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Falling 1
天使殺し
しおりを挟む勢いよく小屋を飛び出していってしまったルルフェル。
ふわふわ飛び散る彼女の羽を見ながら、俺はただただ呆然していた。
「あーあ、見てらんないわね。本っ当、不器用なんだから……」
横になったままユールが、呆れた顔でこちらを見ている。
見てらんないわって、思いっきり見てたじゃねえか。
ていうか、見てたんだからフォローに入ってくれよ……。
「どうしようかしら。あんたに言おうかなぁ、言わないっかなぁ」
訳知り顔のユールは、俺に何かを言うか言うまいか迷っているようだ。
「やっぱ言わない」
「言えよ!!」
そこまで言ってマジで言わないやつ初めて見た。
「冗談よ、やっぱ言っとくわ。今後あんたが、あの子を無暗に傷つけないようにね。ユールがこんなこと言ってたってのは内緒よ?」
何で一回フェイント入れたんだよ。
それに、俺が一方的に悪いみたいな物言いがちょっと引っかかる。
「あのね、ルルフェルはねぇ、天界ではすごい有名な天使だったの」
この期に及んで横になったままのユールが、遠い目をして語り出す。
「ポンコツだったからか?」
「違うわよ、真面目な話しようとしてるのにふざけないで。引っぱたくわよ?」
ユールが床をポンポン叩いて抗議する。
分かったから続けてくれと、俺はユールに促した。
「ねえ、天界でユールが裏で何て呼ばれてたか分かる?」
ん?ルルフェルじゃなくてお前の話?
そんなの知る訳ないだろ、俺は頭に浮かんだこいつの能力から連想したフレーズを、投げやりに答えた。
「浄水器とか? 」
「ブッブー、ウォーターサーバーよ」
結構惜しかった。
適当に言ったのに方向性は合っていた、確かにそんな呼ばれ方してたら天界を出たくもなるわな。
「それは置いておいて……。じゃあ、ルルフェルは何て呼ばれてたか分かる?」
「何で答えさせたんだよ、何を話したいのか全然分からねえんだけど」
「もう、文句言わないで素直に聞きなさいよ!全く人間ってやつは、どこから教えればいいのかしら?」
寝起きでまだ眠そうな彼女は、何も飲み込めていない俺にめんどくさそうに説明する。
「まずね、今の天界に堕天なんてシステムないの。昔は、罪を犯した天使を下界に堕とすなんてのもあったらしいけど、今はそんなことしないの」
話の内容が色んな方向に飛んでいる。
もしかしてこいつ、説明下手なのか?
そう思ったが、きっと怒らせるだけのなので素直な反応に徹する。
「じゃあ、今はどうしてるんだ?」
「処刑よ、処刑」
ユールの口から、驚くほど自然に残酷な言葉が出た。
こいつらの話でしか聞いたことがないが、天界の気味が悪いほどの秩序に、俺はぞっとする。
「でも、天使って死なないの。そういう風につくられてるの」
「じゃあダメじゃん」
さっきぞっとした俺の気持ちを返せ。
こいつの話は、最終的に何が言いたいのか、さっぱり分からない。
「そう、ダメなの。ダメダメなのよ、天界なんて……。だから、罪を犯した天使を処刑するために、特別な力を与えられた天使がいるの」
「な、何だよ、それ……」
ユールは少し間を置いて、俺の目をじっと見つめた。
雰囲気の変わった彼女の表情に、俺は自然に息を飲み込んだ。
そして、次にユールが口にした言葉は、俺の耳に重く響いた。
「それが破滅の天使。天使殺し、ルルフェルは天界でそう呼ばれていたわ」
俺は耳を疑った。
何度も心の中で反芻した。
「……え?」
そうだった。
明るい性格のせいで忘れていたが、あいつは自分を破滅を司る天使と名乗っていた。
彼女が天界でどんな役割だったのか、俺は知らず知らずのうちに、聞かないようにしていたのかもしれない。
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