10 / 74
Falling 1
衝突
しおりを挟む「カイネさん、そろそろこの島の土地を浄化させましょうよ!」
ようやく最低限の生活ができるようになった今日この頃。
突然、朝からこの堕天使1号がおかしなことを言い出した。
「土地を浄化……?何言ってんだ?」
これだから人間はものを知らないと、ルルフェルは首を横に振る。
何だ、そのドヤ顔は。引っぱたいてやろうか。
「あのですね。このヘルヘイムが、何でこんな荒れ果てているのか分かりますか?」
「それは、昔ここで天使達と魔王とかってやつが戦ってその影響で……」
あの国で聞かされていた神話レベルの話を、たどたどしく口にする。
「そうです。その戦争の代償として、この土地は呪われてしまったんです。日の光を浴びても、恵みの雨が降り注いでも全てが無になる呪い。この土地の命を拒絶する、停滞の呪い……」
胸に手を当てて、神妙な面持ちで語るルルフェルは、いつものポンコツ堕天使とは思えないほど天使らしかった。
もう、天使ではないのだけれど……。
「しかも、その影響で変なモンスターが生まれて、まともな生き物は住めなくなったのよ」
「うお!?起きてたのかよ……?」
今まで横で眠っていたユールが、いきなり会話を補足してきた。
まだ目が完全に開いてないのに、器用なやつだ。
「そうなんです!だから、聖水を地道に撒いて撒いて……この土地をあるべき姿に戻していくんです!」
キラキラ目を輝かせながら力説するルルフェル。
だが、こいつの乗り気な態度とは対照的に、俺は結構冷めていた。
「そんな大規模な環境整備する必要あるか?今は生きていくだけで、いっぱいいっぱいなのにさ……」
「で、でも、いずれここにはもっと沢山の堕天使達が住むんですよ?浄化活動を進めておいて、ヘルヘイム全体をもっと住みやすい土地に……」
ちょっと前から、少し気になっていた事があった。
それはルルフェルと俺の考え方の温度差だ。
俺はルルフェルの言葉を遮る。
「ちょっと待て。お前、確か前も楽園がどうのって言ってたけど……。別に俺はそこまでやるつもりないからな?」
「もぉ何を今さらぁ」と、ニコニコしたままの堕天使に、俺ははっきりと言ってやることにした。
「生活に必要なことはやるけど、それ以上はやる必要ないだろ。いずれここからも出るつもりだし」
「な、何でですか!?一緒にここを天国より快適な楽園にしましょうよ!」
俺の目が本気だと察すると、ルルフェルはあわあわとしだした。
「そ、それにそうなればカイネさんは、堕天使の楽園の主ですよ?堕天の王ですよ?ほぉら、かっこいいー!ね、なりたくなりました!?」
ちょっとバカにしてるだろ、それ。
「あれ……?人間の男の子はこういうの好きって聞きましたけど……」
やっぱバカにしてるだろ。
「ていうか、俺は一方的に巻き込まれたんだぞ!?これだけ協力してやってんだから文句言うなよ!お前らが自由になる代わりに、俺は全部失ったんだからな!!」
いつもヘラヘラしているこいつに、俺も少し不満が積もり積もっていたのかもしれない。
こいつのせいでこんなことになって、それでも生きるために一緒に協力していかなきゃと、そう思って考えないようにしていたが……。
些細なきっかけで、つい言ってはいけないことを口にしてしまった。
「カ、カイネさん……?やっぱり、私のこと……」
露骨に悲しそうな顔をするルルフェルだったが、ここまで言ったらもう止まれなかった。
「と、とにかく!そんな意味があるかも分からない、途方もない作業……俺はやるつもりないからな!!」
下を向いて、ふるふる震えるルルフェルをじっと見つめる。
そして…。
「カイネさんのバカぁ!!一級犯罪者ぁ!!お風呂入った後に変な毛浮いてるぅ!!」
「な!?それは仕方な……おい、どこ行くんだよ!?」
言いたいだけ言うと、ルルフェルはどこかへ飛んで行ってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。
桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。
だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。
そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。
異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。
チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!?
“真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜
犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。
この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。
これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい
ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆
気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。
チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。
第一章 テンプレの異世界転生
第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!?
第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ!
第四章 魔族襲来!?王国を守れ
第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!?
第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~
第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~
第八章 クリフ一家と領地改革!?
第九章 魔国へ〜魔族大決戦!?
第十章 自分探しと家族サービス
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる