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Falling 2
大天使
しおりを挟む「もう、その腰の剣は飾りなの!?あんた、どうせいい学校通ってたんでしょ?何を勉強してたのよ、全く!」
ユールは文句を言ってはいるが、焦げた羽については何も言及しない。
いつもなら鬼の首を取ったかのように、俺に謝罪と賠償を求めてくるところだが。
「悪い……」
「え?」
ユールは面食らった顔をした。
俺が反省しているのが、そんなに変か。
何だか急に恥ずかしくなってきた。
「何でもねえよ!剣も徒手も一般教養も簿記も全部学んでたわ!」
「いくら学んでも実戦で使えなきゃ意味ないでしょ」
「う、うるせぇ、何も言い返せねえからうるせぇ……」
などと、ついいつものように言い合いをしてしまうと……。
「何無駄話しとるんじゃあ!バカ者がぁ!!」
ルガルが凄まじい跳躍力でジャンプし、空中の俺達の前に現れる。
「マジかよ、跳んできた……!てか、また俺狙いかよ!」
空中で身動きが取れない。
俺は咄嗟に左腕を前にかざし、破滅ノ光を放とうとするが……。
どうしても躊躇いが生まれてしまう、人型の敵に放つのは初めてなのだ。
「狐火 - 天咬み-!!」
その隙をついてルガルは両手に灰色の業火を纏わせ、俺を攻撃しようとする。
「危ないですわ!!」
今度はメルメルが俺達の間に割って入った。
俺はまた庇われてしまった。
「メルメルッ!!」
メルメルは、身体を大の字に広げて俺達を守ろうとしている。
こいつらはもう天使じゃない、攻撃を食らえば無事では済まないはずなのに。
そして……。
── がぱぁッ!
「……え?」
炎の音とは思えない、謎の音が洞窟内に響く。
「何じゃあ……?何じゃあ!? 」
目の前を見ると、メルメルの頭の花が大きく開き、食虫植物のようにルガルを頭から咥え込んでいる。
目の前が突然真っ暗になり、混乱するルガル。
「何ですの!?何ですの!?」
何か本人も混乱している。
「メルメル……?あんた、一体何なのよ、それ?」
「私もこんなの初めてなのですけど……。ずっとこうしていると、よくないことが起こる気がしますわ、相手方が」
彼女自身もよく分かっていないらしい。
「……その花、何でそんなギミック満載なんだよ?お前の隣で寝るのもう嫌なんだけど」
「た、助けて差し上げたのに何て物言いですの!?素敵ですわ、カイネ様!」
メルメルの素敵の基準がよく分からないが、そんなことを言っていると、花に捕まったルガルが、足をじたばたして暴れ出した。
「ええい、とっとと放さんか!湿ってて気持ち悪いんじゃあ!!」
ルガルは前が見えない状況で反撃を始めた。
「狐火- 乱れ玉藻-!!」
ルガルは宙に複数の火の玉を出し、縦横無尽に乱反射させる。
ユールは俺を抱えたまま必死に避けるが、無差別に攻撃してくる火の玉をどうしても捌き切れない。
「ッ……!!」
ついに俺は、その一つに直撃してしまった。
俺の手の甲は、拷問を受けたかのように焼けただれる。
熱い、小さな火の玉だったが今まで経験した何よりも熱い。
「カイネさんッ!!」
ルルフェルの叫ぶ声が聞こえた。
今までで一番悲痛な声だった。
俺が情けないから、こいつらにこんな……。
何やってんだよ、バカ野郎……。
反省は後にしろ。
首を横に振って、自分にそう言い聞かせたその時だった。
── ドゴォ!!!
突如、鈍い音が響いた。
「な、今度は何だよ……!?」
俺は咄嗟に俯いていた顔を上げる。
だが、この目が捉えたのは、いつの間にか空中に佇んでいるルルフェル。
そして、岩肌にめり込んでいるルプスルガルの姿だった。
戸惑っている俺とは対照的に、やけに落ち着いた様子のユールが口を開く。
「ルルフェルの中段は天界でも屈指の火力、発生も早いわ」
「は?」
ユールの訳の分からない解説にメルメルが続ける。
「ルルフェル様は大天使様だったのですわよ。弱い訳がありませんわ」
「大天使……」
厳密にはメルメルが前に一度、ルルフェルを大天使と呼んでいたのは覚えている。
だが、その時は別に気にも留めなかった。
先輩の事を大先輩と呼ぶくらいの、軽いあれだと思っていた。
ルルフェルって、能力失っててもこんなに強いのか?
……でもこいつ、狼狩りはいつも俺任せだったよな。
それに、初日の時も魔物からガン逃げしてたよな。
……弱いフリしてたのか?
「お前、もしかして今まで猫被ってたのか?」
俺の懐疑心丸出しのその質問に、ルルフェルは真面目なトーンで答える。
「………にゃん」
俺はそれ以上何も言えなかった。
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