【堕天】スキルのせいで速攻島流しされたけど、堕天希望の天使達が割と多いので、一緒に楽園を創ることにします

ゴトー

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Falling 2

ピンチ(になりにいってる)

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「なあ、ルルフェル。何であいつが怒ってるか分かるか?」
「えへへ☆」


 頬を染めて頭をぽりぽり掻くルルフェル。
 俺はその頬を無言で引っ張る。
 本当によく伸びる、この堕天使の頬は。

「すいまふぇん、わらしが悪いでふ……」 
「そうだ」 
「す、少しはフォローしてくれたってよくないです?」 

 たまに不安に思う。
 もしかして、天使ってこんなんばっかりなのかと。
 いや、今はそれよりも案ずるべきものが……。


「シャー!!!何わしを無視しとるんじゃ!?」


 ルガルは毛を逆立て、モフモフの尻尾もピンと突き立てて威嚇している。
 その姿は、路地裏で喧嘩している野良猫に酷似している。

「可愛い部下達を散々痛めつけて、水洗いして、刺し身にして、調理もせずに……」

 改めて言葉に出されると、かなり惨い事してんな。

「言えっ!お前らここに何しに来たんじゃ!?」
「ちょっと洞窟があったので涼みに来たんです!最近、暖かくなってきたので!」
「本当か?よく見るのじゃ、この怒りに狂ったわしの目を。この目に向かって真実だと言えるか!?」 

 ルガルはくりくりの明るい茶色の目で、誤魔化そうとするルルフェルをじっと見つめる。



「や、すいません、小腹が空いたもので……」



 引きつった顔をするルルフェルは、その曇りなき目に負けてしまった。
 本当は正直で素直ないい子なんです、悪気はないんです。
 それなりにポンコツで、致命的に常識が無いだけなんだ。
 
「お前らはファーストフード感覚で人の巣を荒らすのか!?悪魔か!?」 

 そして、元天使が悪魔に悪魔と言われてしまっている。


「あの、世の中にはという言葉もありますわ。今回はお互い反省ということで、許していただけません……?」
「脂が乗ってて美味しかったわよ 、もしかして今って旬?」


 さらに、メルメルとユールが火に大量の油を注ぎに行く。
 何でこいつらは、わざわざ自分を追い込むようなことをするのか。


「シャー!!地に伏して、許しを乞うならとも思ったが……もう絶対に許さんぞ!!この堕天使共がッ!!」


 ルガルは毛並みだけでなく、両手も上げて一生懸命威嚇している。
 ……こんなに上手に人を逆撫でできるやつ、初めて見た。

「待ってください!こんな悲しい争いをしなくても、きっと解決の道があるはずです!」
「どの立場で言っとるんじゃ!?仲間を食いに来た奴と和解など、できるはずないじゃろが!!」

 正論だ。
 俺達は今、悪魔に正論を叩きつけられている。
 こんな経験、中々できないだろうな……。
 
「な、何て横暴な考え方……!恐ろしいです……!」 
「言葉が通じても、所詮は強い力を持っただけの魔物。もはや、話し合いの余地はないわね……」
「こっちが10対0で悪いからな?こっちっていうか、お前らだけど」
 
 ルルフェルとユールは、なぜか強気な姿勢を保っている。
 この件に関しては、純粋に向こうサイドが気の毒過ぎるのに……。


「もはや問答無用じゃあ!お前らを焼き殺して、わしが直々に喰らってやるわぁ!!」


 堂々と宣戦布告をした次の瞬間、ルガルは右手に灰色の激しい炎を纏い、一直線に俺に飛びかかって来た。

「火……!てか、何で俺狙いなんだよ!?」

 魔王の右腕を自称するだけのことはある。
 俺のちっぽけな命など、触れずとも消し炭にしてしまいそうな灰の炎。
 こんなもの今まで見たことがない……。
 怯んで動けなかった俺は反応できない、脳裏に死の文字がよぎる。


「ちょっと、何ぼやっとしてんのよ!?あんたが死んだら、ユール達つむのよ!!」


 その刹那、炎と俺の間にユールが割って入る。
 間一髪、ユールは俺を抱きかかえて宙を舞う。

「わ、悪い……。サンキュー」


 よく見ると、その羽先は僅かに焦げている。
 ルガルの放つ禍々しい炎の熱が、冷たい洞窟を包み込んでいく。




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