24 / 74
Falling 2
ピンチ(になりにいってる)
しおりを挟む「なあ、ルルフェル。何であいつが怒ってるか分かるか?」
「えへへ☆」
頬を染めて頭をぽりぽり掻くルルフェル。
俺はその頬を無言で引っ張る。
本当によく伸びる、この堕天使の頬は。
「すいまふぇん、私が悪いでふ……」
「そうだ」
「す、少しはフォローしてくれたってよくないです?」
たまに不安に思う。
もしかして、天使ってこんなんばっかりなのかと。
いや、今はそれよりも案ずるべきものが……。
「シャー!!!何わしを無視しとるんじゃ!?」
ルガルは毛を逆立て、モフモフの尻尾もピンと突き立てて威嚇している。
その姿は、路地裏で喧嘩している野良猫に酷似している。
「可愛い部下達を散々痛めつけて、水洗いして、刺し身にして、調理もせずに……」
改めて言葉に出されると、かなり惨い事してんな。
「言えっ!お前らここに何しに来たんじゃ!?」
「ちょっと洞窟があったので涼みに来たんです!最近、暖かくなってきたので!」
「本当か?よく見るのじゃ、この怒りに狂ったわしの目を。この目に向かって真実だと言えるか!?」
ルガルはくりくりの明るい茶色の目で、誤魔化そうとするルルフェルをじっと見つめる。
「や、すいません、小腹が空いたもので……」
引きつった顔をするルルフェルは、その曇りなき目に負けてしまった。
本当は正直で素直ないい子なんです、悪気はないんです。
それなりにポンコツで、致命的に常識が無いだけなんだ。
「お前らはファーストフード感覚で人の巣を荒らすのか!?悪魔か!?」
そして、元天使が悪魔に悪魔と言われてしまっている。
「あの、世の中には弱肉強食という言葉もありますわ。今回はお互い反省ということで、許していただけません……?」
「脂が乗ってて美味しかったわよ 、もしかして今って旬?」
さらに、メルメルとユールが火に大量の油を注ぎに行く。
何でこいつらは、わざわざ自分を追い込むようなことをするのか。
「シャー!!地に伏して、許しを乞うならとも思ったが……もう絶対に許さんぞ!!この堕天使共がッ!!」
ルガルは毛並みだけでなく、両手も上げて一生懸命威嚇している。
……こんなに上手に人を逆撫でできるやつ、初めて見た。
「待ってください!こんな悲しい争いをしなくても、きっと解決の道があるはずです!」
「どの立場で言っとるんじゃ!?仲間を食いに来た奴と和解など、できるはずないじゃろが!!」
正論だ。
俺達は今、悪魔に正論を叩きつけられている。
こんな経験、中々できないだろうな……。
「な、何て横暴な考え方……!恐ろしいです……!」
「言葉が通じても、所詮は強い力を持っただけの魔物。もはや、話し合いの余地はないわね……」
「こっちが10対0で悪いからな?こっちっていうか、お前らだけど」
ルルフェルとユールは、なぜか強気な姿勢を保っている。
この件に関しては、純粋に向こうサイドが気の毒過ぎるのに……。
「もはや問答無用じゃあ!お前らを焼き殺して、わしが直々に喰らってやるわぁ!!」
堂々と宣戦布告をした次の瞬間、ルガルは右手に灰色の激しい炎を纏い、一直線に俺に飛びかかって来た。
「火……!てか、何で俺狙いなんだよ!?」
魔王の右腕を自称するだけのことはある。
俺のちっぽけな命など、触れずとも消し炭にしてしまいそうな灰の炎。
こんなもの今まで見たことがない……。
怯んで動けなかった俺は反応できない、脳裏に死の文字がよぎる。
「ちょっと、何ぼやっとしてんのよ!?あんたが死んだら、ユール達つむのよ!!」
その刹那、炎と俺の間にユールが割って入る。
間一髪、ユールは俺を抱きかかえて宙を舞う。
「わ、悪い……。サンキュー」
よく見ると、その羽先は僅かに焦げている。
ルガルの放つ禍々しい炎の熱が、冷たい洞窟を包み込んでいく。
0
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜
九尾の猫
ファンタジー
サバイバルゲームとアウトドアが趣味の主人公が、異世界でサバゲを楽しみます!
って感じで始めたのですが、どうやら王道異世界ファンタジーになりそうです。
ある春の夜、季節外れの霧に包まれた和也は、自分の持ち家と一緒に異世界に転移した。
転移初日からゴブリンの群れが襲来する。
和也はどうやって生き残るのだろうか。
異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。
桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。
だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。
そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。
異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。
チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!?
“真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる