃうかも」
「「なってないッ!!」」
息ぴったりのハモりが、ヘルヘイムの大海原に響いた。
ちなみにこの後、聖水を浴びたら臭いも汚れもイライラも浄化された。
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