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Falling 2
協力(させた)
しおりを挟む「うう、何なんじゃあ……」
壁に腰から下が埋まっているルガルが、弱々しい声で呻き声をあげているが、見たところ平気そうに見える。
随分と頑丈だな、こいつ。
「ルガルさん、あなたに提案があります。話を聞いてください」
埋め込んだ張本人は、何かを提案しようと歩み寄る。
こいつも交渉のタイミングおかしくないか、壁に埋まってんのに。
「うるさいわ、お前らと話すことなどないわ!バーカ!狐火 - 灰神楽-!!」
その状態でルガルは口から直線状の灰炎を吐いた。
炎が集約されている分、今までの攻撃よりも強力そうだ。
そして、今度は俺ではなくちゃんとルルフェルの方へ攻撃している。
いや、あいつの方へ行ったからいいということではなく、流れ的に行くべき相手に行ってるということで……。
── バシュウゥ……!
一人でごちゃごちゃ言い訳をしていたが、その必要は皆無だった。
ルルフェルは、素手でその炎を掻き消してしまったのだ。
俺はその光景にただただ唖然としている。
「私は処刑担当、破滅の大天使でした。対象が暴れた際に律することができるよう、他の天使よりも少し強くできています」
淡々と語るルルフェルは、どこかいつもの彼女ではないように見えた。
「ふえぇ……」
一転、絶望的な状況に思わず情けない声を出すルガル。
千年ぶりに目が覚めたと思ったら、仲間が食べられてたり、空き巣に壁に埋め込まれたり……。
何でこんな目に遭ってるんだろう、この子。
「私達はこのヘルヘイムに楽園を創ろうと思ってます。是非、あなたの力も貸して欲しいんです」
「ら、楽園じゃと……!?」
ルガルは予想外の言葉に面食らった顔をしている。
あと、そろそろ壁から出してあげたらどうだろうか。
「そうです。あなたのその炎は私達にとって、とても有用なものです」
言われてみればそうだ。
火が使えれば、今まで不便に思っていたことが大幅に改善される。
「ちょっと、こんな危険なやつと協力だなんて……」
「そうですわ、頭のお花が燃やされたら大変ですわ」
ユールとメルメルは協力関係を躊躇っているようだ。
「火があれば寒さに震える夜ともおさらばだぞ 、あと食材とか美味しく調理できるぞ」
俺は否定的な二人に少し助言してみた。
「みんなで協力してこその楽園よね!」
「花飾りですわ!皆さんで花飾りを作りましょう!」
一瞬で手のひらが返った。
話が早いのだけはこいつらの長所だ。
「……焼けってか?わしに仲間を加熱調理しろと言っておるのか?」
すっかり泣きそうな顔のルガルに、ルルフェルはニコッと微笑む。
「いいえ。協力してくれるのなら、ヘルウルフさん達には今後一切手を出しません。約束します」
ルルフェルは一人で交渉を進める。
内容的には一向に構わないのだが、ユールだけは「もう食べれないの?」と残念そうにしている。
「こ、断った場合はどうするんじゃ?」
「食べます」
狼少女に返ってきたのは、無慈悲な返答だった。
そして、ルルフェルの後ろに隠れているユールは誇らしげな顔をしている。
その表情は、「自分もいっぱい食べるわ」という確固たる意思表示に他ならなかった。
「ぬぅぅ……分かったわい!!可愛いこやつらのためじゃ、なりふりなど構っておられん!!」
こいつは、仲間というものにかなり強い執着があるようだ。
さっきまで聞く耳を持たなかったルガルだったが、めちゃくちゃ悔しそうな顔で承諾した。
……そんなに顔に出すか、普通?
「ありがとうございます!えっと……それじゃあ、そろそろ壁から出してあげますね!」
こうして俺達は、空き巣、強盗、及び脅迫の末、幸運にも火の使える快適な生活を手に入れたのだった。
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